リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
ジルヴェスとティアナ、スバルが模擬戦をしたあの日から数日が経った。
ティアナはすっかり立ち直り、今ではフォワードのリーダーとしてみんなを引っ張っている。
「今日1日は滅多にない休暇だよ。思いっきり楽しんでね」
休暇とは言え、朝練だけはしっかりとやって、朝練の終わりになのはがそう言った。
休暇というのは前々から伝えられていたから特に意外そうにしている顔はなかった。
「じゃあまたね」
そして、なのははそう言うと隊舎に戻っていった。
「ジルヴェス」
「ん?なんだティア」
なのはが戻るとティアナはジルヴェスに声をかけた。
「あんたは今日どうするの?」
「ちょっと挨拶回りに行ってこようかと」
「あら、そう……」
挨拶回りに行くというジルヴェスと一緒には遊びに行けないということでティアナはちょっぴりテンションが下がった。
「そう言うティアたちはどうするんだ?」
ジルヴェスはスバルとティアナは一緒に過ごすだろうと考えていた。
「あたしたち?街に出てこようと思ってるわよ」
そのことにティアナも特に違和感を覚えることもなく答えている。
なんだかんだ言っても、ティアナにとってスバルは居るのが当たり前の存在になっているということだろう。
「じゃあ、用が終わったらそっちの方に行くよ」
「別に無理に来る必要はないわよ」
「分かってるって。んじゃ、また後でな」
「ん」
ジルヴェスは手を挙げその場から去った。
「ユーノ司書長、お客さまです」
「ありがとう。お客さんか、いったい誰だろう………」
ユーノは仕事の手を休めることはなく、来客の心当たりがないか思案する。
「ユーノさん、お久しぶりです」
「あぁ、ジルヴェスか。久しぶり」
客人というのが自分の知り合いでユーノはとりあえず安心した。
「なのはさんじゃなくてがっかりしました?」
ジルヴェスは意地悪くユーノに言う。
「そんなことないさ。それより、僕はそんなになのはたちに会いたがっているように見えるかい?」
「……冗談ですよ」
だがしかし、逆にユーノの反撃に遭ってしまってジルヴェスは降参するしかなかった。
「それで、何の用なんだい?」
知り合いと言えど、前線にいるはずの友人がわざわざ本局の無限書庫にまで足を運んで来たというのは、余程のものを持ち込んだのだろうと彼は考え、気になっていた。
「えぇ、大した用ではないんですが調べ物をしていただきたくて」
「そんなことならわざわざこっちまで来ないでも良かったのに」
ユーノの言う通り、ただ調べ物をしたいだけなら、個人的な知り合いでもあるのだし、連絡をとって調査を依頼するだけでいいのだ。
「いえ、直接言うべきだと思って。ちょうど今日は休暇でしたし」
「そうなんだ。で、何を調べればいいんだい?」
ユーノはジルヴェスの物言いに興味津々という顔で話を促す。
「まず、『ゆりかご』で何を思い浮かべますか?」
「まさか………!」
しかし、ジルヴェスの言葉に一瞬にして、驚愕に顔が染まった。
「はい、『聖王のゆりかご』です」
「どうして?」
何故そんなものを調べたいんだ?という表情をユーノは浮かべている。
「……オークション会場での事件は覚えてますよね?そのときスカリエッティから接触があって、あいつは『ゆりかごがほしい』と言ってたんです」
「それ、なのはたちは知ってる?」
ユーノは動揺していたが、一方では至って冷静でもあった。
「接触があったことは伝えていますが、『ゆりかご』のことは伝えてないです。万が一フェイクだった場合無駄な労力を費やすことになりますし。だから自分で調べようと」
結果的にユーノさんに頼っているんですけど、と彼は苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、このことは言わない方がいいんだね?」
「はい。お願いします」
ユーノはこういうとき物分かりがいいからジルヴェスも安心して頼み事ができる。それに約束は必ず守る男でもある。
「じゃあ、早速開始だ」
そして、ユーノは友人からの頼まれ事という他に「ベルカ」への知的好奇心からやる気満々であった。
「ひとまずこんなものかな」
ひとまず手当たり次第、ベルカ、
「そうですね。『聖王のゆりかご』と言うだけあって聖王が操れるようですが、この識別はどのようにしているんでしょう」
「それについてはじっくり調べておくよ。とりあえずは今分かったことをまとめておこう」
2人とも色々と思うところがあったが、まだまだ情報が不足している。
「いえ、それは自分一人でも出来ますしこれ以上は迷惑ですよ」
だから遠慮するジルヴェスだったがユーノはそうは思わないようだった。
「そんなことないさ。というより僕も調べるのが楽しくなってきたから」
「分かりました。お願いします」
「ああ、喜んで」
ユーノは笑顔を浮かべて頷いた。
「司書長、またお客さまです」
もう一度、調べ直そうか、というときになって、来客があったようだった。
「分かりました。通していただいてかまいませんよ」
ユーノがそう返事をするとすぐに彼らの居る部屋にその客はやってきた。
「こんにちは、ユーノさん」
「ああ、シャルルか。またいつもみたいに調べ物かい?」
「はい。お世話になります。…………あれ、ジルヴェスさん?」
とここで、シャルルはジルヴェスが居ることに気付いた。
「久しぶりだな、シャル」
「ええ。どうされたんですか?」
「ちょっと調べ物だよ。ユーノさんに手伝ってもらってる」
「そうなんですか。あれ、でもそう言えば、ジルヴェスさんって特捜隊にいましたよね?」
シャルルは思い出したように訊ね、首を傾げている。
彼女の心の声を音声化したとしたら、「特捜隊って暇なんですか?」といったところだろう。
「いや、今は機動六課にお世話になってる」
「機動六課…………もしかしてなのはさんの居る部隊ですか?」
「ああ、そうだよ」
「いいなぁ。ジルヴェスさんズルいですよ」
シャルルはどんどんテンションが上がっているようだった。
「だってなのはさんの教導を受けられるんですよ?」
寿命と引き換えにだけどな、なんてふざけたことをジルヴェスは考えてみたりしたが、口にしたりはしない。さすがに冗談にならないと思ったのだろう。
「だったらシャルも来ればいいじゃないか」
だから代わりに、ジルヴェスは軽い気持ちでそんなことを言ってみた。
「それいいですね!…………でもなぁ、私の勝手でどうこうは出来ないしなぁ……」
だが結果的には余計にシャルルを落ち込ませることに繋がってしまった。
「じゃあ、ちょっとなのはさんに話を聞いてみるよ」
「本当ですか?ジルヴェスさんありがとう。あ、すいません、お邪魔してしまいました」
「いや、そんなことないさ」
「また今度ゆっくりお話しましょうね」
そう言ってシャルルは目的の書棚のスペースへ移動していった。
シャルルがやってきた後、しばらく資料探しを継続していた。
「こんな感じですかね。今日はどうもありがとうございました」
「いや、本当に調べてて面白かったし」
そして、2人ともに伸びをしながら一息を吐く。
「今日分かったことをふまえて出てきた不明点をピックアップしたので、これについて時間のあるときに調べて教えてください」
ジルヴェスはあくまでも時間のあるときで構わないということを強調する。
「いいよ。ジルヴェスはこれからどうするんだい?僕もこれで今日は終わりにしようと思ってるから暇ならどこか飯でも行かないか?」
ユーノはジルヴェスと久しく会っていなかったからジルヴェスと調べ事以外の話もしたかった。
「いいですね。行きましょう」
ジルヴェスの方も乗り気で移動することにした。
「場所はどうする?」
無限書庫を出ながらユーノが話しかける。
「ミッドでいいですか?移動も楽なので。自分たちは休暇ですけど、事件は休んでくれないですから」
「不吉なこと言わないでくれよ」
ユーノは苦笑いを浮かべている。
「ま、大丈夫ですよ。きっと」
「だといいけどな」
そんな会話をして、二人がミッドへと移動している途中で通信が入った。
『悪いな、ジルヴェス。至急ミッドに戻ってくれ。あんた本局かどっかに行く、言うとったやろ?』
通信してきたのははやてだった。
「今戻るところです。何か事件ですか?」
嫌な予感がしてジルヴェスは訊ねた。
『せや、残念やけどな。なるべく急ぎでな』
とそれだけ伝えるとはやては通信を切った。
「……だそうです。すいません、俺急ぎます」
「あぁ、そうだね。じゃあ、今日は残念だけど仕事だしな。また今度話聞かせてくれ」
「はい。では」
そう言ってジルヴェスは姿を消した。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m