リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「そういや、なのはちゃんのあれ、あんたの差し金なんやて?」
ティアナたちの座る席からそこそこ離れたところまでジルヴェスは引っ張られ、連れていかれた。
そして、席に着きながらはやては絶賛罰ゲーム中のなのはのことを訊いた。
「あれっていうのはあれ、ですか?」
何のことかはジルヴェスにも分かっていたが、一応なのはの方に視線を送って確認する。
「せや、めっさ似合っとるし、可愛ええから羨ましい思うて」
「あぁ、あれはなのはさんへの罰ゲームですよ。俺と模擬戦して負けたら勝った方の言うことを何でも聞くっていう」
「なんや、それやったらデートでもしてもろたらよかったやん」
何でせえへんのや、とさらに言う。
「え、嫌ですよ。だって、なのはさんですよ?」
するとジルヴェスは即答してきた。
「どうしてや?」
さすがに即答されるとは思っていなかったはやては聞き返していた。
「いや、なのはさんたち『エース』の人気は相当なものですし、デートとかしたらどんな目に遭うか……それを踏まえて考えるとなのはさんはちょっと……それになのはさんにはユーノさんがいるじゃないですか。そこに割って入る気にはならないでしょう」
そうは言っていたが、ジルヴェスは心の中では、それにしてもよく遊びに行っているなぁ、などと考えていた。
「そうか?」
「それ以前に、俺にはそういう資格ありませんから……」
だから本当に近くには踏み込みません、と続けた。
「そうか………けどじゃあ、なんであんな格好させとるん?」
はやてはジルヴェスの発言を深く追及することはしなかった。聞いても答えないのは目に見えているし、何より今はそれよりも面白いことが目の前にあるのだから。
「見てみたかったってのもありますけど、こうやってはやてさんに現実を見せるっていう目的もあるんですよ。そう意味で、目的は果たされましたね」
ニヤッと笑ってはやてを見やる。
「どういうことや!?」
「つまり、なのはさんみたいにはやてさんはかわらしくはないってことです」
「なんやて?」
「いくら羨んでもなのはさんには勝てませんからね。そこらへんのとこはいい加減に自覚した方がいいですよ。じゃないと結婚出来ませんよ?」
「ほほう、あんたあの訓練量じゃ痛くも痒くもないっちゅうことか。もっと増やしてもらおうか?それと、まだ結婚を心配するような年齢やないからな?」
はやては威嚇するように、睨み付ける。
「やだなぁ、冗談ですって……はやてさんも十分かわいらしいですし、すぐに相手だって見つかりますよ。俺だってたまに可愛いとか思ったりしますし、俺は好きですよ」
それを見てジルヴェスは乾いた笑いで誤魔化しにかかる。
「そ、そんな急にかわいいとか好きだなんて……」
急にそんなことを言われてはやては明らかに動揺していた。
「俺にからかわれるところとかが、ですけどね」
「結局それか!もうええ。期待したうちがバカやった……」
はやては少し前と比べると明らかに元気がなくなっているように見える。
「まぁ、本当のところはああいう格好をさせたら恥ずかしいだろうと思ったからです。他意はありませんよ」
「まぁそれならええんやけど」
「そうですか。それで、何か話があるんじゃないんですか?」
なのはをダシに久し振りにはやてと2人きりで話をしていたが、自分が呼ばれたことを思い出し、本題に入るよう促した。
「あぁ、そうやった。あんたがふざけるからつい忘れてもうた」
「はぁ、ダメですね…」
「……話ってのは、あんたの『能力』のことや」
はやてはツッコミを入れたくなったが、それをグッと堪えて話を始めた。
「『能力』、ですか?」
「せや。そこそこ長い付き合いやし、あんたの過去もそれなりに知っとるけど、あんたの持ってるスキルをうちは全然知らんねん。せやから教えてほしいと思うてな」
「どうしてですか?」
「これからの作戦のためや。あと、うちの個人的な興味となのはちゃんの意見やな」
「どうしてもですか?」
幾度となく確認するジルヴェスの様子に、あまり話したくないことは明らかだった。
けれど、はやては部隊長として嫌でも教えてもらおうと考えていた。
「せや。どうしてもや」
「全て教えることは出来ませんが、少しならいいですよ」
まぁ絶対に教えられないというわけじゃないですし、とジルヴェスは前置きする。
「仕方あらへんな、教えてくれる分で構わんよ。隠すのは何かわけがあるんやろ?」
「そうですね。管理局のモルモットは勘弁ですし、何よりどこから情報が漏れるか分かったもんじゃないですからね。敵を騙すにはまず味方からって言うじゃないですか。まぁ下らない前置きはこの程度にして、まずは、『魔力変換資質』ですかね。まぁ、今さら言うことじゃないですけど。他には『
足りなければあといくつか言いますよ、という顔をしている。
「十分、いや十分過ぎるくらいや。それにしても『座標操作』か、えらい便利やな」
ええなぁ、と羨ましそうな顔でジルヴェスを見る。
「まぁ、そうですね。攻撃は基本的にくらわないで済みますから。でも、色々と制約があったりするので絶対的なものでもないんですけど」
「そうか。色々教えてもろうて助かったわ。ありがとうな」
「いえ、大したことじゃないですから」
「それにしても、勿体ないな。あんた、その能力フルに
何でならへんのか意味が分からんとはやては首を傾げている。
「あんまり、興味ないんで。まぁ、昇格したならしたで嬉しいんですけど。実際魔導師ランクはAAA+、ヴィータさんと同じですしね」
「ものすごく嫌味やな………けどな、この先絶対に守り抜きたいものと出逢ったときに、力や地位、そして心強い仲間とか、使えるもんは多ければ多いほどええよ。少なくともうちはそう思うで」
唐突な話だったが、その言葉にははやてのジルヴェスに変わってほしいという思い、そして、いつかそのときがくるという確信が籠っていた。
「ご忠告ありがとうございます……でも、力があっても守りたいものを守ることは出来ないんですよ…………」
このジルヴェスの呟きに対してはやては少し反応を見せた。
「それで、そろそろいいですか?部屋に戻りたいんで」
だから何だかジルヴェス的に話が雲行きの怪しくなりそうで、流れを断ち切るようにそう訊いた。
「なんや、もうちょいお話しようや」
「何でですか?」
「うちが喋りたいからや。文句あるか?」
どうやらはやては先ほどの彼の言葉には言及することはしないことに決めたようだった。
「はぁ、困った人ですね。でも、部隊長として色々大変でしょうし、愚痴くらいは聞いてあげますよ」
ため息を吐きながらも、それくらいならと言ってジルヴェスはもう一度腰を落ち着けた。
「ホンマか?ありがとうな」
なんだかんだで優しいジルヴェスである。
「すげぇ疲れた………」
はやての愚痴を聞かされて精神的にやられたジルヴェスは隊舎の外に出てきていた。夜風に吹かれ心を落ち着かせていると、なのはもまた疲れきった様子でやって来た。
「はぁぁ、やっと終わった………本当に恥ずかしかったぁ…」
ジルヴェスがいるとは思っていないなのはは長いため息のあと、そう独り言を呟いた。
「あ、なのはさん。お疲れさまです♪」
「むかっ。……もうお嫁に行けないよ………」
そして、「ジルヴェス意地悪だよぉ」となのはは泣きついた。
「え?なのはさんは大丈夫でしょ」
「へ?」
ジルヴェスの唐突な言葉に間の抜けた返事をなのははしてしまう。
「いや、だから大丈夫ですって。俺が保証します」
「いや、ジルヴェスに保証してもらっても安心出来ないよ?」
まぁ、嬉しいことは嬉しいけど、となのはは照れて顔を俯けていた。
「いやぁ、それにしてもなのはさん可愛かったですね」
「ほ、ホント?」
恥ずかしかったけれど、ジルヴェスに可愛いと言われて悪い気はしないなのははそうジルヴェスに訊ねる。
「自信持っていいですよ。いっそのこと写真集出しますか?」
「それはやだよ」
ジルヴェスのふざけた提案は真顔で即刻拒否されてしまった。
「残念。まぁ、今日の姿をバッチリ写真に収めてるのでいいですけど」
「え、ホント?」
「ええ。ほら」
そう言って、ジルヴェスはポケットから数枚の写真を取り出した。
ちなみに彼はドヤ顔で親指を立てている。
「ホントだ…………って、え、嘘!いつの間に?」
「まぁ、ちょっと……」
慌てるなのはに対して、企業秘密です、と言ってジルヴェスはとぼける。
「これをどうするの?」
一体何をされてしまうのか不安からなのはは身構える。
「どうするってどうもしないですけど、シャルに見せたり、たまにこれでからかおうかと思ってるくらいですかね」
けれど、ジルヴェスは、特には考えていませんよ、と言っている。
「…………もういいや」
「そうですか……あ!」
「隙あり!」
なのははそんなジルヴェスの隙を突いて手から写真を奪おうと飛び付いた。
が、勢いが強すぎてそのまま二人は重なるようにして倒れこんだ。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m