リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「今週末に地上本部で『公開意見陳述会』が開かれる。なんでか知らんが、うちの部隊も警備要員として召集された」
みんなの表情を見渡しながらはやては言う。
「せやから、その日は地上本部へ任務に向かうことになる。何も問題が起きないにこしたことはないけど、何かあったらみんなで対処してほしい」
「「「はいっ」」」
フォワード、スタッフ一同、一様に返事をした。
「ジルヴェス、今ええか?」
連絡を終え、各々がその場から移動している中、はやてがジルヴェスに声をかけた。
「何ですか?」
急に声をかけられ、ジルヴェスは怪訝そうな顔をした。
「そんな顔すんなや。ヴェルさんがあんたに用があるそうや。せやから、意見陳述会のときに会いに行くようにしてや。ヴェルさんの部隊も駆り出されとるらしいから」
「そうですか。分かりました」
はやてにそう言われ、ジルヴェスは頷いた。
「なのはさん、どうしたんだろうね」
スバルは部屋でティアナに話しかけた。
「さぁ……でも、ここ最近ずっと元気ないわね」
ティアナはここ数日のなのはの様子を思い返し、そう答える。
「それに、なのはさんの視線の先にはいつもジルヴェスがいると思うんだけど、どう思う?」
「確かに、いつもジルヴェスのことを見てるわね。そして、その度に悲しそうな、寂しそうな瞳をしてる気がする」
スバルも頷き、同意している。
「その割には、ジルヴェスの様子は普通よね」
ティアナのこの言葉に2人とも頭を悩ませてしまった。
「…………恋、かな…?」
スバルは有り得ないとは思いつつ思い付きを口にした。
「ま、まさか……なのはさんでしょ?」
対してティアナは口では有り得ないと言いつつ、内心ではその可能性を感じていた。
「でも、本当にそうだとしたらジルヴェスすごいよね」
「え?」
スバルの言いたいことがいまいち分からず、ティアナは聞き返す。
「いや、あんなになのはさん分かりやすいのにジルヴェス気付いてないんだよ?まぁ、ティアのは分かりにくいから伝わってなくても仕方ないけどね」
スバルはニヤッと笑ってティアナを見た。
「あ、あんたね!」
「でも、ジルヴェスのことだから全部分かっていて、その上で敢えて気付いてないフリしてるのかもよ」
ティアナに怒られてしまう前にスバルはさらに言い加えた。
「うわ、あり得そうね、それ」
ティアナは妙に現実味を感じて呆れてしまった。
「だとしたら、ジルヴェスってどんな人が好みなんだろう。聞いてみよっかなぁ」
「え?あんた本気?」
スバルの呟きにティアナは何言っているのかしら、という目をしていた。
「えー、だって気になるじゃん。ジルヴェスの周りって可愛い女の人がいっぱいいるのに手を出さないなんて」
「確かに……」
ティアナはスバルの言い分に思わず頷いていた。
「あ、でも実はシャルと良い感じだったりして」
スバルは少しティアナのことをからかうつもりで意地悪なことを言ってみた。だからチラリと彼女の顔色を窺う。
「…………まぁ、なくはないわね」
けれど、意外にもティアナは動揺を見せない。
「それじゃあ、確認のためにも早速行こう」
「え?今から?」
「そうだよ。思い立ったが吉日、だからね」
今すぐ行くということに困惑気味のティアナを引っ張ってスバルはジルヴェスのもとに向かった。
この辺りの思いきりの良さというか、行動力というかは昔と全然変わらない。むしろ強まったほどかもしれない。
「ジルヴェス、暇?」
「…………」
スバルたちはジルヴェスの部屋までやって来ていた。そして、扉をノックするのだが、部屋の中から返事はない。
「あれ、居ないのかな」
「返事がないってことはそういうことなんじゃないの?」
「えー、でも絶対に部屋に居るって」
妙に自信を持っているスバルにティアナはその根拠を訊ねた。
「いや、なんとなく、だけど……でも、居るんだって」
「はぁ。あんたのそれは願望でしょうが。ノックして返事がなかったら留守、もしくは放っておいてほしいってことでしょ?むやみやたらに関わることないわよ」
ティアナは呆れ顔で嘆息する。
「分かったよ……」
スバルはそう言って自分たちの部屋へ戻ることにした。
◇◇◇
「今日は早く仕事が終わったな。さて、どうしようか……そう言えば、この前、なのはがファーシャンベルグのことを聞いてきたけど、もう一度調べてみようかな」
ユーノは、先日なのはが訊ねた「武帝」のことが頭を過り、気になっていた。
普通であれば名前すら知らないような存在の名前を知り、そして、そのことになのはが興味を抱いたということは、何か重要なことのようにユーノには思われたのだった。
「確か、ベルカ時代の書物は未整理区画だったよな……仕方ない、久しぶりに探索に向かうとするか。整理しておいて損はないし」
そう言うと手早く身仕度を済ませ、バリアジャケットを展開した。
「あれ、ユーノ司書長、今からどこかに向かわれるのですか?」
「ああ。少し未整理区画の方に。個人的な調査ですから僕一人で大丈夫です」
無限書庫の職員が、出かけようとするユーノに声をかける。ユーノはそれに答え、心配は要らないと続けた。
「分かりました。ですがお気をつけください」
「ありがとう。それじゃあ行ってくる」
ユーノはそう言うと、司書室を出て、区画間転送用ポートへと急いだ。
「……武帝、それはかのベルカ時代で唯一戦乱の渦中になかった一族。その認識は間違ってない…………どの文献を見てもその点に関してズレはないから。ただ、長い時の中でその血は薄まっている…………」
ユーノはあたりに多くの文献資料を並べながら、考え込むように一人呟いている。
「けど、どうしてなのはがそんな武帝について僕に聞いたんだろう…………もしかしてなのはの身近にファーシャンベルクの血筋の人が居るってことかな。じゃあ、いつものなのはのお節介か」
そして、少しばかり納得している。
恐らくなのは本人が聞いたなら軽く気を悪くしそうなものではあったが。
「でも、確かファーシャンベルクの一族は代々管理局には籍を置かないようにしてたはず…………どういうことだ?これは、歴史上の『武帝』だけじゃなくて、現在の『ファーシャンベルク家』についても調べる必要がありそうだ」
そして、彼の中で色々と考えを廻らした上でそう結論付けて、再び調べ物という名の戦いを始めるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m