リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
そうこうしている内に昇格試験当日。
「いよいよだね」
「そうね。あんたローラーの整備ちゃんとやってきた?結構無理させてんだから……」
「うん……大丈夫だとは思うんだけど……」
心配そうに訊いてくるティアナに対して答えるスバルであったが、自分でもそのことを気にしていたのか、尻すぼみに声は小さくなり自信なさげなようであった。
「何も起きないことを祈るわ」
はぁ、とティアナはため息を一つ吐いた。
『そろそろ試験開始ですよー。準備は出来てるですか?』
すると、リィン扮する試験官が画面越しに声をかけてきた。
「「はいっ」」
『では、試験の説明をするです。まず───』
「リイン、ちゃんと試験官やれとるかな?」
はやては心配そうにそわそわしながら呟く。
「リインなら大丈夫だよ、はやて……それで、あの子たちがはやてが目をつけてる子たちだよね?」
それをフェイトが落ち着かせるように声をかけた後、浮遊カメラからの映像を見ながら確認する。
「そうや。なのはちゃんとヴィータが陸士部隊で聞いてきてくれた限りでは結構能力あるみたいよ。ただ、直接見ないと分からないってなのはちゃんが……」
「そうだね。結局、実際に見てみないと分からないからね」
お互いにかなり若いがそれぞれの現場で第一線に立つ経験から自分の目でみた情報の重要性をよく分かっていた。
「そろそろだね。障害の設定お願いできる?レイジング・ハート」
【All right】
「ありがとう。………リイン」
『はいですっ』
「そろそろ始めよう」
『わかったです』
リィンはそう答えて端末を操作する。
カウントが始まった。
3、2、1
スタートっ!
2人はここまでは順調に来ていた。でも、スバルはまだ油断できないということをしっかり理解していた。
「ティア、ここは任せて!」
「分かった」
「…………《ディバインバスター》ぁぁぁ!」
しかし、これでここのターゲットは全部撃破した、とティアナは少し気を抜いてしまった。
「危ないっ!」
「えっ?」
まだ1機残っていたのだ。それを間一髪、ティアナは破壊した。したのはいいのだが……
「ティア!大丈夫!?」
ティアナは足首を抑えてうずくまっている。
ティアナはターゲットの攻撃を避けると共に攻撃を仕掛けていた。ただ、その動きには若干の無理があった。だから、スバルはティアナが捻挫したように思えて心配そうに彼女の表情を窺う。
「大丈夫、そんなに慌てないでよ。………っ!」
そう突っぱねるように言うティアナだったが、痛みが走ったのか、顔をしかめる。
「ダメだよ動いちゃ!足ケガしたんでしょ?試験官に言って────」
「うるさいわね!ここでリタイアして、それであんたはいいの!?」
ティアナはスバルの言葉を叫んで遮る。
「でも………」
「あたしは嫌よ!」
ティアナはすごく怒っていた。
けれど、それはスバルのせいではない。
彼女はここで怪我をしてしまった自分自身に憤りを感じている。それだけティアナという少女は自分に厳しかった。
だから、スバルはどんな言葉をかけたらいいか分からなかった。
そして、情けない、悔しい、そんな想いがスバルの胸を一杯にさせていた。
「…………」
「ごめん、言い過ぎたわ……」
少しの間黙ってしまったスバルにティアナは謝る。
「ううん、気にしてないから。けど、どうする?幸い残りわずかではあるけど……」
「あたしに考えがある」
そして、そう言ったティアナの瞳はまだ生きていた。だから、スバルは精一杯やれることをやろうと思った。
それしか今の彼女に出来ることはなかったから。
「フェイトちゃん、今のところ気になることあるかな?」
「ううん、連携もしっかりとれてるし、ターゲットもミスなく破壊してるから。少なくとも私から見て目立ったところはないかな」
「そうやな……」
2人とも上空のヘリで試験の様子を観察していた。
「………あっ」
映像を見ていたフェイトは急に声を上げた。
「どないした?」
「いや、流れ弾がカメラに当たったみたい」
「流れ弾がカメラに当たったのかな?」
【Yes】
「そう…一応、移動しておこうか。バリアジャケットもお願い」
【All right.Set up】
そう言って、なのははトンと床を蹴って空へ翔出した。
「大丈夫かな、あの子たち。何もなければいいんだけど……」
試験会場内に設置していた浮遊カメラに流れ弾が当たり映像が途絶えた。
その事実にフェイトは不安を感じているようだった。
「映像が見えへんから分からんけど、次のアクションがあるまで待つしかないよ」
はやてはそう言ってフェイトを落ち着かせる。
「………ほら、出てきた。あれは…ランスターさん?じゃあ、もう一人はどこや……?」
そしてすぐに姿を現す。けれど、現れたのはティアナだけでスバルは目視出来なかった。
「それにあれじゃ、ターゲットからの攻撃を受け………って、幻術!?じゃあ、本人たちはどこ?」
「………来たよ、はやて。ナカジマさんが」
じっと画面を見ていたフェイトが、視線は画面から逸らさずにはやての呟きに答えた。
「よし……」
スバルはティアナの作戦通りにターゲットの注意を幻のティアナに向けて、その間にターゲットに近づくことが出来て一先ず安心する。
「後は破壊するだけ……でも、あんまりティアに負担もかけれないし……時間がない……」
一息つくようにスバルは呟く。
(スバル、もうもたないわよ)
(分かってる)
そこへティアナが念話で話しかけてくる。それにスバルも答える。
「《ディバインバスター》っ!………はぁはぁ」
スバルは一撃で破壊して、息も上がっていた。
(……撃破したよ。あとは、ゴール地点に行くだけだけど、時間も結構危ないから急ごう)
(そうね)
スバルはティアナの元に向かって、彼女を背負い走り出した。
「無事に最終関門も抜けてゴールに行くだけかな。けど、あのまま突っ込むのは危ないよね。レイジングハート、衝撃緩衝をお願いできる?」
【All right】
なのはは試験を受けるスバルたちを上空から見ながらそう呟き、魔法を発動した。
「ねぇスバル」
「何?ティア」
「何って、このまま突っ込んだら危なくない?」
全力で疾走し、周りの風景がものすごい速さで移り変わる中、ティアナはいたって冷静に呟いた。
「あっ、あぁぁ!で、でも速度落としたら時間間に合わないし………」
言われて気付いたスバルは途端に慌て出す。
「そんなこと言ってる間にもうすぐそこじゃない!どうすんのよ!」
壁に激突することを覚悟して突っ込むと同時に2人とも目を瞑ってしまった。
けれど、スバルは衝撃はあったが壁に激突してはいない気がしていた。
どうしたんだろうと思い見渡すと、緩衝魔法が発動していた。
「(……誰がこの魔法を?)」
スバルは心で呟いた。
「ケガはないかな、スバル?」
「………えっ?なのは、さん………?」
そして、スバルは目の前に降り立ったなのはを見て唖然としていた。
「うん、4年ぶりかな。また会えてうれしいよ」
「…………あっ。…う、うぅ……」
本当に嬉しくて、スバルの目からは涙が溢れ出てきた。
「でも、私のこと覚えててくれたんだ。それに、『バスター』見てちょっと驚いちゃった」
スバルが泣き止み落ち着くのを待って、なのはは口を開いた。
「いえ!『バスター』を勝手に使ってしまってすいません!」
スバルはというと恐縮してしまってまともに話せそうではなかった。
「別に、そんなの全然構わないよ。私の魔法ってわけじゃないし」
「そうですか?でもホントに嬉しいです。……あのときから私の憧れだったので」
「うん、うれしいよ。そう思ってもらえて」
そう言うなのはの瞳は優しい温もりで溢れていた。
「ケガを治すですよ」
「ありがとうございます…」
一方その頃、ティアナはリィンに挫いた足首の治療をしてもらっていた。
「……なのはさんのこと、ランスター二等陸士は知ってるですか?」
そして、リィンは唐突にそう言葉をかけた。
「ええ、一応は。本局武装隊の『エースオブエース』とか……スバ……ナカジマ二士の憧れの人ですので、彼女からよく話を聞いていました」
「そうですか…」
リィンは納得、と頷いた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m