1日目
しっかし世の中を便利になったもんだ。こんな便利なゴミ箱が生まれるなんてな。どんなものでも消滅させるブラックホール。まぁ日に日に縮小していくんだが。こいつが発見されて1ヶ月、ゴミ箱として利用出来るとわかってから、俺がここにものを捨てる事を任された。まぁ直径70cmの穴に捨てられるものなんざタカが知れてるが、時間をかけりゃトラックでも潰せる。
真空な上に真っ暗な部屋。特殊ゴーグルと防護服に酸素ボンベと、意外と重いな…。うっかりこいつに俺が触れて作業着やらが吸い込まれたら面倒だ、気をつけよう。
研究によれば、こいつは物を吸い込めば吸い込むほど縮小速度が早まるらしい。その大きさも観察しろってさ。ま、こんな楽な仕事はねぇし、構わないが。
今日のゴミは13kg。少々重労働だが、これだけで金が貰えるならいいさ。
2日目。
今日も今日とてゴミ捨てだ。あぁその前に、大きさの記録だったな。えーっと、昨日の大きさが1.2mで、今日は70cmと。まぁ何キロ捨てたらどのくらい縮むか、みたいな研究は博士とかの仕事だ。俺はこいつを記録して、○○博士にレポートを送って、ゴミを捨てるだけだしな。
えーっと、今日のゴミは9kgっと。さて、とっとと捨てて本でも読むか。
5日目。
さて、今日も記録をしようか。えーっと、昨日の大きさは2.5mで、今日の大きさは70cm…と。しっかし、元は20mもあったらしいが、随分小さくなったもんだ。
この機材を担いでの作業も随分慣れた。まぁ、入口から19mも歩いてゴミを捨てなけりゃならないのは面倒だが。
今日のゴミは3.5kg。随分少ないな。楽でいいが。
そろそろこの収容施設内にクレーンでも作ってもらうか。
20日目。
さ、記録記録。昨日の大きさが5.6mで、今日の大きさは70cm…と。
真っ暗な部屋の中、特殊ゴーグルでレポートを書くのも随分慣れた。ゴミ捨ても、クレーンを使って捨てられるしな。ゴミ捨てにクレーンなんて大袈裟だが、何せ入口からあいつまでの距離は入口から220mもある。こいつが無ければ、俺はこの仕事を受けてなかっただろう。初日からこいつがあって良かったぜ。20日間もお世話になってるし、愛着もだんだん湧いてきたな。
今日のゴミは25kg。随分多いな。まぁ、クレーンを使うから関係ねぇが。
30日目。
記録開始。昨日の大きさが7.8mで、今日の大きさが70cm…と。まぁ昨日156kgも捨てたしな。そりゃこんだけ縮むか。
まぁ、こいつの縮小には海水も使われたらしいしな。元の大きさが1280mだったわけだし、それに比べたら随分縮んだもんだ。
このベルトコンベアにも随分お世話になったな。30日間毎日動いてるし、そろそろメンテナンス位はしてやるか。全長1km超えのベルトコンベアなんて、ここくらいにしか存在しないだろうしな。
今日のゴミは6.2kg。ま、ベルトコンベアに乗せれば楽だな。つか、こんなに捨てたら明日には消えてるんじゃないのか?
60日目。
さて、記録記録と。昨日の大きさが2.5mで、今日の大きさが70cm…と。まぁ捨てた量が2kgなら、縮む量もこんなもんか。
この仕事を初めて60日目。収容室は段階的に小さくなり、今じゃ5m四方の部屋だ。ゴミ捨ても随分楽になったもんだ。最初の収容所の大きさは20km四方だったって話だしな。随分小さくなったもんだ。
収容所跡にも街が出来てきた。県名は長野県ってやつになるらしい。まぁ、この収容所の周囲は立ち入り禁止なんだがな。
最近、大学の友人と会うことがあった。もちろんここの話はしてないぜ?そいつは、今は地元の福岡県に帰って自宅の畑を継いだらしい。俺も久しく地元に帰ってねぇなぁ。久しぶりに帰ってみるか。地元の…あれ、どこだっけか。確か長野県…いや待て待て、それはこれからできる県の名前だろ。…あれ、じゃあ俺の地元は?
…っと、そんな考えは後にしよう。先に仕事だ。今日のゴミは6.2kg。もうこいつに海水が流し込まれることもないだろう。そんなことすれば、この便利なゴミ箱は一日でおさらばだしな。
100日目。
さて、記録記録…と。昨日の大きさが10.2mで、今日の大きさが70cm…と。
しかし、こんな無人島に一人暮らしの生活にも随分慣れてきた。まぁ、この大きさになるまで随分時間がかかったらしいが。だってよ、元の大きさは350kmだぜ?それが今や70cm。海水流し込みまくったらこの大きさになったらしい。すげぇな全く。
そういえば聞いてくれよ、世界でこの言語を使う人は珍しいらしいぜ?さながら、絶滅危惧種ってやつか?まぁ、最近はこの言語を使う外国人が増えてきたらしいが。
さて、今日も仕事だ。今日のゴミは9kg…少し重労働だな。
200日目
さて、記録だな。昨日の大きさが6.5mで、今日の大きさは70cm…と。
人工島生活も随分慣れた。まぁ、食料から何からは全て財団が支給してくれるしな。
そういや、俺は日本人っていう人種らしい。財団に雇われたのも、俺が珍しいからって理由らしい。まぁSCP扱いされないだけマシだからな。
しかし、元の大きさが15000kmだったこいつも、今じゃこの大きさか。ここまでの大きさにするために、海水をどんだけ使ったんだか。
そういや、日本って国ができるらしい。なんでも、こいつが縮小した跡に残っていた島を国扱いするらしいな。…そう、とても栄誉なことさ。日本人の俺の国ができるんだ。それもこれも、ここで毎日ゴミを捨て続けている俺の功績のおかげかな。
さて、ELZA博士にこのレポートを送ってくるか。今日はゴミもないしな。
365日目。
誰がこんな事をした?俺が悪いのか?いやいや、この大きさになるまでに海水ぶち込み続けたのは財団だ。俺がゴミをぶち込み始めた時はせいぜい20m。財団が見つけた時の大きさは70000km。それに比べたら、俺のしたことなんて耳のクソほどのもんだろう?なぁ、俺のせいじゃないよなぁ?
今まで365日の間に捨てたゴミの量は実に56万トン。だが、財団が流し込んだ海水の量は数億トンだ。知ったことじゃねぇ。
な?俺のせいじゃないだろう?だからそんな目で俺を見るなよ。違う、違う。俺のせいじゃない。お前のせいだと責めるな。責めないでくれ。やめてくれ、やめろ。俺のせいじゃない。
俺のせいじゃない。お前のせいだ。
日記の最後のページ。
俺は生き残らなければならない。生き残って、このSCPを抑えなければならない。
先日、財団に向けて一通の手紙を出した。内容は、このSCPの異常性を纏めたもの。だが、この日記は誰にも存在がバレていない。
手紙を出して数日、一人の人間が人工島を訪ねてきた。財団の職員と名乗ったその人間に、俺はこのSCPの全てを語った。
その人間は「世界は全て元に戻る。その時、このSCPの特異性を覚えている人間がいなくてはならない。君はそれになるんだ。では、新しい世界で会おう。その時、どうか我々を忘れないでいてくれ…」と語り、去っていった。
世界は戻るのか、なんて話はどうでもいい。このSCPから生き残った俺は、こいつをずっと管理しなければならない。それが俺の使命だ。
…最悪、俺が死んでいたとしよう。そしたら、このSCPの収容室の入口に、この日記を置いておく。それを見て、理解してくれ。このSCPの異常性を。
新しい世界よ、どうか俺を忘れないでくれ。
このSCPはゴミ箱では無い。このSCPにとって、ゴミ同然なのは俺達とこの世界だ。
補遺1:このノートは、SCP-280-JPの傍にいた一人の男が所持していました。男は財団の職員と名乗りましたが、財団に同名の人間がいた記録はありませんでした。しかし、O5-◻️◻️はこの男の発言に興味を示し、SCP-280-JP専門の職員に任命しました。また、このノートは現在O5-◻️◻️が所持しており、同職員の○○も条件付きで日記の譲渡を同意しました。
補遺2:現在、SCP-280-JPにいかなる物質も投入することは許されていません。収容室として新たに真空、無音、無光で5m四方の部屋が建設されました。これは、○○職員の提示した条件を元に、O5-◻️◻️の指示で建設されました。
補遺3:SCP-280-JPの元の大きさは1.1mだったことが、財団職員によって記録されています。
この小説はSCP財団のSCP-280-JP(http://scp-jp.wikidot.com/scp-280-jp)を中心としたSCP二次創作SSです。
SCP-280-JPに関して独自の解釈が含まれています。
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