リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「ほら、着いたで」
「あ、はい……お邪魔します」
ジルヴェスは遠慮がちに、家へ入っていくはやての後ろについていった。
「それにしても、ジルヴェスと会うんはいつぶりやったっけ?」
「そうですね、訓練校のときの夏休みに地球で会って以来だと思いますけど」
「そんな経つんか……早いもんやな」
はやては思い出にでも浸っているのか遠い目をしている。
「……ん、待てよ?あんた、1年以上も顔出しに
はやては彼女的大事実に気付き、少しイラつきを感じているようだった。
「まぁ、お互い忙しかったですからね。そんなもんだと思いますけど。むしろ、今日会ったことの方が驚きですよ」
しかし、はやてが何に怒っているのか、ジルヴェスは分かっていなかった。
「…………まぁ、こいつに分かれっちゅう方が無理やったな……」
はぁ、とはやてはため息を吐いて、呆れたように首を左右に振っていた。
「でも、この家大きいですね」
ジルヴェスはそんな彼女の様子を気にも止めず、自由に振る舞っている。
「せやな、6人で住めるとこっちゅうんで探したとこやし。なかなか見付けるんは大変やったで?」
「あー、シャマルさんが頑張ったんですね」
「せや。あのときのシャマルは心配事が多くていっぱいいっぱいになりそうやったんやで?」
はやては懐かしむように視線を遠くに向け語る。
「まぁ、はやてさん家だとシャマルさんしかそういうの出来なさそうですしね」
そう言って、ジルヴェスは吹き出していた。
「笑い事やないやろ。まぁ、ええや。そこらへんで
はやてはジルヴェスをリビングへと案内するとそれだけ言い残して、タッタッタと小走りにキッチンへと向かっていった。
そして、その場にはジルヴェスとシグナムが残された。
「ところでジルヴェス、最近調子はどうだ?」
シグナムはここで改まってそうジルヴェスに訊ねる。
「調子、ですか?」
ただ、ジルヴェスはシグナムの質問の意図にピンときてないようで、首を傾げている。
「なに、先ほど手合わせして、実力をしっかりと伸ばしているのは確認したが、それ以外の仕事だとかプライベートのことまでは分からないからな。気になって聞いたまでだ」
「意外です」
「何がだ?」
「いえ、シグナムさん、あまりそういうことは気にしない人じゃないですか」
ジルヴェスは、シグナムのことをサバサバしていて他人には必要以上に踏み込みはしないタイプと思っていた。
「まぁな、確かにそうだが、お前とは存外付き合いも長いからな。それにお前は危なっかしくて気にかかるんだ。何と言うかな、なのはと同じだろ?」
実際、シグナムは結構サッパリした人間関係を好む傾向にある。ただ、ジルヴェスが何となくなのはに被って、彼に好き勝手やらせているとジルヴェスが無茶を平気でやる気がしていたのだった。
ジルヴェスを存外気にかけるのはそのためかもしれない。このあたりに、ヴォルケンリッターの将としての一面が窺える。
「なのはさんと同じ、ですか?」
ジルヴェスはそう言うシグナムの意見がよく理解出来ないのか、聞き返す。
「ああ、お前らは2人とも自分のことなど
「バカって…………」
「そんなお前らだが、人一倍誰かのことを考えてる奴だ。でもな、だからこそ、お前らが無茶して、お前らに何かあれば傷付く人もたくさんいるんだ。それを忘れるなよ。私はそんなことにならぬよう、お前のことを気にかけているのだからな」
心配するように、けれど、釘を刺すようにシグナムは言った。
「…………はい……」
ジルヴェスは、静かに頷いた。
「それで、最近は仕事の方はどうなんだ?」
「そうですね……可もなく不可もなく、
シグナムから再びかけられた問いにジルヴェスは少し考えながら答える。
「そうか。何度も言うが無茶だけはするなよ」
「……はい」
何度も釘を刺すシグナムに何となく心の奥底に思っている本心の部分を見透かされているような感覚を覚えて、ジルヴェスは冷や冷やしていた。
「…………ふんふふーん……」
「はやてちゃん、何だか楽しそうです」
鼻歌混じりにはやてはキッチンに立っていた。
それをリィンがニコニコしながら見ている。
ちなみに、リィンははやてからお手伝いを任されるのを今か今かと待っている状態である。
「リィン、そう見えるか?」
「はいです!」
「そうか、あかんあかん」
はやては何か考え事をしながら、しかしそれを振り払うように頭を振る。
「せやリィン、ニンジン切ってくれるか?」
「もちろんですー」
はやてからいよいよお手伝いを任されて、リィンは人間サイズに変身して包丁を手に持った。
「乱切りで頼むな」
はやては少しだけ心配そうにリィンを見てから自分の担当の調理に移った。
「いい匂いがしてきましたね」
「ああ、今日はカレーか」
リビングで夕飯が出来るのを待っているジルヴェス、シグナムの2人は、漂ってくる食欲をそそる匂いに空腹を感じていた。
『たっだいまー!」
『はやてちゃん、遅くなっちゃってごめんなさい』
『………………うむ』
と、そのとき何人かが家に帰ってきた。
「全員帰ってきたか」
シグナムはそう呟くと玄関の方へ歩いていく。
『はやてー、夕飯は何だ?』
『おお、ヴィータおかえりや』
『ヴィータちゃん、夕飯はカレーですよ』
『お、リィン手伝ってんな』
『はいです!今日も美味しく作ってるですよ!』
そして、そんな温かい家族の会話が聴こえてくる。
「…………羨ましい、よな……」
ジルヴェスはリビングに一人でそうポツリと呟いていた。
「……おっ、ジルヴェスじゃねぇか」
すると、すぐにヴィータがリビングに入ってくる。
「あら本当。久しぶりね、元気にしてた?」
次いでシャマルも入ってきてジルヴェスに声をかける。
「お久しぶりです。お邪魔してます」
そんな2人にジルヴェスはペコリと頭を下げた。
「なんか、見ねぇ内にまたでかくなったんじゃねぇか?」
「そう、ですかね……」
身長差の関係で見上げてくるヴィータを見ながらジルヴェスは曖昧に答える。
「ちくしょう、成長期だかなんだか知らねぇけど、どんどん背を伸ばしやがって」
「そんなこと言われても……」
ヴィータはもう何年も前から彼のことを知っているから、ジルヴェスがまだ背の低い頃も知っている。だから、見た目の成長しないヴィータはどんどん成長するジルヴェスにある意味で置いてきぼりにされていた。
「まぁ、別に気にしてねぇけどな。ところで、今日は暇だったのか?」
「ええ、まぁ、そんなところです。教会に行ったらたまたまはやてさんに会いまして」
ヴィータはジルヴェスが特捜隊に現在いることをもちろん知っているからその忙しさも当然知っている。
だから、そんな忙しくしているはずの彼が暢気に、しかも人の家にいるのを見てふと疑問に感じた。
「そうか。まぁゆっくりしてけよな。はやてのご飯はギガウマだから、驚くなよ?」
ジルヴェスの返答に大して驚くこともなく、話題を変える。そして、はやての料理の腕をまるで自分のことのように自慢げに話している。
「それは楽しみですね」
「ああ、絶対満足すっからな」
ヴィータは楽しそうに笑っている。
「ちょっと暇だし、手伝ってこようかしら」
「待て」
しかし、シャマルがポンと一つ手を打って呟き、キッチンへ向かおうとすると、一転して真剣な顔をして、シャマルの腕を掴み、行かせようとしない。
「シャマル、お前は料理はいいよ。そ、そうだ、洗濯物溜まってただろ?そっち先にやった方がいい」
そして、慌ててそう付け加えてシャマルを洗面所の方へと押しやっていく。
「ちょっと、ヴィータちゃん、何するのよ!?」
シャマルはヴィータに文句を言うが、ヴィータは聞く耳を持とうともしない。
そんな2人のやり取りを見てジルヴェスは、シャマルは壊滅的なまでに料理が出来ないのだろうということを直感的に悟っていた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
連日の更新が出来ずすいません……