リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「あれが『ゆりかご』だね」
しばらくして、なのはたちは『ゆりかご』のところまでたどり着いた。
「せやな。けど、この数はすごい……」
はやてがそう言うのも無理はない。『ゆりかご』の周囲には無数にガジェットⅡ型が飛んでいた。
「これは先にガジェットを片付けないといけないかな」
「そうだな。少しは片付けねぇと近付けねぇからな」
と、なのはとヴィータが言っていると通信が入る。
『はやて部隊長、周辺部隊の手配がつきました。数分のうちにそちらに到着するはずです』
「分かった。ここにはうちとシャルが残る。応援が来たらその指揮に回る。『ゆりかご』の中にはなのは隊長とヴィータが行く」
『分かりました。お気を付けて。あと、航行部隊からの連絡で、「ゆりかご」をミッド上空にて殲滅するために移動中とのことです。所要時間は3時間半と連絡を受けました』
「了解や」
はやては一度通信を切った。
「そういうわけや。ここはうちらに任せて先を急ぎや。」
「うん…お願いね」
「任せてください、なのはさん!」
なのははシャルルの言葉を聞いて「ゆりかご」へと翔んだ。
「さてと、早く行かないとおそらく前衛が足りなくなる……」
そう言って目の前を見据えて
「機影は30……いけるな。凍てつけ、《氷龍一閃》!」
その手のデバイスを横なぎに払う。すると、30あったガジェットが全て凍りつき粉々に砕け散った。
「ちっ、もう次の編隊が来たか。こんなところで足止めされてる暇なんかねぇのに……」
そのとき、ジルヴェスは気付いた。
「応援の部隊か…?」
そして、ジルヴェスに近付いてくるガジェットがその遠方で次々に墜ち始める様子に応援が来たことを悟る。
『機動六課のジルヴェス・クライン二士でしょうか?』
「はい」
『八神三佐の指示でこちらに来ました』
「了解しました。こちらは任せてよろしいですか」
『問題ありません』
「では、お願いします」
ジルヴェスは礼をすると、すぐに移動を始めた。
「──駆動炉と玉座の間の位置が分からないと…」
『分かりました。至急調べます』
通信を切ってなのははヴィータと話す。
「とりあえず、先に進もう。駆動炉も玉座の間も奥にあることに違いはないはずだから」
「そうだな」
「じゃあ、行こう」
二人は移動を始めた。
しばらく翔ぶとジルヴェスも「ゆりかご」へと辿り着いた。
「これは酷いな」
そして、ジルヴェスは「ゆりかご」の周囲を無数に飛ぶガジェットを見て、開口一番にそう呟いた。
「ジルヴェス、やっと来たんか」
「すいません、遅くなりました」
「うちらはここで応援部隊への指示出しとガジェットの撃墜をしとる。ジルヴェスあんたはどうする?」
「中に入ってなのはさんとヴィータさんの援護をして来ます。『ゆりかご』の構造もお二人は知らないでしょうし」
はやての問いかけに対してジルヴェスは即答した。
「分かった。けど、くれぐれも無理はせえへんようにな」
「大丈夫ですよ。じゃあ行ってきます」
そうはやてに声をかけてから、ジルヴェスは「ゆりかご」の中へと入っていこうとする。
「ジルヴェスさん!」
そのとき、シャルルがジルヴェスの名を呼んだ。
「なのはさんのこと守ってあげてくださいね」
「あぁ。命に換えてでも必ず守るよ」
そうとだけ言葉を返してジルヴェスは今度こそ「ゆりかご」の中に向かった。
それを聞いたシャルルは少し、ほんの少しだけ嫌な予感がしていた。
「ゆりかご」に入ってからすでに10分ほど経つがなのはとヴィータの二人はこれまでずっとガジェットと戦闘をしていた。
とりあえずのところ、付近のガジェットは一掃したがヴィータの消耗は激しく、なのはは心配している。
「ヴィータちゃん、無理し過ぎだよ!この後も駆動炉の破壊とかやることあるのに……」
なのはは本気で心配していて、彼女が年相応な少女の心を持っていればもしかすると涙を流していたかもしれない。
「うるせぇよ、なのは。お前ら後ろを温存すんのも前衛の仕事なんだよ!」
そんななのはに心配されるヴィータだったが、彼女にとって譲れないものであるようで、なのはに有無を言わせない強い言葉を返している。
「ヴィータちゃん……」
そんなこんな話している二人のもとにジルヴェスがやってきた。
「お待たせしました」
「ジルヴェス?」
「駆動炉と玉座の間の位置を知らないと思ったので、伝えに」
「ありがとう。実は分からなくてここまで来てたんだ」
待っていた情報になのははすぐさま食い付く。
「見て分かる通り、駆動炉はこの先、玉座の間はこことは反対です」
ジルヴェスは艦艇の模式図を空中に投影して見せながら説明する。
「反対……」
「なのは、お前は玉座の間に行け」
自身の目指す場所が今向かっている場所と反対側だと知り、なのははショックを受けていた。
一方ヴィータは冷静になのはに指示を出す。
「でも……」
だが、ここに来るまでにかなり消耗してしまっているヴィータのことが心配で、なのはは何か反論出来ることはないか必死に頭を転らしていた。
「でもじゃねぇよ!駆動炉を壊すだけで船は止まるかもしれねぇし、ヴィヴィオを止めるだけで船が止まるかもしれねぇ。けど、両方ともやらなきゃ止まらないかもしれねぇんだ。だったら二手に分かれるしかねぇだろ!」
そんななのはに追い打ちをかけるようにヴィータは言葉を続けた。
「そうだけど……」
「あたしは鉄槌の騎士ヴィータだ。壊せないもんなんかこの世に存在しねぇよ。それになのは、お前はヴィヴィオの母親になるって決めたんだろ?だったら娘を助けるのは親であるお前の仕事だろうが!」
そう言ってヴィータはなのはを叱咤する。
「……そう、だね。私がやらなきゃ意味がないんだよね。分かった」
ヴィータの言葉にはっと気付かされたのか、なのはは深く頷く。
「あと、ジルヴェスお前はなのはと行け」
そしてすぐにヴィータはジルヴェスに命じた。それは指示ではなく命令に近いもの。異論は認めないというヴィータの気持ちが滲む言葉だった。それは何もジルヴェスに対してだけではない。
「私はいいからヴィータちゃんの方に──」
「あたしは、お前に無茶をさせたくねぇんだ。分かってくれよ。これくらいのわがまま聞いてくれ。だから、ヴィヴィオのところに着くまで無理すんじゃねぇよ。ジルヴェス分かったろ?お前はなのはを温存するために前衛として動け」
再度反論しようとするなのはの言葉を途中で遮るようにしてヴィータは言い切った。
「分かりました。お安いご用ですよ」
「二人とも……」
自分の意思とは関係なく話を進める二人に困惑するなのはであったが、先ほどからのヴィータの様子に説得は不可能であると分かっていた。だから代わりに約束を交わす。
「でもヴィータちゃんも約束して。無理し過ぎないって。ちゃんと無事に帰ってくるって」
「分かってるよ。すぐにぶっ壊してそっちに向かってやる」
「分かった。じゃあジルヴェス行こう」
「そうですね」
3人はそれぞれの目的地に向かい翔んでいった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m