リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第61話 模擬戦を前に

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……………やっぱり、朝っぱらから15キロも走るのは辛いな。飯食わなきゃやってられん!」

 

朝の日課であるランニングを済ませてそのまま朝練の集合場所へ向かうジルヴェス。

 

「喉乾いたし水飲も」

 

そして、そう言いながら、氷でコップを創り、そこに水を出し、どちらも魔力変換で創ったものだが、それを飲み始めた。

 

「あんたのその『能力』便利ね」

 

すると、横から彼に話かける人が。

 

「ティアか、おはよう」

「おはよう。ジルヴェスやっぱり早いのね」

 

「能力持ち」には普段厳しいティアナだが、ジルヴェスに対しては普通の対応をしている。

 

「まぁな。そういうティアの方が早いけどな」

 

2人とも互いのことをよく知っているからこその言葉である。

 

「そうね。あんたは早く来ると思ったからもしかしたら二人きりに………じゃなくて、ただあんたに負けるってのが嫌だっただけよ。まさか朝から走ってるとは思わなかったわ」

「ふーん」

「な、何よ」

 

ティアナとしては、先ほどの言葉を誤魔化せたと思っているようだからジルヴェスは気付かなかったことにした。

 

「いや別に」

「別にってことはないでしょ」

 

ただ、ティアナ自身はそんなジルヴェスの態度にも気付いていた。

 

「あ、ティアとジルヴェスだ。おはよう」

「スバルか、おはよう」

 

けれど、ティアナがジルヴェスを追及しようとしたとき、スバルがやって来た。

ジルヴェスはこれ幸いとスバルに言葉をかける。

そしてティアナは、ちっ逃げたわね、という顔で見つめていた。

 

「やっぱり、早いね」

「そうか?こんなもんだろ。つか、俺はさっきまで走ってたから起きたのはもっと早いぞ」

 

ちなみにジルヴェスは軽くドヤ顔だった。

 

「ジルヴェス、これから20キロは走らされるけど大丈夫?」

 

スバルは心配そうにジルヴェスに問いかける。

 

「マジか。けどまぁ余裕だろ」

「はぁ、まったく羨ましいわね、その体力」

「そうか?男女の差ってとこだろ。つか、二人とも相当体力がついたと思うぞ。それも訓練校のときとは段違いに」

 

まぁ、訓練校の頃から体力はあったけど、と言葉を続けた。

 

「そう?ありがとう」

「まぁ、ジルヴェスが言うならそうなんでしょ」

 

などと話をしているうちにエリオとキャロがやって来た。

 

「おはようございます」

「おはよう」

「ジルヴェスさんも早いんですね」

「まぁね」

「しかも、朝からランニングまでしてんのよ。これから走るってのに。まったく理解不能だわ…」

 

ティアナはそう言いながら首を左右に振って、さらに肩を竦める。

 

「本当ですか?すごいです」

 

エリオは素直な羨望を見せる。

 

「いや、ただバカなだけよ」

「ティア、その言い方はないだろ」

「ホントのことなんだからいいじゃない」

「ぐ……まさか朝練でも走るとは思わなかったんだよ。悪いか?」

 

ジルヴェスにしては珍しく拗ねてしまった。

 

「あれ、ジルヴェスが言い負かされてる?」

 

そこに現れたなのははそんな意外な光景に目を丸くしていた。

 

「なのはさん?」

「おはようございます」

「うん、おはよう」

「なのはさん、今日は早いんですね」

 

思ったよりも早い登場にスバルが訊いた。

 

「うん。なんかはやてちゃ…八神部隊長からジルヴェスのメニューを増やすように言われたから朝練のスタートを早くしようかなって思って」

「げっ………あの小狸、昨日のこと根に持ってやがる……」

「じゃあ、今日も元気よくいこう!」

「「「「はい!」」」」

 

とまぁ、ジルヴェスの訓練量が増えたものの他の4人よりも余裕な様子でこなしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、これで朝練はおしまい。午前はデスクワークをして午後また訓練。そこで、ジルヴェスと私とで模擬戦をします」

「望むところです」

 

なのはの言葉にジルヴェスは強気に返す。

 

「いやいや、ジルヴェス勝つ気でいるの?」

 

それを聞いていて、正気の沙汰とは思えない、という顔をしてティアナが訊く。

 

「そうだけど何か?やるからには勝たなきゃダメだろ」

「いや、あんたが強いのは知ってるけど相手はあのなのはさんよ?」

 

本当に正気なの?と重ねてジルヴェスへと訊ねるティアナ。

 

「だけどな、男には勝たなきゃならない戦いってものがあるんだ。そして、この模擬戦がそうなんだよ。まぁ、応援しててくれよ。俺が勝ってみんなにおもしろいもん見せてやるから」

 

それに対してジルヴェスは、へへん、と余裕の勝利宣言。

 

「ちょっと待って。ジルヴェス私に何させようとしてるの!?」

 

絶対の自信を持って面白いと言うジルヴェスに、何をさせられるのかと恐怖を感じ、なのはは慌て出した。

 

「それは負けてからのお楽しみですよ。それに安心してください。無理難題を突き付けるつもりはないですから。でもまぁ、なのはさんのファンがざっと1.5倍になります」

「全然安心できないよ!?」

 

けれど、更なるジルヴェスの言葉に不安がさらに増すことになるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのはさんが手玉に取られてる…」

 

ジルヴェスの言葉に慌てているなのはを見てスバルはそう呟いていた。

スバルから見ると、なのはは自分の成りたい憧れそのものであり、かっこよくて自分の手の届かない存在だという思いを持っていた。

けれど、ジルヴェスといるときのなのはは等身大のなのはで、自分たちとさして変わらない年頃の少女に見えて、親近感が湧いた。

 

「……ジルヴェス、本当になのはさんと仲が良いんじゃない……」

 

また、ティアナは何の気なしに呟きを漏らす。

 

「ティア、今何か言った?」

「別に」

「そう」

「何よ。ニヤニヤして」

 

返事をしたときに見たスバルの表情がニヤけたものに見えてティアナは追求するが、スバルはその言葉を否定する。

 

「べっつに~」

「ニヤニヤすんのやめなさいよ!」

「え~、だって……」

 

そんなやり取りも2人にとってはお約束みたいなもので、言い合っている2人とも楽しそうだったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に手加減しないんだからね!」

 

なのはは指を突きつけ、ジルヴェスに対してそう宣言した。

 

「分かりました。覚悟してます。俺が負けたら何すればいいんですか?」

「えっと…………」

「決めてないんですか?負ける気満々ですね」

 

口ごもるなのはを見て、思わず笑みが零れる。

 

「ち、違うよ…う~ん、負けてからのお楽しみ?」

 

なのはは苦し紛れに首を傾げながら言った。

 

「いや、疑問形で言われても………とにかく、決めてないってことでいいですね?」

「そ、そういう言い方も出来るね」

 

あくまで、そうじゃないんだよ、とでも言っているかのような言い方をなのははしていた。

 

「まぁ、負ける気はないので関係ないですけど」

 

そんな状況でもジルヴェスは負ける気はしていないという態度を崩すつもりはないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、ジルヴェスあんたデスクワークまで出来るわけ?」

 

午前の仕事、デスクワークを始めてすぐに、意外そうな表情を浮かべながらティアナが言った。

 

「ん?ここに来る前に居た部隊でもデスクワークやってたからな。少しやれば出来るようになるだろ?」

「そうねぇ、やれば出来るわよねぇ…………スバルとは大違いよ」

 

横目でスバルを見ながらティアナはため息を吐いた。

 

「だ、だって………というか、ティアとジルヴェスがすごいのであって、私がダメなわけじゃないもん」

「いやいや、あんたは遅すぎるわよ。作業もそれを覚えるのも」

 

スバルは言い訳しようとすると即刻ティアナに言い返されていた。

 

「……………」

 

ティアナの言うことに返す言葉もなくて、スバルは黙り込んだ。

 

「まぁ、それはおいて、どうした?」

「別に。ただ気づいたから言っただけよ」

「そうか…………スバル、大変だったら少し俺が片付けるけど」

 

こう言ったジルヴェスが、スバルには救いの神に見えて、その話に食い付いた。

 

「え!?ホント?助か───」

「スバル、あんたは自分の仕事くらい自分でこなしなさいよ」

 

けれど、ティアナがそれを許さなかった。

 

「でも、せっかくジルヴェスがやってくれるって言うんだからやってもらったっていいじゃん」

「それじゃ、いつまで経ってもあんたの仕事の処理速度が変わらないじゃないのよ」

 

ティアナは心配するような声音で言う。

 

「いーよ、別にさ」

「いいわけないわよ」

「えー」

「じゃ、さっさと片付けるわよ」

「う~ん、仕方ないからやるよぉ…」

 

しょぼんと肩を落としながら、スバルは再びカタカタとキーを打つ。

 

「それとジルヴェス、手伝うならスバルなんかじゃなくてエリオとキャロの方を手伝ってあげなさいよ」

「いや、それはしない」

「どうして?」

 

否定の言葉で即答されたのにティアナは驚いた。

 

「フェイトさんに言われたから」

「はい?」

 

答えの意味がよく分からなくて、ティアナは聞き返していた。

 

「いや、フェイトさんが、基本的に手助けはしないんだって。自分たちだけでどうにもならないことに出くわしたときだけ、助けるんだって言ってるからそれに従う」

「ふーん。フェイトさんに信頼されてるのね」

「そうか?確かにあの人は優しい、つか優しすぎるから俺のことも過大評価してるかもしれないな。でも、なんでさっきの話から俺がフェイトさんに信頼されてるって話になるんだ?」

 

ジルヴェスはいまいち流れを読めなくて、そう訊いた。

 

「それは…………どうでもいいじゃない。そんなこと。それより仕事を片付けましょう」

「あぁ、それな。終わったぞ」

「うそ?」

 

先ほどから驚きっぱなしのティアナだったがまたもや驚いていた。

 

「いや、ここで嘘ついてどうすんだよ」

「そ、それはそうね。というより、話しながら何かしてると思ったら仕事してたのね」

 

そう言えば、と呟く。

 

「終わってないなら手伝うぞ」

「い、いいわよ。ジルヴェスに手伝われたらなんか負けた気がするもの」

 

一瞬魅力的に聞こえて頼みそうになってしまったが、スバルの手前、甘えることは彼女のプライドが許さなかった。

 

「はいはい、そうですか……」

 

そう言いながらジルヴェスはこれこら何をしようか考える。







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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