リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「意見陳述会、そろそろ始まりますね」
エリオがジルヴェスに向かって呟く。
そう言うエリオはそわそわしているようにジルヴェスには見えた。
「そうだな。今回の陳述会ではグレアス中将が中心に開発し、かねてから運用を計画していたアインヘリヤルが議論の中心になると言われているな」
「そうなんですか。ところで、こんなに厳重な警備をする必要があるんですかね」
周囲を見渡すと、各地の部隊が召集されているようでかなりの警備体制となっていた。
「それは分からないが、警戒することは無駄にはならないさ」
「そうですね」
エリオはジルヴェスの言葉に同意して警備に集中した。
(そう言えばなのは)
(何?フェイトちゃん)
なのはとフェイトは建物内の警備をしていた。
その最中フェイトはなのはに話しかけた。けれど、その内容を周囲に知られるのはまずいのか念話を使っている。
(カリムの予言の話で、内部のクーデターっていう線は薄いんだよね?)
(うん…)
(だとしたら外部からの襲撃……でも、そんなことをして、メリットはあるのかな……?)
疑問で訊いてはいるが、フェイトの中に答えが一つあって、なのははどう考えているのかを訊ねる色合いをその言葉からは感じられた。
(んー……例えば、威力証明とか)
(けど、威力証明なら他にも場所はあるから……)
(おそらく、地上本部じゃないといけない理由があるんだと思う。それが何なのかは分からないけど)
そう言いながらも、フェイトの言葉で改めて感じた、この襲撃に対するモヤモヤについてなのはは考え込んでいた。
(そうだね。でも、まぁ理由が何であれ、襲撃されたらそれを全力で鎮圧するのが私たちの仕事)
(うん。何かあったときは全力で対処しよう)
二人は再度気持ちを作り直した。
『こちら、クアットロでーす。全員配置に就きましたー』
「そうか。タイミングはこちらから指示を出す。それまで待機だ」
『分かりましたー♪』
一度通信を切る。
「くははははは」
「博士、楽しそうですね。聞いていたとは思いますが、配置に就いたようですね」
「そうだな。では、スポンサーの皆さんに見せつけるとしよう。さぁ、ショータイムだ」
スカリエッティは愉快そうに笑いながら宣言した。
「全員出撃!」
「ついに始まったか…。ヴィータ副隊長、俺はここで援護と迎撃をします。シャル、手伝ってくれ。ヴィータ副隊長はこれからやって来る航空戦力に当たってください」
「はい!」
「え?ああ」
まるで、今から攻撃が始まることが分かっているかのような口調でそう言うジルヴェスに、ヴィータは困惑していた。対してシャルルは別段気にしているわけでもなく元気に返事をした。
「ティアたちは中に入ってなのはさんたちを助けるんだ」
「分かったわ」
そう言いながら、ジルヴェスはなのはたちのデバイスを手渡す。
「じゃあ、デバイス確かに渡したからな」
「ええ。任せない」
ジルヴェスたちはそれぞれに分担し、迎撃に向かった。
「電子の織り成す嘘と真をご覧なさい。IS発動。〈シルバーカーテン〉」
クアットロがISを発動する。
「突然、高エネルギー反応が!」
「早く連絡を回せ!」
「おい、通信がダメになってるぞ」
通信妨害に加え、システムをハッキングされ、職員たちは慌てている。
「ハッキング!?早く迎撃を!」
「ダメだ、間に合わない!」
「みんな落ち着け。至急バックのシステムを起動。隔壁ロックをかけろ!」
「「はい!」」
管制室は混乱していた。
「バックのシステムは潰しておかねばな。IS発動。〈ランブルデトネイター〉」
チンクがISを発動し、システムの動力が爆破された。
混乱する管制室の天井から中を覗く怪しい人影が。その人影は次の瞬間、管制室内に麻痺性のガス爆弾を落とした。それによって管制室内の局員は全員行動不能となった。
『セイン、首尾はどうだ?』
「問題ありません」
『そうか、そのまま潜入してくれ』
『ルーテシアお嬢様、お願いします』
「分かった。…《遠隔召喚》…」
ルーテシアがガジェット群を地上本部周囲に召喚した。
「標的は建物。IS発動。〈ヘヴィーバレル〉」
ルーテシアがガジェットを召喚すると同時にディエチが遠距離砲撃をし、本部の障壁は一部破壊された。
「では、私たちの出番だな。とは言え、問題はないか?セッテ」
「伊達に遅く生まれてはいませんよ。IS発動。〈スローターアームズ〉」
「そうか。IS発動。〈ライドインパルス〉」
「「アクション!」」
トーレとセッテが攻撃を開始した。
『ルーテシアお嬢様、そろそろここはいいのでもう一ヶ所、機動六課へ向かっていただけますか?』
「分かった」
紫の髪を揺らしながら、少女は頷き、自らの魔法でどこかへと移動していった。
「とりあえず、ガジェット群の破壊を優先的に、だな」
ジルヴェスはすぐさま行動に移る。ジルヴェスは〈コードマニューバ〉を使いながらすべてのガジェットに接近し、そして氷の球体を投げつけた。それらはガジェットの内部に留まり、
「《アイスボム》!」
ジルヴェスの術式発動とともに爆発した。
「……ガジェットは片付いたな」
「ジルヴェスさん、さすがですね」
シャルルはジルヴェスに笑顔を見せている。
対して一瞬でガジェットを片付けたジルヴェスを見て他の局員たちは驚嘆していた。
「…次はあの戦闘機人たちか……」
だが、彼はそのどちらに反応することはなかった。
彼の目にはすでに次の目標が映っていた。
そして、一言呟くと空へと揚がった。
「やりたい放題はそれまでだ」
ジルヴェスはトーレとセッテに声をかけた。
「なんだ?邪魔をするというのか?」
「わざわざ一人で来るとは」
「悪いがこれ以上騒がれると迷惑だからな」
そしてデバイスの
「君も人造魔導師だろう?ならば私たちの仲間だ」
「…………!」
けれど、何も争うことなどないだろう?とトーレは言う。
その言葉にシャルルが少しだけ反応したようにも見えた。
「いや、違うな。俺はお前たちの仲間なんかになるつもりはない」
「そうか。残念だ、君の能力は博士も買っていたんだが。反逆するというならここで潰すしかない」
そう言った、トーレの瞳は戦意に満ちていた。
「負ける気はないし、お前たちには絶対に俺たちを倒せない」
ただ、そう言ってジルヴェスが仕掛けた。
「《サンダーフォール》!」
しかし、上空から雷を落とすもそれらはすべて避けられた。
「そんなことでは私たちは倒せないぞ」
トーレはお返しとばかりに急接近し斬りつけてきた。ジルヴェスはそれをかわし、さらに追い討ちをかける。
「……《ウォーターツイスト》!」
以前ユナに使った水の竜巻で今度はセッテを呑み込む。巻き込まれたセッテは呼吸が出来ず、倒れかけるもそれをトーレに助けられた。
「セッテ大丈夫か?」
「すいません、迷惑かけてしまいました」
なんとか、セッテが意識を残したのを見たジルヴェスが、トーレとセッテがまとまっているところにとどめを刺そうとすると、その彼を狙って遠距離砲撃がなされた。
「……これはディエチか。正直助かったぞ」
トーレはディエチに感謝の意を表す。
『いえ、お気をつけください』
「あっぶな、もう少しで当たるところだった」
そしてジルヴェスもまた間一髪で砲撃を避けていた。
「ジルヴェスさん、私は向こうの砲撃手を相手します。すぐに戻ってきます」
そう言うとシャルルはすーっと翔んでいく。
その後、トーレ、セッテの2人はジルヴェスと対峙しながら本部を破壊し始めた。さらに、2人は離れて破壊活動をし、ジルヴェスに追い詰められたらもう一人が援護するようにして、元の彼女らの任務を平行してこなしていた。そうしてジルヴェスと2人の消耗戦が始まって時間が経ち、トーレに通信が入った。
『トーレお姉様』
「なんだクアットロ」
『機動六課への襲撃が成功しました。聖王の器と証は無事確保出来ました』
「そうか。私たちもすぐに引き揚げる」
『了解しましたー』
トーレは通信を切り、ジルヴェスと向かい合う。
「私たちはすぐに引き揚げる。その前に一つだけ言っておく、機動六課で保護していた『聖王の器と証』は別動隊が確保した」
「な………そういうことか…やられた」
そこで今回の襲撃の意図を察し、悔しそうに顔を歪めた。
「目的は達せられた。もう、地上本部を破壊する意味はない。ではさらばだ」
「おい、待て!」
「あ、言い忘れていたが、クアットロから伝言だ。『
「………っ!」
「また」の部分を強調するようにかけられた言葉にジルヴェスは激しい動揺を見せた。
当然、待てと言われて待つわけもなくジルヴェスは敵2人ともに逃げられた。
そして、彼女らに逃げられたジルヴェスは震えていた。その震えは悔しさや怒りからくるものではなく、恐怖や自責の念からくるものであった。
「ジルヴェスさん、すいません、逃がしてしまいま、した…………ジルヴェスさん、大丈夫ですか!?」
そこへシャルルが戻ってきた。彼女もまた決定打を打てずに取り逃がしてしまったようだった。
ただ、そんなことはさておき、ジルヴェスの様子がおかしなことに、シャルルは不安を抱いてしまったようだった。
「…………あぁ」
しかし、返事はするものの、ジルヴェスはどこか上の空なままだった。
----地上本部襲撃事件により、ともに警備にあたっていたギンガ・ナカジマが負傷、さらに拉致され、ヴィータも負傷する結果に。さらに六課隊舎はほぼ全壊し、ヴィヴィオも連れ去られてしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m