リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
第80話 別世界での遭遇
なのはがヴィヴィオのママになる決意をし、そしてジルヴェスの秘密を知ろうと思ったあの夜から数週間が経った。
その間は特に大きな出来事もなく、なんとも平和な日々が続いていた。
そんな中、未開世界「ウェステリア」にロストロギア──おそらくはレリック──があるとの情報により機動六課が出動することになったのだが……
「どうして俺だけが連れていかれるんですか?」
はやて直々の指名で現地まで半ば強制的に連れてこられたジルヴェスは不満を漏らしていた。
「なんや、不満なんか?それにあんただけやなくてヴィータもおるやろ」
「いや、そういう問題ではなくて。フォワード、俺一人じゃないですか」
なぜなら、ジルヴェスの言うようにフォワード5人のうちジルヴェス一人だけが同行しているのである。
「そんなことか。そりゃ、あんた一人だけいれば十分やろ。違うか?」
「どうですかね、分かりませんよ?」
はやての言葉にジルヴェスは否定的な言葉で返すのだが、はやては相手にしていない。
「何にせよ、スカリエッティがいつどこで行動するか分からない以上は六課の主力を本部に置いておくべきや。せやけど、こっちも何が起こるか分からんし、それなりに戦力が必要やろ?せやから、一人でも動けるあんたとうちとヴィータでこっちの解決にあたるんや。分かったか?」
そして、はやてはもっともなことを言ってその言葉を更に否定する。
「まぁ、言いたいことは。でも、ここにレリックは本当にあるんですかね……森ですよ、辺り一面…」
ジルヴェスははやての主張には納得したもののまた別の疑問を抱いた。
それ自体乗り気ではないジルヴェスの気持ちからくるものであり、はやてとしては気分のいいものではなかった。
「あんた、文句ばっかやな、さっきから。とりあえずそれぞれ別々に捜索、発見次第確保と封印を。あと連絡もな。それから万が一ガジェットや戦闘機人と遭遇したら交戦の後、身柄を拘束。何か質問あるか?」
だからはやては無理矢理話を終わらせ、とっとと捜索に移ることにした。
「ひとつだけ。この森って保護区とかではないですよね?」
「知らん。未開世界やしな。まぁ、ちゃうんやないか?」
「じゃあ、ある程度の被害はやむを得ないと…?」
深い意味はなかったが、ちょっと気になる部分なのであった。
「まぁ、せやな。けど、交戦も何もないのが一番ええよ」
「そうですね。では、1時間毎に経過報告をするということにしましょう」
「よし、じゃあ行こか」
3人はそれぞれ自分の担当区画に散った。
何度か経過報告をしたが未だにロストロギアどころか近代的な人工物は見付からない。
「本当にこんなところにレリックがあるのかよ」
だからついついジルヴェスが愚痴をこぼしてしまうのも無理もないだろう。
というのも、先ほどから、数多く遺跡を見かけるにも関わらず、中にはレリックが見あたらないのだ。ただ、なかなかの考古学的価値があると思われる遺跡ではあった。だからこそ、知的好奇心は満たされる分、本来の目的を果たせずにフラストレーションが高まってしまう。
「まぁ、そんなこと言ったところでレリックが見つかるわけでもないしな…」
気を取り直して周囲に気を配りながら歩き出す。そのとき気配を感じた。魔法生物ではなく人の気配を。
「はやてさんかヴィータさんがそこにいるんですか?」
「…………」
「いるなら返事をしてください」
そう言いながらジルヴェスは気配のする方へと一歩踏み出す。すると、ガサッという音を立ててその「人」はその場から逃げ出した。
「はやてさんかヴィータさんなら逃げ出すはずない…………っ!ということは密猟者か!」
ジルヴェスはこれまでに見かけた魔法生物にそこそこ稀少な種が多かったこと、自分が声をかけるまで怪しい動きがなかったことを踏まえて、逃げ出したのは密猟者であると考えた。
「しかも、結構な手練れの可能性もあるよな。出来心で密猟する奴らは大抵が局員や現地人を見るとすぐに逃げ出すからな。それでバレることを知らない」
こういった知識や経験はキャロの居る自然保護隊へとフェイトによって連れて行かれた時に身に付いたものである。
「って、早くあいつを追わないとな」
ジルヴェスは逃げた人を追いかけることにした。
「……はぁ……はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫なはず…博士にはレリックを見つけた後は局員との交戦は禁止って言われてるからな。でも、あの局員なんかユナの相手じゃないのに…まぁ、博士には今はレリックが最重要項目だから仕方ないか…」
息を整えながら、そう呟く。
「……ここにいた」
すると、不意に声が聞こえてきた。
「見つけたよ、君。密猟犯だよね。大人しくしてくれ」
そう言いながらジルヴェスは逃げ出した者に近づいていく。
「……君はあのときの」
すると、更にあることに気付いた。
「………確か、ユナだったか?どうして君が」
「そんなことどうだっていいだろう?」
ジルヴェスの問いに対してユナは高圧的な態度をとる。
「そういうわけにもいかないかな。だって、俺が近付いたら逃げ出しただろ?何か都合の悪いことがあるんじゃないか?」
そんなユナの態度にも冷静にジルヴェスは言葉を重ねる。
「ふんっ、そんな風に決めつけるから冤罪が増えるんだ。…まぁ、そんなことはどうでもいい。ユナはただ、ここに魔法生物を見に来ただけだ」
高圧的な態度は変わらず、しかし意外にもジルヴェスの問いにユナは答えた。
「じゃあ、なんで逃げ出したんだ?」
「そんなの恥ずかしいからに決まっているだろう。で、そろそろ失礼してもいいか?」
「そうか。それは失礼した。けど、あまり怪しいことをしないようにしてくれ。勘違いしてしまうしね、よろしく」
「あ、ああ…」
素直に引き下がるジルヴェスにユナは少し驚きを感じつつも、これ幸いと立ち去るジルヴェスをただ見ていた。
「………そうだ」
と、何かを思い出したようにユナの方へ振り返り、言葉を続けるジルヴェス。
「手に持ってるそれってレリックだよね?」
「そうだが、それがどうかし………くそっ、騙したな!」
ユナはジルヴェスが引き下がったことに油断して、つい本当のことを言ってしまった。
「やっぱり。ユナ、君がレリックを持っているというのなら見逃すわけにはいかない」
ジルヴェスの瞳には意志の強さが見えた。
「なら、力ずくでかかってくるんだな」
「仕方ない。不本意だけど、仕事だからね。それに、君がスカリエッティと協力している理由を俺は知りたい」
ユナは、知ってどうするんだ、そう思った。だからそれを口にした。
「そんなことを知ってどうしようと?」
「……俺は君を救いたい。君なら理由が分かるはず、違う?」
どうしてジルヴェスがそんなことを言うのか。それは一言で言えば、なんとなくである。ここで彼女を放置してしまったらきっと取り返しがつかなくなってしまうという直感が彼にはあったのだ。
「それはどうかな」
「とりあえず、ここで君を拘束する!」
だから、ジルヴェスは引き下がることも出来なくて、ジルヴェスとユナの戦いが始まった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m