リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「へぇ、結構片付いてますね。はやてさんの割には」
はやての部屋に入るとジルヴェスはあたりを軽く見渡す。
「うちのわりには、ってどういうことやねん」
あとジロジロ見るな、とジルヴェスの頭を叩く。
「痛いですって」
頭を軽く
「それで、はやてさんの割にっていうのはイメージの問題ですよ。はやてさんはがさつって感じなんで」
「そうなんや………で、何に悩んどるん?」
さっきまでの軽い空気を振り払って一転、真剣な面持ちではやてはジルヴェスに問いかけた。
「えーと、驚かないで聞いてもらえます?」
「………まぁ、聞いてみないと何とも言えんよ」
内容が内容ならそりゃ驚くやろ、と続ける。
「そうですね。今日、任務中にスカリエッティから接触があったんです」
「……………え?今なんて?」
「だからスカリエッティから接触があったんですって」
「えーーー!」
ジルヴェスの言葉にはやてはやや大げさに驚愕の声を上げる。
「そんなわざとらしい反応はいらないんで」
ふざけるんならもう帰りますよ?とジルヴェスは割と本気で言う。
「おぉ悪い悪い。で、ホンマなんか?あとやつは何て?」
軽く謝りながら、少し焦ったように訊ねる。
「よくあるやつです。仲間になれ、と。当然断りましたけど」
「で、なんですぐに話さなかったんや?」
真剣な顔で問いただす。
「…………あまりはやてさんを心配させたくないじゃないですか……」
「え…………」
恥ずかしそうに顔を背けつつ答えるジルヴェスにはやては言葉が出ない。
「この前話をして、なかなか大変そうだって分かったんで……そうすると、下手に個人的な問題で巻き込むのはどうかと」
「やっと分かってくれたか………せやけど、そういうことはちゃんと言うてな。言ってくれへん方が心配すんねんからな」
あんたはこういうときだけ気を使わんでや、とはやては本気で心配そうに言った。
「はい。今度から気を付けますよ」
「ほな、よろしくな」
「ところで、今日は何か被害はあったんですか?」
「んー、大したもんはなかったな。ただ、ティアナがミスしたらしいやんか」
知っとるやろ?と言われジルヴェスは首肯する。
「ええ、あの状況では無茶し過ぎでしたね。というか、あの場面であれだけの上級魔法を使う必要はなかったです」
「ちゃんとケアしてやり?」
「分かってますって。それじゃあ、失礼します」
「せやな。明日からの訓練も頑張り」
ジルヴェスははやての部屋を後にした。
「……だがしかし、ゆりかご、か…………これは本当にまずいことになったかもしれない……スカリエッティがゆりかごの制御に成功したら…………」
ジルヴェスははやての部屋を後にしてぶつぶつと呟きながら自分の部屋へと歩いていた。
「ジルヴェス、こんなところにいた」
「…………………」
「ねぇ!」
スカリエッティのことを考えていたジルヴェスはここでようやくティアナたちに気がついた。
「ん?ティアか、スバルも一緒に。二人ともどうしたんだ?」
「それよりあんた大丈夫?ボーッとしてたけど」
「あぁ、大丈夫」
「そう。あのさ、相談があるのよ」
ティアナは、大丈夫と言うジルヴェスに安堵の息を吐き出す。
「ん?いいぞ」
「今日、怒られちゃったじゃない?でも、結果を出せば分かってくれると思うの。だから、特訓しようと思ってて」
「………………」
言いたいことはあったが、とりあえず、ティアナに言い切らせようとジルヴェスは無言のまま話を聞いている。
「それで、手伝ってもらえないかなって」
「悪いが、それは出来ない」
そして、最後まで彼女の話を聞いて、ジルヴェスはすぐさまその頼みを突っぱねた。
「…………どうしてよ」
ジルヴェスなら快諾してくれると信じていたティアナは予想外な答えについそう訊いてしまった。
「ティア、お前は本質が分かってない。なのはさんに言われたことを理解してないだろ」
「……どういうことよ」
「お前はなのはさんの教導で何を学んだ?」
少し言い方を変えて同じことを言う。
「…………何、あたし間違ってる?なのはさんみたいに桁外れの魔力もセンスもない、あんたみたいな『才能』もない、スバルみたいに頑丈でもない。そんなあたしがあんたたちに追い付くためには努力するしかないじゃない!」
ティアナは少しばかり感情的に、ジルヴェスに食ってかかる。
「違う。そうじゃない……今のお前がいくら努力したって結果は変わらないんだよ。それに、なのはさんはお前にそうしてほしくて話をしたんじゃ----」
「何よ!さっきからなのはさん、なのはさんって。どうせ、あんたやなのはさんみたく力も才能もあってそのことで挫折したことのないような人にあたしの気持ちは分からないわよ!あたしがあんたたちみたいには出来なくて、それがもどかしかったり、陰で笑ったりしてるんでしょ!?」
ジルヴェスの言葉を遮ってティアナは叫んでいた。
「おい、ティア、それ本気で言ってんのかよ?」
そして、彼女の叫びにジルヴェスは信じたくないという思いを抱いてそう返した。
「だったら何?----っ!」
「ふざけんなよ」
けれど彼女の返事を聞いた瞬間、ジルヴェスはティアナの頬を叩いていた。
そして、その目は怒りに燃え、声は低く怒気に震えていた。
「ティア!ジルヴェス何やってんの!?」
頬を押さえ俯くティアナのもとにスバルは駆け寄り、ジルヴェスを詰問するような表情をした。
「スバル、黙っててくれるか?」
「うっ……」
けれど、ジルヴェスに睨まれ、その気迫にスバルは言葉が出なくなってしまった。
「なのはさんを
「…………………」
ティアナは尚も無言を貫く。いや、ジルヴェスの言葉に反抗して黙っているのではなく、彼の言葉に、彼女の中にある何かが揺さぶられているが故の沈黙のようだった。
「…………ティア、今度俺と模擬戦しよう」
そして
「……何でよ?」
唐突な模擬戦をするというジルヴェスの提案に対して、ティアナは彼とは視線を合わせることはなく、けれど、反応を見せる。
「きっと時間をかければティアなら俺の言いたいことが分かると思う。それを理解した上で、やっぱり戦いの中でそれを改めて確認しなかったら自信、持てないじゃんか。だから模擬戦しよう」
「…………そう…」
そう言ってティアナはとぼとぼと歩き出す。その背中は心なしか震えているように見えた。その姿をジルヴェスは黙って見送った。
「なぁ、スバル」
そして、彼女の姿が見えなくなると、未だ留まっているスバルに声をかけた。
「……何?」
しかし、ジルヴェスの問いかけに答えるスバルの答えはぶっきらぼうなものだった。
「やっぱり怒ったか?」
「当然だよ。だってジルヴェス、感情に任せてティアのこと叩いたんだもん。でも、ティアが周りが見えてないっていうのも確かだと思うから。だから、ジルヴェスは気にしなくていいと思う。でも、私はティアが間違いをそのままにはしないって知ってるし、私の思うティアのすごいところはきっとティアが一人のときじゃなくて誰かと一緒のときに一番に発揮されるものだと思うから。だから、私もティアと一緒にジルヴェスと模擬戦するよ」
いいよね?とスバルは訊く。
「もちろんだ」
スバルの問いかけに対して不敵な笑みを浮かべてジルヴェスは頷く。
彼は初めからティアナとスバルのコンビを相手にする気が満々といった雰囲気を漂わせていた。
「ただ、ティアのこと頼めるか?」
けれどその後、申し訳なさそうにジルヴェスは頼んだ。
「いいよ。私に任せておいて」
スバルは笑顔で頷いた。
翌日の訓練後
「みんなおつかれ~」
「「「「おつかれさまでした」」」」
ジルヴェス以外の4人は早々に自分の部屋へ戻って行った。
「あれ、ジルヴェス戻らないの?」
だから部屋へ戻らずにいるジルヴェスを見てなのはは言った。
「いえ、戻りますよ」
「そうだ。ちょっと気になってたんだけどジルヴェス、ティアと何かあったでしょ?」
「どうしてそう思うんです?」
なかなか鋭いな、とジルヴェスは思った。
「女の勘かな」
それに、今日のティアナはどこか気迫みたいなのが違ったし、となのはは補足する。
「女の勘ですか。でもなかなか怖いですね。それで、ちょっと相談があるんですけど、来週俺とティアとで模擬戦させてください」
「どうして?」
「あいつの目を醒ますためですかね」
「……………」
より詳しい説明を求めるようになのはは無言でジルヴェスに視線を送る。
「今のあいつに言いたいことはとりあえず言いました。それをどう受け取るのかはティア次第です。でも、たとえどんな答えだろうとあいつが自分自身と向き合って出したものならそれを俺たちに示す場が必要じゃないですか」
「それで解決するの?」
本当にそれが有効なのかとなのはは訊く。
「どうでしょう。でも、ティアなら正しい答えにたどり着く気がします」
ジルヴェスは頭を下げて頼み込む。
「………いいよ、分かった」
なのはもそこまで言うならと、少し戸惑ってはいたものの了承した。
「ありがとうございます。あと、俺に砲撃系魔法を教えてくれますか?」
「え?」
さらにジルヴェスの口から意外な言葉が発せられ、なのはは余計に困惑する。
「あと1週間でお願いします」
「それは無理だよ……しかも、古代ベルカは砲撃魔法に合わないから……」
さすがに私でも教えられないよ、と言って断る。
「それに関しては大丈夫ですから。お願いします」
「…………分かったよ。やるだけやってみるよ。だけど、覚悟してね?」
なのはは、いつになく押しの強いジルヴェスに押し切られる状で承諾した。
「はい。今日からでも教えてください」
「(ジルヴェス、どうしたんだろう。何かいつもと違うような………凄く本気って感じがしたな……)」
なのはは、ジルヴェスの自主練の準備を待つ間、考え事に
「(きっと、ティアナのために必死になってるんだと思う。だったら私はジルヴェスのことを一生懸命にフォローしたい)」
「じゃあお願いします」
「それはミッド式!?」
そう言いながら魔法陣を展開したジルヴェス。それを見てなのはは驚いた。
「ええ、頑張って習得しました」
「習得って、え?」
ずっとジルヴェスはベルカの騎士と認識していたなのはは、ミッド式も扱えるという事実の理解に頭がついていけていなかった。
「嘘ですよ。本当は適性がなかったわけじゃなかったんですけど、色々と事情がありまして。でも、いい機会なので。それに、砲撃魔法が使えるかどうかって、かなり戦力として大きいと思いますし」
「そ、そうなんだ……」
「それじゃあ、改めてお願いします」
「分かった」
そうして、ジルヴェスとなのはの特訓が始まった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m