リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
訓練も無事に終わり、シャワーも浴びてすっきりした4人は食堂にいた。
「疲れた~」
そう言いながらスバルは机に突っ伏し、グテーっとしている。
「スバル、さっきも言ったけど、もうあんな危ないことしないでよ?」
「ナカジマさん何されたんですか?」
心配そうに見詰めるティアナにエリオは興味津々といった様子で訊ねる。
「いや、何もしてな────」
「このバカ、落下する勢いを使ってガジェットを殴ったのよ」
スバルの否定の言葉虚しくティアナにばらされてしまった。
「ティアぁ、エリオたちにまで言うことないじゃん……」
「す、すごいですね………」
エリオは引いた、わけではないがティアナの告げた事実に平静を保つことは出来ていなかった。
「ほらぁ、変な人だと思われてるじゃん」
「いや、単に呆れてるだけだと思うわよ」
そう言うティアナ自身呆れ顔だった。
「い、いえ、そういうわけでは…」
「まぁ、どちらでもいいけどスバル、ホントに今度から気をつけなさいよ」
「はーい」
ティアナの釘を刺すような言葉にスバルは大人しく頷いた。
「今日の様子を見てどうかな、なのはちゃん?」
訓練が終わるとすぐに、はやてはなのはにフォワード4人の感触を訊ねた。
「そうだね……みんな育て甲斐があるって改めて思ったかな。みんなそれぞれに長所があって、それが今日見れたよ。ティアナは私に言われなくても全体を見て指示を出してた。以前から指揮の練習をしてたのかも。それに、射撃スキルも高いね。ただ、なんか思い込み癖があるかも。そして、スバルはやっぱり頑丈だね。ときどき予想外の行動をしてハラハラするけど、なんだかんだその頑丈さとか思いきりのよさでカバー出来てる。エリオは魔力変換資質を上手く使えてるし、キャロは召喚魔法がいいね」
はやてに訊かれて次々に口を突いて出た言葉は、どれも高評価なものだった。
「そうか。実際に出動するならいつくらいからなら大丈夫やろ?」
「うーん、どうだろうな…………あんまりはっきりしたことは言えないけど1週間くらいあれば大丈夫、かな」
「………………じゃあ、ジルヴェスのやつも間に合うか……」
はやては、なのはに聞かれないようにぼそっと呟いた。
「はやてちゃん、何か言った?」
けれど、言葉は聞かれなかったが呟いたことは聞かれたのか、その内容については訊かれてしまった。
「ううん、何でもあらへんよ。せや、来週あたりにもう一人のフォワードが来るはずやから」
「そうなの?そのもう一人のフォワードって誰?………って聞いても教えてくれないんだよね……」
「まぁな……せやけどちゃんとした奴やから安心してもらって大丈夫よ」
「わかったよ。でも、あんまり隠し事はしてほしくないなぁ」
ちょっとだけふて腐れたように頬を膨らませて、なのははそう言った。
「ははは、ごめんなぁ。気ぃつけるよ」
「それにしても二人ともすごいね」
「「そうですか…?」」
それにしても、スバルの話は唐突であった。
エリオとキャロも何のことを言っているのか理解していないまま言葉を返す。
「うん、そうだよ。エリオは自分の資質に合った魔法を取り入れてるし、キャロは無機物操作に召喚魔法が使えるじゃん。まだ小さいのにすごいなって」
「ありがとうございます。でも、ナカジマさんもすごいですよね」
「む、なんかバカにされてる気がする」
「そりゃそうでしょ、実際バカにしてるんだから」
ティアナは思わず、スバルをイジるような相槌を打っていた。
「そんなことないですよ。純粋に体が頑丈なのがすごいと思うんです」
「そんな無理して褒めることないわよ」
「ティア、さっきから酷すぎるよ」
よよよ、とスバルは泣くフリをする。
「ナカジマさんとランスターさんって仲が良いんですね」
そんなスバルたちの様子を見て呟いたエリオに対し、スバルは満面の笑みで即答した。
「うん!当然だよ」
「即答なんですね。そう言えば、ランスターさんのさっきの射撃、かっこよかったです。あれ、AAランク相当ですよね?」
そこでエリオは思い出したのか、ティアナにも話題を振る。
「まぁね……」
「ティアどうしたの?褒められてるのに妙に歯切れが悪いじゃん」
「あんなのできて当然じゃない」
「……ごめんね、二人とも。ティアがこんなに無愛想で……」
スバルは笑いを
「ちょっと待ちなさいよ!誰が無愛想よ、誰が」
「誰ってティアが」
動揺することもなく堂々とそう言うのは、この3年ほどの付き合いの中で身に付いたものか。
「何ですって!?」
「だってぇ───」
「あの……ナカジマさんそろそろ止めた方が…」
まだ、辛うじてじゃれあいの雰囲気は残っていたものの、良くない空気が漂ってきたのを敏感に察知したキャロがそう言った。
「そう、それ!」
「え!?………何ですか?」
スバルは急にまた大きな声を上げた。
「ナカジマさんは止めてほしいな。私のことはスバルで良いよ」
「「わかりました、スバルさん」」
エリオたちは言われて、呼び名を変えた。
「じゃあ、あたしのこともティアで良いわよ。スバルはスバルさんって呼ばれるのにあたしはランスターさんって呼ばれるとあたしがいけすかないやつみたいじゃない」
「そんなことないと思いますけど、分かりました、ティアさん」
「ティアも素直じゃないなー」
にひひ、と笑みを浮かべてティアナの方を見やる。
「ほっときなさい」
ティアナは照れからそっぽを向いてしまった。
◇◇◇
ジルヴェスはジークヴェルトに呼ばれて部隊長室に来ていた。
「ヴェルさん、どういった用でしょうか」
内心では忙しいのだけど……、といったようなことを考えていたが、もちろんジルヴェスはそんなものを表に出すようなことはしない。
「3つ話がある。まず、最近ジルヴェスの追ってる事件の進捗はどうなっている?」
ジークヴェルトは上司としての真剣な表情を浮かべてジルヴェスに問う。
「ええ、そうですね……報告書で連絡している通りですが、当たり2割外れ8割って感じですかね」
ジルヴェスは若干疲れた表情を浮かべて、今の彼の心情をジークヴェルトに分かるようにしている。
「そうか。それで次の話だが、ジルヴェス、少し、そうだな、2日くらい休め」
「え?」
ジルヴェスは予想外の言葉に驚きを隠しきれずにいる。
「いやなに、お前ずっと休み無しで動き続けているだろ。上司としてあまり働かせ過ぎるのはまずいんだ」
「…………はい、分かりました」
ジルヴェスはジークヴェルトの言葉に一理あると納得し変に食い下がるようなことはしなかった。
「最後に、その休み中にちょっとおつかいを頼まれてくれないか?今少し手を離せなくてな」
「別に構いませんが…………」
果たして一体どんなことを頼まれるのか、とジルヴェスは思案顔をする。
「別にそう身構える必要はない。お前にとっても馴染みのあるような場所だ」
ジークヴェルトはわざわざ溜めてジルヴェスの興味を惹くような言い方をする。
「…………教会、というわけではないですよね……だとすると……ああ」
ジルヴェスは何事か思い至ったように呟いた。
「気付いたようだが、起動六課に行ってもらいたいんだ。部隊長の子狸に『この前の話は承けてやる』と伝えておいてくれ。そう言えばあいつは分かる。あとは、この封筒を渡してくれ」
そう言ってジークヴェルトはジルヴェスに小さめな封筒を手渡した。
「……分かりました……」
ジルヴェスはわざわざ自分を行かせる意味があるのかと思わなくもなかったが、いちいち訊いたところで答えを得られるとも思っていなかったからぐっと言葉を呑み込んだ。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m