リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第47話 家族の温もり

 

 

 

「ほら、出来たで」

 

はやてがそう言いながら、出来た料理をテーブルに並べていく。

それをリィンとシグナムが手伝っている。

 

「はやて、出来たー?」

 

そこへ、2人で洗面所へと向かったヴィータとシャマルが戻ってきて、ヴィータははやてにそう訊ねる。

 

「もちろんや。もう準備出来るからな。もうちょい待っててな」

「うん!うぉ、匂いだけでギガウマだって分かるぜ」

 

食卓に並んでいく料理を、ヴィータは目を輝かせながら見ていた。それを見て、ジルヴェスは何だか面白く思えて笑ってしまった。

 

「…………ふっ」

 

そんなジルヴェスの様子を見て、シグナムは安心したように微笑んでいる。

 

「よし、準備出来たで」

 

そのはやての言葉でみな席につく。

 

「席、6つしかありませんけど……」

 

けれど、八神家は6人、今日はジルヴェスを含めて7人。ジルヴェスはどうしたらいいかと未だ席に着いていない。

 

「ジルヴェス、それは大丈夫ですよ」

 

すると、リィンがそう言って、妖精サイズになりテーブルに座った。ちなみに、食器のサイズ等々もリィンの妖精サイズに合わせてある。

 

「ああ、なるほど」

「早く座り」

 

はやてのこの言葉にジルヴェスはさっと空いている残りの席に着いた。

 

「ほな、いただきます」

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

そしてはやての言葉を合図に全員手を合わせた。

 

「……ぱく……もぐもぐ…………」

 

ジルヴェスは早速目の前のカレーに手を伸ばし一口を口に運んだ。

 

「……ん……美味い……」

 

そして素直にそう呟いた。

 

「ほんまか!?」

 

それを聞いてはやては笑顔の花を咲かせている。

 

「ジルヴェス、言っただろ?はやてのご飯はギガウマだって」

「ええ、そうですね」

 

ギガウマという表現がはたしてどの程度の美味しさを指しているのかはジルヴェスには分からなかったが、少なくともジルヴェスの味覚の中でかなり美味しい部類に、はやてのこのカレーは入っているのだった。

 

「…………ん?」

 

八神家の面々は次々に一口目を口に運ぶのだが、その表情を見ていると、どうしてかみな何かが違う気がしているようだった。

 

「あれ、何かあかんかったか?」

 

はやてがそんなみんなの様子に気付いて恐る恐るといった具合に訊ねる。

 

「いや、ギガウマなのはいつもと変わんねぇんだけど、なんかいつもと違うって言うか、いつもよりもっとギガウマって言うか……」

「そう言われてみればヴィータの言う通りだ。何かいつものカレーとは味付けが微妙に異なる気がします」

 

すると、ヴィータとシグナムが相次いで答えた。

 

「そか……」

 

はやては彼女らの答えを聞いて、美味しいということだったので軽く流そうとする。

 

「でも何が違うのかしらね……」

「愛情は最大の調味料なのですー」

 

けれど、ふとシャマルが漏らした呟きにリィンが軽く爆弾発言を投下した。

 

「愛情……ああ、そういうことね……」

 

シャマルはチラッとジルヴェスの方を見て合点がいったと頷いている。ヴィータもシグナムも同様に頷いていた。

 

「いや、ちゃうで!?少しいつもとは違う味付けを試してみただけや」

 

そんな3人の様子に慌てて先ほどのシャマルの言葉を否定するが、無情にもその言葉が受け入れられることはなかった。

 

「リィン、一緒に料理しとったんやから分かるやろ?」

「まだ、リィンには料理の詳しいことは分からないです。でも、はやてちゃんがいつにも増して楽しそうに料理してたのは分かるですよ」

「リィン…………」

 

そこで、リィンを味方につけようとしたはやてだったが、当のリィンは簡単に主を裏切っていた。

 

「…………………………」

 

ただ、彼らの間には和やかな、そしてとても楽しそうな雰囲気が流れていて、ジルヴェスは少し黙り込んでしまう。

 

「ジルヴェス、どうかしたんか?」

 

それに気付いたはやてがジルヴェスに声をかける。

 

「あ、いや、何でもないですよ。久しぶりに美味い手料理を食べたので、少しボーッとしてました」

 

けれど、ジルヴェスは、あははと笑って誤魔化すだけだった。

 

「ほんまか……?まぁ、ええけど……」

 

はやては若干疑うような視線を向けていたが、大して気にもしていないのか案外すぐに引き下がった。

 

「………………そんな、はやてさんたちが羨ましく思ったなんて言えるわけないじゃないですか……」

 

ジルヴェスは誰にも聞こえないようにポツリと本当に声が出ているのかというほどの声量で呟いた。

 

「そういやジルヴェス、お前、なのはと仲良いんだな」

 

そんな雰囲気の中、ヴィータは何というわけでもなくふとそんなことをジルヴェスに言った。

 

「え?」

「いや、なのはが会う度にお前の話をしてくんだよ。正直鬱陶しくて仕方ねぇ」

「それを俺に言われても……」

 

責めるような声音のヴィータにある種の理不尽さを感じてジルヴェスは軽く彼女を非難する。

 

「ジルヴェス、ほんまか?」

 

しかし、その話題にはやてが食い付く。

 

「別に特別なのはさんとどうこうしてるわけじゃないですよ。よく分からない内に予定を合わせられて、よく分からない内に連れて行かれるんです」

 

答えをミスるとはやての怒りを買う気がして、ジルヴェスは恐る恐る答えを返す。

 

「なんや、それ」

 

けれど、はやては彼の答えに全くもって納得していない。

 

「俺にもよく分からないんですって。たまにある休暇に、気付いたらどこかに連れ出されてるんですもん。むしろ、俺が説明を求めたいくらいですし」

 

何やかんや言っているジルヴェスだったが、そんな風に振り回されることを不快に思ってはいないのだった。

 

「ま、別にうちには関係あらへんけどな。ジルヴェスがなのはちゃんたちと仲良うすんのはええことやし」

 

とそこで、一転して白々しい態度をとる。

 

「………………」

 

そんなはやての様子に八神家の面々は生温い視線を向けていた。

 

「そうですか。まぁ、いいですけど」

 

そして、ジルヴェスはそのあたりの周りの雰囲気を意識している様子はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕飯を食べて気付くとかなり深夜に近付いていた。

そこでジルヴェスはもう(いとま)しようと立ち上がった。

 

「もうジルヴェス帰るんか?」

「ええ、まぁ、いつまでも居たって迷惑でしょうし。それにやることがありますからね」

「別に迷惑っちゅうことはあらへんけどな。やることがある()うんやったらしゃーないな」

「じゃあ、長々とお邪魔しました」

 

そして、そう挨拶をすると玄関の方へと歩いていった。

 

「ほんなら、駅の方まで送ったるよ」

 

すると、はやてもジルヴェスの後に続いて玄関へと向かう。

 

「別に大丈夫です。それにもう夜も遅いですし、そんな中、女性一人で外を歩くのは危険ですよ?」

 

駅まで送るというはやての申し出をやんわりとジルヴェスは断った。

 

「うちやったら大丈夫やって。久しぶりに()うたんやし、もうちょい話をしたいんよ」

「…………はやてさんでも、危ないものは危ないんですから。それに、これからはちょくちょく顔を出すようにしますから今日はこれくらいで帰ります。ついてこなくていいですからね」

 

ジルヴェスは釘を刺すように言葉を重ねる。

 

「……そこまで言うんやったら仕方あらへんけど…………」

 

はやては不承不承といった具合に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八神家を出て、ジルヴェスは一人夜道を歩いていた。

 

「…………はやてさん家は賑やかで、仲が良くて…………俺も()()がいたらあんな風に笑って過ごせてたのかな……」

 

そして珍しく、そんなことを考えていた。

 

「……でも、俺なんかに家族って存在を求める資格はないから…………それは赦されないことだから……」

 

けれどすぐに、そんな考えを頭から追い出すように頭を振る。

 

「いや、こんな風に考えてたらダメだ…………隠したいことがあるなら最後まで、その素振りすら見せるなって言われたからな……」

 

一年前にすずかに言われた言葉を思い出して、ジルヴェスは今一度気を引き締めることを決意していた。







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m


新年度の頭ということで多忙の極みに居ります…………
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