リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第99話 帰還に歓喜

 

 

 

「…………着いた……」

 

ジルヴェスは六課隊舎を前に深く息を吐き出す。

 

「……………………」

 

シャルルはジルヴェスと手を繋ぎはしていたものの、彼女一人の世界へと意識が飛んでいるようだった。

 

「シャル、早く入ろう」

「え、はい、そうですね」

 

けれど、ジルヴェスの言葉にはっと気を取り直して頷いた。

そして2人は隊舎の正面入口から中へと入っていく。

 

「とりあえず、はやてさんのところに行くか」

 

そう呟くとジルヴェスは部隊長室へと足を向けた。

 

コンコン

 

「はい?」

 

軽いノックの後、その部屋の主の返事があった。

 

「失礼しまーす」

 

ジルヴェスは名乗ることもしないで扉を開き部屋へと入る。

 

「誰や……?」

 

はやては若干身構えて開く扉を見詰めている。

 

「えーと、帰ってきました」

「…………失礼します」

 

けれど、次の瞬間彼女の目に映ったのは、アホみたいにヘラヘラしているジルヴェスと居心地悪そうにしているシャルルだった。

 

「じ、ジルヴェス!あんた何でいつもいつも勝手なことばかりすんねん!?うちらがどんだけ心配したか分かっとるか?」

 

はやてはバタバタと足早にジルヴェスへ詰め寄り、問い詰めるように顔を近付ける。

 

「…………すいません」

 

けれどジルヴェスは言い返すこともなく、ただただ謝るばかりだった。

 

「…………ほんま……ほんまに良かった……あんたがちゃんと帰ってきて……」

 

いつもとは違い殊勝に謝るジルヴェスを見て、それまで張りつめていたものがふっと消えたように安堵する気持ちが胸いっぱいに広がった。

 

「それに、シャルにも大事がなくて良かった……」

 

そして、はやては目立たぬようジルヴェスの影に立っていたシャルルに目を向け、そして、彼女を優しく抱き締めた。

 

「あのとき、シャルが行ってくれなかったらうちらはきっと後悔しとった。せやけど、シャルを危険な目に遭わせたんも事実や。ほんまにごめん……うちらが不甲斐ないせいで……」

 

一歩間違えればシャルルだって帰ってこられなかったかもしれない、そのことが八神はやてという、いくら部隊長を務めているとはいえ、未だ少女でしかない彼女に言い知れぬ不安を与えていたのだった。

シャルルは、そうやって心配してくれたこと、そして何よりジルヴェスのおまけなどではなく、シャルル個人の帰還を心から喜んでいるはやての姿を見て、何も言えなくなるほどの嬉しさを感じていた。こんなとき、自分は一人ではない、孤独などでは決してないのだと思うことが出来る、シャルルはそう思っていた。

 

「……みんな食堂に()る。せやから早く行ってやり」

 

はやてはそう言って、2人を部屋から出て行かせた。

 

「……失礼しました」

 

2人はその言葉に従って部屋を後にした。

 

「……………………危うく泣いてしまうとこやった……うちの泣いとるとこなんて見られたくない…………せやけど、ほんまに無事帰ってきてくれて良かった……」

 

ジルヴェスたちの帰還による安堵が、一人になり緊張の糸が切れたことで一気に増幅してきて、彼女の目からは涙が(こぼ)れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ジルヴェスさん、私はちょっと心を落ち着けてからみなさんに挨拶をしてくるので、ここで部屋に戻ります」

「え?」

 

「すいません」、そう言って、シャルルはジルヴェスからの答えを待たずに逃げるように走り去ってしまった。

 

「……どうしたんだろうか」

 

ジルヴェスにしてみれば突然に変わったシャルルの態度に不可解な思いしかなかった。

 

「…………けどまぁ、俺が考えたところで正解なんて分かんないし、今は先に行くべきところがあるもんな」

 

ただ、ジルヴェスはそう呟くと進めていた歩をさらに早めて食堂へ、彼にとって大切なみんなのいる場所へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティア、何でそんなに落ち込んでるの?」

 

スバルはどよんと肩を落とし、俯くティアナを見て、どうにかしようと言葉をかけている。

 

「何でって、そんなの決まってるじゃない!」

 

結果的にティアナはガバッと起き上がり、ある意味スバルの目的は果たされた。しかし、ティアナは軽く怒鳴るようだったが……。

 

「分かってる。だけど、さっきも言ったけど、ジルヴェスは絶対に帰ってくるよ。だから安心しなよ。ずっと心配してたらティアの身が()たないよ」

 

スバルは心底心配そうな表情を浮かべてティアナに語りかける。

 

「…………そんなこと分かってるわよ……でも、それでも安心出来ないわよ……あいつが帰って来なかったら安心なんて出来るはずないじゃない」

 

ティアナは弱音を吐くようにぽつりぽつりと呟く。

 

「じゃあ、大丈夫。今すぐ安心出来るね」

 

すると、スバルはそう言って微笑んだ。

ただ、その目は真っ直ぐにティアナを見ているようで、彼女のさらに後ろの方を見ているようだった。

 

「嘘…………!?」

 

そんなスバルの様子の意味に気付いて、期待に瞳を輝かせ、そして勢いよく後ろを振り返った。

 

「…………た、ただいま」

 

そうして移り変わった彼女の視界の中にはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべ、こちらに歩いてくるジルヴェスが映っていた。

 

「ジルヴェス!」

 

ティアナは居ても立ってもいられず、ジルヴェスに向かって駆け出していた。

 

「本当に帰ってきた…………あ、いや、別に心配なんてしてなかったわよ。あんたならどうせケロッとした顔して帰ってくると思ってたもの」

 

ただ、何となくそのままティアナがジルヴェスに抱き付くことをスバルが密かに期待していたのだが、ティアナは抱き付くことなどせず、さらにはバレバレな嘘まで吐き始めていた。

 

「ティア…………はぁ……」

 

そんなダメダメな親友の姿を見て、スバルは深いため息を吐いていた。

 

「本当にごめん。勝手なことしたと思ってる。けど、心配してくれてありがとな、ティア」

 

そして、ジルヴェスにはティアナの「嘘」は当然バレバレだった。

 

「な、別に心配してないわよ。変なこと言わないでよ」

 

それでも否定するのがティアナであるわけだが、ジルヴェスを視界に捉えた瞬間に表情が柔らかくなり、今もどこか緩んでしまいそうな顔をしている時点で、それらの言葉には何ら説得力はなかった。

 

「じゃあいいや。スバル、ごめんな」

 

けれど敢えてジルヴェスはそのティアナの「否定」に乗ることにし、今度はスバルに謝罪をした。

 

「ううん。それより、ティアがこんなでごめんね」

 

そして、スバルは真剣な顔を作ってそう言った。

 

「スバル?」

 

ただ、即刻ティアナからの射殺さんばかりの視線が飛んできたが……。

 

「な、何でもないよ?」

 

さすがに悪ふざけが過ぎたと反省したのか、はぐらかそうとしながらもスバルは割とシュンとしていた。

 

「それより、シャルはどこ?」

 

スバルはティアナからのさらなる口撃が飛んでくる前に話を逸らそうと、ジルヴェスにそう訊ねた。

 

「ああ、シャルはなんかやることがあるって言って先に部屋に戻ってった。けどなんか様子が変だったな」

 

ジルヴェスはそれに答えながらも自身の気になる点について考え込んでいた。

 

「あんた、シャルに変なことしたんじゃないの?」

「そんなわけあるか」

 

ティアナが疑うような目でジルヴェスを見てくるが、すぐにジルヴェスはそれを否定する。

少なくともジルヴェスにはシャルルの様子をおかしくさせた行動に対する自覚はなかった。

 

「ふーん」

 

「本当かしらね」なんて思ってそうな顔をティアナはしている。

 

「何だよ。そもそも仮に何かあってもティアには関係ないだろ」

 

ジルヴェスは何となく居心地の悪い感じがしてつい口が滑ったようにティアナに向かってそのように言ってしまった。言ってしまった後に、絶対何か言われると悟った。今のは確実に余計な一言だったと自覚した。

 

「ジルヴェスには呆れるよ、全く……」

 

ただ、それに対して反応したのはティアナではなくスバルであったのだが。

 

「え?」

 

だから、思わぬ方向から非難にジルヴェスは驚いていた。

 

「こんなにもティアは分かり--むぐっ」

「…………余計なこと言わなくていいのよっ……!」

 

そんなジルヴェスにスバルがさらに何か言おうとしたところでティアナがスバルの口を塞ぎ、その続き言わせない。そして、彼女の耳元で怒ったように小声で囁いた。

 

「…………えー、でも……」

「……でも、じゃない。もう部屋に帰るわよ」

 

未だスバルは何か言いたげにしていたが、ティアナの声には有無を言わせない力があった。

 

「……まぁ、ジルヴェスが帰ってきて嬉しかったわ。あたしたちは部屋に戻るから、さっさと他の人のところに行きなさいよ」

 

ティアナはスバルを引っ張っての去り際、ジルヴェスに向かってそう言った。

スバルはそれを聞いて、ティアらしいな、なんて考えていたし、実はジルヴェスも似たようなことを考えていたのだった。

 

 

 

 








ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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