リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
そして、「公開意見陳述会」の当日。
「うちらは本部建物内部、ヴィータとあんたらは建物周囲の警護や。分かってるな?」
「はい」
はやての確認に対して、ジルヴェスが返事をする。
「うちらはデバイスの持ち込みが出来へん。せやからまた預かっててもらえるか?」
「いいですよ」
「んじゃ、頼んだで」
なのは、フェイト、はやてはジルヴェスにデバイスを預けて建物へと入っていった。
「さて、俺らも持ち場に着きますか」
「そうだな。あと、ジルヴェスお前、ちょっとクライスナーのおっさんのとこ行ってこい。意見陳述会中は向こうも都合が悪いだろうしな」
ヴィータが気を使ってそう言った。
「はい。先に行ってきます」
ジルヴェスは一度その場を離れた。
「ティア」
「何よ」
「私、前から気になってたんだけど、『クライスナーさん』って誰?」
ジルヴェスがいなくなるとスバルはティアナに訊いた。
「あ、それ僕も気になります」
「私も」
そして、エリオとキャロもうなずく。その上彼らはティアナなら知っているだろうという目をしていた。
「え……あ、あたしも知らないわよ」
「なんだぁ、ティアなら知ってると思ったのに」
「べ、別に知らなくったっていいじゃない」
ティアナは少しムスッとしてしまった。
「……そうだ、ヴィータ副隊長なら知ってるんじゃない?」
けれど、ティアナは新たな手を思いついたようでそう言った。
「うん、そうかも。訊いてみよう!」
スバルは元気よく賛同する。
「あの、ヴィータ副隊長…」
「なんだ?」
「以前から気になっていたんですけど、『クライスナーさん』ってどなたなんですか?」
意を決したように言葉を紡いだ。
「それはジルヴェスを助………じゃなくて、ジルヴェスの『幼馴染み』の父親で、ジルヴェスのことも息子みたいに思ってる人だよ。ちなみに部隊長を務める方でもあるがな」
「それって、『絶対不可侵』のヴェルさんのことですよね?」
シャルルはヴィータの話を聞いていて、心当たりがあった。というか、彼女は以前にジルヴェスがクライスナーの元へ行くという話を直接聞いているのだから知っていて当然とも言える。
「あぁ」
「すごい人ですね…」
「ええ」
スバルとティアナはへぇ、と頷いていた。
「てゆーか、お前らその『幼馴染み』のこと知ってるはずだぞ」
「「え?」」
スバルとティアナが『クライスナーさん』が意外と偉い人だったことに驚いているとヴィータがさらに驚くことを言った。
「陸士訓練校でジルヴェスとコンビ組んでたやつだよ」
「……ああ!あれじゃない?ティアが喧嘩ふっかけた人」
「……ああ、あいつね………って、あいつそんなすごいやつだったのね」
「ティアさん、そんなことしてたんですね……」
ティアナが思い出すように頷くと、エリオが少し引き気味に呟く。
「や、あれはイライアスのバカが───」
「誰がバカだって?」
ティアナが言い訳しようとした、まさにそのとき、誰かがやって来た。
「………誰?」
しかし、スバルがまさかの「誰?」発言をする。
「あたしも知らないわよ。エリオたちの知り合いだったりする?」
「いえ、このような方は知らないです」
しかも、他のメンバーも同様だった。
「マジで分からないのかよ……俺、イライアスなんだけど。あ、ヴィータさんお久しぶりです」
「「「「え…?」」」」
その場にいたヴィータを除く5人全員が唖然としていた。
「全然分からなかったわ……ていうか、何してるのよ」
「ジルヴェスを呼びに来たんだが、いないのか?」
「ついさっきあんたの父親のところにいったわよ」
「マジかよ……」
イライアスは本気で萎えていた。
「いいや、俺は帰る」
そう言ってイライアスは去っていった。それを見届けてエリオが呟く。
「一体なんだったんでしょうか…」
「さぁね」
ティアナは分からないというように首を振るだけだった。
「ヴェルさん、お久しぶりです」
ジルヴェスはジークヴェルトの待機している控え室に行くと、入りながら挨拶をした。
「おお、ジルヴェスか。久しぶりだな。ところでお前一人か?」
「ええ、ヴィータさんに今の内に行ってこいと言われたので」
ジェスチャーで座るように言われ、ジルヴェスは腰を下ろした。
「そうか。イライアスを向かわせたんだが入れ違いになったみたいだな」
「まぁ、そのうちに来るでしょう。それで今日の用というのは?」
わざわざジークヴェルトがジルヴェスを呼び出したことに彼はただならぬ雰囲気を感じとっていた。
「………俺が調べて知り得た情報とカリム嬢の予言を合わせて考えるなら、やはり今日この意見陳述会が狙われている可能性が高い」
「誰に、というのはやはりスカリエッティですか」
ジルヴェスは確認の意を込めてそう言った。
「そうだな」
「ですが、わざわざ厳重警備の陳述会を狙うメリットはありますかね…?」
「威力証明というのは大きいだろう。それと………これは非公開情報だが、スカリエッティは局の最上層の幹部のもとで作られた人間だ」
それまでも真剣にジークヴェルトの話を聞いていたジルヴェスだが、スカリエッティの新たな情報を知り、姿勢を正し、身に纏う雰囲気は一層真剣味を増した。
「つまり、局の暗部がスカリエッティの後ろ楯に存在していると…」
「そうだ。そして、スカリエッティは今回の襲撃でその後ろ楯に対して敵対を表明する気なのかもしれない」
「……それは大きな事件に繋がりそうですね」
一息おいて、そう呟いた。
「ああ、だから気をつけてくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
と、ジルヴェスとヴェルの話が一段落ついたところにイライアスがやって来た。
「なんだよ、親父。ジルヴェスに、俺が行くって伝えてなかったのかよ」
「悪いな」
と、謝ってはいたが悪びれた様子はなかった。
「別にいいけどさ。ところで、ジルヴェス久しぶりだな!何年振りだ?」
「2年くらいじゃないか?お前は忙しい忙しいって言って、特捜隊の方でも全然会わないしな」
「いや、実際忙しかったんだって。親父人使い荒いからな」
そう言って、父親の方をチラッと見やる。
「ま、優秀ってこった」
当の父親はそんな暢気なことを言う。
「久しぶりに会って悪いがそろそろ戻らないと。ヴェルさんの情報を聞いたら早く戻らないといけなさそうですから」
「そうか。まぁ、そのうちに暇もできるだろ。ところで、お前気をつけた方がいいぞ」
立ち去ろうとしたジルヴェスの背中に向けて、イライアスは声をかけた。
「何がだ?」
「お前のとこの高町教導官、薄々お前のこと勘づいているぞ」
「それは知ってる。直接訊かれたからな。けど、俺は自分のことを言うつもりはない。というか、それだけはしたくない。もし、俺のやったことが周囲に知られればあの人たちの邪魔にしかならない存在だからな、俺は。だから絶対に隠し通すと決めた」
その言葉には彼の決意が込められていた。
「……まぁ、頑張ってくれ」
「ああ。じゃあ、行ってくる」
そう言って、今度こそジルヴェスは六課の配置場所へと戻った。
こここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m