リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第45話 カリムの策略

 

 

 

 

「今日の用事は済んだのかしら?」

「ええ、とりあえずは……」

 

カリムの問いに答えつつも、ジルヴェスは何故そんなことを聞くのだろうかと、ふと疑問に感じていた。

 

「そう。ところで最近は、義妹(はやて)とは会っているのかしら?」

「はやてさん、ですか?」

 

突然に話題を転換させるカリムに若干置いていかれつつジルヴェスは聞き返す。

 

「なんか、さっきの話だとこの1年ずっと忙しくしてたみたいだからちょっと気になって」

「そうですね…………言われてみると、訓練校の夏休み中に会ってから一回も会ってないかもしれないですね」

 

少し考えてみると、案外会っていないということに気が付いた。

 

「任務も、特捜隊に縛られはしないんだからたまには会いに行ってあげたらどう?」

 

カリムは微妙に悪い笑みを湛えた表情をして、ジルヴェスに話をする。

 

「別に、わざわざ時間を取ってもらうほどのことではないですから。それに、これから忙しくなりそうですし」

「だったら少し息抜きに教会騎士団に顔を出して行かない?」

「え?」

「これから忙しくなるんだからその前に少しだけ、どうかしら?」

 

ニコニコと笑みを浮かべているカリムに、少しその腹を探ろうとしたジルヴェスだが、すぐにそれは無駄だと思い至り、降参することに決めた。

 

「そうですね。行ってみますよ」

 

ジルヴェスはそう言うと立ち上がり、扉に向けて歩き出す。

 

「きっと楽しめると思うわよ」

 

カリムは何かを企んでいるような顔をしていたが、ジルヴェスはその雰囲気から悪意は感じなかったから、カリムの提案に乗ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

ジルヴェスは一礼してから、教会の敷地内にある騎士団の訓練場に足を踏み入れた。

 

「騎士ジルヴェス、お久しぶりです。教会に来るというのは珍しいですね」

 

すると、ジルヴェスに気付いた、彼と大体同じくらいの年齢に見える青年たちがジルヴェスの元にやってきた。

 

「今日は少し用事があったものですから。それで、こちらにも顔を出すことに」

「そうですか。良ければ手合わせお願い出来ますか?」

「だったら俺もお願いします」

「私も良いですか?」

 

一人がジルヴェスとの手合わせを申し出ると、次々に名乗りを上げる。

 

「あー…………別に構わないけど……」

 

ジルヴェスが困ったな、と思っていると見覚えのある紫色の魔力光を見た気がした。

 

「《--ゅう一閃》!」

 

そして、どこか聞き覚えのある声がして、ジルヴェスはまさかと思いその訓練場を見回すと、居た。彼の知り合いが。

 

「…………ん?」

 

その知り合いはジルヴェスの周囲で騎士団が騒がしくしているのに気付き、ジルヴェスの方へ視線を向けてきた。

 

「こんにちは、シグナムさん」

「ああ、ジルヴェス来ていたのか」

 

少し意外そうに目を見開いて、ジルヴェスの知り合い、もといシグナムは彼に言葉をかける。

 

「ええ。ちょっとありまして……むしろ、シグナムさんが今日いることに驚いてますよ」

「ああ、今日は主はやてがここに用事があるようだったからな、序でに顔を出してみたまでだ」

 

シグナムはジルヴェスの横まで歩いてくる。

それに伴って、ジルヴェスの周りにいた騎士団員たちはさっと場所を空けた。

 

「ということははやてさん、居るんですね」

「そうだな」

 

シグナムからはやてが居るということを聞いて、ジルヴェスは先ほどのカリムの笑いの意味が分かった気がした。

 

「ところでジルヴェス、久しぶりに手合わせでもしないか?」

 

シグナムはどうだ素晴らしい意見だろう?と言わんばかりにジルヴェスを見詰めている。

 

「……そうですね。じゃあお願いします」

 

ジルヴェスは苦笑いをしながらも、シグナムの提案に乗ることにした。

すると、シグナムが来てから少し距離を取っていた騎士団員たちが口々に先ほどと同じように手合わせを願う声が聞こえてくる。

 

「……じゃあ、シグナムさんの相手が終わったら順番にやりましょう」

 

そして、ジルヴェスは半ば諦めたようにため息を吐いて、彼らにそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はぁっ…………はぁっ…………」

 

ジルヴェスは仰向けに倒れ込んで乱れた息を整えている。

 

「ジルヴェス、大丈夫か?」

 

爽やかな笑みを浮かべてシグナムはジルヴェスに手を差し伸べている。

 

「……ええ……さすがに全員を相手に()るのは無理がありました……」

 

ジルヴェスの言葉通り、最終的には、彼は騎士団員とシグナム全員を相手に虐めに近い模擬戦をすることになっていたのだった。

 

「はは、その割には負けなしだったじゃないか。それに楽しんでいただろう?」

「まぁ、それは否定しませんけど……」

 

シグナムのからかうような物言いにジルヴェスは言い返せないでいる。

 

「こんにちは~、シグナム()るか?」

 

と、そこへシグナムを呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「主はやて、こちらです」

 

シグナムはその声にすぐさま反応して、返事をする。

 

「おお。…………って、あれ、ジルヴェスが()る」

 

はやてがシグナムの元にやってくると、そこでシグナムの隣に居たのがジルヴェスであることに気付いて驚いていた。

 

「はやてさんこんにちは。お久しぶりです」

 

対するジルヴェスは別段驚くこともなく、ペコリと頭を下げる。

 

「なんや、カリムがニヤニヤしとるな、思うとったけど、ジルヴェスが居ったんか……」

 

はやては一人得心したように手をポンと叩いた。

 

「俺も驚きましたよ。まぁ、シグナムさんと会った時点で話を聞いていたのでさっきは驚きませんでしたけど。それにしても、はやてさん教会に顔出せる程度には暇なんですね」

「なんや、その言い方は」

 

ジルヴェスの物言いに少し気分を害したのか、はやてはふて腐れている。

 

「別に、バカにしているとかではなく、特別捜査官っていう職務柄、こき使われてそうだったので」

 

それを見て、ジルヴェスは慌ててフォローを入れる。

 

「まぁ、常識の範囲内で休暇はもらえるしな。体壊れるほどは働いてへんよ。むしろそれを()うたら、あんたの方こそ、休みないやろ?」

「まぁ、そうですね」

 

実際、本来の特捜隊の任務に就いているとほとんど休みはない。部隊として保有ランク制限が事実上黙殺される代わり、陸海空、いずれの管轄であれ、一般部隊の手に負えない事案に対応する必要があるためだ。

しかし、現実には、陸上部隊では部隊間の縄張り意識が強いために特捜隊と言えどなかなか自由には動けなかったりする。

だからこそ、今回のジルヴェスのように長期の特殊任務として、特定の事案を請け負う部隊員が発生することも珍しいことではなかった。

 

「ジルヴェスあんたも大変そうやな」

 

はやては同情するようにジルヴェスへ視線を向けている。

 

「それより、シグナムさんを呼びに来たっていうことはそろそろ帰るんじゃないんですか?」

「おお、せやったな。シグナム、着替えて来てええで」

「分かりました。失礼します」

 

はやての言葉でシグナムは建物の方へと歩いて行った。

 

「おお、せや、ジルヴェス今日暇か?」

 

それを見送りながら、はやては思い出したようにジルヴェスに問う。

 

「まぁ、緊急の呼び出しがなければ」

 

彼はそう答えたが、今現在、ジルヴェスは特捜隊の通常任務からは外れている身であり、その彼にまで連絡が回ってくるなど余程のことでもない限りあり得ない。

 

「そうか。なら、今晩は(うち)()うへんか?」

 

このときのはやての表情は、断られることなどないと確信しているものだった。

 

「……別に構いませんよ」

 

だから、ジルヴェスも態々(わざわざ)それが分かった上で断る気はなかった。

 

「ホンマか?なら、腕によりをかけて夕飯作ったるわ」

 

はやてはジルヴェスの答えに満足なのか、満面の笑みを浮かべていた。







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m




まぁ、ようやく本格的にはやてを出すことが叶いました(笑)
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