リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第97話 気持ちは届く、きっと

 

 

 

 

「ジルヴェスたち大丈夫なんですかね」

「きっと大丈夫や。なんたって、ジルヴェスとシャルやからな、何か問題が起きても軽く解決してる」

 

段々と高度を上げ、みるみる小さくなる「ゆりかご」を見上げながらティアナ、スバル、はやて、そしてなのはは話をしていた。

 

「そうですね。ジルヴェスは何でも出来ますから」

 

スバルははやての言葉に同意する。

 

「でも、あいつ怪我してたわよね…本当に大丈夫かしら…」

 

しかし、ティアナは心配そうに呟いた。

 

「あれ、ティア心配なの?」

「何よ!悪い?そもそもあんたは心配じゃないわけ?」

「んー、別に心配じゃないよ。だってジルヴェスのことだもん」

「な!」

 

スバルの言葉がティアナには薄情なものに聞こえ、抗議しようと声を上げた。

 

「心配する必要なんかないでしょ。確かに、私たちを『ゆりかご』から脱出させようとしたときに『死んだって構わない』って言ってたよ。それは実際本音だと思う。だけど、ジルヴェスだって生きたいと思ってる。それに、今、ジルヴェスのとこにはシャルがいる」

「シャルが何とかしてくれるって言うの?悪いけど、シャルじゃ心細いと思うわよ」

「違うよ。きっとね、ジルヴェスはすごく優しいから他のみんなが傷付いてしまうなら全部ジルヴェスで背負おうとしているんだと思う。だからこそ、自分から『ゆりかご』に残った。今もまだいるのは何かやることがあるから」

 

スバルは確信めいたものを持っているようだった。

 

「それがどうしたのよ」

「そんなジルヴェスが、自分だけじゃなくてシャルもいるのに、そう簡単に諦めるとは思えないな。シャルのことを傷付けるわけにはいかないはずだから」

「……言われてみればそうね…」

 

ティアナはスバルの考えを聞いて同意していた。

 

「それにしてもあんたも人のこと見てるのね。意外だったわ」

 

ティアナは思い出したように一言追加した。

 

「あ、ひどいよティア」

「そろそろ軌道上に上がる頃じゃないかしら」

 

ティアナは強引に話題を変える。

 

「そうだね」

 

ずっと黙っていたなのはが相槌を打つ。ただ、少し険しい表情を浮かべながら。

 

「どうしました?」

「え?」

「少し険しい表情をされていたので…」

 

なのはは自分がそんな表情をしてるとは思っておらず少し焦った。

 

「いや、ちょっと心配事があっただけ……」

「何ですか?」

「ジルヴェスはもう帰ってこないのかな、って……このままどこかに姿を眩ませようとしてるような気がして」

 

そんなこと、考えもしていなかったことにスバルたちは先ほどとは一転再び心配そうな表情を浮かべた。

 

「でも、心配しなくて大丈夫だと思うよ。スバルも言ってたけどジルヴェスは他人のことには本気だからさ……」

 

そんな2人の様子を見てフォローを入れるなのは。

 

「(ちゃんと帰ってきてよ、ジルヴェス…)」

 

心の中ではやはりジルヴェスの帰還を疑うなのはであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは森の中?」

 

ジルヴェスの魔法でたどり着いたのはどこか木に覆われた場所だった。

 

「シャル、もうここでお別れだ」

「いやだ……私はジルヴェスさんとお別れするなんていやだ。私にはジルヴェスさんしかいないから……」

 

シャルルはジルヴェスの服の裾を掴み、そして涙を流していた。

 

「なのはさんがいるじゃないか」

 

自分から話を逸らすためになのはの話題をジルヴェスは振った。

 

「確かになのはさんのことは尊敬してますし、お世話にもなってます。でも、だからこそ、私にとっては雲の上の存在で、特別な人です。仲良くはさせてもらっていてもやっぱり緊張しちゃいます。だけど、ジルヴェスさんとなら私は等身大の私で居られます……それに、ジルヴェスさんは私と同じ目線に居てくれて、それでも、私のことを優しく見守ってくれる、大切な人なんです」

「シャル…………」

 

シャルルの言葉にジルヴェスは返す言葉が見当たらない。

 

「ジルヴェスさんはさっき、自分のことを元犯罪者だって言ったけど、それが何か問題になるんですか?」

 

追い討ちを掛けるようにシャルルはジルヴェスへと言葉を投げ掛け続ける。

 

「ここに居るジルヴェスさんは()のジルヴェスさんであって()のジルヴェスさんとは違う。さっきも言いましたけど、私にとってジルヴェスさんは大事な人なんです。だからどこにも行かないでください」

 

そして、涙を流したまま、彼の腕を掴んで懇願する。

 

「……シャル…………」

 

その姿を見て、ジルヴェスは言葉を失った。

こうまでして自分を思い、大切だと言ってくれることが嬉しかった。そして、その涙が、その言葉が決して嘘でないことを物語っている。

 

「……ジルヴェスさん、帰りましょう?みんな、待ってます。みんながジルヴェスさんのこと心配してます。だから帰りましょう。それに、さっきジルヴェスさんは自分がなのはさんたちの迷惑になるって言ってたけど、ジルヴェスさんのことが迷惑かどうか決めるのはジルヴェスさんじゃなくてなのはさんたちの方です。そして少なくとも私は迷惑だなんて思いません」

 

未だ涙は流れたままだが、シャルルは笑顔を浮かべ、その手をジルヴェスへと伸ばした。

 

「……………………」

 

ジルヴェスは伸ばされたシャルルの手を無言で見詰め、何かを考えるように佇んでいる。

 

「…………ジルヴェスさん……」

 

その姿を見てシャルルは不安そうに彼の名を呟くことしか出来なかった。

そしてジルヴェスはそれに答えるように一言、「よし」と呟いて、シャルルに視線を向けた。

 

「シャル、ごめんな」

「……え…………」

 

開口一番謝るジルヴェスにシャルルは悲しげな表情を浮かべ、俯き、そして伸ばした腕も下ろす。

 

「俺、こんなだから、シャルの、そしてみんなの気持ち分からなくて、そしてみんなに心配かけて、シャルのこと泣かせてしまった。だからごめん。そもそもゆりかごに残った俺を連れ戻そうとした時点で答えは決まっていたんだよな…………」

 

ジルヴェスは、自分の心を整理するように言葉を紡いでいる。

そしてシャルルは彼のそれらの言葉を聞いて、先ほどの「ごめん」という言葉は自分の思っていた意味合いとは異なるように思い顔を上げた。

 

「謝らないでください…………謝らなくていいから一緒に帰りましょう」

 

その言葉と共に一度下ろした腕を再び上げ、彼がその手を掴んでくれるのをジッと待つ。

 

「……ああ。一緒に帰ろう」

 

そしてジルヴェスはシャルルの手を優しく握った。

 

 

 

 

 

 

 







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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