リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
任務は無事に終了した。
「ジルヴェス、今ええかな」
『はい。部隊長室に行けばいいですか?』
今は夜の自由時間であるが、ジルヴェスは早々にはやてからの呼び出しをくらい、隊舎内を部隊長室に向けて歩いていた。
「………そうやな」
『了解です』
そしてすぐにジルヴェスは目的の部屋に着いた。。
「失礼します」
「どうぞ」
「………それで話って何ですか?」
だが、何で呼ばれたか分からないのか、それともとぼけているのか、何にしても早く本題に入るように急かした。
「いや、大したことやないんやけどな、あんた任務のとき何やっとったんや?」
「何ってちゃんとガジェットをぶっ壊して、レリックを回収してたじゃないですか」
ジルヴェスは、「何か間違ったことしましたか?」とでも言いたげだった。
「まさに、そこや。レリックを回収するときに何か変なことしたんとちゃうんか?」
「何か、って何ですか?」
「それは知らんよ。ただ、ティアナがすんごい申し訳なさそうな顔しながらレリックを奪われました、とか言ってきたかと思うたら、今度はあんたからレリックを確保したっちゅう連絡がきたんや」
訳が分からんよ、とはやてはため息を吐く。
「ああ」
ジルヴェスはそこでようやくはやての言いたいことが分かった気がして、声を上げる。
「何か知っとるんか?」
「いや……ちょっと面白そうだったので、俺ということを名乗らずにレリック持って逃げてみたんですよ」
ジルヴェスはあはは、と笑いながら答えていた。
「……はぁ…………もしかして、さっき言うとった『面白くなりそうです』ってのはそのことか?」
はやては心底呆れたような表情でジルヴェスのことを見ていた。
「だって、ティアとスバルは俺って気付かないんですよ?だから、ちょっとしたいたずらしたっていいじゃないですか」
「良くはないやろ…………」
はやては再びため息を吐く。
「それに、あの場でスバルとティアが俺に気付いてたらそこそこ大騒ぎしてたと思いますよ。けど、レリックの封印処理とかしなきゃいけないじゃないですか」
「なんや、まともなことも考えとるんやな……」
大変に意外だという顔をはやてはしている。
「そうですよ………俺を何だと思っていたんですか……」
「いや、いつもうちをイジって遊んでる能天気なアホか何かかと……」
仕返しとでも言いたげに嫌味を言うのだが、ジルヴェスには堪えていなかった。
「そんな認識だから何時まで経っても小狸って言われるんですよ?」
それどころか、さらにジルヴェスにからかわれる羽目に。
「ほう?言うにことかいて、何を言い出すかと思えば、あんたいい度胸しとるな」
「いや、落ち着きましょう?」
言った後に言い過ぎたと思ったが、すでに後の祭り。今さら謝っても意味はない。
「イライラさせとる張本人が何言っとるんや!ホンマうち怒ったで!覚えておき」
その後、はやてがなのはに頼んで、ジルヴェスの訓練メニューを密かに厳しくしたことは言うまでもない。ただ、そのメニューを苦もなくこなしたジルヴェスは恐ろしいとすら思える。
「改めて隊舎を訪れたらすぐにはやてさんに捕まったからな。ティアたちにも挨拶に行かないとな」
そう言って、部隊長室から出たジルヴェスはフォワード4人がいそうな食堂へと向かった。
「お、いたいた」
そして、思った通り4人とも食堂で食事を摂っていた。
「おーい、ティア」
「ん?……っ!……あら、ジルヴェス?どうしてここに?」
ジルヴェスの姿を確認したとき、ティアナは動揺から少し思考が止まってしまったが、数秒後には平然とした様子でジルヴェスに対応していた。
「え?ジルヴェス?ホントだー」
「ジルヴェスさんお久しぶりです」
「お久しぶりです」
ティアナ以外の3人は嬉しいことがよく分かる笑顔を浮かべていたことから、いかにティアナが素直になれないかが窺えることだろう。
「あぁ、みんな久しぶり。で、なんでここにいるかって?それは俺もここに配属されたからだな」
「え?ホントに?」
「ホントホント。さっきの出動のときも実はいたんだよな。リニアレールの中央の方で暴れてた……まぁ、レリックはしっかり保護したから問題なしだ」
親指を立て笑顔を浮かべるジルヴェス。
「気づかなかったです…」
「じゃあ、あそこに居たのってジルヴェスだったの!?」
スバルはそして、「どうして教えてくれなかったの?」と言い加える。
「いや、2人とも気付かないから、ちょっと面白そうなことしたくなって」
「全然面白くないよ」
「そうね、あたしたちは本気であのレリックを持って行かれたと思ったんだもの」
「……すまん」
2人の非難に満ちた視線に負けてジルヴェスは素直に謝っていた。
「それにしてもなんか、拍子抜けね」
「何がだ?」
ティアナが、はぁ、とため息を吐きながら首を横に振るからジルヴェスは何のことか気になった。
「いや、もう一人のフォワードってのが誰か教えてもらってなかったから誰だろうと思ってて。ちょっと不安だったのよね」
「ティア、そんなこと思ってたんだ」
へぇ、と呟きながらスバルはティアナに視線を向ける。
「スバル、あんたはちょっと黙りなさい」
ティアナはそんな視線が居心地悪くてついついそう言っていた。
「えー、だって………」
「それにしても、エリオもキャロもジルヴェスと知り合いだったのね」
まだスバルは何か言いたそうにしていたが、それをティアナは遮った。
「ええ、自分はフェイトさんを通して」
「私もフェイトさんと一緒に色々お出かけしたりして」
エリオとキャロは2人ともジルヴェスのことを慕っている感じが、話している様子から伝わってくる。
「へぇ。そうだ、ジルヴェス今日からもうここにいるわけ?」
「そうだな。そう言えば、実は先週もここに来てたんだった」
「…先週………あっ、あのケーキとかはジルヴェスが買って来てたやつ?」
ティアナはジルヴェスが先週も来ていた事実にすぐに思い至った。
「そう」
「言われてみれば見事にそれぞれの好物だったかも。ジルヴェスあんたよく覚えてるわね」
「それほどではないけどな」
と、ジルヴェスとティアナが2人だけで話していると、スバルが思い出したように呟く。
「ジルヴェスがいるってことはなのはさんとの模擬戦で勝てるかも!」
「いや、それはないだろ。だって相手は白いあ────」
『白い悪魔』と最後まで言い切らないで居心地悪そうに後ろを振り返るジルヴェス。
そこには、『白い悪魔』こと、高町なのはその人が立っていた。
「やっほー。ねぇ、ジルヴェス。なんか今聞き捨てならない単語が聴こえてきた気がしたんだけど、気のせいかな……?」
「そ、そうじゃないですかね……」
ジルヴェスはぎこちなく答えている。
「そう、気のせいならいいんだ。気のせいなら………もしホントなら後悔させるところだったよ」
そして、なのははただそれだけを言い残してとびきりの笑顔とともに不穏な言葉を残して去っていった。
ただ、その後ろ姿が心なしか上機嫌だったのはジルヴェスの見間違えではないだろう。
「なのはさんと会うのは久しぶりだな……やっぱり挨拶くらいはしないといけないよな……」
「へぇ、ジルヴェスってなのはさんとずいぶん仲が良いのね」
「何でティアナが怒ってるんだ?」
「別に?怒ってなんかないわよ」
「そうか。俺の気のせいってことだな」
微妙な反応のティアナだったが、ジルヴェスはそんなことは気にせずエリオたちと会話を始めた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m