リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第44話 聖遺物の確認

ハルトへの挨拶を済ませたジルヴェスは、自室へと引き返し、先ほどの任務中に回収した、聖遺物とおぼしき布切れを厳重に保管し、どこかへ行くための身仕度を整え始めた。

 

「とりあえず、これが本物の聖遺物なのかどうかを確認するところから始めるしかないな。だから、明日は教会に顔を出しに行こう」

 

そして、その行き先は教会、すなわち聖王教会のようだ。

 

「教会へはいつぶりだったか……いや、ちょっと待てよ。連絡もなしに行ったら都合が合わないかもしれないじゃないか。危ない危ない」

 

いくら、聖王教会と関係があるとは言え、アポも取らずに目的の人物と会うのは若干無理があることに気付いたジルヴェスは慌てて通信を開く。

 

『…………はい』

 

数コールの(のち)、通信をかけた相手が画面に映し出された。

 

「お久しぶりです、シスター・シャッハ」

『騎士ジルヴェス、こちらこそお久しぶりです。ところで、今日はどうしたんですか?』

 

通信の相手は聖王教会で修道女をしているシャッハ・ヌエラ。彼女はジルヴェスが会いたい相手の秘書も務めている。

 

「少しカリムさんと話したいことがありまして、明日あたり時間がないかと思い、その確認をシャッハさんにお願いしたいなと思うんですけど」

『そういうことですか。お安い御用です。少し待ってくださいね』

 

そう言うとシャッハは端末を操作し始める。

 

『…………そうですね、明日は日中はずっと教会に居ますね』

 

しばらくすると、予定を確認し終えたのか、そう答えた。

 

「ありがとうございます。では、頃合いを見計らって伺わせていただきます」

『分かりました。では、来る前にまた連絡してください』

「了解しました。それではまた明日」

『はい』

 

そう言って、ジルヴェスは通信を切った。

 

「ふぅ…………一先(ひとま)ずアポは取ったし、準備は出来た」

 

ジルヴェスはそう呟くとベッドにドサッと倒れ込んで横になる。

 

「あー…………これから忙しくなりそうだ……でも、自分でやるって言ったからな、責任持たないと……」

 

若干、これからのことを考えるとテンションが下がるジルヴェスであった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………着いた」

 

ジルヴェスは大きな、そして荘厳な雰囲気を放つ門を前にして、そう呟く。

 

「騎士ジルヴェス、こちらです」

 

すると、すぐに奥に見える建物から修道服に身を包んだ女性がそう声をかけながら駆けてくる。

 

「シスター・シャッハお迎えありがとうございます」

「いえいえ、大したことではありません。では行きましょう」

「ええ」

 

ジルヴェスは勝手知ったる何とやら、特にキョロキョロしたり、緊張することもなくシャッハの後をついていく。

 

「それにしても、昨日は驚きました。突然連絡がきたものですから」

 

2人で並んで歩いていると、シャッハは思い出したように呟く。

 

「ええ。それは、ちょっと気になることがありまして……それで、急遽教会の、カリムさんの協力を扇ぐ必要を感じたものですから」

「そうですか。でも、必要がなくとも、教会の方へは気軽に来ていただいて構いませんよ。私も騎士カリムも歓迎しますから」

 

そう言ってシャッハは微笑む。

 

「そうですね、任務がなくて暇なときには今度来ようかと思いますよ。プライベートで」

「そうですか、楽しみにしてますよ。騎士カリムはこちらに居ますからどうぞ」

 

そして、とある部屋の前で足を止め、ジルヴェスに中へ入るよう促す。

 

「案内ありがとうございます」

 

ジルヴェスはそう礼を言って扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

すると、若い女性の声が返ってきた。ジルヴェスはそれを聞いて中へ入る。

 

「失礼します」

「いらっしゃい、ジルヴェス。久しぶりね」

 

部屋へ入ると、部屋の奥の椅子には金髪で落ち着いた雰囲気を纏う女性が座り、ジルヴェスに柔らかな笑みを向けてきていた。

 

「お久しぶりです、カリムさん」

 

ジルヴェスは彼女に挨拶すると軽く会釈をする。

 

「ジルヴェス、見ない内にまた大きくなったんじゃないかしら?」

「そう、ですかね……自分ではよく分からないですけど……」

「そんなことないわ。こう、以前にも増して頼もしくなったわよ」

 

そう言って楽しそうに微笑む姿は、まるで弟の成長を実感する姉のようだった。

 

「まぁ、カリムさんに頼られるなんてことそうはないと思いますけどね」

 

それに対してジルヴェスは苦笑して返す。

 

「あら、それはどうかしらね。まぁ、そんなことはどうでもいいのよ。今日はどういった用で来たのかしら?」

 

カリムはいよいよ本題に入るように促す。

 

「はい。まず、お渡しするものが」

 

ジルヴェスは気持ちを入れ替え、先ほどまでとはうって変わって、真面目な面持ちになる。

そして、ジルヴェスの持ってきた荷物から厳重に梱包した布を取り出した。

 

「それは、何?」

 

まだ、梱包された状態のその荷物にカリムは特別関心を抱いているようだった。

 

「これは恐らく、聖遺物かと……」

 

梱包を解きながら、ジルヴェスは答えた。

 

「今、何て言ったの?」

「ですから、聖遺物、具体的には聖骸布ですが」

 

一瞬自分の聞き間違えかと、いやむしろそうであって欲しいと思い聞き返したカリムだったが、再び返ってきたジルヴェスの答えに言葉を失うほどの衝撃を受けていた。

 

「昨日、第83観測世界にて違法研究所の壊滅任務がありました。それには自分が出向いたのですが、その研究所内でこれを見付けました」

 

ジルヴェスはただ淡々と語る。

 

「先ほど、これを聖遺物と言いましたが、まずはこれが本物かどうかの確認をカリムさんにお願いしたいと思い、今日は来ました」

「そう…………ちょっと待ってもらえるかしら」

 

そう言うとカリムはすーはーすーはーと心を落ち着かせるように深呼吸を繰り返す。

 

「…………もう大丈夫。それで、これが本物かどうかの確認よね?すぐに済ませるわ」

 

カリムはジルヴェスにそれだけ告げて、彼の持ってきた布を丁重に扱い、どこかへ持って行った。

 

「…………騎士ジルヴェス、お茶でもどうですか?」

 

そして、入れ替わるようにシャッハが部屋へ入ってきて、ジルヴェスにお茶を進める。

このあたり、客人をほったらかしにしないシャッハの、そしてカリムの気遣いが窺える。

 

「そうですね、お願いします」

 

ジルヴェスも先ほどカリムはすぐに済ませるとは言っていたものの、時間がかかるだろうと思っていたから、素直にお茶をいただくことにした。

 

「すぐに淹れますからお待ちください」

 

そして本当にすぐにお茶を淹れジルヴェスの前に給仕した。

 

「ありがとうございます。……ごくっ……うん、美味しいですね」

 

ジルヴェスはシャッハに一つ礼をすると、一口そのお茶を飲み、感想を彼女に伝える。

 

「褒めてくださってありがとうございます。お世辞でも嬉しいですよ」

「素直に美味しいですよ」

 

謙遜するシャッハに、ジルヴェスはもう一押ししてみた。

 

「そうですか?ありがとうございます」

 

するととても嬉しそうに俯いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジルヴェス、待たせてしまって悪いわね」

「いえ」

 

案の定、カリムはすぐには戻ってこなかった。

しかし、ジルヴェスは別に気にしてはいなかった。

 

「それで、結論だけど、これは本物の聖骸布ね」

「やはり…………」

 

カリムからの言葉にジルヴェスは考え込みそうになる。

 

「回収してくれて本当にありがたいわ」

「いえ、教会にとって大切な聖遺物ですからね。ただ、残念ながら聖王の遺伝情報はすでにばら撒かれ、手遅れな状態ですが……」

「それに関しては仕方ないわ。悪用されたときにすぐさま対応出来るようにこちらも準備しているの」

 

カリムは、ジルヴェスが心配しなくても大丈夫だと言外に言っているようだった。

 

「そうですか。それで、もう1つお願いがあって来たんです」

「どうしたのかしら?」

「たった今、カリムさんは俺の心配することではないとおっしゃいましたが、聖骸布が見付かった以上、数年前から発生しているガジェット事件には恐らく聖王、そのクローンが関係してくると考えています。ですが、俺はそんな悲しい存在を作り出したくはないです。だから、ヴェルさんに言って、単身の特別任務として、この件に当たろうと思っています。そこで、カリムさんには時折協力をお願いしたいんです。そのお願いも今日来た目的です」

 

そしてジルヴェスはよろしくお願いします、と言って頭を下げる。

 

「…………分かったわ。何かあったらすぐに言ってちょうだいね」

 

カリムは快く承諾した。








ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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