リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
またも、結構時間が飛ぶ感じです
第49話 候補の下見
時は経ち、場所も変わってミッドチルダ南部、陸士386部隊本部隊舎にて。
「スバル・ナカジマとティアナ・ランスターですか。ええ、二人ともうちの突入隊のフォワードですよ。新人ながらとてもいい動きをします」
こう言うのは配属課の担当者。
なのはとヴィータは今日ここで映像を見ながらある隊員の紹介をしてもらっている。
「しかも、2年間で実績も十分に積んでいますし、いずれはそれぞれの希望の転属先に推薦を、とは思っていましたが、本局の方から直々に声をかけていただけるとはうちとしても誇らしい限りです。………では、まずはスバル・ナカジマ二等陸士から説明します」
担当者は前置きもさておき、本題に入った。
「お願いします」
「はい。彼女はうちのフォワードトップ………武装隊風に言えばフロントアタッカーにあたるポジションです。とにかく頑丈で頼もしい。しかも、足もあってタテ移動も優秀で、突破力もある。本人の希望は特別救助隊です」
「なるほど、特救志望ですか。分かりました。次にランスター二等陸士はどのような感じですか?」
なのはは何か思案するように頷いて、担当者に更なる情報を求めた。
「彼女はシューター、………分かりやすく言うと放水担当です。当初は武装隊向きの射撃型な上、彼女自身空隊へ行くのが夢らしく、うちの隊ではどうかとも思っていましたが、訓練校の学長からの推薦がありまして…それにここだけの話ですが、なぜか特捜隊の部隊長からの口添えもあったんですよ。……でも、射撃型だけあって腕はいいですね。しかも覚悟がいいんでしょう、飲み込みは早いし、やるべきことを完璧にこなすって気概があります」
「へぇ、ツーハンドですか」
資料として渡されていた訓練および任務中の映像を見て、なのはは呟いた。
「ええ、魔力カートリッジ用のデバイスで自作だそうです。………そしてこの二人、訓練校からコンビ3年目で息が合っていまして、コンビネーションは大したものです。いえまぁ、ヴィータ三尉や高町一尉がご覧になられればまだまだではあると思いますが……」
担当者は慌てて言い直す。
「いえ、私たちもまだまだですよ。二人のことは概ね分かりました。ご協力ありがとうございました」
なのはとヴィータは敬礼して部屋を出た。
「おい、なのは」
部屋から出たところで、ヴィータはなのはを呼び止めた。
「ん?なぁにヴィータちゃん」
なのははニコニコしながら返事をする。
「おい、ヴィータちゃんはやめろ」
「ええー」
ヴィータは怒ったようにそう言うが、なのはに反省した様子はなく、ニコニコしたままで居る。
そして、このやり取りから2人の仲の良さが窺い知れることだろう。
「ええー、じゃねぇよ。何度言ったら分かるんだ。……って、ああっ、もういいっ」
しかも、こういったやり取りは2人の間で幾度となく繰り返されてきたようで、呆れ果てた表情を浮かべてヴィータはため息を吐いた。
「それで何か訊きたいことあったんじゃないの?」
「…………ああ、そうだったな。なのははあの二人、どう思う?」
少しだけなのはを睨み付け、ヴィータは気を取り直して訊ねた。
「うーん、直接見たわけじゃないから何とも言えないかな……ただ、話を聞いた限りでは十分素質があると思うよ。それに特捜隊の部隊長ってヴェルさんのことでしょ?だから、あの人が何かを感じたなら絶対に何かあると思うな」
「そうか。磨けば光るってやつだな」
なのはの言いたいことは曖昧なことでもヴィータにはよく分かった。
「うん、そういうことかな」
「そうか。まぁ、面倒なことはお前に任せる」
「分かった。けど、やっぱまだヴィータちゃんには早かったかぁ」
なのはは今度はニヤニヤ顔を貼り付けて言った。
「やっぱって何だよ!?あたしはなのは、お前がやった方が早いと思ったから言っただけだ」
「もう、そんなかっかしないでよ~」
そう言いながらヴィータの頭を撫でる。
「ちょ、や、止めろ!」
ヴィータはなのはの手を払い除けようとした。
「ヴィータちゃん可愛い」
けれど、嫌がるヴィータを無視してなのはは撫で続ける。
その様子は何とも楽しげだった。
「そう言えば、なのは、最近ジルヴェスとはどうなんだ?」
「ふぇっ?え、え?」
仕返しとばかりにヴィータの口から突然ジルヴェスの名が出て、なのはは動揺を隠せなかった。
「何を焦ってんだ?ジルヴェスの話をあたしにしたのはなのはの方だろ?けど、最近何も話さなくなったからな。一時期はうっとうしいくらい話してたってのに」
「そ、そんなことない、はずだよ…」
ヴィータの言葉を自信なさげに否定する。
「……どうだかな」
ジーっと視線をヴィータはなのはに向ける。
「な、何……?」
なのはは恐る恐るヴィータの顔色を窺う。すると、ヴィータは先ほどのなのはのようにニヤニヤ顔を貼り付けていた。
「それで、どうなんだよ」
「どうって、何もないよ」
「そうか。そういや、結構前だけどジルヴェスに会ったぞ」
「そ、そうなの!?」
ヴィータの言葉になのはは意外にも食い付く。
「お、おう……なのははあいつと連絡とったりしてねぇのか?」
その様子に驚きつつもヴィータはさらに質問を重ねる。
「うーん、とってはいるけど、画面越しでしか顔を合わせてないから。やっぱり部隊勤めになるとジルヴェスも忙しくなっちゃうし。だからもうここ1年以上は直接会ってないよ」
なのはは少し考えながら答えた。
「まぁ、いいけど。あたしには関係ねぇことだし」
一連のなのはの様子にヴィータは満足したのか、それ以上は何も言ってこなかった。
◇◇◇
「ティア、おつかれ~」
「んー」
訓練が終わってティアナがストレッチをしているとスバルが声をかけてきた。
「Bランク試験いよいよ来月………いや、再来週かな。もうそろそろだけど準備、万端だよね?」
「あたしを誰だと思ってるのよ?そういうことに手を抜くわけないじゃない。任務や待機の合間もずっと練習してきたわけだし本番でも練習通りにやれれば大丈夫よ」
確認するように訊ねるスバルにティアナは不敵な笑みを浮かべ答える。
「うん!そうだね!」
ティアのことだからそう言うと思ってた、と言ってスバルは素直な笑顔を見せる。
「………てゆうかさ、なんで卒業後までコンビ組まされて、魔導師試験までツーマンセルで受けなきゃならないのよ?」
だが急にティアナは真顔を作って不満を言った。
とはいえ、本当に不満というよりはどこか呆れたような響きを含んだものであったが。
「あはは。そう言われればそうだね。でも私は嬉しいよ、ティアと一緒で」
だが、スバルはそれが照れ隠しだということをそこそこの付き合いの中で分かっていたから、逆に素直な言葉をかけることにした。
「あっそ」
「一緒に頑張ろうね」
「べ、別にあんたに言われなくたって頑張るわよ」
無愛想な態度をとっていたティアナだったが、スバルの笑顔に照れてしまって動揺してしまった。
「そうだよね。ティアだったらそう言うよね」
照れてるティアはかわいいな、なんてことをスバルは考えていた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m