リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「もう、ジルヴェス何してるのよ」
まったく仕方ないわね、そう言いながらティアナがジルヴェスの部屋へ行くと中から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「いーやーだー。いっちゃやだー」
どうやら声の主はヴィヴィオのようである。
「どうしたの?」
ティアナは慌てて中に入って何事かと訊く。
「ティア、いいところに来た。ちょっと手伝ってくれ」
「何をよ」
「それが、案の定ヴィヴィオが泣き出しちゃって」
「あぁ、それで訓練に行こうにも行けないわけね」
納得、とティアナは頷く。
「そういうこと」
「それにしても………」
ティアナはチラッと見やるが、そこには怯えた様子でジルヴェスにしがみつくヴィヴィオがいた。
「……ちょっとこれはショックね」
「まぁ、ティアの恐さが分か…いや、何でもない」
「…何よ」
ジルヴェスの呟きを聞いて、ティアナは半眼で彼を睨みつける。
「何でもないから」
「ほんっとあんたって失礼よね」
「そんな褒めるなって」
あははは、という笑い声もセットでジルヴェスはボケた。
「褒めてないわよ!」
そして、お約束通りティアナが怒鳴ってツッコミを入れる。
「でも、そんな怒鳴ってばっかいるとヴィヴィオだって懐かないぞ」
「…………」
そう言われてヴィヴィオをもう一度見やるとヴィヴィオはティアを怯えたような、でもどこか見定めるような目で彼女を見ていた。
「……それにしても何であんたには懐いているのかしら」
「さぁな。そればっかしはヴィヴィオに訊かないと分からんよ」
「………あ!」
そこで思い出したように声を張り上げた。
「どうかしたか?」
「『どうかしたか?』ですって?あんた訓練はどうするのよ。うっかりあんたの話に付き合ってるとあたしまで遅れるじゃない」
もう遅れてるんだから、とティアナは戦々恐々とした表情を浮かべていた。
「どうするのよ、って言われてもな…………ヴィヴィオ、にいちゃん、行くとこあるからさ………」
「………だめ、いっちゃだめ。ヴィヴィオをひとりにしないで…」
今にも泣き出しそうな様子で懇願するヴィヴィオにジルヴェスは困惑してしまっていた。
「………まずいなぁ。まぁ1日くらい訓練出来なくても支障はないけど、これじゃあどこにも行けないからな……」
「ジルヴェスいる~?」
と、ジルヴェスたちが本気で困っていると、フェイトがやって来た。
「あ、フェイトさんおはようございます」
「おはようございます」
「うん、おはよう。じゃなくて訓練にジルヴェスたち来ないからなのはが怒って、いや違った、心配してるよ?」
「げっ」
「ほら言ったじゃない」
落ち着いているフェイトから告げられた落ち着いてなんかいられない事実にジルヴェスとティアナの顔には焦りの色が見える。
「フェイトさん、行きたいのは山々なんですけど、ヴィヴィオが」
ジルヴェスは目で助けを乞う。
「離してくれないのね?ちょっと待ってて」
「え?…はい」
フェイトはジルヴェスの部屋から出て行くと、5分ほどして戻ってきた。
「お待たせ」
そう言ったフェイトの手にはうさぎの人形が。
「ねぇ、ヴィヴィオはジルヴェス、お兄ちゃんのことが好きなんだね」
「………うん」
「でも、ヴィヴィオが『行かないで』って言うからお兄ちゃん困ってるよ?」
ジルヴェスがやったように、膝をつきフェイトはヴィヴィオと目線の高さを合わせる。
「…………おにいちゃんがいなくなったらヴィヴィオひとりになっちゃうもん。ひとりはやだよ……」
「大丈夫だよ。ヴィヴィオは一人じゃないよ。はい、お友だち」
そう言って手に持っていたうさぎの人形をヴィヴィオに渡した。するとヴィヴィオは笑顔になった。
「……フェイトさんすごい…」
「そうだな……手慣れてるよな」
「ええ、そうね」
ジルヴェスとティアナはフェイトがヴィヴィオをなだめる様子を見て感心していた。
「ヴィヴィオ、お兄ちゃんが戻ってくるまで待てる?」
「……うん」
この問いかけにまだ寂しそうではあったものの、ヴィヴィオは頷いた。
「じゃあ、一緒にいってらっしゃい、しよっか」
「うん」
「ジルヴェス、ティア、訓練行ってきていいよ。今日はできるかぎり私が面倒看るから安心して。それにアイナさんにも声をかけてお世話してもらえるようにするから」
フェイトは言外に、そろそろ行かないと大変だしね、と言っている。
「分かりました。ありがとうございます。ティア、行こう」
「ええ」
すでに遅刻していて手遅れな気もしないわけでもなかったが、それでも急いで行くことに。
「おにいちゃんいってらっしゃい。……ティアナおねぇちゃんも」
ジルヴェスに向かって笑顔で手を振り、そして、少し勇気を出したようにティアナにも手を振った。
「行ってきます。フェイトさん、よろしくお願いします」
「行ってくるわね。フェイトさんありがとうございました」
2人はフェイトに一礼して、部屋を出ていった。
「ティア、良かったな」
部屋から出て、訓練場まで走る途中で、ジルヴェスはティアナにそう声をかけた。
「ええ、ちょっと嬉しくなっちゃったわ」
「やっぱティアは笑ってるのがい────」
嬉しそうな笑みを浮かべるティアナを見て、ジルヴェスは何事か言いかけたが、途中で口をつぐんだ。
「え………?」
「いや、何でもない。気にするな」
「気になるじゃない最後まで言いなさいよ」
「遠慮しておく。そんなことより急いでなのはさんのところに行かないと………殺される……」
ジルヴェスはティアナの追及を誤魔化すようにそう言った。
「そ、そうね。早く行きましょ」
ティアナは心なしかご機嫌な足取りで共になのはの元へと急いだ。
「し、死ぬかと思った………」
いつも涼しい顔で訓練をこなしているジルヴェスが疲労の色を見せていた。
「お、おつかれ…」
スバルはそんなジルヴェスに何て声をかければいいか分からないながらも労いの言葉をかけた。
「あぁ、ありがとう」
「ジルヴェスさんおつかれさまです」
「あぁ……」
キャロもジルヴェスに労いの言葉をかけるのだが、疲労から返事もぞんざいなものになってしまう。
「それにしても、どうしてなのはさんはあんなに厳しかったんでしょうか」
「色々あったんだ…」
「そうなんですか」
ジルヴェスが疲れきった様子で廊下を歩いていると前からヴィヴィオが走って来た。
「おにいちゃん!」
「お、ヴィヴィオか。良い子にしてたか?」
勢いよく抱き着いてきたヴィヴィオを膝を着いて受け止め、疲れを感じさせない爽やかな笑みを浮かべてヴィヴィオに返事をする。
「うん。まきなさんがいっしょにあそんでくれたの。………おにいちゃんだいじょうぶ?」
そろそろとジルヴェスから離れつつ、心配そうにジルヴェスの顔を覗きこむ。
「ん?」
「なんかつかれてるみたいだから」
「全然大丈夫だよ。じゃあ、一緒に晩ごはん食べようか」
「うん!」
「1回部屋に戻ってから食堂に行こうね」
「うん」
ジルヴェスはヴィヴィオの手を引いて部屋へ戻っていった。
「……ジルヴェスさんなんかカッコいいです」
「うん。ヴィヴィオの本当のお兄さんみたいだったよ」
「ジルヴェスさんはやっぱり優しいですね」
「いやいや、あいつはバカでしょ」
エリオ、スバル、キャロは尊敬や憧れの眼差しで、ティアナは呆れ果てた眼差しで、けれど心配そうに、部屋へ戻るジルヴェスを見ていた。
「なんでよ。今のジルヴェスすごいカッコいいじゃん」
スバルはティアナの言葉に言い返す。
「カッコいいかもしれないけど、疲れきってるのよ?そもそもジルヴェスがあんなに疲れてるのだってヴィヴィオのせいじゃない」
ジルヴェスがあそこまで無理することないじゃない、と心配からくる本音を吐き出す。
「ジルヴェスが心配なのは分かるけどさ、ヴィヴィオのせいにするのはよくないよ」
「ち、ちがっ」
けれど、その心配を指摘されるのはティアナ的に恥ずかしく、好ましくない。
「エリオ~、キャロ~お腹空かない?早く食堂行こうよ」
「え、はい」
「そ、そうですね…」
ティアナの反論を聞く様子もなくマイペースなスバルはエリオとキャロを味方につけ(?)食堂へと歩いていった。
「スバル!話を聞きなさいよ!」
ティアナは恥ずかしさから慌ててその後を追った。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
タイトルがワケわかんないです……(笑)