リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第8話 強引なお誘い

 

 

訓練終了の数時間前のこと。

 

「それで、執務官殿の相談事というのは何なのかしら?」

「はい……去年起きた空港火災、非公開ではありますが原因はロストロギアです。そしてそのロストロギアに付随するようにして現れる機械兵器があります。この兵器を本局では『ガジェット』や『ドローン』と仮称しています。そして、このガジェットの特徴は1機ずつでAMFを展開し、また神出鬼没にロストロギアに群がって確保しようと動作する点です。これらが多数出現すれば局員たちは各地でAMF状況下で戦わなければなりません。そこで相談なのですが、そういった状況下に対応できる魔導師を育成するとしてそれにかかる時間と期待値について教えていただきたく」

 

フェイトは訓練校をこの日訪れた目的を果たすため、学長に話をした。

 

「そういうことね……」

 

学長はそう呟き、しばし考え、答える。

 

「……時間はかかる上に期待値もあまり高くないわよ。それなら戦技教導隊に依頼して適性のある精鋭を育てた方がいいわ。あなたの親友だっているんだから頼みやすいでしょう?」

「ええ、そちらでも動いてはいますが、将来を見越して数年計画で準備したいんです」

 

学長の芳しくない答えはフェイトの想定内のことで、彼女はなおも食い下がる。

 

「でも、かなり厳しいわよ。新暦になってから質量兵器の使用が原則禁止になって兵器も戦力もほとんどが純粋魔力頼りだもの。でもまぁ、せっかくこちらまで来てくれたわけだしもう少し詰めた話をしましょうか」

 

その甲斐あってか、学長からは少しばかり前向きな回答があった。

 

「ええ…」

「それと、あなたたちの近況報告もね」

「はい」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

時間は元に戻る。

 

「ジルヴェスさーん」

 

イライアスと別れ、学長の元へ行こうと歩いていると誰かが自分を呼ぶ声をジルヴェスは聞いた。

そして、辺りを見渡すとその声の主が分かった。

 

「………おっ、エリオくんか。で、そちらは…?」

 

エリオと一緒にいたシャーリーに、ジルヴェスは見覚えがなく、訊ねた。

 

「わ、わたしですか?」

 

このシャーリーの反応にジルヴェスは、他に誰がいるんだ、と思ったが口にはしなかった。

 

「こちらはフェイトさんの補佐官でシャーリーさんです」

 

そして、シャーリーの代わりにエリオが彼女のことを紹介した。

 

「そうでしたか、失礼しました。自分はジルヴェス・クラインです。エリオくんから話は聞いているとは思いますが……」

「はい、わたしはシャリオ・フィニーノです」

「それでどのようなご用件で…?」

 

学長に呼ばれているということで、急いでいるのもあって、ジルヴェスはそう訊ねた。

 

「この前、助けてもらったお礼を改めて言おうと思って。訓練中はダメだと思ったので、終わるのを待ってました」

「そうだったのか。悪いね、遅くなっちゃって」

 

ジルヴェスとしてはそこまで感謝されるようなことをした覚えはないし、そもそも、人から感謝されることに慣れていなかったから何ともむず痒く感じていたが、やはり、感謝されることは嬉しくて柔和な笑みを浮かべていた。

 

「いえ、勝手に待っていただけなので」

「そうかもしれないけどね、一応謝っとかないと気がすまないから。それで、エリオくんがいるということはハラオウン執務官がいるんだよね?」

「はい。今、学長と話していると思います」

「やっぱりね………今から学長のところへ行かないと行けないんだ」

「そうなんですか。じゃあ、急いだ方がいいですよね」

「そうだね。じゃあ行くよ。また後で」

 

そう言って、ジルヴェスは一旦エリオたちと別れた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

    コンコン

 

「失礼します。ジルヴェス・クラインです」

 

扉をノックし、そう言いながら、学長室にジルヴェスは足を踏み入れる。

 

「こんにちは」

 

すると、すぐにフェイトは声をかける。

 

「君か、クライン訓練生は。君はこの執務官殿に何をしたのかね?」

 

そして、学長は意地の悪い顔で、意地の悪い質問をする。

 

「学長、彼はエリオが迷子になっていたところを助けてくれたんです。それでお礼をしたくて呼び出してもらったんです」

 

学長の言葉が冗談の類いだとはもちろん分かっていたが、フェイトは慌ててフォローを入れた。

 

「そういうことです。ただ、お礼は要りません」

「でも、そういうわけにもいかないからお礼させてもらえないかな?」

「そう言われましても……」

 

ジルヴェスはお礼のためにしたわけではないし、正直、深く関わりたくはなかったから、困っていた。

 

「うーん、どうしようか……」

 

フェイトはお礼をすると決めて(・・・)いるからどうしようか本気で悩んでいた。

 

「だったら、どこかに出掛けて来たらどう?」

 

2人の話を聞いていた学長が口を挟んだ。

その真意はいまいち図りかねるが、何となく面白がっているのと、どこかジルヴェスを心配しているという、別々の思いがあるように思えた。

 

「それいいですね。ジルヴェスくん、どこ行く?」

「出掛けるんですか……?」

 

学長の言葉に、正に名案と食い付くフェイトと、何とも嫌そうに顔をしかめるジルヴェスはとても対照的だった。

 

「ジルヴェスくん、私と出掛けるのは嫌?」

 

先ほどから拒絶を繰り返すジルヴェスの反応に、フェイトは自信をなくしかけていた。

 

「そういうわけでは…」

「クライン訓練生、出掛けて来たらどうだい?私の見たところ、君は何かしらのトラウマを持っているんじゃないのかい?そのせいで、対人戦闘において君本来の力を出し切れないでいる。別に、この執務官が君のトラウマを解消してくれるとまでは言わないが、この子の持つ人脈は役に立つはずさ。ここで関係を作っておくことは絶対に悪い話じゃないはずだね。それに、この子は一旦気になるといつまでも構い続けるところがあるからね、ここで逃げても意味はないよ。その上、君みたいな子を放っておけないお人好しがこの子の親友にいるんだ。その子は必ず君の助けになるはずさね」

 

学長の話を聞いて、しばらく黙っていたジルヴェスだったが、おもむろに口を開いた。

 

「学長がそこまで言うのでしたら……」

「本当に?」

 

ジルヴェスの答えにフェイトが食い付いた。

 

「じゃあ、どこに行こうか」

「普通に食事程度で構いません」

「そう?じゃあ、私の都合が分かったら連絡するから連絡先教えてね」

 

そう言って、連絡先の交換を強引にさせられることになった。

 

「それでは、自分はそろそろ失礼します」

 

ジルヴェスはそう言って出て行こうとする。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

それを学長は呼び止めると一言だけ

 

「大事なのは過去を振り返ることでも、後悔し続けることでもなく、ただ一歩を踏み出す勇気だということを覚えておきなさい」

 

と言った。

それを聞いて今度こそジルヴェスは学長室をあとにした。

 

「それにしても、執務官どのが訓練生相手にナンパとはね」

 

ジルヴェスがいなくなったのを確認して、学長はフェイトをからかう。

 

「そ、そういうわけじゃないですよ!」

 

フェイトは学長の言葉に動揺を隠せなかった。

 

「冗談よ。でも、『あなたたち』も恋の一つでもすればいいのにと思っているのは事実よ。浮いた噂は一切聞かないじゃない」

「まだ、そういうのは早いですし、今はまだそういったことに現を抜かしている場合じゃありませんからね」

「そんなこと言っても、誰かを大事に想う気持ちはとても大切なものよ。彼はそれを持っているが故に苦しんでいるのでしょうけれど」

「彼、というのはジルヴェスくんですか?」

 

学長の言葉が気になり、質問する。

 

「そうよ。でも、何も教えないわよ。あなた自身で見つけないといけないことだもの」

「そうですか。でも、彼はなのはが好きそうなタイプですよね。何かに苦しんでいる人を放っておけないですから。さっき学長の言っていた『親友』はなのはのことですよね?」

「ええ、あの子なら彼を変えられるはずよ」

 

学長はどこか確信したように語る。

 

「私だと役に立てませんか」

 

その学長の言葉を受けて、今度はフェイトが意地悪く学長に問った。

 

「そういうわけではないけれど、今の彼に必要なのはあなたの純粋な優しさじゃなくて、あの子のわがままな優しさだと思ってるというだけの話よ」

 

学長はしみじみと語る。

 

「私は私で、彼のために私に出来ることをします」

 

先ほどの学長の話を聞いて、フェイト()()()、ジルヴェスに興味を抱き、そして放っておけないと感じていた。






ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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