リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第57話 動き出す歯車

 

 

 

 

「ヴェルさん、今いいですか?」

 

ジルヴェスは特捜隊の隊舎へと帰るとジークヴェルトを呼び止めた。

 

「ジルヴェスか。いいぞ、ちょうど俺の方からも話したいことがあったところだ」

 

ジークヴェルトはそう言って、部隊長室へと歩き始める。ジルヴェスは置いていかれないようにその後についていく。

 

「……さて、ジルヴェスからの話を先に聞くことにしよう」

 

部屋に着くと、ジークヴェルトは自身の席に座り、ジルヴェスにも自由に席に座るよう合図してからそう切り出した。

 

「では。今日六課に行きましたが、ヴェルさんは六課関連のことでしかも俺に関係のある何かを隠していませんか?少なくともまだ話していないことがありますよね?」

 

ジルヴェスはジークヴェルトの様子を窺うように表情を見ている。

 

「……さすがジルヴェスだな…………まさにそのことについて話をしようと思っていたんた」

 

ジークヴェルトはジルヴェスのことを褒めている。

対するジルヴェスはこれから続くジークヴェルトの言葉へと意識を向けているようだった。

 

「まず、単刀直入に言うが、近い内にお前には六課へ行ってもらう。理由は単純だ。お前の追ってる事件とあの子狸の追ってる事件は本質的に同じだ。子狸はガジェットへの対応とその原因でもあるロストロギア:レリックの回収を目的としている。そして、お前はガジェットの生産ラインへの打撃と『聖王』の複製(クローニング)を事前に阻止することを目的としている。お前ら2人のやってることは大元は同じだ。だから、お前に六課へ行ってもらい協力して捜査に当たってほしい」

「…………了解しました。ただ」

 

ジークヴェルトの話を聞いていたジルヴェスは少し考えてから頷くも、何かを言いたげにしている。

 

「ただ、何だ?」

 

だからジークヴェルトは彼に続きを口にするように促した。

 

「六課へ行くとなると、自分には何かしらかのリミッターを掛けられるということですか?」

「そんなことか。まずその答えからだが、リミッターは掛けない」

「ですが、自分は一応、空戦AAA+ですよ?」

 

ジークヴェルトから返ってきた答えにジルヴェスは戸惑っているようだった。

 

「ああ、もちろん知っている。お前が懸念しているのは、本局のエース3人娘にヴォルケンリッターたちを保有する六課には保有ランク制限に関して余裕がないということだろう?」

「ええ」

 

まさしくジルヴェスの言いたいことをジークヴェルトは言っていた。

 

「それに関してだが、何の問題もない。お前には六課へ出向してもらうわけじゃないからな」

「え…………?」

 

ジルヴェスはジークヴェルトの言っていることが理解できないようだった。

 

「出向ではなく帯同という形を取る。つまり、あくまでお前は特捜隊の隊員という扱いだ。そして、ジルヴェスは自分の担当する事件を追う上で六課と共同戦線を張るというわけだ。ほとんどの行動は六課に従う形を取るものの、ジルヴェスは特捜隊の隊員だから保有ランク制限を受ける対象にはならない。さらに言うが、この事件を追う上で、ジルヴェスの行動に関しては全て決定権をお前に委ねる。だから、これから六課に行ってからの行動について一々俺に確認を取る必要はない。事件の進捗に関しても子狸から報告を受けるから報告をしなくても構わない。何か質問はあるか?」

 

ジークヴェルトは一気にそこまで言い切ると質問の有無をジルヴェスに訊ねた。

 

「いえ、事情はよく分かりました。それにしても、規則の抜け道を上手く突いた良い手でありますね」

 

ジルヴェスはニヤリとした笑みをジークヴェルトに向ける。

 

「まぁ、人様を化かすのは狸の専売特許だからな」

 

そしてジークヴェルトもジルヴェスと同じように笑っていた。

 

「確かにそうですね」

 

2人は、狸呼ばわりされている当の本人が聞けば大層立腹するだろうことを言い合っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって管理局は無限書庫。

 

「お邪魔します!」

「やぁ、また来たんだね」

「はい!色々調べることがありますから!」

 

司書長を務めるユーノ・スクライアの目の前に一人の少女が居た。

 

「それにしても、シャルルは何を調べているんだい?調べている内容によっては僕も協力出来るからさ」

 

ユーノはこれまでにも幾度か繰返している台詞を口にする。

 

「いえ、これは私だけの問題なので……ユーノさんにはお世話になってますけど、お話は出来ません……すいません……」

 

しかし、これまでと変わらず、目の前の少女--シャルルはお断りの返事をした。

 

「そうか…………もう慣れて大丈夫だろうけど、書庫は場所によってはまだ未整理区画で危険なところも多いから気を付けてくれ。特に、シャルルが行くだろう『ベルカ』関連の区画はより危険なところだからさ」

「心配してくださってありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。心配要らないです」

 

心配そうに見詰めているユーノとは対照に、シャルルは心配無用と笑顔を浮かべている。

 

「それじゃあ、行ってきますね」

「ああ、また帰るときに声を掛けてくれるかい?」

「はい!」

 

シャルルはそう言って、書庫内を移動するためのポートへと向かった。

 

「…………シャルルは一体何を調べているんだ?」

 

ユーノはやはり気になるのか、シャルルがその場に居なくなってからそう呟いて思考を巡らす。

 

「なのはがシャルルを連れてきてからもう何年も経つし、それから今までにシャルルは何度もここに来てる。でも一度も僕の手伝いは頼まなかった。やっぱり何かシャルル自身の問題があるのか……」

 

大概ユーノもお人好しで、頼まれてもいないのに他人のことを心配してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ちがう…………これも違う……」

 

ユーノがちょっとした疑問に興味を誘われていた頃、シャルルは膨大な量の蔵書を前にあれでもないこれでもないと必死にページを捲っていた。

 

「…………あれは、ベルカの魔方陣だった…………それは間違いない……だから、ベルカ魔法に関する本を読めば()()()に近付ける」

 

彼女は何か自分に言い聞かせるように呟きを漏らしている。それしか出来ることがないから、今やっていることが正しいことだとどうしても思いたかったのかもしれない。

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

シャルルはあれから何時間も無限書庫の蔵書との戦いを繰り広げていたが、さすがに疲れたのかそれらを元あった場所に戻そうと顔を上げた。

 

「やぁ」

 

すると目の前には想定外の人物が居た。そもそも人が居ること自体が想定外なわけだが、そこにはユーノが立っていた。

 

「え……」

 

何で居るんですか?と言いたげなシャルルの瞳を見てユーノは苦笑して言った。

 

「シャルルが何を調べているのか気になったんだ。余計なお世話っていうことは分かってるけど、気になるとどうしようもないから。で、シャルルはベルカの魔法について調べているのかい?」

 

シャルルがまさに返そうと思い手に持つ何冊もの本を見てユーノは訊ねた。

 

「…………ちょっと違います…………私は人を捜しているんです……その手掛かりがその人が扱う魔法だけなんです」

 

だから、どれだけ時間をかけてでも調べきらないといけないんです!と彼女の瞳はユーノに訴えかけてきているようだった。

 

「だったら、少し調べるのを楽に出来るかもしれない。シャルルの見付けたいその魔法の方はどんなものなんだい?」

「…………きっと氷結魔法です……」

 

ユーノの穏やかながらも言い逃れることを許さない、そんな視線に負けて、シャルルは探している魔法の系統を答えた。むしろ、シャルル自身もそれ以外の情報を持っていないのだから当然のことかもしれない。

 

「そうか。なら、次に来るまでに、検索をかけられるようにしておくことにするよ。ただ、これだけの蔵書がある。だから、検索をかけて、氷結魔法だけを調べられるようにしても、手間がかかることに変わりはないんだけどね」

 

もしかしたらあまり意味はないかもしれない、ユーノはそのように言っていたが、シャルルとしては自身の目的に一歩近付ける気がして、ユーノの気遣いをありがたく感じていた。

 

「すいません、ありがとうございます……」

 

そして、シャルルは頭を下げて感謝の意を表した。

 

「別に、僕が勝手にやることだから気にしないでくれ」

「……はい。お邪魔しました」

「ああ、気を付けて」

 

ユーノはシャルルが帰っていくのを見送っていた。

 

「……ふぅ、さて、僕の方でも仕事をしようかな」

 

ユーノは内心、忙しくなりそうだと思いながら、それをちっとも不満には思っていなかった。







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m


更新に1日空いてしまいました、すいません。
また、日が空いてしまうかもしれませんがよろしくお願いします。
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