リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
第90話 後悔を糧に
「…………俺がもっとしっかりしていれば……やっぱり──」
ジルヴェスは激しく後悔していた。
「ジルヴェス、そんなに自分を責めないで」
なのはがジルヴェスを励ますように声をかける。
彼女の方が余程辛く感じているはずなのに。
「…………」
「ヴィヴィオが連れていかれたことは仕方ないよ。だから、ヴィヴィオを救い出して、スカリエッティたちを逮捕して、事件を終わらせよ?」
「……そうですね」
なのははジルヴェスに優しく声をかけた。
当のジルヴェスは少し落ち着いたものの、どこか怯えたような瞳でなのはを見詰めていた。
なのははそれに気付いて何か声をかけようとする。
「なら、早く次の行動を考えないといけませんね」
「……うん、そうだね」
けれど、ジルヴェスは至って前向きな言葉を述べるから、結局なのはは何も言えなかった。
「なので、俺の知ってることを教えます。実はスカリエッティは、『聖王のゆりかご』を起動させようとしています」
「え?」
「ジルヴェス、あんたどこでそないな情報を得たんや?」
いつの間にか居た--実際にはジルヴェスが気付いていなかっただけで初めから居たのだが--はやても知り得なかった情報をジルヴェスが提供し、はやては思わず訊いてしまった。
「スカリエッティから聞きました」
「なんやて?」
「以前、ホテルアグスタのときの接触は伝えましたよね?そのときに」
「あんた、何度言うたら分かんねん!そういう大事なことは先に言わなあかんやろって」
何でもかんでも背負い込むんやないって前に言ったやろ、とはやてはジルヴェスを叱責した。
「すいません。それで、『ゆりかご』の場所ですが、ユーノさんに手伝ってもらって大体の位置が判明しました」
「……それで、最近よく無限書庫に行っとったわけか……」
そして、納得とばかりに頷く。
「まぁ、そういうことです。ただ、今すぐ攻め入るには消耗が激しすぎますから数日おいて体勢を立て直すべきではありますが」
「せやな……とりあえず今は休むことが大事や」
そう言ったジルヴェスを見遣るはやての瞳は、一番あんたが休まなあかんよ、とでも言いたげだった。
「ユナ、大丈夫か?」
それでもジルヴェスは貴重な休養時間を使ってユナの見舞いに来ていた。
「悪い。ヴィヴィオのこと、守ってやれなかった……」
ユナは申し訳なさそうに頭を下げる。
「気にするなよ。別に殺されたわけじゃない。あとはヴィヴィオが苦しむ前に助けるだけだ」
「……そう、だよな」
ユナはそう語るジルヴェスを見てその言葉とは裏腹に、言葉を失いかけたが、何とか平然と答えた。
「それに、こんなになるまで戦った。今は傷を治して休むんだ。後悔はそれからでも遅くない」
「ああ……」
「…………そして、後悔するのは俺だけでいい」
そう言ったジルヴェスはどこか覚悟を決めた様子だった。
そして、ユナは傷をしっかり治そうと、そして彼と共に戦おうと心に誓った。
◇◇◇
「それにしても、今回はスカリエッティの方が
「うん。私たち全員が六課を離れていたところを狙われたわけだし」
「次の行動に向こうがいつ出るか……それが分からんのや」
なのはちゃんは何か分かるか?と目で訴えかける。
「そうだね。でも、本部襲撃からもう3日経つからそろそろ向こうも行動を起こす頃じゃないかな。明日とか……」
早朝からなのは、フェイト、はやては3人で話していたが、そこへジルヴェスがやって来た。
「明日じゃないです。今日奴らは行動します…」
「え?」
突然現れ、そんなことを言うジルヴェスにはやては疑念の目を向け、なのはは訊ねる。
「なんで分かるの?」
「
「見えた?」
なのはは頭に疑問符を浮かべていた。
「そうです」
「そんなスキルまで?」
「仕方ないですよ。そういう風に
「え…?」
そう語るジルヴェスからは諦めという感じの空気が滲み出ていた。
「それは確かなんやろな?」
「確かですけど、これは勘みたいなやつなので信用しなくてもいいです」
確認するように見詰めてくるはやてに少しだけ自信なさげな様子を見せた。
「何言ってんねん。あんたが間違うこと言うはずないやんか。今から準備する。それと周辺部隊には準警戒の連絡や。あんたはティアナたちに伝えておくんや」
そう言って、はやては各方面への連絡のため席を離れた。
そして、はやてが席に戻ってきてからしばらくしてアラートが出た。
『部隊長、市街地と、ミッド郊外に高エネルギー反応です!』
「周辺部隊に対して改めて出動要請!六課はすぐに出動。ヘリポートに前線メンバーを招集!」
『了解しました』
はやては素早く指示をしてジルヴェスに向き合う。
「思ったより
「はい」
4人はヘリポートへ向かった。
ヘリポートにて指示が出された。
「ティアナ、スバル、エリオ、キャロの4人は市街地にいる戦闘機人の逮捕を頼む」
「「はいっ」」
「シグナムは騎士ゼストを止めてほしい」
「分かりました」
ジグナムは頭を下げる。
「リィンはシグナムと一緒に行ってや」
「分かったです!」
「フェイト隊長は──」
「私はスカリエッティの基地に行く」
フェイトははやての指示の前に宣言した。
「分かった。うちとヴィータ、なのは隊長とジルヴェス、あとシャルは『ゆりかご』に向かう。ええな?」
「うん」
「当たり前だ」
「大丈夫です」
「はい」
はやての確認に対してなのは、ヴィータ、シャルル、ジルヴェスが返事をする。その順番は言うまでもないことだろう。
「じゃあ、出発や。ティアナたちはヘリで移動。うちらは翔んでいく」
そして前線メンバーはそれぞれ出動していった。
翔びながらはやてはジルヴェスと話す。
「なんで、スカリエッティは『ゆりかご』を使うんやろか」
「……推測ですけど、ミッドの壊滅だと思います」
「壊滅?」
ジルヴェスの口から発せられた不穏な単語にはやては反応した。
「ミッドの空には2つの月がありますよね?」
「あるな」
「その位置関係で魔力が高まることがあります。そして、それが今日。今から3時間半後です。『ゆりかご』には主砲があってそれを使えばミッドは一撃で墜ちます」
「だからか……」
「実際に『ゆりかご』は上昇していますし、ほぼ間違いないですね」
そう言いつつ、内心では自身の推測が外れていることをジルヴェスは強く願っていた。
「タイムリミットは近いな……」
「そうですね。けど」
一度言葉を切って続ける。
「とりあえず目の前の敵を墜とさないと」
そう言うジルヴェスの目線の先にはガジェットⅡ型が。
「あれは自分が引き受けるので先を急いでください。周辺部隊の方が来たら任せてそちらに向かいます。シャル、ちょっと先に行っててくれな」
「はい」
「なら、任せたで」
そう言ってはやてたちは先を急ぐ。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m