リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
第58話 初出動
「ヴェルさん、準備が出来たので六課の方に行くことにします。しばらくの間特捜隊を離れることになりますがよろしくお願いします」
部隊長室でジークヴェルトの前に立ち、そう言った。
「おう、頑張ってな。六課の試用運用が終わればまたこっちの仕事に戻ってもらうことになる。しかも、今だってお前単独で事件を追っているんだ、何の問題もない。それにな、俺は部下としてだけじゃなくてお前のことを心配してんだ。訓練校を卒業してからすぐ俺のところにお前を呼んだが、それは失敗だった気がしてな。俺らにはお前を
「……はい、ありがとうございます。では、失礼します」
ジルヴェスが何者たるかを知る人間だけが理解出来るやり取りがなされていたが、この場には本人とヴェルしかいない。だから、互いに意志疎通に問題はなかった。
そして、ジルヴェスはそんな自分のことを気にかけてくれるジークヴェルトを心からありがたく感じていた。
部隊長室で事務作業をしているとはやての元に通信が入った。相手はジルヴェスだ。
「なんや?」
『いえ、今そちらへ移動しているところですので一応連絡をと思いまして』
「そうか、そうやったな。ジルヴェス今日こっちに来るんやったな。忘れとったわ。ごめん」
てへっと、舌を出して謝るが、ジルヴェスにはガン無視されて、はやては何とも言えない微妙な表情を浮かべていた。正直、可哀想である。
『そんなことだろうと思ってましたよ。そっちに着く前にもう一度連絡しますね』
ジルヴェスは呆れ顔でため息まで吐いている。
「そうか。わかった。気ぃつ────」
はやてが「気ぃつけてな」と言おうとしたところでアラートが鳴った。
「ちょっといいか、ジルヴェス」
『はい』
「隊舎じゃなくて今から言うところに向かってくれるか?任務や」
一転して真剣な眼差しで指示を出す。こういった所を見ているとさすがは部隊長なのだと思わされる。
『構いませんが、他のメンバーとの連携をとる自信はないですよ?』
「構わん。あんたはうちの指示で動いてくれればええから」
『わかりました。すぐ向かいますので、市街地での飛行許可を』
「飛行申請承認や」
この言葉のすぐ後にはすでにジルヴェスは翔び出していた。
「(アラートが出た。これが私の、そして、私たちの六課としては初めての任務。緊張するけど、このためになのはさんの地獄の訓練をして来たんだ。だから自信を持って任務に当たろう)」
スバルは集合場所で次の指示を受けるまでの間にそんなことを考えていた。
『レリックを輸送中のリニアレールにガジェット接近中。Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型を確認』
六課にある本部からの連絡を受け、なのはが前線に対して指示出しをする。
「こちらも視認しました。スターズ1、ライトニング1で上空の制空権確保、スターズ3、4、ライトニング3、4でレリックの確保を行います」
「「「了解!」」」
その指示の後、それぞれ自らの担当に移動した。
「八神部隊長、任務の概要の説明を願います」
任務のため、いつも敬意を持っているのか怪しいジルヴェスも、はやてに対して敬語を使っている。
『リニアレールで輸送中のレリックを狙いガジェットが出現。上空は隊長2名が。レリックの確保は前方と後方に分かれてフォワード4名が担当。そして、ジルヴェスあんたはレリックが載ってる7号車に直行してくれるか?』
「直接レリックの確保に向かっていいんですか?」
『構わへん。ちゃっちゃと片付けてほしいんよ。』
「了解です」
ジルヴェスは飛行速度を上げた。
「目標のリニアレールってのはあれか!」
しばらく飛行を続けるとリニアレールに到着した。
すでにガジェットⅠ型は到着しており中への侵入を図っていた。
「結構な数がいるな。………おっ、みんなやってるねぇ。よし、まずはあいつらから始末しますか」
車両の外には10機のガジェットがいる。
「しかし、潰しても潰してもこいつらは湧いて出てくる」
ガジェットをまるでゴキブリのように表現するジルヴェスの言葉はなかなかに言い得て妙だった。
「…………ふぅ、いつも通りに行くか。《銀狼斬爪》!」
目の前の3機を狙った斬撃で狙われたガジェットは見事にスライスされた。
「この調子で残りもちゃっちゃと済ませるか……」
そう言うと、彼は直径5センチメートルほどの大きさの氷を4つ作った。
「大きさはこんなもんかな……………《アイスバレット》っ」
彼は手に持っていた氷を魔力で威力強化してからガジェットに向かって勢いよく射出した。しかし、そうして投げられた氷はガジェットを貫通することなく内部に留まった状態である。
「そして、これでとどめっと………《
と言ってガジェット内部の氷を一気に水蒸気に変えた。一瞬で1500倍以上に膨れ上がる「水」の衝撃に当然ガジェットが耐えられるはずもなく───
「…………それにしてもこの耐久性の面ではいつまでも変わらないのは何か理由があるのか……?」
──粉々になっていた。
それを見ながら、それもまたいつも通りの光景であり、ジルヴェスはちょっとした疑問に頭を悩ましていた。
「まぁ、今考えても仕方ない……とりあえず、残りを片付けるか」
彼は目の前の3機になったガジェットに視線を向け、一つ呼吸を入れた。
「……《水龍一閃》!」
そして、一瞬でそれらのガジェットを破壊した。
ジルヴェスは座標操作で車両内部に入った。すると
「くそっ、中にもう一機いたのか。意外と早いな」
車両内にはⅢ型がすでに侵入していた。
よく見てみると車両の側面に大きく穴が空いていて、そこから目の前の機体が侵入したことは明らかだった。
「けど、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇな。……《銀狼斬爪》!」
しかし、Ⅲ型の強化されたAMFでジルヴェスの攻撃は無効化された。
「ちっ、こいつは1機でもそこそこのAMFを張れんだったな……だったら、これでいくか……《
落下氷槍は、上空で氷の槍を作りそれを落とすという極めて単純な魔法である。とは言っても、魔力変換資質を持つジルヴェスだからこその技ではあるのだが。
そして、落ちてきた氷の槍は見事にガジェットを貫いた。
「これで今度こそ終わりだな」
周囲の魔力反応を窺い、敵性がないことを確認してから、レリックに意識を向ける。
「これか、レリックは……封印処理するか……」
そう呟いて、意識をレリックに向けるその刹那、敵性とはいかないまでも、こちらに近付く人間の気配を感じた。
「着いたわよ。レリックは……あれね。っ!そこの人、そのレリックをこちらに渡しなさい」
そして、その気配はついにその車両にまで辿り着き、ジルヴェスへと拳銃タイプのデバイスの銃口を向け、そのような勧告をしてきた。
「……そういうわけにもいかないのでね」
ジルヴェスは今にも吹き出しそうになるのを必死になって堪えて、芝居がかった口調で言い返す。
「何ですって?」
「まぁまぁ落ち着いて。でも、それは本当に危険なものだから」
彼女たちはそんなジルヴェスに気付くこともなく、説得しようとし続ける。
ジルヴェスは何だかおかしくなってきて、そのまま、移動魔法で車両を後にした。
「こちらはジルヴェスです。応答願います」
封印処理を手早く済ませると、ジルヴェスは早速はやてに連絡を取った。
『こちら部隊長八神です。どうぞ』
「レリックの確保、完了しました。それでどこに向かえばいいですか?」
とりあえずは任務を遂行したことからか、はやてに対する口調がいつも通りに戻りつつある。
『そのまま、上空で待機中のヘリまで運んで、その後は上空制圧の補佐とフォワード4名の援護でもしておいてくれるか?』
「了解です。つまり適当にガジェット潰せばいいんですね」
『せやけど、なるべくフォワード4人には自力でガジェットを倒させてもらえるか?』
はやては何やら腹心があるのか、お願いという形を取った指示を出した。
「分かりました。でも、フォワードの方は何もしなくて大丈夫ですよ。もう終わってるみたいですから。それと、なんか面白くなりそうな予感がします」
ジルヴェスは笑いながらはやてにそう言った。
『え?あ、了解や』
はやては、ジルヴェスの様子に違和感を覚えつつもとりあえず返事をした。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m