リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
先日ジルヴェスに言った通り、フェイトはこの日、陸士訓練校にやって来ていた。
「お久し振りです、学長。新人さんたちはみんな元気そうですね」
「そうね、今年も元気のいい子たちが揃ったわ。7年前のあなたたちにも負けないやんちゃさの子もいるわね……」
「……その節はお世話になりました」
フェイトは苦笑いを浮かべながら答える。
「まぁ、あなたたちは3ヶ月っていう短期プログラムだったけれど……」
コンコン
フェイトと学長が話をしているとドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
「失礼しますっ!」
「お久し振りですっ。本校卒業のシャリオ・フィニーノ執務官補佐でっす」
部屋に入ってきたのは二人だった。
その内の一人はすぐさま自己紹介をした。
「ええ、覚えてるわよシャーリー。あなたもやんちゃだったからね。で、そちらは……」
けれど、もう一人、見覚えのない少年がシャーリーと共に入ってきていて、学長は疑問符を浮かべていた。
「はい!エリオ・モンディアルですっ!本日は見学の許可をいただきありがとうございますっ。訓練校のこと色々と勉強させていただきます!」
エリオは自分で学長の疑問に元気よく答えた。
「いいえー、しっかり勉強していってね」
「はい!」
そんなエリオの様子を見ながら、フェイトはシャーリーに声をかける。
「ごめんね、シャーリー。エリオを任せちゃって」
「いえいえ♪勝手しったる我が母校ですから」
シャーリーは、フェイトの言葉に軽ーい感じで答えた。
「じゃあ、エリオまた後でね。私は学長先生とお話があるから」
「はい!フェイトさん」
「シャーリーについて、いい子にしててね」
「はい!行ってきまーす!」
「うん、気を付けてね~」
シャーリーとエリオの2人は学長室から出ていった。
「かわいい子ね………しかしあのやんちゃ娘の片割れが子どもの世話とは……どうりで私も老けるわけだわ」
2人の後ろ姿を見ながら学長は自嘲的なことを呟いた。
「またまた」
「ところで、シャーリーとはいつから組んでるのかしら?」
「先月からです。優秀ですからね、希望指名でつけてもらいました」
「なかなか良い選択じゃないの」
学長はフェイトの眼を褒めた。
◇◇◇
「ふぇー、ここは広い練習場ですね」
エリオはシャーリーと共に訓練場を見学していた。
「うん、陸戦訓練場だからね」
「あの、ここは陸戦魔導師さんたちの訓練場なんですよね?」
エリオは、シャーリーとフェイトを通じてしばしば会っており、あまり気後れする様子はなく、気軽に質問をしていた。
「うん、そうだよ~。ほとんどの戦闘魔導師のスタート地点で、今も一番多い、空を翔ばずに地上で戦う魔導師たちが学ぶ場所。フェイトさんたちみたく先天資質でA以上とかじゃないと飛行訓練は大変だし予算もかかるからね。もし空戦魔導師になるとしても陸戦魔導師で経験を積んでからっていうのが一般的だね。でも、だからと言ってどっちが上とか下っていうことはないんだよ」
「はいっ。よくフェイトさんも言っているのでわかります。陸と空それぞれで頑張って、互いに助け合っているからこの世界が守られてるんだって」
「うん、偉い偉い……っと、そろそろ午後の訓練が始まるかな」
シャーリーの言う通り、徐々に訓練場に訓練生たちが集まり始め、辺りが喧騒に包まれてきた。
◇◇◇
今日はコンビでの訓練を行っている。
「そう言えば、なんか今日、本局のお偉いさんがここに来てるらしいぞ。あと、子どもの見学もいるらしい」
訓練の途中、唐突にイライアスは話し出した。
「マジか。誰だろうって言ってもあの人しかいないんだけどな」
ジルヴェスは誰かと思いながらも頭の中には、この人だろう、という人が思い浮かんでいた。
「ハラオウン執務官か?今度って言う割には案外早かったな」
「まぁな。それにしても何の用だろう」
「まぁ、アレだ。訓練生の育成に関することだな」
答えを期待していない疑問にイライアスが答えた。
「って何でお前が知ってるんだよ?」
期待していなかった答えだけに、驚きを隠せずにいた。
「ん?親父から聞いた話だが」
「でも、親父さんも相変わらずだな……」
口の軽い、イライアスの父親に軽く呆れを感じるジルヴェス。
「ま、それが親父だからな。仕方ない」
「それで、見学してるっていう子どもは誰なんだ?イライアスお前、知ってるか?」
「あのな、さすがに知らねぇよ」
「ちっ、役に立たねぇやつだな」
イライアスの答えにジルヴェスは舌打ちしていた。
「なんか今ブラックなジルヴェスを見たぜ」
「まぁ、ハラオウン執務官が来てるってことはその関係者だろうな。エリオくんかな?」
「エリオくんって誰?」
ジルヴェスの呟いた聞き慣れない名前に、イライアスは食い付いた。
「ああ、この前迷子を助けたって言っただろ?そのときの子だよ」
「あぁ、その子ね」
「そうそう。でも、わざわざ見学に来たってことは局員になりたいのかな」
「いや、さすがにそれを言われても俺は分からねぇよ」
「だよなー。ま、いい。今は訓練に集中だ」
そう、今は訓練中。二人は、教官の話を聞きながら話をしていたのだった。
◇◇◇
「訓練、楽しそうですよね」
エリオは、始まった訓練を見て楽しそうだと言う。
「いやいや、大変なだけだよ」
そんなエリオの言葉をシャーリーは否定した。
「でも、あそこの人すごく生き生きしてて楽しそうですよ」
「うーん、ああいう人は頭のおかしい人なんだよ、きっと」
エリオが指差した方向にいる訓練生を見ながら2人は会話する。
「ははは………あっ、あれジルヴェスさんだ!」
すると、そこにジルヴェスがいることに気付いた。
「ん?ジルヴェスさんって?」
「いえ、この前街に出掛けたときに助けてもらったんです。とてもいい人でしたよ」
「そうなんだ。じゃあ、あとで挨拶してく?」
「いいんでしょうか?」
勝手なことをして、迷惑にならないだろうかと、エリオは心配していた。
「ああ、大丈夫大丈夫。ダメでもフェイトさんがなんとかしてくれるから」
「シャーリーさん適当ですね」
「まぁね」
その後しばらく訓練の様子を見て、別の施設に移動した。
◇◆◇◆◇
『今日の訓練はここまでっ。ではまた明日』
教官の解散の言葉で、訓練生たちはゾロゾロと帰り始める。
「ふぅ、今日も訓練終わったな」
「そうだな」
もちろん、ジルヴェスたちも例外ではない。
『そうだ、ジルヴェス・クライン、学長が呼んでいた。すぐに向かえ』
はずだったのだが、ジルヴェスがイライアスと一緒に部屋に戻ろうとすると、教官に声をかけられた。
「はい、了解です」
「おい、ジルヴェス。何をやらかしたんだ?」
イライアスは、学長に呼び出されたジルヴェスをからかう。
「……………」
それに対して、ジルヴェスは無言でただ睨むだけだった。
「いや、そんな睨まなくても…」
「あのな、理由を知ってるのに茶化すな。じゃあ、行ってくる」
「はいはい、行ってら~。気を付けて」
「何に気を付けんだよ」
ジルヴェスはそれだけ言って歩き出した。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m