リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第56話 初めて六課を訪れて

 

 

午後になって、ジルヴェスは約束通りに六課隊舎へ向かっていた。

その道すがら、一応、はやてに通信をいれた。

 

「こんにちは。ジルヴェスです。今、そちらに向かっているので2、30分で着きます」

『そうか。待っとるで』

 

そう答えるとはやての方から通信を切った。

 

「……行くなら手土産の一つでも持って行くべきだよな……あとは、ティアたちにそれぞれが好きなもん買ってってやるか。んー、向こうのスタッフって何人いるんだ?わかんねぇ………ティアたちとはやてさんたちの分だけで大丈夫だよな…?」

 

六課の前線メンバーは皆、ジルヴェスの個人的な知り合いなのだった。

結局、ティアナたち4人とはやてファミリー6人、なのはとフェイトの分だけを買って行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「荷物、重っ」

 

手土産を持って隊舎へ着いた。

隊舎の中に入るとそこにはリィンが。

 

「ジルヴェス、こっちですよー」

 

そして、リィンに連れられて部隊長室へやってきた。

 

「失礼します」

「どうも。ご苦労さん。その荷物はどうしたんや?めっちゃ重そうやけど」

 

ジルヴェスが部屋に入るとはやては目敏く、彼の持つ荷物に言及する。

 

「これですか?お土産です。ティアたちとなのはさんたちの分だけですけど。あ、はやてさんの分はないですよ」

 

興味津々な視線をジルヴェスの手土産に向けていたはやてを見て、ジルヴェスは真顔を作ってそう言った。

 

「なんでや!うちだけ仲間外れなんか?……いや、これはあれか。好きな女の子についついちょっかいを出してまうって、冷たっ」

 

ジルヴェスの言葉が悪ふざけの範疇であることは分かりつつも抗議の声をはやては上げる。けれど、言葉を言い切る前に、はやては凍えるような寒さを感じた。

 

「次そんな冗談言ったら、凍えさせますよ?」

「すでにやっとるやん……」

 

ジルヴェスは目の笑っていない笑顔で釘を刺した。

はやてはというと、寒さから腕を擦りながらも突っ込みを入れていた。

 

「…………安心してくださいって、ちゃんとはやてさんの分も買ってありますから。そんな食い意地見せなくても………」

「そ、そんなわけないやろ!」

 

ジルヴェスのかけた鎌に、はやては見事にかかっていた。

 

「……図星ですか。まぁ、あんまりいじめると後が怖いんでここらへんでやめときます」

「そんで、今日はどないな用件で来たんやったっけ?」

 

はやては本題に入るようにジルヴェスに訊ねる。

 

「ええと、ヴェルさんからのおつかいなんですけど、まず、ヴェルさんが、この前の話は承けてやると言ってました」

「ホンマか!?」

 

はやては、ジルヴェスの告げた言葉にかなり食い付いているようだった。

 

「え、ええ…………自分はどんな話かは知りませんけどね」

「なんや、ヴェルさんはあんたに話しとらんのか?」

 

はやては意外そうな表情を浮かべて言葉を発する。

 

「え?俺にわざわざ伝える必要のある話なんですか?」

「あ、いや、ヴェルさんが話しとらんのならとりあえず今は気にせんでええ」

「そうですか、分かりましたよ」

 

ジルヴェスは、まったく、と呆れつつため息を吐く。

 

「で、後はこれを渡すようにも言われました」

 

ジルヴェスはそう言うと、ジークヴェルトに渡されていた封筒を取りだし、はやてに手渡す。

 

「おお、おおきに。ホンマ助かるわ」

「……とりあえず俺の用事は終わりましたね。正直ここまで来る必要はなかった気がしてます」

 

ジルヴェスは苦笑いを浮かべつつそう呟いた。

 

「ええやん。こんなかわええ女の子に会えたんやから」

 

そんなジルヴェスを慰めるようにはやてが声をかける。

 

「……………」

 

けれど、ジルヴェスはキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「何しとるん?」

 

そんなジルヴェスに声をかけるはやて。

 

「いや、かわいい女の子がどこにいるのか、と………」

「うちのことや!」

「え?」

 

はやての言葉に、ジルヴェスは人をバカにしたような顔でとぼける。

 

「え、やあらへんわ!恥ずかしいから何度も言わすなっ」

「女の子って、自分の歳考えて言ってくださいよ」

「カッチーン。今のはさすがに腹立ったわ。うち、まだ19やで。あんたと3つしか変わらんやないか。まだまだピッチピチの女の子やろ!」

 

さすがに、はやても堪忍袋の緒が切れたか、怒鳴ってしまっていた。

 

「だから冗談は顔だけに────」

「なんやと────」

「ジルヴェスもはやてちゃんもそこらへんで落ち着いてくださいです」

 

リィンはうっとうしいです、という言葉が聞こえてきそうな表情で止めに入った。

 

「リィン………」

「ジルヴェス、女性を年齢でいじるのは最低です!でも、はやてちゃんもはやてちゃんです。ジルヴェスの冗談にいちいち反応してたら日がくれるですよ」

「気をつけます……って、ジルヴェス笑うな」

「いや、ミニサイズのリィンに怒られてるのは………じゃあ、そろそろ戻ります」

 

反省したのか、緩んでいた表情を引き締めると席を立った。

まだ、笑い足りなそうではあったが。

 

「なんや、もう帰るんか?」

「なんですか、俺に帰ってほしくないんですか?」

「そういうわけやなくて、みんなには会わんでええのか?」

 

何だかんだ遊んでいる内にそこそこいい時間になっていた。もう少し待てば訓練も終わる頃だ。

 

「ああ、いいですよ。あんまり長く居るのも邪魔でしょうから」

「そんなことあらへんけどな。まぁ、あんたがそう言うんやったらそれでええよ」

 

はやてはそう言うと、気ぃ付けてな、と言い加えてジルヴェスを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なのはちゃん、今ええかな?』

「うん」

 

訓練が終わって、はやてはなのはを通信で呼び出していた。

 

『ほんなら部隊長室来てくれへん?』

「分かった」

 

そして、なのはが部隊長室へ行くとそこにはフェイトもいた。

 

「はやてちゃん、どうしたの?」

 

なのははわざわざこの3人で集まって話をするのは何か大事なことなのだろうと思い、はやてに訊ねる。

 

「うん?あ、はいこれ。食べて」

 

けれど、当のはやてがそう言って差し出すのはどこかの店のケーキ。

 

「どうしたの?これ」

 

それを受け取りながら訊ねるなのはにはやては答える。

 

「ジルヴェスが持ってきた。フォワードの子たちの分もあるから後で持って行ってくれるか?」

「いいよ。でも、ジルヴェスがね………でも、なんでここに来たの?」

「うん、それは私も気になるかも。あ、これ美味しい」

 

当然の如く疑問を呟くなのはにフェイトも同意している。

ただ、ジルヴェスの手土産を食べながらという緊張感ゼロのなか、話は続く。

 

「ほんまか?ちょっとくれるか?」

「いいよ。はい」

 

はやてはフェイトの切り分けたケーキを一口パクついた。

 

「おぅ、ほんまに美味いわ」

「……はやてちゃん、本題に───」

 

なのは的には自分たちの立場上あまり暢気にしている場合ではないと考えているから早めに本題に入りたがった。

 

「なのは」

「ん?」

 

なのはは横からかけられた声に反応して、その声の主であるフェイトの方を向く。

 

「はいあーん」

「あーん……もぐもぐ……本当だ、美味しい」

 

そして、フェイトの差し出すケーキを思わず食べてしまう。あれだけ本題に入るように急かしていたというのに。

ただ、そうしてすぐになのはははっと我に返った。

 

「……じゃなくて、はやてちゃん、本題に入ってよ」

「そうやったな。まぁ、この手土産と関係するんやけど、もう一人のフォワードっちゅうのがジルヴェスなんよ」

「ふぅーん……………えっ!?今なんて?」

 

はやてがこともなげに言ったものだから、なのはは危うくその事実を流してしまうところだった。

 

「せやから、ジルヴェスがもう一人のフォワード。まぁ、ホンマのこと言うとちょっとちゃうんやけどな」

「……そうだったんだ。でも、言われてみればそんなに意外でもないのかも。ジルヴェスは古代ベルカの使い手で実力も十分だし、何よりはやてちゃんがずっと隠してたのにも納得だよ」

 

なのはは少しばかり非難の色が入った目を向けていた。

 

「隠してたって、サプライズや、サプライズ。せやけど、今日来たってゆうんは偶然のことやで?急に昨日あいつの方から連絡してきたんやから」

 

はやては、そんななのはの視線はスルーして飄々としていた。

 

「いつから来るの?」

「そうやな……それが、まだ分からないんよ。まぁ、近い内には必ずこっちに来させるよ」

「分かった。ちょっと楽しみ」

 

そう言うなのはの表情は不敵な笑みというよりは無邪気な笑みであった。

 

「え?もしかしてなのはちゃん、ジルヴェスのことが………」

「そうなの?なのは」

 

はやての安直な冗談にフェイトも割とノリノリだ。

 

「違うよ~。私は最近ジルヴェスと戦ってないからどれくらいレベルが上がってるのか気になるんだよ」

「なんや、教導官として楽しみなんか。おもろないな」

 

言葉の通り、はやてはつまらなそうな顔をした。

 

「でも、ジルヴェス、この前に連絡とったときには六課に来るなんてこと言ってなかったのになぁ」

 

なのはは本当に誰に言うでもなく、無意識に呟いていた。

 

「なのはちゃん、それほんまか?」

「え、何が?」

「何が、ってジルヴェスと連絡取り合ってるってやつ」

「私、そんなこと言った?」

 

なのはの言葉にはやてだけでなく、フェイトも頷いていた。

 

「ごめん。覚えてないや。でも、連絡取ってるのは本当だよ」

「なんや、いつの間にか、めっちゃ仲良うなっとるやないか……って、この前にヴィータからそんな話聞いたような気がするわ」

「ヴィータちゃん、そんなこと話したの?ひどいな……でも、私よりもシャルの方が……まぁいいか……」

 

なのはとしては、はやてが言外に言っているようなことはないけれど、言葉通りの意味ならその通りであったから、そんな微妙な答え方をしてしまった。

 

「まぁ、今度ジルヴェスからも話を聞こう。でも、あのなのはちゃんが頻繁に連絡を取り合う、か」

「え、何かおかしい?」

「いや、なのはちゃんはそのままでええと思うよ」

 

はやてもフェイトも、からかったような意味での仲の良さが実際にあるとは思ってなかったが、ジルヴェスの話題で話をしているなのはが楽しそうだったから、まぁいいかな、なんて暢気に構えていた。







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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