リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第5話 休暇と意外な出会い

 

 

週末の休暇、ティアナが何をしていたかというと、

 

「…………あたし思うのよね、あんたのその強烈なまでのわがままにだけは見習うべきところがあるんじゃないかって」

「ほめられた~」

 

と、結局スバルの強引さに押しきられて一緒に街へ出ていた。

 

「それで?お姉さんはどこなの?」

「えーと………あっ!いた」

 

スバルは辺りを見渡し、姉の姿を見つけると彼女のもとに駆けて行った。

 

「スーバルー!」

「ギン姉っ!1ヶ月ぶりだけど元気だった?」

「もちろんよ、スバルも元気そうで何よりだわ」

 

二人の周りがキラキラ輝いているような、そんな錯覚を覚えるほどに、仲睦まじい様子だった。

 

「そうそう、こちらがランスターさん」

「………ど、どうも」

「はじめまして。スバルがいつもお世話になってます」

「いえ、こちらこそ…」

 

仲の良さそうな二人を見て、ティアナは場違い感を抱いており、何とも居心地が悪そうだった。

 

「まぁ、立ち話もなんだし向こうに行ってアイスでも食べない?」

「行く行く~」

「は、はい…」

 

◇◇◇

 

「はぁ、街に出ては来たが何するかな…」

 

ジルヴェスは、久しぶりに街へ来たからただのんびり歩くだけでもいいか、とボーっと歩いていた。

     ドンッ

 

「おい、どこ見て歩いてんだよ」

「す、すいません……」

 

すると、少年が見るからにアレな人とぶつかって絡まれているのが目に入ってきた。

 

「あのさぁ、悪いと思ってんならやること、分かってるよなぁ?」

 

しかも、そいつはなかなかにゲスかった。

 

「え………」

 

少年は恐怖で何も出来ないでいた。

 

「おいおい、人にぶつかっておいて謝るだけか?」

 

ゲスな不良は、さらに脅しをかけていた。

しかも、道行く人びとは厄介事は勘弁といった様子で、申し訳なさそうな表情を浮かべながらも見て見ぬふりをしている。

 

「………あいつは悪いやつだよな。だったら、まぁいいか…」

 

「まぁ、いいか」それは何に対しての譲歩だったのか、それは分からないが、ジルヴェスはそうとだけ呟いて、その厄介事に向かって行った。

 

「おい、そろそろやめろよ」

「あ?なんだ?」

 

ジルヴェスが少年と不良との間に割って入っていくと案の定ジルヴェスも絡まれた。

 

「子供相手に何をやっているんだ?」

「うるせぇ、お前には関係ねぇことだろ。つか、ガキは黙ってろよ」

 

不良は、ジルヴェスが自分より年下だと見ると、ジルヴェスに対しても高圧的に出た。

 

「ぶつかったって言うけどな、お前の不注意でもあるだろうが、それを相手が子供だからって高圧的に出るってのはおかしな話じゃないか?」

 

だが、ジルヴェスは毅然とした態度で、あくまで自分のペースを守って反論する。

 

「……くそっ……」

 

不良は頭が悪く、何も言い返せないのか、そのまま去って行こうとする。

 

「おい、待てよ」

 

だが、ジルヴェスは不良の肩を掴んで呼び止めた。

 

「まだ何か用かよ?」

「ああ。この子に謝れ」

「は?」

「聞こえなかったか?この子に謝れと言ったんだ」

 

そう言いながら肩を掴む力をさらに強めていく。

 

「なんで謝んなきゃならねぇんだよ。あと、肩痛ぇんだよ、離せ」

 

不良はジルヴェスの手を振りほどこうとするが、ガッチリ掴まれていて外れない。

 

「なんでか、だと?それはお前がやり過ぎだからだよ。それとな、痛くしてんだから痛くて当然だ」

 

ジルヴェスは何一つ悪びれることなく言い放った。

 

「………悪かったよ」

 

不良は、ジルヴェスの目を見て敗北を認め、少年に謝罪の言葉をかけ、逃げるように去って行った。

 

「君、大丈夫だった?」

「はい、大丈夫です」

 

去って行くのを見て、ジルヴェスは絡まれていた少年に視線を向け、声をかけた。

 

「それじゃあ、気をつけるんだよ。周りに気を配られてなかった君も悪いんだから」

「はい…。ありがとうございました。お名前教えていただけますか?僕はエリオ・モンディアルと言います」

「俺は、ジルヴェス・クラインだ。じゃあな」

 

そう言って、ジルヴェスはその場をあとにした。

 

◇◇◇

 

「いつも、スバルが迷惑かけてるみたいでごめんなさいね」

 

スバルが3人分のアイスを買いに行っている間に、ティアナはスバルの姉、ギンガに話しかけられた。

 

「い、いえ…妹さん、優秀ですよ。最年少組ですけどしっかりやってますし…それに最初はダメでしたけど今は個人成績も上位の方ですから」

 

日頃なんやかんやと言いながら、内心では、スバルの頑張りも認めているティアナは、相手がスバルの身内ということもあって、スラスラとスバルに対する評価を語る。

 

「ホントに?いや、心配してたのよ。だけど、安心ね…………ランスターさん、ご家族は?」

「…………いえ、私は独りです。両親は生まれてすぐ、育ててくれた兄も3年前に……」

「ごめんなさいね…」

 

話を広げようとして、不覚にも辛い身の上話をさせてしまったことにギンガは謝る。

 

「い、いえ。お気になさらず。魔法学校も全寮制でしたし、兄の遺してくれた遺族補償もありますから……」

「ということはお兄さんも局員なの?」

「はい…」

「憧れだった?」

 

そう訊くギンガの瞳は、まるで妹に対するような、そんなとても優しいものだった。

 

「はい、今もです」

「そうなんだ。憧れや目標は大事よ。大切にしてね………ところで、スバルに聞いてるかな。スバルの憧れの人のこと」

「はい……高町二等空尉、ですよね?」

 

でも、どうして、今その話を?と、ティアナは思った。

 

「……そう。あの子ね、去年の空港火災に巻き込まれて、空港のかなり奥でひとりぼっちですごく絶望的な状況で……そこで出会ったんだよ、憧れと理想そのままの人と。それが高町二尉ってわけ。そして、出会ってから今より強くなりたい、局員になるんだって言って魔法もシューティングアーツも大急ぎで覚えて今のあの子がいる」

「………どうりで飲み込みが早いわけですね」

「あら、ごめんなさいねこちらばかり喋っちゃって。ランスターさんの話も聞きたいな」

「は、はい…でも大したことはないですよ?」

 

そうは言いつつ、ティアナもギンガと話をするのが楽しくなってきたのか、それとも久しぶりに素の自分で話をできる相手に会って嬉しいのか、それは分からないが、ティアナは自分からも話をするようになった。

 

◇◇◇

 

「さて、昼も食べたしどこへ行こうか。久しぶりにゲーセンにでも行くかな。けど、一人で行っても楽しくないしな……っと、あれは……」

 

ジルヴェスの向けた視線の先にはエリオがいた。

エリオは困ったような表情を浮かべながら、そこに立っている。

 

「また会ったね。エリオは一人?」

「は、はい…………迷子になってしまって」

 

ジルヴェスが声をかけると、エリオは安堵したような表情を浮かべる。

 

「ホントに?ええと、どこに行きたいの?」

「い、いえ大丈夫ですから…」

 

別にジルヴェスに不信感を抱いているわけではないが、さすがに、今日会ったばかりの人間の手を煩わせてしまうことにエリオは幼いながら抵抗があった。

 

「別に遠慮しなくていいよ」

「そ、そうですか?じゃあ、お願いします」

 

ただ、困っていたこともじじつでエリオは遠慮しつつジルヴェスを頼ることにした。

 

「いや、構わないよ。少し時間を持て余していたしね。で、どこへ向かえばいいのかな?」

「はい、実は保護責任者の方と待ち合わせているのですが────」

 

◇◇◇

 

「はい、お待たせ~」

 

スバルが3人分のアイスを持って2人の待つベンチに戻ってきた。

 

「ねぇスバル!ランスターさん凄いのよ!幻術系が使えるんだって」

「いえ、まだ練習中です!」

 

ギンガの言葉を慌ててティアナは否定する。

 

「それでも凄いことよねぇ」

「うんうん!」

「スバルも見習いなさいよ。それに、リボルバーナックル大事にしてる?大切なものなんだから」

「当たり前だよ!」

 

お姉ちゃんは心配性だよ、と言ってスバルは笑っている。

 

「あのリボルバーナックルってそんなに大切なものなんですか?高価そうだとは思いますが…」

 

ティアナは遠慮がちに訊ねた。

 

「あれね、母の形見なの。母は両手に着けて使っていたんだけど───」

「今はわたしたちが片方ずつ。わたし右利き、お姉ちゃん左利き」

「そうなんですか」

「ちょっとしんみりしちゃったわね。ところで───」

 

ギンガの言う通り、少ししんみりとした空気を壊すように話題を変えた。

 

◇◇◇

 

「エリオくんの目的地はこの辺りかな」

「どうもありがとうございました!」

 

目的地まで案内してくれたジルヴェスに、エリオは元気よく感謝を述べた。

 

「いやいやどうも。ところで、保護責任者の方ってどんな人?」

 

ジルヴェスは謙遜しつつ、エリオの保護責任者が気になり訊いてみた。

 

「綺麗な人ですよ…………あっ!フェイトさ~ん」

 

エリオはその保護責任者を見付けたのか、大きな声でその人のことを呼んだ。

ジルヴェスはエリオの呼んだ名前に反応を示した。

 

「(今、『フェイトさん』って言ったか?あの『フェイトさん』か?いや、名前が同じってことも………)」

 

ジルヴェスがそんな、考え事していると、「フェイト」さんがやってきた。

 

「エリオ~。待った?」

「いえ、今来たところなので…」

「そう。よかった。ところで、こちらは?」

 

そして、ジルヴェスを見て、エリオに訊ねた。

 

「こちらは僕をここまで案内してくれた、ジルヴェスさんです」

「そうなの?ありがとうございます」

「いえ。自分はジルヴェス・クラインです。失礼ですが、エリオくんの保護責任者というのは、あの『フェイトさん』ですか?」

 

ジルヴェスは実際に本人を見て確信はしたが、一応確認をしてみた。

 

「あの、っていうのがわからないけど私はフェイト・T・ハラオウンです」

 

そして、ただ本人の口から肯定の言葉を聞くだけだった。







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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