リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
訓練後、夕食の席にて気が付くとジルヴェスはなのはとフェイトと相席していた。
というのも、ジルヴェスとヴィヴィオは食事前にシャワーを浴びに行ったのだが、そのときなのはたちとばったり会ってヴィヴィオはなのはたちと一緒に風呂へ入った。そのため、風呂上がりに食堂に来るときに必然的になのはたちも一緒になったのである。
しかもティアナたちは変に気を遣っているのか声をかけてはこなかった。
「なのはさん、すいません行きたいところがあるので明日1日自由にしてもいいですか?」
そんな感じで食事をしながら、改めてなのはに向き直る。
「んー、問題はないけど………理由を教えてくれたりする?」
教えてはくれないよね、と目が語っており、あまり期待してはいないようだったがなのははそう言った。
「すいません、ちょっと……」
「分かった。いいよ。ジルヴェスのことは信用してるから。けど、一応はやてちゃんにも確認してね」
「はい。ありがとうございます」
案外すんなりと許可が出てジルヴェスはなのはに頭を下げた。
ただ、ジルヴェスの立場的にはそもそもなのはやはやてにわざわざ許可をとる必要などないのだが、それでも許可をとるジルヴェスは真面目なのかアホなのか、そのどちらであるのかは今のところは分からない。
「あ、その代わり何かおみやげちょうだいね」
そんな中、思い出したようになのはは笑顔で付け加えた。
「なのはさん、そういうところちゃっかりしてますよね」
「そ、そうかな」
ジルヴェスに苦笑いでそう言われて少し冷や汗をかいてしまう。
「そうですよ。けど、安心してください。ちゃんと何か買ってきますから。やっぱり食べ物がいいですか?」
「そうだね。みんなでわいわいやれるし」
「分かりました。期待していいですよ」
ジルヴェスは自信ありげに胸を張ってそう言った。
「そう?じゃあ、楽しみにしてるね」
「はい。……ヴィヴィオは何か欲しいものあるか?」
そう言って、今度は夕食を食べるヴィヴィオを見てジルヴェスは気づく。
「ヴィヴィオ、ピーマン嫌いなのか?」
「うん……にがいもん」
ジルヴェスの問いにヴィヴィオは皿の端によけたピーマンを苦々しげに見ながら頷いた。
「好き嫌いしてたら大きくなれないぞ」
「でも……」
「おみやげもなしかな」
「…………食べる…」
ジルヴェスが軽く脅しをかけると、ヴィヴィオはそう言って、ピーマンを一口食べる。
それをジルヴェスを始めなのはとフェイトは「可愛いな」と思いながら見ていた。
「うえ………ほんとににがいよ……」
けれど、顔をしかめてこれ以上は食べられないとアピールしてくる。
「もうしょうがないな。でも一口頑張って食べたのは偉いぞ」
「えへへ」
ジルヴェスはヴィヴィオの頭を撫でる。ヴィヴィオも嬉しそうに撫でられている。
「ジルヴェス、甘やかすのは善くないよ」
しかしそれを見ていたなのはがちょっと真面目な口調で口を挟んできた。
「いえ、今は頑張りを褒めるべきですよ」
ジルヴェスもまた真面目に言い返した。
「むー」
そんなこんなで少しばかりにらみ合いになっているとそこへはやてがやって来た。
「二人とも何を言い争ってるんや?」
「はやて、それが……」
はやての疑問にフェイトが答える。
「なんや、夫婦みたいやんか」
「~~~っ!」
はやての言葉になのはが反応する。
「は、はやてちゃん!な、何を言って」
「だって、娘の教育方針について言い争うお父さんとお母さんみたいやん」
「そう言えばそうかも」
フェイトも納得というように頷く。
「からかわないでよ~」
「そうですよ」
照れからあせあせしているなのはとは対照的に落ち着き払ったジルヴェスは静かに肯定する。
「なんや、ジルヴェス不満でもあるんか?」
「だから、この前にも言ったじゃないですか。そういうのやめてほしいって」
「そ、そうなんだ……」
なのはの呟きははやてには聞こえていないようで、はやては続ける。
「せやけど、おもろいやん。ついついやってまうねん」
「はぁ………そう言えば、明日の午後自由にしてもいいですか?」
はやての言葉に半ば呆れ、ため息を吐くも、明日の休みの許可のことを思い出し、すぐさま切り出す。
「なんでや?」
「それについてはノーコメントで」
「まぁ、ええよ。ただ」
「ただ?」
「ヴィヴィオのことちゃんとせえよ?」
分かってるな?とはやては視線で語る。
「分かってますって」
そして、ジルヴェスはそう言って頷いた。
次の日、午前の仕事を終えるとジルヴェスは早速、ユーノの待つ無限書庫に足を運んだ。
「ユーノさん、来ましたよ」
「おう、来たか。ちょっと待っててくれるか?今の作業だけ片付けたいから」
コンピューターの画面に目を向けながらユーノはジルヴェスに声をかける。
些か礼に欠けると言えなくもないが、無限書庫の司書長として働くユーノがわざわざ時間を空けてくれているのだから、ジルヴェスとしては感謝こそすれ、そんなつまらないことで文句を言うつもりは全くもってなかった。
「手伝いましょうか?」
「いや、大丈夫だ」
「分かりました」
大人しくして、しばらく待っているとユーノがやって来た。
「わざわざ来てもらって悪いな」
「いえ、自分が頼んだことですから」
「それもそうだな。調べた結果だけど、飯でも食いながらにしないか?この前は結局飯行けなかったからさ」
どうだ?とユーノは提案する。
「いいですね、行きましょう」
そして結局クラナガンへ戻るかたちに。
「それで、『ゆりかご』における聖王の識別のことだが、結局よく分からなかったんだ」
クラナガンにあるレストランに入り、腰を落ち着けるとユーノがそう切り出した。
「そうですか……」
求めていた答えを得られずにジルヴェスは肩を落とす。
「けど、一つ分かったことはある」
「何ですか、それは」
ジルヴェスはユーノの想像以上に食い付く。
「ああ、それは『ゆりかご』の制御キーは聖王の肉体そのものだってことだ」
「それならひとまず安心ですね」
「どういう意味だい?」
ジルヴェスの呟きにユーノは興味を惹かれた。
「仮にスカリエッティが『ゆりかご』を見つけたとしてもそれを制御出来ないですから。また、キーになりうる人物も現在六課に保護中です」
「だが、聖王の末裔は現在残っていないはず。今ベルカの王族で残っているのは、かなり血が薄まってしまっているものもあるけど、覇王、雷帝、武帝…」
ユーノは声をひそめて続ける。
「…それと非公開だが冥王だけだ」
「よくご存知で」
「まぁ、書庫を整理していたら分かったんだ。でも、ジルヴェスは知っていたんだな」
ユーノは探るようにジルヴェスを見詰める。
「まぁ、教会に居ると色々ありまして」
ジルヴェスは誤魔化すように目を逸らした。
「まぁいいや。で、聖王になりうる人物って一体、誰なんだ?」
ユーノの質問にジルヴェスも声をひそめて答える。
「先日の休暇中に保護した少女です。彼女は人造魔導師でした。また、聖王と同じオッドアイを持っています。聖王のクローンとして作られた可能性が高いですね」
「……そういうことか。クローンとなるとおそらくその過程で『プロジェクトF』が使われているだろうな。フェイトはなんか言っていたかい?」
少し心配そうにユーノはジルヴェスに訊ねた。
「フェイトさんのことは心配いらないですよ。それに例え造られた命だとしてもその人は自分たちのように生きているんですから何も違うところなんてないですよ」
「……そうだよな。余計な心配だし、フェイトにも失礼だったかな」
「フェイトさんは全く気にしないと思いますけど」
その後も世間話をしながら『ゆりかご』についての情報をユーノから聞いた。
「ユーノさん、ありがとうございました」
一通り話を済ませてジルヴェスは礼を述べる。
「いやいや、どうってことないさ。調べていて初めて知ることも多くて楽しかったしね」
「そう言ってもらえると助かります。それで、ユーノさん、これから六課に行きませんか?」
そこでジルヴェスは話題を変えてそう提案した。
「え?」
「いや、今日の訓練をサボる代わりにおみやげを要求されてて。おみやげってわけじゃないですけど、ユーノさんを連れていったら喜ぶかなって。どうですか?」
なのはさんとかフェイトさんとか喜ぶと思いますよ、とユーノを見る。
「僕は全然構わないよ」
「じゃあ、行きますか」
そう言って、ジルヴェスは席を立った。
「ジルヴェスさん、遅いですよ!」
何軒か店を回り、六課方面に繋がるレールウェイの改札に二人が着いたとき、そう叫ぶ人影が。
「シャルすまない」
「あ、謝ったってダメですからね。私が頑張ってる間に自分はユーノさんとゆっくりお食事ですもんね」
そう言って、ジルヴェスのことを軽く責めるような言葉を放っているのはシャルルだった。
ジルヴェスは頬を膨らませている彼女を見て、内心ほっこりとしていたが、それはシャルルの知るところではなかった。
「ごめん。それにありがとうな。その代わりと言っちゃなんだが、良いとこ連れてくからさ」
ジルヴェスはシャルルの頭を軽く撫でながら謝っている。
そしてシャルルは嬉しそうに目を細めていた。が、すぐにそれではいけないと立ち直る。
「はにゃぁ…………あ、いや、良いとこってどこですか?」
「それは着いてからのお楽しみ」
そう言ってジルヴェスは答えをはぐらかすと改札を通った。
シャルルも期待に胸を膨らませながらその後についていく。
そう時間も掛けずに六課隊舎へとジルヴェスたちは辿り着いた。
「なのは、久しぶり」
「わっ、ユーノくん!?びっくりした」
そして、なのはは突然現れたユーノに盛大に驚いていた。
「あ、ユーノだ。ホテル警備のときに会ったっきりだから1ヶ月ぶりくらいかな」
それに比べてフェイトは落ち着き払っている。
「そうだね」
「でも、今日はどうしたの?」
「あぁ、それは自分が呼んだんですよ」
フェイトの疑問にそれまで影薄く傍らに佇んでいたジルヴェスが答える。
「そうなんだ。ということはジルヴェスはユーノくんに用事があったってことだ」
どうなの?となのはは目で語る。
「まぁ、そうなりますかね。でも用事の内容は秘密ですよ」
「えー」
全く話す気のないジルヴェスに非難の目を向ける。
かくいうジルヴェスはそんな視線を気にも留めずにいるのだが。
「あ、これおみやげです。とりあえずなのはさんたちとティアたちの好物を買ってきました。他のスタッフの方たちの好みはさすがに分からないので適当に色々と買ってきたんでみなさんに配ってきます」
「う、うん」
なのはは調子を狂わされて言われるがままに返事をする。
「ユーノさんはなのはさんたちと話していてください。先日の警備のときもそんな暇がなかったでしょうから」
そう言ってなのはたちの更なる質問攻めから逃げるようにジルヴェスはおみやげを配りにいった。
「ジルヴェスは気が利くな」
そしてユーノは一人言のように呟く。
「そうだね。六課のスタッフみんなにおみやげ買ってきたんだもんね」
「なのは、そのことじゃなくて」
なのはの相づちをフェイトは苦笑気味に否定する。
「え?フェイトちゃん、私変なこと言った?」
「んー、確かにおみやげ買ってきたのも気が利いてるんだけど、私たちだけにしてくれたでしょ?ジルヴェス」
「あぁ!そういうこと」
フェイトの話に納得がいったのか、パッと顔が華やぐ。
「なのはは食い意地が張ってるよね」
「ああ!ユーノくんひどい!」
苦笑気味に言うユーノを頬を膨らませてなのはは非難した。
「ごめんごめん」
「まったく………」
それでも、ため息を吐くなのはの表情はとても楽しそうに見えた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m