リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「……あっ」
空を見上げていたなのはは、遥か彼方の
「なのはさん、どうされたんですか?」
突然に声を上げたなのはの様子を見て、スバルは心配そうに彼女の方を窺う。
「え、あ、いや、何でもないの。ただ、何の問題も無さそうな予感がしたんだ」
そう語るなのはは、先ほどまでの不安に圧し潰されそうな弱々しい感じではなく、その不安の中に一条の希望を見出だしたような、そんな明るい表情を浮かべていた。
「なのはちゃん、とりあえず六課隊舎に戻ろうや。ジルヴェスとシャルは絶対に戻ってくる。せやけど、それが
はやては少しばかり言いにくそうにしながらなのはにそう言葉をかける。
「あ、うん、そうだね…………」
なのはとしてはここで彼らが戻ってくるのを待ち続けたいと思いはしたが、はやての言うことが正しいということは分かっていたし、それを自分の我が儘で
「ほんなら、帰ろう」
はやてのその言葉を合図に彼女たちはヘリへと乗り込み、六課へと帰還していった。
「……ジルヴェス、どこかに行っちゃうのかな……」
なのはは、自分の部屋で、そこにフェイトしか居ない空間でそんな呟きを漏らした。
「なのは、ジルヴェスのこと心配?」
そんななのはにフェイトは優しく声をかける。
「……うん。私を庇って怪我までしてたし、それに気のせいかな、ヴィヴィオが連れ去られてからジルヴェスの様子がおかしいんだ……」
「そうだね。それは私も気になってたんだ」
でも訊くことはしなかった、とフェイトは心の裡でどこか後悔しているようだった。
「うん。ジルヴェス、いくら訊いても答えてくれないんだもん……」
そして、こうなるくらいなら強引にでも聞き出しておけば良かった、となのはは後悔していた。
「何か理由があるんだよね、どうしても私たちには言えない理由が」
「でも、それって私たちのことを信用してくれてなかったってことなのかな…………私たちがジルヴェスの隠してることを知ったらジルヴェスのことを嫌いになるって……だとしたら悲しいな……」
フェイトはなのはを見詰めながらどう声をかけるべきか考えていた。そして、しばらくして言葉をかけた。
「…………ジルヴェスは優しいから、きっと色々と考え過ぎてるんだよ。もっと楽に構えれば良いのに、そうはしないんだ。何でもかんでも一人で背負ってしまう。だけど、それは私たちが信用出来ないからじゃなくて、むしろ、私たちのことを考えてるからこそ、私たちに迷惑をかけないようにしているんじゃないかな。だから、私たちにはジルヴェスが迷惑だと思ってることは迷惑なんかじゃないんだって分かってもらうことくらいしか出来ないんじゃないかな。それに、何となくでしかないけど、ジルヴェスはちゃんと帰ってくると思うんだ。シャルが必ず連れ帰ってきてくれる。だって、シャルはなのはの愛弟子なんだから」
ジルヴェスが本当はどう考えているのか、今彼らがどんな状況にいるのか、それらは当然フェイトには分からないが、それでも今のまま、なのはが沈んだままでいるのは、他の者たちに対して影響が大きいだろうと感じて、なのはが安心出来るような、そんな言葉をフェイトは選んだつもりだった。
「……フェイトちゃん、ありがとね。私がこんなだらしなかったらみんなに示しがつかないもんね」
ただ、フェイトの思惑はなのはにはバレバレだった。
「バレちゃったね。でも、なのははしっかりしないと。それに、帰って来ないんだって思ったら、本当にそうなっちゃう気がするから。だから、絶対に帰ってくるって信じよう」
フェイトはそう言ってなのはに笑いかけた。
「…………ジルヴェスさん……」
シャルルは隣にいるジルヴェスのその手をぎゅっと握り、不安げな表情を浮かべている。
「シャル、心配するな。大丈夫だ。何てことはない」
けれど、ジルヴェスはそんなシャルルを安心させるように微笑み、繋いだ手をほどき、彼女の頭を優しく撫でる。
「……でも…………」
それでもシャルルは安心出来ないようだった。
それもそのはずだ。
なのはたちを
「シャル、俺はそんなに頼りないか?」
けれど、ジルヴェスはそんなことには思い至ることはなくシャルルに言葉をかける。
「そんなことは……」
「だろ?だったらそんな泣きそうな顔するなよ」
未だ不安げなシャルルにジルヴェスは笑いかけた。
「----こんなガラクタ、一瞬で片付けて、早く帰ろう」
そして、ジルヴェスは彼らを取り囲むように現れたガジェットの大群を睨み付けるように視線をそちらに向け、シャルルに語りかける。
「…………うん」
未だ不安げな表情が晴れることはなかったが、シャルルは頷き、少し、ほんの少し、ジルヴェスから距離をとる。
彼の邪魔をしないようにと。
「……ありがとな。それじゃ、
ジルヴェスはそう呟くと足元に魔法陣を展開する。
黒、それは凛々しく何物にも染まることのない強さを感じさせる孤高の色。そして同時に全てを染め上げる唯一無二の色。
彼の魔法陣から放たれるその輝きはみるみる強まり、そして辺り一面を覆い尽くす。
「…………あれ……」
シャルルはその光景を見て、何となくの既視感を抱いていた。
「……ふぅ…………《ゲフリーレンシュトラーフェ》……」
ジルヴェスはそんなシャルルの様子に気付くことはなく、彼が
すると、辺りの温度は見る間に低下していき、周囲の木々は凍って白んでいく。
そして、彼らを取り囲んでいたガジェット群も低下していく周囲の温度によって急速に冷却され始める。
「………………嘘だ……」
その
それとは関係なく、ガジェットを襲う寒さは厳しさを増していき、ジルヴェスのごくごく周囲を除いて辺りはまるで
「…………ふぅ……」
ジルヴェスは全てのガジェットが凍てついたことを確認すると一つため息を吐いて魔法を解除した。
「シャル」
「ひゃぅっ!?」
そしてジルヴェスが声をかけるとシャルルひ悲鳴に近い声を上げる。
「え?」
声をかけただけ、ただそれだけなのにそのような反応を見せられ、ジルヴェスは戸惑っていた。
「あ、いえ、少し考え事をしていて……」
「……そう?」
ここが戦いの場である以上、
誰しも隠したいことの一つや二つある。そこに程度の差こそあれ、だからといって無理矢理に訊くことでもないだろう、そんなことを考えていた。
「それじゃ、今度こそ帰ろう。ここで無駄な時間を費やしちゃったから六課の方に行くようにしようか」
そして、ジルヴェスはその言葉と共にシャルルに向かって手を差し伸べた。
「……………………」
シャルルは無言で何事か考えているようだったが、しばらくして、強く、その存在を確かめるように強く、差し出されたその手を握った。
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