リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
サンダーフォールの電気が、撃ち込まれた水に伝わりなのははそのまま感電。そして、感電の影響で墜ちそうになったところをジルヴェスに拾われた。
「あーあ、負けちゃった………しかも、びちょびちょだよぉ」
少しだけジルヴェスに非難する視線を向けながらなのはは呟く。
「いやぁ危なかった……まさかスターライトブレイカーを使ってくるとは………間一髪でしたよ。というか、どれだけガチなんですか」
まったく、とため息を吐く。
「にゃははは。だけど、まさか避けられるとは思わなかったよ」
「ま、裏技みたいなものなんで気にしないでください。さすがに
ジルヴェスはなのはに向かって笑いかけた。
「……っ!……な、何をすればいいの?」
そのジルヴェスの表情に不覚にもドキリとしてしまったが、それ以上に負けて何をすることになるのかが気になり、なのはは逆に落ち着きを取り戻した。
「それはですね、訓練が終わってからにしましょう。取り敢えず今は訓練をするときです」
「うぅ、やりたくなぁい………」
まるで子供が嫌々するように首を左右に振るなのはを見て、ジルヴェスは可愛いと思った。
「ほら、ティアたちだって待ってますよ?」
「うん……………って、あれ!?」
ここまで来て、なのははようやく自分の状況に気付いた。ジルヴェスはなのはを抱えて──いわゆる「お姫様だっこ」というやつでだ──みんなのもとへ降りようとしていた。
「お、降ろして。今すぐ!」
そして、恥ずかしさから手足をバタバタさせてなのははジルヴェスから逃れようとする。
「いや、今降ろしたらそのまま墜ちますよ?」
「と、翔べるもん」
なのはは翔べると言うが明らかに強がりだった。
「じゃあ無理矢理にでも抜け出てください」
「あう………」
「ほら、体動かないんですよね?だったら大人しくしていてください」
ジルヴェスは優しい声でなのはを諭す。
「恥ずかしいよぉ……」
結局、そのままみんなのもとへ降りた。
午後の訓練も終わって、ジルヴェスはなのはの部屋に向かった。
「失礼しまーす」
「はーい」
「お疲れさまです。なのはさん」
語尾に「♪」でも付いていそうな口調でジルヴェスはなのはに声をかける。
「もう、ホント疲れたよ………ジルヴェスがあんな風に降りるからあのあとフェイトちゃんとかシャーリーにからかわれたんだから」
だから嫌だって言ったのに、となのははちょっと不機嫌だった。
「すいません……けど、あのまま墜ちたら大変でしたよ?」
「そうだけど……お姫様だっこじゃなくったっていいじゃん」
体が痺れていたのは事実でそこに関しては言い返すことが出来ないからなのはは言葉に詰まる。
「すいません、面白そうだったので」
そんななのはにジルヴェスはいい笑顔で本音を漏らした。
「もう……それで何の用なの?」
許さないんだからね、という言葉が続きそうな少しツンツンとした態度をとりつつもなのははジルヴェスに本題へ入るよう促す。
「ああ、それは罰ゲーム、ですよ。はい、これ着てください」
ジルヴェスはそう言ってなのはに紙袋を渡した。
なのはが機嫌の悪いことはお構い無しである。
「俺、外で待ってるんで、着替えたら言ってくださいね」
「え、あ…………」
そう言うが早いか、なのはに何も言わせることなくジルヴェスは部屋から出た。
「………何だろ、これ。着替えたら、ってことは洋服かな?」
機嫌が悪かったのは確かだが、全く気にしないジルヴェスになのははすっかり毒気を抜かれてしまった。
そうなってしまえば、手渡された紙袋の中身が気になるもの。
そして、なのはがそろそろと紙袋から出したそれは、いわゆるメイド服というやつで……。
「うそ、これは嫌だよ…………ジルヴェス~」
「何ですか?」
ジルヴェスは扉ごしになのはに応えた。
「これは何?」
「何ってメイド服ですよ。分かりませんか?それ着て食堂で1日ボランティアしてください。1日って言っても今日だけなんで、まぁ、夕食時だけですかね」
「これを……着るの?」
ジルヴェスからなのはの顔は見えないが、困惑しているのはジルヴェスにもよく分かった。
「はい。ダメですか?」
「ダメっていうか……」
「負けたのに逃げるんですか?」
着たくないのは分かったが、なおもジルヴェスは食い下がる。いささか、ずるい物言いをして。
「そんなことはしないけど………これをみんなの前で着るの?ジルヴェスに見せるだけじゃなくて?」
「そんなことしたら俺がただの変態みたいじゃないですか」
さすがにそんな変態じゃない、と苦笑する。
「着せるのがメイド服って時点で十分変態だって………」
なのはは呆れて物も言えない様子だった。
「着ないんですか?まぁ、どうしてもって言うならやらなくてもいいですけど……あーあ、だったら無理して勝たなくても良かったかな。せっかくなのはさんに似合うと思ったんだけどなぁ」
「もう!着ればいいんでしょ!」
なのはは半ば自棄になってメイド服に袖を通した。
「か、かわいい…」
「そ、そうね」
「うわぁ、なのはさん似合ってます」
「はい……」
「だろ?いやぁ、模擬戦頑張った甲斐があったな」
フォワード陣4人の反応に気をよくしたジルヴェス。
結局なのははメイド服を着て、食堂で接客している。
実家が喫茶店ということもあってか、接客も様になっている。
「確かにこんなことしてたらなのはさんのファンは増えるわね。けど、こんなことのためになのはさんとガチで
本気でティアナがそう思ってるのがその言葉からビシビシ伝わってくる。
「だから言っただろ、男にはやらなければならな────」
「お、ジルヴェスこないなとこにいたんか。どや、うちと夕食食わへんか?」
ジルヴェスがドヤ顔で話すのをはやてが遮って話しかけてきた。
「………なんだ、小狸か……」
「ん?何か言ったか?」
はやてはジルヴェスの呟きが聞こえなかったような態度をとってはいるが、「もう一度言うてみ?ただじゃおかんで?」と心の中でジルヴェスに対して脅しをかけているのが彼にはよく分かった。
「いえ、何も。他のみなさんは?」
だから誤魔化すように、そしてはやてが一人というのはジルヴェス的に意外で、そう訊いた。
「シグナムたちか?それならちょっと私用で出とる。で、どや?それともうちと食いたくないか?」
「別にいいですけど…」
歯切れが悪そうに答えながら、ジルヴェスはティアナたちに視線を送る。
「あ、いいわよ。あたしたちのことは」
ジルヴェスのその視線の意味をティアナはすぐに理解して、そう言い出した。
「そうか。じゃあ、行ってくるわ」
「ホンマか?じゃあ、あっちに行こ」
「……分かりましたよ」
そして、ジルヴェスは渋々はやてについて席を移動した。
「ホントあいつって何者なのかしら」
ジルヴェスがはやてに連れ去られ、それを見送ったティアナはそう口にした。
「ですね、隊長陣全員と仲がいいですし」
その言葉にエリオも頷き同意を示している。
「だよね。ジルヴェス絶対何か隠してるよ。だって、空翔べるし。私知らなかった」
「スバルさん、知らなかったんですか?」
私は知ってましたよ、とキャロは付け足す。
「うん、私たちがいたのって陸士訓練校だから空戦とかしない、ていうか出来ない人しかいない感じだから」
「あいつはホント人をバカにしてるわよ。空を翔べるのに陸士なんだから」
そしてスバルとティアナは揃ってため息を吐いた。
「ジルヴェスさんはきっと僕たちだけじゃなくてなのはさんたちも知らないことを隠してますよね」
「うんうん。そんな感じするよ」
「けど、何なのかしらね、その秘密って」
4人は一様に首を傾げ、頭を捻るのだった。
----その「秘密」がその後の任務で明らかになることは、ジルヴェス本人を含め誰も知らない。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m