それでも糸は紡がれ続ける—女傑達の英雄遺文—   作:護人ベリアス

11 / 19
お気に入り登録、感想ありがとうございます!
励みになってます!

アンケートご協力ありがとうございました。締め切らせて頂きました。
アンケート結果を考慮しながらオリキャラ構築していきます。
…それにしても原作キャラに似せたオリキャラを考えるにあたって、男性キャラ使いたいキャラ凄く限られるんですよね…(そのため初期アリアドネ側近衆が完全オリキャラと化した…)
ただの粗暴な男性冒険者は今作に寸分たりとも合わないですし…(モルド、ボールス等々)
あとはどうにも影が薄い男達しか…(ラウル等々)
結局ユーリ、クロッゾ、ガルムスでもう良い原作男性キャラほぼ使い切ってるとこある気も…(意図的に一人忘れてるのは気のせい!)
ということで現状検討中の原作準拠オリキャラが全員女傑枠!
…もっと検討が必要そうです。


明ける夜と舞い降りる朝日

 もうじき夜は明ける。

 

 徹夜越しで続けられた魔物相手の戦術を問う軍議は実りあるものとなった。

 

 そして今は僅かばかりの休息の時間を皆さんに与えるために軍議はお開きにしていた。

 

 なのでつい少し前は白熱した議論が行われていたこの部屋にも静寂が訪れている。

 

 恐らく今頃皆さんは僅かながらの睡眠を取られていることだろう。

 

 それはもちろん来たる準備のため。

 

 ただ私は未だ睡眠も取らず軍議の際に座っていた席から離れることさえもなかった。

 

 それは私を不安と高揚感が襲い続けていたから。

 

 夜が明けたその時。

 

 私はこのナクソスに住む全ての方々に伝えなければならない。

 

 私達の進む道を。

 

 私達に幸をもたらすに違いないと信じずにはいられない私の構想を。

 

 私達が引き継ぐアルゴノゥトの遺志を。

 

 その全てを皆さんに伝え、皆さんの支持を勝ち取り、支持を与えてくださる全ての方々の力を投じてアルゴノゥトがやり遺した大業を始めなければならない。

 

 私は本当に皆さんの支持を得られるか不安で仕方がない。

 

 武人であり吟遊詩人である戦いに慣れた軍議に身を連ねた方々はいい。彼彼女らは皆戦いへの抵抗など抱いていないだろうから。

 

 だがナクソスに住む方々はそんな方々だけではない。

 

 戦いには皆さん積極的に協力して下さるが、これまでの戦いはあくまで防衛のため。自ら平和を捨て、戦いに打って出る攻勢のためではない。

 

 だから皆さんが本当に支持を与えて下さるかという不安がどうしても消えないのだ。

 

 その一方私はそんな不安と拮抗するほどの高揚感も覚えていた。

 

 それは言うまでもなくようやく行動を起こすことができるからである。

 

 ようやく魔物に皆さんが苦しんでいるのを傍観するしかない時が終わる。

 

 ようやく自身の無力を呪う苦しみが少し和らぐ。

 

 ようやく人を統べる王女としての責務を果たすための行動を起こせる。

 

 ようやくアルの遺志を継ぐための戦いに身を投じることができる。

 

 三年だ。

 

 三年も待ったのだ。

 

 だからこそ高揚感も著しい。

 

 私はアルがやり遺した大業を成し遂げる。

 

 私がアルの遺志を継ぐ。

 

 私に宿る意志はこれまで以上に昂っていた。

 

 そんな風に不安と高揚感が訪れては消えを繰り返いつつも、夜明けと共に伝達して行う手はずになっている演説で話すべきことを私は睡眠もとらずに考え込んでいたのだ。

 

 そんな時戸を小さく叩く音が聞こえ、軍議も終わったこんな真夜中に誰かと思いつつその音に私は応じた。

 

「誰です?何事ですか?」

 

 そう私は応じたが、返事がなぜか返ってこない。

 

 聞こえた音は気のせいだとは思えない。

 

 誰かが外にいる気配は確かにある。

 

 にも関わらず返事が返ってこない。

 

 そばで色々と手配をしてくださるルナもこんな深夜にはいない。

 

 だからここにいるのは私一人。

 

 ならなぜ音は立った?

 

 不審に思った私は普段からそばに立てかけてある剣に即座に手を伸ばす。

 

 その私の動きに反応するかのように開く戸。

 

 戸の隙間から今にも剣を抜かんと構える私の視界に飛び込んできたのはある意味想定範囲内の人影だった。

 

「…リュールゥ…あなたですか?」

 

「…失礼。すっかり御就寝中かと思っていました」

 

「なのになぜ来たのですか…」

 

 私が呆れ半分に迎え入れたのは先程まで軍議に同席していたはずのリュールゥだった。

 

 リュールゥは驚きと申し訳なさが混じったような表情をしつつ、静かに戸を開け入ってくる。

 

 そしてすぐに後ろにはアンドレイが何やら仰々しい大きさの何かを抱えているのを見て、私の視線はなぜ現れたかも分からないリュールゥではなくそちらに向いていた。

 

「…アンドレイは何をお持ちで?」

 

「おっと…早々に気付かれてしまいましたか。実はこれをアリア殿に密かにお届けしようと思っていましてな…それは見事に失敗した、ということですが」

 

「私に…ですか?それは一体何です?」

 

 なぜ密かにでなければならなかったか、などということをリュールゥに聞こうとは思わなかった。どうせはぐらかされるだけだからである。

 

 それで私はその仰々しい大きさの何かの中身を問う。それは黒い幕で覆われ何が中にあるか分からなかったからである。

 

 するとリュールゥはアンドレイに部屋に入らせ、それを床に置かせるとそれが何かを言って下った。

 

「アリア殿。これは鎧にございます」

 

 リュールゥはそう言いつつ幕を剥がし、その中を露にする。

 

『鎧』

 

 その言葉のみでは私はピンと来なかった。

 

 だがリュールゥのそばに置かれた黄金に輝く鎧に私は僅かながら見覚えがあったのだ。

 

「これ…は…まるで…アルが纏っていたような…」

 

 私の言葉は衝撃のあまり途切れ途切れになっていた。

 

 そこにあった鎧はまるで私をミノタウロスから来てくださった時にアルが纏っていた鎧に趣がとても似ていたからである。

 

「ええ。お察しの通りこの鎧はアル殿が纏っていらした鎧を模して制作して頂きました」

 

「私のために…ですか?」

 

「ええ。その通りです。さてアリア殿。ここで一つ問いにございます。アリア殿の纏う鎧に求められる要素は何であるか、です」

 

「私の鎧に求められる要素…?」

 

 私の疑問に答えてくれたかと思えば、早々に質問をぶつけてくるリュールゥ。

 

 そのリュールゥの視線からまたもリュールゥが私の反応を試していることが分かった私はしばらく思考を巡らした後に思い浮かんだ答えを告げた。

 

「まず言えることは…私は戦闘において先陣に立つことはできません。なので機動性を求める軽装である必要も防御性を高める重装である必要もないかと思います。違いますか?」

 

「そこの点は仰る通り…なのですがこの鎧を製作して下さった方は妥協ができぬお方で軽装でありつつ防御性も高いという素材も錬成も最高と言っても過言ではないでしょう」

 

「それほどの凄腕の鍛冶師の方にこの鎧を?相当費用もかさんだのではないですか?」

 

「いえいえ。この鎧を製作して下さった方はアル殿に選ばれしアリア殿を支えようと喜んで制作に協力してくださいました。費用などお気になさるお方でもございません。まぁ…あのお方も今は自らの道を進まれておりますが故に遠からぬうちにお会いできるでしょう。…というのはともかく。ならばアリア殿はどうお考えで?」

 

「それは…視認性…ですか?」

 

「それは如何なる理由で?」

 

 私がぼんやりと浮かんでいた答えを告げると、即座にリュールゥは私に問い返す。それに私は確信を持てないながらも応じた。

 

「私は戦場においては言わば総指揮官に値する役回りを果たすことになるのでしょう。そうなればその戦場の前線に私が立っている。私が見ている。私も兵の皆さんと運命を共にしている。そんな事実を味方の皆さんにお伝えすることができれば、自惚れかもしれませんが皆さんの士気も上がります。そしてそれを簡単に果たそうとすれば、目立つ衣装を纏うのが一番」

 

「流石アリア殿。実にご明察ですなぁ。指揮を執る者が安全な地にいるのではなく共に戦場で身を危険に晒している…アリア殿が仰る通りその事実を知った兵達の士気は大いに上がるでしょう。それはアリア殿がこのナクソスの防衛戦で壁の上に立つことで十分に証明されていることでしょう。それをより明快に示すのが『形』。この黄金の鎧は多くのことを示すのに役に立ちます」

 

「多くのこととは?」

 

「一番はアリア殿仰った視認性。味方の数多の兵がアリア殿の姿を一目で分かる。示されるは指導者であるアリア殿の風格と絶対的立場。指導者とはそのような『形』から整えていかねば、真に人を統べる者とは見なして頂けぬもの。力を示し『形』が整って初めてアリア殿は真に人を統べる者になるのです。そしてアリア殿はこのナクソスでお力をお示しになっている。ならば…」

 

「あとは『形』を整えるのみ。私のこれまで纏ってきた貧相な革の鎧では風格において他の方と差がつけられぬ、と?」

 

「仰る通りです。正直我々をお迎え頂いた時、風貌だけではアリア殿がこのナクソスを率いているとは判断できませんでしたからなぁ。もちろん周囲の反応を見れば一目瞭然なのですが、こういったものはアリア殿ことを全く知らぬ者でも分からなければ意味がありませぬ」

 

 どうやら私の答えはリュールゥに合格点を与えて頂けたらしい。

 

 だがそれは即ちこれまでの私に足りぬことがあったという指摘でもあり、今後はリュールゥの言葉を心に刻み行動していかなくてはならない。

 

 ただリュールゥがこの黄金の鎧に込めた意味はそれだけではなかった。

 

「そしてこの鎧は多くの者にとって、そして特にアリア殿にとってどのような意味を持つか…それは言うに及びますまい」

 

「私にとって…ですか?」

 

 私にとってこの黄金の鎧がどのような意味を持つか。

 

 リュールゥの述べようとしたことの意味を考える。

 

 これはアルが纏っていた鎧の意匠をとことん受け継ぎ制作されたもの。

 

 それをこの私が纏う。

 

 つまり…

 

 

「私がアルの遺志を継ぐことを体現した鎧…」

 

 

 私の呟きにリュールゥはニヤリと笑う。

 

 そうするとリュールゥはアンドレイと共にその場に跪くと、アルの遺志宿る鎧を捧げ持ち、告げた。

 

 

「アリアドネ。どうかこの鎧を纏いアル殿の遺志がここに引き継がれんことをこの世界にお示しあれ。世界は。希望を求める人々は。それを何よりも待ち望んでおります」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 時は来た。

 

 お姉様がお示しになった私達の道を皆さんにお姉様のお言葉でお伝えする時がついに来た。

 

 とは言ってもそれは深夜に行われた軍議で決められ、急遽皆さんにお伝えする事柄ではあった。

 

 だが予告した時間にもなっていないのにナクソス中の家々はもぬけの殻なのではと疑うほどの人垣がお姉様が演説を行われると仰った門の前にはできあがっていた。

 

 それもお姉様のお言葉を固唾を飲んで待っていると言わんばかりの私語一つない静寂で。

 

 私はお姉様のお言葉を待つ皆さんと共にお姉様がお越しになるのを待った。

 

 そうしてお姉様は割れた人垣の間からお越しになった。

 

 お越しになったお姉様が纏っていたのは黄金の鎧と黒い外套。

 

 夜が明け、空から差し始めた日の光が辺りを照らし始める。

 

 その光をお姉様の纏う鎧は何物よりも受け取り、神々しく光り輝く。

 

 お姉様のお越しを喜ぶかのように優しく辺りを包み込む風。

 

 その風はお姉様の外套を静かにはためかせる。

 

 その姿はまるで…

 

 

 アル兄さんのようであった。

 

 

 容姿などまるで違う。

 

 その身に帯びる雰囲気も何もかも違う。

 

 なのに私はアル兄さんを思い出していた。

 

 私を、私達の心を救ってくださり、希望をもたらしてくれた英雄の面影を。

 

 今のお姉様とアル兄さんの今の共通点は何か。

 

 それはアル兄さんがその鎧を纏った時のみに醸し出していたもの。

 

 それはお姉様がその鎧を纏っているためか感じるもの。

 

 それは神々しさのようなものかもしれない。

 

 私はその神々しさにお姉様とアル兄さんの全く同じものを感じているのだ、と直感した。

 

 その神々しさに周囲からは小さな唾を飲む音が聞こえるのは私以外も同じことを感じているという証明になるかもしれない。

 

 そんな神々しさを纏うお姉様は人垣を通り抜け、静かに階段を上っていく。

 

 そうしてお姉様が辿り着いたのは門の真上。

 

 そのお姉様の姿を誰もが様々な思いで見上げていることだろう。

 

 お姉様は辺りを見渡す。

 

 それはまるでしばらく一人一人の表情を確かめるように。

 

 ここに集う皆さん一人一人を気遣うように。

 

 そして一通り見渡したお姉様は一度天を見上げる。

 

 まるで天に向かって何かを伝えている。そんな風にも見えた。

 

 その表情には寂しさが混じっているようにも見えた。

 

 だがお姉様が天を見上げるのを止めたその時。

 

 お姉様の表情は変わっていた。

 

 その表情には決意と覚悟がはっきりと表れていた。

 

 寂しさなんてもう消えていた。

 

 

 それはお姉様が希望を紡ぎ始める合図であった。

 

 

「皆さん。このような早朝にお集まり頂けたことに心からの感謝を表明させて頂きたいです。そしてお集まり頂いたのは他でもありません。お伝えした通り私から皆さんにお伝えしたいことがあるから。そのお伝えしたいこととは私達の進む道です。私は今ここでそれを指し示させて頂きたいのです」

 

 お姉様の声は皆さんの静寂の中を響き渡っていく。

 

 ただただ静かで優しさの籠ったお言葉。

 

 それは皆さんへの語りかけのようであった。

 

「私達の進む道…それを私達に最初に示してくださったのは他でもない英雄アルゴノゥトでした。彼は人類の尊厳を取り戻し、反撃への糸口を掴もうとしていた…そう断言することができます。彼の勇姿を誰もが知り、誰もがその希望を受け取った…それを私含めて誰もが証言することができることでしょう。それほど英雄アルゴノゥトは偉大で私達の希望でありました」

 

 お姉様の語り掛けに周囲には多くの頷く方が見受けられる。当然私もお姉様の語り掛けに同意する者の一人。

 

 アル兄さんの存在はそれほどまでに皆さんの心に残り、皆さんを勇気付けていたのだ。

 

 でも…

 

「ですが英雄アルゴノゥトは道半ばで命を落としました。それより魔物の侵攻を止める希望は潰えたかに見え、魔物の侵攻はより苛烈を極めました。ここにいる多くの方は故郷を失い大切な者を失ってきました…それは誰もが共有する悲しみ。それは誰もが心に抱える痛み。英雄アルゴノゥトの死によってまるで希望は失われてしまったかのよう…」

 

 お姉様の告げる暗い事実は皆さんの心に重く圧し掛かる。

 

 これでは皆さんに希望を与えるどころか、絶望に導きはしないか?

 

 そんな不安を私が抱きまでしてしまうほど皆さんの表情は暗くなりつつあった。中にはお姉様から顔を背け俯いてしまう方までいた。

 

 だがそんな私の不安はただの杞憂。

 

 これまでのお姉様のお言葉は決意を伝えるというよりは事実を語り掛けるかのようなもの。

 

 だがそう感じたのはここまで。

 

 お姉様の言葉が熱を帯び始めるのはこれからであった。

 

 

「ですがあえて言いましょう。希望を与えてくれるのはただ英雄アルゴノゥトただ一人なのか、と!まず第一に希望とは与えられるものなのか、と!」

 

 

「いえ。それは違いましょう!なら誰が英雄アルゴノゥトに希望をもたらしたのか?そんな英雄がアルゴノゥトの前にいたのか?それを私は知りません。それを私達は知りません。ならば何が誰がアルゴノゥトに希望を与えたのか?それは自らが希望になるという強き意志です!」

 

「そのアルゴノゥトの意志が私達に希望をもたらしてくれました!ならどうしてアルゴノゥトと同じことができぬと私達が言うことができましょうか?アルゴノゥトは私達の希望となった。ならばアルゴノゥト亡き今その遺志を知る私達が希望となれぬはずがありません!」

 

 お姉様の次々と紡いでいく言葉。

 

 それは私達にアル兄さんと同じ境地に至れることを伝える言葉。

 

 私達に明確な目標を指し示すことで自信と希望を与える言葉。

 

「今まで存在した希望はアルゴノゥトの存在ただ一つ。だからその希望は儚く消えてしまった。ならば希望が二に三に百に千に…希望が数多増やしていけばいい。そうすれば希望は決して潰えません!その先陣を私達が切るのです!私達が英雄アルゴノゥトの後を継ぐ最初の希望となるのです!」

 

 お姉様の力強い言葉。

 

 その言葉に俯きかけていた皆さんの顔がどんどん上がっていく。

 

 それは皆さんに希望の火が灯り始めた証。

 

 だがお姉様の言葉には明確性がなかった。

 

 どうやって私達が希望になるのか、を。

 

「ですが王女様!私達はどのようにして希望になればよいのです!?そんな英雄様と同じことをするなどとても…」

 

 そしてそれを当然に疑問に抱いた方がお姉様に声を上げる。

 

 それをお姉様は聞き逃さず、すぐさま応じる。

 

「それは簡単なことです。反撃するのです。これまで人類は魔物相手に防戦一方でした。そのため住む場所も大切な人も奪われてきました。ならば防戦ではなく攻勢に出ればいいのです!」

 

「攻勢…反撃…?」

 

「王女様…つまりそれはこのナクソスを打って出るということですか…」

 

「そんな…ここを守るだけでも手一杯なのに…反撃だなんて…」

 

 お姉様が初めて口にした『反撃』と『攻勢』という言葉。

 

 それらは魔物との戦いにおいてほとんど出てこなかった言葉。

 

 多くの国と都市がその言葉を見出すことができず魔物の絶え間ない襲撃によって滅びてきた。

 

 だが私達は違うと、お姉様は告げる。

 

 その言葉にこれまで静かにお姉様の言葉を聞くだけだった皆さんも動揺と共に反応を示す。

 

 それはただ注意が散漫になっているということではなく、この場にいる多くの方の常識が今まさにお姉様の言葉によって覆され始めているという証でもあった。

 

「このナクソスは私の指揮の下数えきれない回数の魔物の襲撃を撃退してきました。それはもはや常勝。防衛において負けを知らぬ私達がどうして反撃に出て敗れることがありましょうか?どうして私達が負けるしかないと決めつけることができましょうか?」

 

「そうだ…俺達は王女様の下でずっと魔物と戦って、全て勝ってきたんだ…!」

 

「王女様の仰る通りだ!俺達は魔物に怯える必要なんてない!俺達は勝てる!」

 

「そうです!私達が力を合わせれば!王女様の元に集えば!」

 

 お姉様の言葉に次々と続いていくのは自信に溢れる声。

 

 その声はどんどんと勢いを強め、辺りを飲み込んでいく。

 

 そうして広がっていくのだ。

 

 魔物と戦って必ず勝つという強い闘志が。

 

 その勝利を導くのがお姉様であるという確信が。

 

 その自信に溢れる声に応えるお姉様もまた力強く声を張り上げる。

 

「ええ!皆さんの仰る通りです!私達は必ず勝てます!そのための策が私にはあります!その策を成就した先の道を私は示すことができます!そのためには皆さんの意志が必要なのです!皆さん自身が希望になるという強い意志が!その意志をこの私に託してくださるという心強いお言葉が!その強き意志と心強いお言葉があれば、私は英雄アルゴノゥトに代わりに道を指し示すことができます!」

 

「王女様!どうかお言葉を!」」

 

「俺達が世界の最初の希望になってやりましょう!!」

 

「私達は王女様に付いていきます!」

 

「我々は王女様のお力になります!」

 

「王女様のお示しになる道が皆に光をもたらしてくれると信じています!」

 

 声が広がっていく。

 

 お姉様と共に戦うという意志が。

 

 お姉様の示す道が世界を変えてくれるという信頼が。

 

 その世界を変える原動力が自分達にあるという自信が。

 

 その数多の声は全てお姉様の元に集約されていく。

 

 そしてお姉様は問うた。

 

「ならばお聞きしましょう!魔物を蹴散らし失われし地を奪還することができる者達が私達以外にいますか!?この存亡の危機を脱するため先陣を切るのは誰か!?」

 

「「私達!!」」

 

「アルゴノゥトに代わりこの人類の希望となるのは誰か!?」

 

「「私達!!」」

 

「その道を指し示すのは誰か!?」

 

「「王女様です!!」」

 

「ありがとうございます!!この声に籠る皆さんの声は私にとって非常に心強いもの!皆さんの強き意志と支えがあれば、必ずや私達は人類の希望となり得るでしょう!!」

 

「「おおおおお!!!!」」

 

 皆さんの一つになった力強き声。

 

 その声に気付けば私も加わっていた。私もまた皆さんと共にお姉様への自信の表明と声援の声を張り上げていた。

 

 それにお姉様は溢れんばかりの笑顔とお礼で応じ、皆さんはお姉様に地が割れんばかりの掛け声で返す。

 

 もう言葉にできないほど壮観な光景であった。

 

 お姉様が皆さんを絶望から希望へと導いていく光景。

 

 その皆さんがお姉様の言葉に応え、今度はお姉様を勇気付ける光景。

 

 そこにいる皆さんはもう心は一つだった。

 

 魔物から奪われたものを奪い返す。

 

 私達がアル兄さんに代わって人類の希望になる。

 

 その一つになった心を取りまとめるのは他の誰でもないお姉様。

 

「王女アリアドネは皆さんのご期待を決して裏切らぬことをここに誓います!これより再び始められるは英雄アルゴノゥトのやり遺せし大業!その大業を私達が成し遂げる!」

 

「「おおおおお!!!!」」

 

「天でご覧になっているであろう英雄アルゴノゥトに私達はここに誓いましょう!あなたの勇姿は忘れない!あなたの遺志は忘れない!私達はあなたの遺志を受け継ぎ、人類に尊厳と希望を取り戻す!私達はその先陣となり、私達の道を切り開いていく!これより私達が紡いでいくは英雄のやり遺した物語、『英雄遺文』であると!」

 

「「おおおおお!!!!」」

 

 お姉様の演説と皆さんの掛け声。

 

 それはアル兄さんへの誓いであった。

 

 この誓いはアル兄さんの元に届くだろうか?

 

 いや、疑うまでもない。

 

 アル兄さんはきっと今も私達を見守っている。

 

 アル兄さんはお姉様の下で人類が反撃への道を進んで行くのを見守っている。

 

 だってこの戦いの本当の先陣を切り開いたのはアル兄さんだから。

 

 どうしてアル兄さんが切り開いた道の行く末を見過ごすことなどあるだろうか?

 

 アル兄さんは私達の道を見守っている。

 

 アル兄さんはお姉様の道を見守っている。

 

 私はそう確信している。

 

 

 時は満ちた。

 

 雌伏の時はもう終わり。

 

 長く続いた夜は明けた。

 

 私達を明るく輝く朝日の光が包み込む。

 

 まるで英雄アルゴノゥトが私達の覚悟を祝福するかのように。




これにて第一章は終わりです。
雌伏の時は終わり、アリアドネを中心にナクソスから反撃の火の手が上がっていきます。
次回からは第二章。本当の意味でアリアドネの手腕が問われるのはここからです。

尚アリアドネの演説シーンに関して少々補足…というか言い訳ですね。
アリアドネと聴衆の応答で誰が人類の希望になるか等々のアリアドネの問いに聴衆が『私達』と答えるシーンを作りました。演説で聴衆の反応を求めるのはよくあることかと思いますが、直前で俺達とか我々とか一人称が多様なのに『私達』で統一ってすっごい奇妙なんですよね〜(…一応アリアドネが『私達』以外にいるか?と聞かれたから『私達』と答えたという名分は立てましたが…

こうなった理由は結局アリアドネの率いている集団の呼称がまだ存在してないからなんですよね…
『ナクソスの民』でも『ラクリオス王国の民』でも呼称として使ってもいいかな〜って思ったんですけど、『ウィーシェ』のお陰でそれも違和感がある…
なら集団の呼称を挙兵と共に決めたら良かったのでは?って感じですけど、個人的にまだ早いと思ってこうなりましたね。(正確に言うならその見せ場は後に使いたいな、と。)
ついでに言うなら組織作りは全く進んでないですし、ようやく挙兵ですからそういう諸々の決定もこれからと言った所。
そして何よりアルゴノゥトが垣間見せた種族を超えた共闘を実現するなら『ナクソスの民』も『ラクリオス王国の民』も抱擁範囲があまりに狭い。
アリアドネはその先を目指す必要があると思えばこその曖昧な表現、と言ったところです。

今後作品を続けていく上で登場させる予定のオリキャラに関わるアンケートです。アリアドネとアイズさん、リュールゥさんとリューさん、と転生思想らしき構想が垣間見えますが、今作でそれを採用するのは違和感はありますか?その構想をどのように思われているでしょうか?

  • 転生なしでアルゴノゥトと原作は無関係
  • 転生と言うよりは容姿が似ているだけ
  • 転生思想あり。性格等での類似点がある
  • 転生でキャラ同士に因果があるほどの関係
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。