リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「……とりあえず、大体は壊したよな」
ジルヴェスは休むことなくガジェットを壊し続けていた。
「これは………」
そんな中、ジルヴェスの目の前にガジェットⅣ型が現れる。それはまるで蜘蛛のようなフォルムをして、そしてそれまでのⅢ型よりもさらに性能の上がった機体。
「なのはさんを墜としたやつだよな」
そして、このガジェットはジルヴェスに、なのはが重傷を負ったときのことを考えさせていた。
「確か、高性能なステルス能力を持って--がっ………」
ジルヴェスが考え事をしているその
「油断し、た……」
序盤からとばしすぎたのか、油断したのか、ジルヴェスは珍しく負傷した。
太ももを貫通するほどの怪我を負い、立つこともままならない。
「……こんなんじゃ、こんなことで油断して、怪我してるようじゃ、俺は誰も守れないんだよ!」
そう叫び、ガジェットを睨み付ける。
そして彼は魔法を放った。
「《
いつの日か、ティアナとの模擬戦の中で披露したその魔法で目の前にあるガジェットは見えるものも、見えないものも、何もかも関係なく凍てつきそして、砕け散った。
「……はぁ……はぁ」
呼吸が少し辛くなったところで、ジルヴェスの仕掛けたエリアサーチがクアットロを見つけたことを感じた。
「やっと見つかった……」
そう言って、ジルヴェスは魔方陣を展開する。
「何ですか。他の人たちはダメダメですね。やっぱり私が一番ドクターに必要なんですねー」
などとクアットロがのたまっているところにジルヴェスの放った誘導弾がたどり着いた。
「これは、エリアサーチ?でも、ここは最深部。そう簡単には来れないんですよ」
と余裕綽々に言ったその直後、とある出来事が頭を
「まさか、壁抜き!?でも、これはあの『武帝』が放ったもの。そして、あの『武帝』はベルカの格闘型。高威力の魔力砲なんて撃てるはず──」
「撃てるはずない」と言おうとして違和感に気付く。
今まさに、クアットロのいる場所の上層に高エネルギー反応が出た。
「まさか……」
ジルヴェスは魔方陣を展開し、エリアサーチが示す方向に向かってデバイスを構える。
「大火力でやるしかない。なのはさんに教えてもらった魔法を使って……《ディバインバスター》!」
そして、ジルヴェスはディバインバスターを放った。それは下層のクアットロを飲み込みそしてクアットロはダウンした。
起動中のガジェットの掃討は完了し、クアットロを墜とした今、敵対要因はなかった。
「クアットロも墜としたし、早く玉座の間に戻らないと……」
そう言ってジルヴェスは玉座の間を目指し移動を始めた。
「ヴァイスさん、このバイクを借してもらえますか?」
ティアナはヘリに積んであったバイクを見て、ヴァイスに訊ねた。
「別に構わねぇが、どうすんだ?」
「なのはさんたちを助けに行きます」
「分かった。早く乗れ」
そうヴァイスに言われてヘリに乗り込んでユナがいることに気付いた。
「ユナ、怪我は大丈夫なの?」
「ああ。大分良くなった。それでランスターたちは『ゆりかご』に行くんだろ?だったらユナも連れてってくれ。ユナはあいつを助けに行かないといけない」
「分かったわ。ユナは私の後ろ、バイクに乗りなさい。悪いけど、スバルは滑って来てもらえる?」
「分かった。いいよ」
3人の表情は未だに堅かった。
なのはは、ボロボロになりながらも何とかヴィヴィオを倒して、ヴィヴィオを助けることが出来た。
「……ママ、ありがとう」
「ううん……ヴィヴィオのママになるって決めたのにヴィヴィオを守れなくて、辛い思いさせて……私全然ダメだから……」
なのはは自分を責めるように呟き、俯いているからヴィヴィオとしっかりと目を合わせることが出来ない。
「そんなことないよ。だってママはちゃんと助けに来てくれたもん。それにわたしは大丈夫だよ」
そんななのはの元へ歩み寄り、ヴィヴィオは、膝立ちになっているなのはの頭を撫でる。
「ヴィヴィオは優しいね。ありがとう」
なのはは目に涙を浮かべながらヴィヴィオを抱きしめた。
「ママ、いたいよ…」
「あ、ごめん」
ただつい、力加減を間違えてしまう。
けれど、それほどまでに彼女を心配していたのだということは十分ヴィヴィオに伝わった。
「何やってるんですか、なのはさん」
そこにジルヴェスがやって来て、ヴィヴィオに謝るなのはの姿に苦笑を浮かべている。
「…………」
なのははジルヴェスの姿をじっと見ている。
「どうしました?」
ジルヴェスはいたって普通でいて、黙っている理由をなのはに問う。
「ううん。本当に無事に
「なのはさん……」
なのはの言葉を聞いて、ジルヴェスは何も言えなくなってしまった。
「それじゃあ、早く外に出よう」
そう言って移動しようとする3人のところにはやてが来た。
「なんとかなったみたいやな」
「ええ。早くここから出ましょう。嫌な予感がしま──」
ジルヴェスが言い切らないうちに船内にアナウンスが流れる。
『聖王陛下、戦意喪失。ただ今より全ての魔力リンクを切断。船員は直ちに所定の位置へ移動してください』
そのアナウンスと同時になのは、はやて、ジルヴェスの飛行魔法が消される。
「早く行かないと扉が」
そうジルヴェスが言う。
しかし、なのはは満身創痍の状態で思うように足が動かない。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。自分で歩けるよ」
そう言って、歩き出し、扉の方へ向かうがその目の前で無情にも扉はロックされてしまった。
「まずいな……」
はやてはしまったという顔をして呟いた。
「ティアナ、お前オークションの任務の後、俺に言ったよな?『エースだったんですか』って」
「ええ」
「でも、なんで今?」とティアナが訊くよりも前にヴァイスが話し始めた。
「そのときにも言ったけどよ、俺はそんな大層なもんじゃねぇ。身内が巻き込まれた事件で取り返しのつかねぇミスをして。そのことと向き合わずに逃げてばかりいたんだからな。だがな、そんな俺でもお前たちの道を作るくらいは出来んだ」
そう言ってストームレイダーを構える。そして、「ゆりかご」周囲を飛ぶガジェットⅡ型を次々に墜としていく。
ティアナはその様子を見て、驚きを隠せなかった。
今目の前でヴァイスがやっているのは、彼はいたって簡単にやっているが、非常に高度な技術であり、彼がかなりの実力者であることは明らかだった。
そして、最後に「ゆりかご」の側面に砲門のように配置されたⅢ型のうちの1機を破壊してティアナたちに声をかける。
「今だ、行け!」
「ありがとうございます。スバル、お願い!」
「うん、分かった。《ウィングロード》!」
スバルは「ゆりかご」まで一直線にウィングロードを飛ばす。
「ヴァイスさん、助かりました」
走り出す前、ティアナはヴァイスに声をかけていった。
「俺、まだやれるかもな。けど、その前にラグナと向き合わねぇと……」
ヴァイスは一人呟く。
ただ、そうしている姿は決して弱々しいものなどではなく、強い意志に満ちた力強いものであった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m