リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第96話 諦めたくない、ただそれだけ

 

 

 

ティアナたちは、無事に「ゆりかご」から脱出し、その後その周囲で、再出現したガジェットの掃討にあたっていた。

そんな中、「ゆりかご」の外にユナが転送されて来た。スバルはすぐにユナのところに向かい、声をかける。

 

「ユナ、大丈夫!?」

 

スバルの声に反応し、目を覚ますユナ。

 

「ここは………それに、ナカジマか…?」

「うん…」

「そうか……おい!あいつはどこだ?今何をしている?」

 

ユナは突然大声をあげ、訊ねる。

 

「あいつって……ジルヴェスのこと?私たちは分からないな。ユナの方こそ知らない?」

「何だと?そんな悠長なこと言ってられないんだぞ。このままあの船を揚げたら……あいつは命を捨てる気だ!」

「え?」

 

スバルはユナの言うことが理解出来ずにいた。

スバルの近くに来ていたティアナとはやてもそれを聞いていた。そして、ユナの言葉を聞いたシャルルは先ほど覚えた嫌な予感の正体がこのことだと思い至り、ただ一人その身を震わせていた。

 

「そういう覚悟を持った目をしていた」

「あんの、バカ!」

 

はやてはゆりかごに行こうと翔んだ。しかし、ゆりかごには魔力障壁が張られていて、ゆりかごの中に入ることが出来ない。

 

「なんでや、なんでこうなるんや。贖罪って何なんや」

 

次々に言葉が口から出てくる。けれど、はやては無力にも「ゆりかご」を見送ることしか出来なかった。はやては悔しさから届かないとは分かっているがジルヴェスに向かって怒鳴っていた。

 

「あんたはなんで、いつもいつもこう、勝手なことばかりするんや!うちはあんたの背負っとるものも少しは知ってるだけど、だからって死ぬことないやん!帰って来うへんかったら許さへんよ……」

 

けれど、当然ジルヴェスから返事があるわけもなく、やり場のない怒りと悔しさに、はやてはどうにかなってしまいそうだった。

 

「はやてちゃん、諦めたらダメだよ。今からでも遅くない。だから、ジルヴェスを連れ戻しに行ってくるね」

 

なのはは力強い眼差しではやてに言った。

 

「なのはちゃん!?そんなボロボロの体でどうするんや?」

 

しかし、はやてはなのはを引き留めようとする。

 

「やれることをするんだよ!」

 

けれど、逆になのはは声を張って、止めようとするはやてに鋭い視線をぶつける。半ば諦めてしまっているはやてに対して怒りすらぶつけているようにも思えた。

はやてはそんななのはの様子に呆気にとられていた。

 

「私はまだやれることがあるのにやらないなんて嫌だ。もし今ここでジルヴェスを連れ戻しに行かなかったら一生後悔するから。それに、もうジルヴェスとは会えなくなる気がするから。だから、私は諦めたくない」

 

そして、そう言うとゆりかごに翔んで行った。

しかし、ゆりかごの周囲にはジルヴェスによって張られたバリアフィールドがあり、侵入出来ない。

それはまるで、彼女らへの拒絶を表しているかのようでもあった。

それでも、そんなことでなのはが退()くことはしない。彼女はその障壁を破壊するためだけにスターライトブレイカーを放つ。

けれど、先のヴィヴィオとの戦いですでに消耗し切っており、フラフラとしていた。

それを見ていたシャルルは覚悟を決めた。

 

「なのはさん、中には私が行きます。そして、行って連れ帰ります」

 

シャルルはなのはの代わりに自らが行くと宣言する。

 

「シャル、危ないからダメだよ」

 

けれど、なのはは自分のことは棚に上げて、シャルルを行かせようとはしない。

 

「何でですか!?なのはさんが私を心配してくれるように、私だってなのはさんのこと心配なんですよ!それに、私がジルヴェスさんのところに行くのは、なのはさんの代わりだなんてそんなつもり一切ありませんから。私が行きたいから行くんです!行かなかったら後悔すると思うから行くんです!」

 

シャルルは勢いよくそうまくし立てる。その言葉には何だか強い意志と想いが込められているように感じられた。

そして彼女は答えを待たずに艦内へと翔んでいった。

なのはたちはそれを呆気に取られて見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうして?」

 

ジルヴェスは一人、玉座に座りながら困惑し呟いていた。

別に、自分を連れ戻しに誰かしらやって来るだろうことは想像が出来ていた。

けれど、それがシャルルだとは微塵も考えてなどいなかった。

彼自身、シャルルとは仲がいいと思っているし、これが逆の立場なら真っ先に助けに行っただろうとも思っている。

しかし、あの場にはなのはもはやてもいた。そして、実際に魔力障壁を破壊した魔法は、間違いなくなのはのものだった。

それなのに、中にやって来たのがシャルルということは、なのはやはやてを納得させたということで、けれど、ジルヴェスには彼女がそうまでして自分のもとにやって来る理由の見当が付かなかった。

だからこそ戸惑っていたのだった。

そして、戸惑っている間に、シャルルがジルヴェスのもとに辿り着いた。

 

「ジルヴェスさん、迎えに来ました。帰りましょう」

「シャル、それは出来ない」

 

ジルヴェスは首を横に振りながらシャルルの言葉に反対する。

 

「それはどうしてですか?」

 

いささか感情的になっている様子でシャルルは問ってくる。

 

「シャルこそ、どうしてここに来たんだ?」

 

答えをはぐらかすように、ジルヴェスは逆に質問をする。

 

「……どうしてって、理由が必要ですか?」

「……理由なんかないよな。でも気になるから。なのはさんとかはやてさんなら分かるけど、来たのがシャルだったから」

「……私がジルヴェスさんに居なくなられたら悲しいからに決まってるじゃないですか……」

「……………………」

 

シャルルは小さな声でそう答えた。そして辛うじて聞こえるその言葉にジルヴェスは言葉を失う。

 

「でもシャル、俺はまだ戻れない」

「どうして?」

 

シャルルは涙を浮かべていた。

 

「いや、別に悲しまないでくれ。そういう意味じゃない。ただ、このゆりかごを無事に空に揚げなきゃいけないから。それは俺にしか出来ないことだから。だから、まだ帰れないよ。わざわざ来たのに悪いな」

 

ジルヴェスはそう言って謝る。

 

「なら、私ももちろん残ります」

「……分かった」

 

ジルヴェスはあまり快くはなさそうにそう言った。

 

「けど、これが済んでももうみんなのところには帰らないと思う。俺はみんなのところに戻っていい人間じゃないから……」

「ジルヴェスさん!いい加減にしてください!ジルヴェスさんがクローンだろうと過去に何があろうと私にとってのジルヴェスさんは何も変わりません。だから、そんなことを言わないでください」

 

頼むからお願いします、とシャルルはそう言う。

 

「でも、それはシャルが俺のことを何も知らないからだよ」

「でも、ジルヴェスさんだって私のこと知らないでしょ?だけど、私によくしてくれたじゃないですか。みんな、相手のこと全てを知ってるわけじゃありません。隠し事をしてることの方が普通です。だから気にしなくてもいいじゃないですか」

「それでも、気にするから。いつかどこかで聞いたことないか?俺が元犯罪者だって……」

 

シャルルはこの言葉に一瞬息を呑む。

 

「それは本当のことだよ。しかも、それはいくら言葉を飾ったところで結局は自らの意志でやってしまったことだから。だから、正義感が強くて、みんなから愛されるようななのはさんたちと、そして、これから羽ばたいていけるティアやスバルたちと俺が一緒に居ていいのか、って思うんだよ」

 

そう言うジルヴェスはとても悲しそうだった。

 

「だからな、このままなのはさんたちの前から姿を消そうと思ってる」

「え…………」

「この事件で、ヴィヴィオを連れ去られたときに感じたんだ、俺はまだまだ無力だって。そんな俺じゃみんなに迷惑かけるだけだって。だからごめんな」

 

そう言って、ジルヴェスは黙り込む。シャルルもなんて声をかけたらいいか分からず、沈黙がその場を支配した。

そして、ついに船は軌道上に上がる。

 

「シャル、そろそろ離脱しようか」

「…………はい……」

 

シャルルは未だジルヴェスにかけるべき言葉が見当たらず、迷っていた。

けれど、分からないままに、ジルヴェスの発動した転移魔法で、船から脱出した。

 

 

 

 

 







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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