リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第86話 答えを求めて

 

 

 

「じゃあ、ジルヴェスの言う通り、はっきり訊くことにしようかな」

「それがいいですよ」

「ねぇ、ジルヴェス、隠してることはない?」

「…はい?」

 

ジルヴェスは昨日の夜のなのはを知って、いや見てしまっていたから、なのはが悩んでいたのは自分のことだと分かっていた。

それなのに自らそんななのはに発破をかけたのは何故なのか。

そして、それでもなお、なのはに対しては話が見えていないフリをする。

 

「だから、何か私に隠してることはないかなって。私は知ってるよ、ジルヴェスの秘密」

「この前にも話しましたけど、そんな秘密なんてないですし、隠してることだってないんですって」

「じゃあ、どうして『人造魔導師』だってことを言わないの?」

「…………知られてしまいましたか」

 

しらばっくれていたジルヴェスだったが、そこで諦めたように口を開く。

 

「確かに俺は人造魔導師です。きっとなのはさんは知っているとは思いますけど、武帝のクローンとして造られた存在です」

「やっぱり……」

 

ジルヴェスの口から、自身の推測を認められ、そう呟いていた。

 

「でも、それだけですよ?」

 

ジルヴェスはなのはの興味を殺ごうとする。

 

「そんなはずないよ」

「どうしてそう思うんですか?」

「だって、ジルヴェスがただ人造魔導師だからってだけで私たちに話をしてくれないとは思えないから。これまでだって、軽くではあったけどジルヴェスの素性を訊いたことあったよね。でも、いつもはぐらかして教えてくれなかった。それは何か言いたくない事情があったからでしょ?人造魔導師だってこと以外に。今日こそは教えてくれないかな」

「…………」

 

ジルヴェスは考え込むように沈黙する。そして、口を開いた。

 

「なのはさん、そこまで分かってるなら放っておいてもらえませんか?どうして、俺が話したがらないことを聞きだそうとするんですか?」

「……私が知りたいから。知って、ジルヴェスの力になりたいから。それが理由じゃダメかな?それに、私はジルヴェスのこと大事だから、もっとジルヴェスのことを知りたいの」

 

ジルヴェスの遠回しな拒絶を無視して、なのはは話してもらうことを求め続ける。

 

「それでも俺から話すことは出来ません。それはなのはさんのことが嫌いだからとか頼りなく思っているとかそういうことではないです。それに、俺はなのはさんたちのこと大切に想ってますから」

 

そう言ってジルヴェスは微笑みかける。

 

「…………」

 

その自らを責めているような、哀しげな笑みを見せられてなのはは言葉を失ってしまった。

 

「…………なのはさんたちだからこそ言えないことってあるんですよ?……だからなのはさん、ごめんなさい……」

 

ポツリと呟いた言葉はなのはには届かず虚空に吸い込まれた。そしてジルヴェスはそのまま席を立つ。

なのははただそれを見送るばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジルヴェスのことを一番知ってるのははやてちゃんだよね。ちょっと訊いてみよう…」

 

ジルヴェスが去った後しばらく呆然としていたなのはだったが、気を取り直してはやての居る部隊長室へ向かっていた。

 

「………どうぞ~」

「失礼します」

 

なのはは扉をノックすると返事があり、部屋の中へと入った。

 

「なんや、なのはちゃん、どうしたんや?」

 

深刻そうな顔つきで部屋へ入ってきたなのはを見て、はやては気にかかったようだった。

 

「あのさ、ジルヴェスが私たちに隠していることをはやてちゃんは知らないかな?」

 

何の前置きもなしに切り出した。

 

「なのはちゃんはそれを知って何をしたいんや?」

「私は別にジルヴェスが人造魔導師だってことも誰かのクローンだってことも気にしないよ。でも、そうじゃないの。ジルヴェスはそれとは違うことを隠していて、それが私たちと距離を作ってる、って私は思うの。だから、ジルヴェスの隠していることを知りたくて、出来れば力になりたいと思ってるの」

 

なのはは淡々と想いを吐き出している。

 

「そうか。でも、うちからは話せへん。そもそも、あいつの昔のことは一部分しか知らんのや。それでも知っているのはヴェルさんに聞いたからで、もし、うちの知っとることをなのはちゃんや他の人も知ったら、ジルヴェスはきっとうちらの前から消えてしまう気がするねん」

「そんなの分からな──」

「いや、きっとそうなる。だって、あいつの悩みはあいつ自身の心の問題でうちらがどうこう出来るもんやない。しかも、それでうちらがあいつに今以上に近付けばあいつは離れることを選ぶよ」

 

なのはの反論を遮ってはやては言葉を続ける。

 

「だから、なのはちゃん、ジルヴェスのことをそっとしておいてくれへんかな?」

「……でも」

 

それでも尚何かを言おうと口を開くとはやては大きな声を上げた。それは些か突然のことだと思えなくもないことであったが、なのはが口を挟むことは出来なかった。

 

「いい加減にせぇ!なのはちゃんがジルヴェスのことを大切に想っとるのも、そういう他人を放っておけへん性格やってことも分かっとる。けどな、もし本当にあいつのことを想うならあいつから話してくれるのを待つか、本気のあいつよりも強いことを証明するしかないんや。せやけど、今のなのはちゃんじゃ絶対に敵わへん。ううん。なのはちゃんだけやなくて、うちらは誰も敵いはせんよ。あいつ、優し過ぎんねんもん……」

 

はやての話を聞き、そして瞳を見たとき、なのはは言葉を失った。

なのはの見たはやての瞳は悔しさを感じ、自身の無力さを嘆き、そして、哀しみを湛えていた。

なのははそこで、はやて自身もジルヴェスのことを思いやり、そして行動したことがあるのだということを感じ取った。

そして申し訳なさそうに詫びた。

 

「はやてちゃん、ごめん……私はやっぱりわがままだね」

 

そう言ってなのはは部屋を出て行った。

 

「……うちはそんなわがままなところに救われたし、そこが好きなんやけどな……それにしても、ジルヴェスのトラウマはどないすればええんや……ここはあの人に頼むか…」

 

はやてはなのはが立ち去った部屋で一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ジルヴェスの心の問題ってどういう意味だろう?随分前に話をしてくれたこととは違うことなの……?だとしたらまだジルヴェスは隠し事をしているってこと?」

 

はやての部屋を後にしたなのはは自室に一人でポツリポツリと呟きを漏らしている。

 

「そもそも私の考えてることは間違ってる……?ジルヴェスが言わないなら聞かないのが正しいんだろうけど……それでも私はジルヴェスのこと知りたいし……どうすればいいのかな?」

 

一人自問自答するように呟くが、無論答えてくれるものなど居やしない。

なのははそれからしばらく考え込むようにして部屋で過ごしていた。








ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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