リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第84話 深まる謎

 

 

 

 

なのははジルヴェスについて調べようと思いつつもまだ調べていなかった。

そこでついに行動に移すことにした。

 

「ユーノくん」

『どうしたの?なのはから連絡してくるなんて、珍しいね』

 

画面越しのユーノは心底意外そうな顔をしている。

 

「そうかも。でね、あることを調べてほしいんだ。もしくは知ってることを教えてくれるだけでも」

『分かった。………最近、こういうの多いな……』

「え?」

『いや、何でもないよ。で、調べるって何を?』

 

職業病なのか、調べ事と聞くとユーノはそれが気になってしまう。

 

「『ファーシャンベルグ』ってユーノくん知ってる?」

『それって、ベルカの武帝の一族の名じゃなかったっけ』

「え?」

 

「武帝」という聞き覚えのない「王」の名に、なのはは首を傾げている。

 

『知らなかった?』

「うん」

『まぁ、なのはが知らないのも無理ないかもね。聖王や覇王に比べると知名度は低いし、今はもうすでに、その血筋も絶えているようなものだから。ファーシャンベルグのとく───』

「ちょ、ちょっと待って!」

『な、何…?』

 

ユーノの言葉を途中で切るようにして大きな声を上げたなのはにユーノは少し戸惑っていた。

 

「今、なんて言った?」

 

なのはは大事なことを言うようにゆっくりと質問した。

 

『「武帝の血筋は絶えているようなもの」のことかな?』

「そう、それって本当なの?」

 

そんなこと信じられない、という表情でユーノに確認する。

 

『ああ。でも、それがどうかした?』

「あっ!…いや、何でもないよ……」

 

でも、ユーノにどうしたのか訊ねられると失言に気付き、苦し紛れですらなかったが誤魔化す。

ユーノもなのはが隠したいと思っていることは当然理解出来ているから、深くは訊かないことに決めた。

 

『そう……?まぁ、いいや。まず、ファーシャンベルグの血筋が絶えたも同然というのは、長い歴史の中で血が薄まってしまって、かつての「王」のような存在ではなくなってるってことなんだ。今では普通の魔導師の一族っていう程度かな。それでファーシャンベルグの特徴だけど、ある文献によると、彼らは非常に多くのレアスキルを持っていたらしいんだ。しかも、戦闘に特化したものを。そして、武帝の一族はベルカで最強だったとも言われている』

「…………」

 

なのはは静かにユーノの話を聞いている。

 

『戦乱期ですら武帝との交戦は避けられていたと記す歴史書があるくらいだ。でも、どうしてそんな絶対的な王が居たのに戦乱が起きていたのかはよく分からないんだけどね。……ってごめん、話が脱線しちゃったね。それで、こういった事実を総合的に見たなら、今もその血筋が完全な状態で残っていたとして、もしも管理局に協力的であれば非常に大きな戦力だけど、敵対されればとてつもない脅威になりうる存在だと僕は考えている。だから、非合法な研究所では武帝のクローンを作ろうとしているんじゃないか、とも考えてるんだ。上手くいけば管理局に対して、ある意味で抑止力になり得るからね』

「……『クローン』…つまり『人造魔導師』……」

 

なのははユーノの最後の方の言葉を聞き、呟き、それを反芻していた。

 

『───僕が今知ってるのはこれくらいかな。まぁ、クローンを、っていうのは何も武帝に限った話ではないけどね。どう、役に立ったかな?』

「うん、私が全然知らなかったことばかりだったから……」

 

なのはは今聞いたことを整理しているのか、どこか上の空な感じだった。

 

『でも、何で突然「ファーシャンベルク」について訊いてきたんだい?』

「そ、それは………」

 

ユーノのあくまで好奇心からといった目を向けられ、なのはは答えを口ごもる。

 

『言いにくいことならいいんだ』

「ごめん……」

 

すかさずフォローを入れてくれるユーノから、バツが悪そうになのはは目を逸らした。

 

『じゃあ、また今度会おう』

「うん。ありがとう」

 

そしてそう言って、通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『クローン』か………きっとこれがジルヴェスの秘密………それに、ヴィヴィオを見たとき、すぐ『聖王』だって言えたことが不思議だったけど、これで分かった。ジルヴェス自身が『武帝』の『クローン』だから、そう言えたんだ……つまり、ジルヴェスにもプロジェクトFが使われているってこと……」

 

なのはは一人隊舎の外に佇んでいた。そして、一人で考え事をする。

 

「だけど、どうして秘密にするのかな……私たちのこと信用してくれてないってこと……?だとしたらなんか悲しいな……」

 

そう考えるうちに段々と気分は沈んでいく。

 

「別にジルヴェスが『クローン』だろうと何だろうと私達にとって、ううん、私にとっては、ジルヴェスはジルヴェスで、何も違うことなんてないのに……なのにどうして…」

 

そして、ジルヴェスのことについて様々な考えが現れては消えていく。

 

「……やっぱり、私はジルヴェスに嫌われてるのかな……でも、そうだよね。いつもわがままばかり言って、ジルヴェスの都合なんて考えてなかったもん……ジルヴェスのためだからって自分を正当化して、頼まれてもないのにジルヴェスの事情にズカズカ立ち入ったりしてきた。そんなことばかりしてきたのに嫌われてないっていう方がおかしいよね……」

 

そう呟くなのはの目には涙が。

 

「あーあ、なんか涙が出てきちゃったよ………」

 

そんな一人言を言って、無理に一人で笑った。しかし、涙は止まらず声を殺してずっと泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そんななのはの様子をこっそり窺う人影があった。

 

「なのはさん……すいません、違うんです。俺が弱いだけなんです……」

 

ジルヴェスはなのはの想いを不意にではあるが聞いてしまって、どうしようもなくやるせない思いに駆られた。

 

「なのはさんだから、なのはさんたちだから言いたくないんですよ…………なのはさんのこと、嫌いになるわけないじゃないですか……」

 

なのはには決して届かない距離で、届かない声で、そして届かない想いを呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルヴェスがすぐ傍に居ることなど露ほども知らないなのはは涙を流しながらまた新たな決意をしていた。

 

「泣いたらすっきりしたな。やっぱり、直接ジルヴェスに訊こう。それで教えてくれなかったら私はその程度ってことだから」

 

そう口にするなのはの表情はどこか清々しいものだった。

 

 

 

 

 

 







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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