それでも糸は紡がれ続ける—女傑達の英雄遺文—   作:護人ベリアス

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序章  語り部達の独白
真にその糸は途切れたか?


 一人の道化がとある荒野でその身体を野に晒した。

 

 

 その道化の名はアルゴノゥト。

 

 

 ミノタウロスを討ち果たし、一時は英雄とまで呼ばれたこともあった男。

 

 だが所詮道化は道化。英雄の器などありはしない。

 

 道化とは、滑稽な言動で他人を楽しませ、笑顔にする者のこと。

 

 だからアルゴノゥトは道化らしくその死を以てして多くの人々を笑わせ続けた。

 

 誰も枯れない涙なんて流さなかったし、悲しみに暮れたりなんかしなかった。

 

 みんな、口を開けて、空を仰いで、一緒に笑ったの。

 

 そう。

 

 みんなみんな。

 

 

 アルゴノゥトの死を嗤ったのだ。

 

 

 ほんの少し前までアルゴノゥトを英雄と称えた人々がその死を汚し、分不相応な振る舞いを嗤った。

 

 アルゴノゥトの力でミノタウロスと言う闇を打ち払ったはずのラクリオス王国は、そのアルゴノゥトを邪魔ものと見なし平然と見捨てた。

 

 それが招いたのがアルゴノゥトの死。

 

 誰もがアルゴノゥトの死を嗤った。

 

 誰もがアルゴノゥトを助けなかった。

 

 ある者は保身のために目を背け。

 

 ある者は無力を呪った。

 

 その中に私もいた。

 

 アルゴノゥトの『物語』を綴りその生き様を後世に伝えると、アルゴノゥトに誓ったこの私も。

 

 オルナティア・ラクリオスは如何に言葉を弄した所でラクリオス王家の醜い血から逃れることなどできなかったのだ。

 

 私はアルゴノゥトが死地に赴くのを止めることができなかった。

 

 私は憎い。

 

 救国の英雄と称えたにもかかわらずアルゴノゥトを手のひらを反すように見捨てたこの国も。

 

 アルゴノゥトを破滅へと導いたこの世界も。

 

 アルゴノゥトの死を見ていることしかできなかった私自身も。

 

 みんなみんな憎くて仕方ない。

 

 私は一度アルゴノゥトに絶望から救われた。

 

 だがやはりアルゴノゥトの言葉はまやかしでしかなかった。

 

 アルゴノゥトの無慈悲な死が私にそれを気付かせた。

 

 虚言を弄した他ならぬアルゴノゥトがそれを自らの死で証明した。

 

 やはり希望なんてない。

 

 やはりこの世界に救う価値なんてない。

 

 誰よりも人々の笑顔を願い、誰よりも人々の幸せを願い、誰よりも悲しみを背負ってきたアルゴノゥトを殺したこんな世界なんて。

 

 滅びてしまえばいい。

 

 私が望まずとも『大穴』から溢れ出る無限の魔物はこのラクリオス王国だけでなく世界中を飲み込もうとしている。

 

 これは人類の愚行への報い。

 

 その報いでみんなみんな滅びてしまえ。

 

 アルゴノゥトがその身を滅ぼしたようにみんなみんな滅びてしまえば…

 

 

 

 ☆

 

 

 

 さぁさぁ語り部のオルナ殿のお言葉を借りまして、これより語るは一つの物語。

 

 オルナ殿の申される通りの惨状がこの世界をその当時襲っていたのです。

 

 止まらぬ魔物の侵攻。

 

 次々と陥落していく人類の拠点と狭まる居住域。

 

 そんな中で人類は未だ団結せず醜い抗争を繰り返し、その貴重な時間と資源を食いつぶしていました。

 

 そんな由々しき事態を止めるために立ったのがオルナ殿も申された道化アルゴノゥト。

 

 道化アルゴノゥトは、忌まわしきミノタウロスの力を借り、人類の尊厳を捨てようとしていた『人類最後の楽園』ラクリオス王国に赴きました。

 

 そしてミノタウロスを討ち果たし、人類の尊厳を取り戻した。

 

 ですが、嗚呼、恐ろしいかな。人類の真の敵は人類自身。

 

 人類は醜い抗争を終えることができず、その抗争に巻き込まれる形で道化アルゴノゥトは命を落とした。

 

『英雄の船』の船頭たらんとし、人類に笑顔と希望をもたらそうと奮闘したアルゴノゥト。

 

 個人の勇は欠けようとも、英雄を率いる英雄の中の英雄の器を示したアルゴノゥト。

 

 そのアルゴノゥトは魔物ではなく他ならぬ人類の手によって非業の死を遂げたのです。

 

 嗚呼、悔しいかな。真の英雄を失いしこと。

 

 こうして人類は自らの手で英雄の船頭を屠ってしまった。

 

 確かにオルナ殿の仰る通り救う価値などないと言っても仕方がないような愚行を人類は犯したのは事実。

 

 そして人類の愚行により世界は魔物によって正真正銘の破滅へと向かっていたのもまた事実。

 

 ですがオルナ殿は一つ、大事なことを忘れておりました。

 

 

 それは希望が未だ潰えていないということ。

 

 

 アルゴノゥトは確かに希望を遺していた。私はそう断言できるのです。

 

 なぜか、と?

 

 いやはや、お恥ずかしいながら私もまたそのアルゴノゥトから希望を託された者の一人でしてなぁ。

 

 ええ。お話いたしましょう。もしあなたがご興味があると申されるならば。

 

 仮にも私はかの道化の傍らでその偉業を見届けた身。

 

 さらに言うなれば、本来歌を歌うことのみが我が使命と心得ていたにも関わらず、その偉業に深く肩入れしてしまった身。

 

 私ならば、誰よりも詳しく誰よりも鮮明にお話しすることができるでしょう。

 

 ええ。お誓いしましょう。ここで語られるは真実の物語であると。

 

 吟遊詩人ウィーシェの名に懸けて、英雄亡き後の物語を力の及ぶ限り鮮明に語らせていただきましょう。

 

 

 アルゴノゥトに見出されし、とある女傑達による英雄遺文を。。

 

 その女傑達によって紡がれた(希望)の物語を。




これにて物語の序章、導入は終わりです。
次話から物語に入っていきます。

今後作品を続けていく上で登場させる予定のオリキャラに関わるアンケートです。アリアドネとアイズさん、リュールゥさんとリューさん、と転生思想らしき構想が垣間見えますが、今作でそれを採用するのは違和感はありますか?その構想をどのように思われているでしょうか?

  • 転生なしでアルゴノゥトと原作は無関係
  • 転生と言うよりは容姿が似ているだけ
  • 転生思想あり。性格等での類似点がある
  • 転生でキャラ同士に因果があるほどの関係
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