リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
ガジェットの開発者と思われる白衣の男の言葉を聞いて、そのガジェットを改良、製造しているとおぼしき研究所を捜索し始めて早くも半年以上が経過していた。
「……ちっ…………」
けれど、ジルヴェスはイラつきを抑え切れずにいた。
というのも、この半年の間にジルヴェスが摘発した違法研究所は全部で150は下らない。しかし、その内で件の白衣の男のラボとおぼしき施設はわずか5つのみだった。
「……どれもこれも外れだ…………」
そう、残りの違法研究所は全て彼の追うものとは異なる違法研究を行っていた。
ジルヴェスはほぼ毎日休みなく出撃しているというのに思うような成果が上げられず、荒んでいるのである。
「……今日こそは当たりを引いてやる」
そして、そう呟いて、出撃のための身支度を始めた。
ジルヴェスは素早く身支度を済ませると第53管理世界へと転移した。
「もうそろそろ当たり引かなきゃやってらんねぇよ」
ブツブツと愚痴を吐きながら、目的の研究所へと翔んでいく。
「………………あれか……」
しばらく翔ぶとそれらしき建物が見えてきた。
「…………だが、本当にあれか……?」
しかし、見たところ、違法研究を行っているような禍々しい雰囲気は漂ってこない。
「………………違法研究所ですらないのか……?」
そんなことを考えながら建物へと近付いていく。
そして、一気に建物の内部へと移動した。
「…………中もまぁ普通……だな……」
何となくの違和感を抱きながらも建物内を探索する。
「……!」
そのとき、ジルヴェスは何かを感じ取って横へと跳んだ。
すると、先ほどまで彼が居たところを高速で何かが通過した。と思うと、少し離れたところで急停止、そして再びジルヴェスの方へと飛んでくる。
ジルヴェスはそれを今度はプロテクションで受け止める。
「……何だ?」
受け止めながら、彼はこの飛来物が一体何であるのか見極めようとする。
「…………これは……ただの誘導制御弾?なら……《アイスバレット》!」
ジルヴェスはいくつかの氷の弾丸を作り出すと、張っていたプロテクションを解くと同時に、それらの弾丸を飛来物にぶつけた。
飛来物は彼から少し離れたところで爆ぜた。
「……今のは確実に誘導弾だった…………ということは、ここには少なくとも魔導師が一人居る。そして、俺を攻撃してきた……」
ジルヴェスは人の気配は未だ感じずに居たが、建物に人が居ることを確信した。
「……次はこの部屋か…………」
しばらく建物内を
「なんか、この部屋からは人の気配を感じる…………」
ジルヴェスはそう呟くと部屋の扉を開け放った。
『ようこそ、地獄のコロシアムへ』
すると、その瞬間、その部屋のスピーカーからそんな声が聞こえてきた。しかし、聞いたところかつての白衣の男ではないようだった。
「何?」
ジルヴェスは状況について多少の思案をしていると、途端、たった今彼の入ってきた扉が独りでに閉まり、そして、その周囲に高濃度のAMFが発生した。
「……くそっ…………けど、これは当たりってことでいいな」
油断していたことは否めず、軽く舌打ちをするが、狙ったようにAMFを使ってくるあたり、ここがジルヴェスの追っていたものの一つであると確信し、彼はほくそ笑む。
『君には悪いけど、実験の相手をしてもらおう』
そのときまたもスピーカーから声が流れる。
そして、ジルヴェスとは逆側の扉が相手何かが入ってきた。
「何だ、あれは……?」
ジルヴェスはそれを見て唖然としている。
それもそのはず、彼の前に現れたのはまるで人間のような、けれど明らかにそれを「人間」と呼ぶことは憚られるような、そんな異形の生物だったのだから。
『それは、研究中のちょっとした手違いで
高笑いが聞こえてきそうなそんな口調の声が響く。
「ちっ…………むかつく……」
ジルヴェスは、今目の前にいる生物に、そして、失敗作と言いながらそれを使って楽しもうとしているような声の主に強烈な不快感と苛立ちを感じていた。
そして、一直線に目の前の生物に向けて駆け出す。
「……そうやって何か生き物を造り出そうとするやつは反吐が出る…………特に大した思いも持たないようなやつらがやってると!」
そして吐き捨てるように叫び、構えをとった。
「……《水龍一閃》!」
デバイスを一振りすると同時に、目の前の生物に向けて水龍が迫る。そして、呑み込もうと大口を開ける。
「ちっ」
けれど、その生物は俊敏な動きでジルヴェスの攻撃を避けた。その上で、彼に向けて
「……まさか、自分の魔法を使われるとは…………」
ジルヴェスは驚きつつも、先ほどまで見下していた心を入れ換え、目の前の生物をよくよく警戒する。
「とりあえずは様子見ってところか……?けど、とっとと俺はこれを見て笑ってやがる奴らを潰しに行かなきゃいけないんだよ。だから、これで終わりだ。……《ゲフリーレンシュトラーフェ》」
ジルヴェスが魔法を発動すると同時、部屋の中が極寒の真冬へと変わる。部屋にあるもの全てが凍てつき、何もかもが止まる。時間さえもが止まったような、そんな錯覚を覚えるほどに彼の魔法が全てを支配する。
そして、目の前に居た生物は彼の魔法で完全に氷つき、微動だにしない。ジルヴェスはそれを打ち砕いて、先ほど入ってきたのとは別の扉に手をかけた。
「……まさか…………
ジルヴェスの放った魔法を部屋の監視カメラ越しに覗いていた研究者たちは、誰かのこの一言に騒然とし始めた。
「何だと!?ここ何年も姿を現さなかったじゃないか!」
「そうだ!何故今さらになって…………それに、我々の邪魔をする理由がないだろ。あいつはこちら側の人間だろう!?」
そして、皆一様に顔を青ざめさせ、恐怖に身を震わせていた。
「そんなことを言っても私は知らない!とりあえず、あいつが来る前に逃げるぞ!」
彼ら研究者たちは各々の最重要の資料だけを手に取り、逃げるための準備を整える。
「逃がすか!」
しかし、そこへジルヴェスが辿り着いた。
「バインド!」
そして、ジルヴェスはレストリクトロックによってその場にいた者たちを尽く捕らえる。
「お前たちは何をしようとしている?」
そして身の震えるような冷たい声音でジルヴェスは問った。
「そんなことより貴様は何をしている、
「……そうだ、お前だってこちら側の人間だろう?」
捕らえられた者たちは口々にそう言う。
「…………それを知っているとは……だが、それはいつのときのことを言っている?まずは一つ言っておく。これは管理局の任務だ」
このジルヴェスの一言に彼らは衝撃を受けていた。
「改めて訊く、お前たちは何をしようとしている?」
けれど、ジルヴェスはそんな彼らの様子はお構いなしに尋問を続ける。
しかし、彼らは口を閉ざしたまま。
「……言い方を変えよう。何のために
「な!?」
そこで、ジルヴェスは言い方を変えた。するとものの見事に研究者たちの内の一人が反応した。
「ここは当たりってことだ」
その様子にジルヴェスは満足そうに頷いた。
「そして、お前たちをただでは済ましておけないってことでもあるわけだ」
この言葉に、研究者たちは顔を引きつらせている。
「…………《シュラーフ》」
ジルヴェスが魔法を発動すると、研究者たちはみな意識を失ったように床に倒れ込んだ。
「……運ぶか…………」
そしてそう呟くと彼らを一ヶ所に集め、そしてどこかへ転送した。と、同時に通信を開く。
「…………ヴェルさん、今送りました。いつも通りにお願いします」
『ご苦労。今日はどうだった?』
「当たりでした。軽く証拠などを回収してから帰ります」
『ああ、分かった』
ジルヴェスは通信を閉じると、再び研究所内を巡った。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m