それでも糸は紡がれ続ける—女傑達の英雄遺文— 作:護人ベリアス
「あぁ。レムノスへの道は拓かれたのじゃ。他ならぬ姫とその姫を守る勇士達の奮闘と尊い犠牲のお陰でな」
笑みと共に告げられたガルムスによる私達の勝利を伝える言葉。
それは一カ月にも及ぶ激闘を目の前の魔物を殲滅することのみに力を注いできた私達にとってあまり実感が湧かなかった。
だがその言葉が、勝利したという事実が少しずつ私達の心に染みわたり、その実感が私を含めた皆さんの中で大きくなっていった暫く経った時。
とうとう勝利の歓声が挙げられた。
「「おっしゃぁぁぁ!!」」
拳を突き上げ真っ先に雄たけびを挙げたのは、先程まで昨夜の諸々の影響で険悪な雰囲気に陥っていたゴヴァンとガイウス。この時ばかりは険悪な雰囲気を吹き飛ばし、あっさりと喜びを共有しあう。
雄たけびまでは挙げずとも二アールもフィーナもアンドレイもガルムスもそれぞれに笑みを浮かべて、その勝利の喜びを表情で表す。
ただその広がりつつあった勝利を喜ぶ雰囲気に今一歩馴染めぬ者は幾人かいるのが一望しただけで分かった。
「…皆々。ガルムス殿のお言葉は嬉しい限りなれど、本当に魔物が殲滅されるなどということがあり得るのか…」
「この期に及んでまだそのようなことを仰るか!?マルス殿!あれだけの激戦を終えたのです!いくら無限に湧き続けるかに見える魔物どもでも十分にあり得ることでしょう!」
「その通りです!マルス殿は心配性すぎる!」
疑問を呈したのはマルスであった。そしてその疑問によってせっかくの和やかな雰囲気を阻害されたとばかりにゴヴァンとガイウスが怒鳴る。
疑問を抱くマルスと疑問を抱かない皆さんによる危うく始まりかけた口論。
それは間隙を縫って呟かれた私の問いによって阻止された。
「リュールゥ。あなたは如何にお考えになりますか?」
問いかけた相手はリュールゥ。
リュールゥはいつもは飄々と笑みを浮かべているのに、今はなぜかその雰囲気に馴染もうとしないかのように表情を変えなかった。
ガルムスの言葉に何かしらの勝利を喜ぶ皆さんとは別の考えを抱いているのは明らか。
そしてあえてそのリュールゥに問いを発したのは、この私自身がガルムスの言葉に思う所があったからに他ならなかった。
私の問いにリュールゥは私の方を向き直ると、周囲の視線を受けながら静かに語り始めた。
「私はガルムス殿のお言葉は有難く受け取るとしても、勝利に浮かれた軽挙妄動は慎むべきかと思います。魔物がレムノス一帯から駆逐されたかは偵察を出し、確認を取るべきでしょう。よってレムノスへの入城はいくらか遅らせるべきかと」
リュールゥの意見に私は頷きで応じる。
私もほぼ同じ結論に至っていたからである。
時を急ぐ必要はない。少しばかり遅れてもレムノスは消えてなくなったりしない。
武器の枯渇に犠牲の多さによる兵力の不足、さらに疲労の蓄積という厳しい現状を抱える今、せめて疲労だけでも解消しない限り軽挙にレムノスに進撃した時に万が一があっても対処できない。
魔物が殲滅された、ならば予定通りレムノスへ入城しよう、などという軽挙な判断をできる現状ではないのである。
仮にガルムスの言葉が見込み違いであったとしても、士気を回復し疲労を解消し、ドワーフの戦士達の協力さえあれば、もう一二戦は不可能ではない。
今は連日の激戦に疲れ果てた皆さんの休息の方がレムノスへの入城という戦略目標の達成より重大だと私は判断したのである。
そしてリュールゥがほぼ同意見を述べたことにより私は大きな自信を得る。
ただリュールゥの言葉はガルムスの言葉に懐疑的であったとも取れる言葉を含んでおり、ガルムスは少々不機嫌そうにリュールゥに言った。
「…なぜじゃ吟遊詩人?俺の言葉が信じられんとでも言うのか?俺達はこの砦の外で魔物どもと戦いながらレムノスの周辺を行軍してきたのじゃぞ?」
「そうではありませぬ。ガルムス殿。このレムノス奪還はただ魔物に勝ち殲滅すればよいというだけではないのです。これはアリア殿が反撃の狼煙を挙げる重大な戦い。入念な下準備を整え、万全の態勢でレムノスに入城しなければなりません。それこそ我々吟遊詩人が思わず歌にして世界に届け語り継ぎたくなるような勇壮で誇り高く壮大な形で」
「ぬぅ…ドワーフではなぜすぐにレムノスに進撃して良いのかさっぱり分らんわ…」
ガルムスの不満にリュールゥは淡々と反論し、ガルムスをあっさりと引き下がらせる。
そうしてガルムスから私へと再び視線を戻したリュールゥは改めて告げるように言った。
「アリア殿。私はレムノスへの入城は些か早計かと思います。私の意見は以上ですが、アリア殿は如何にご判断なされますかな?」
リュールゥの私に向けられた問い。
意見を求められる者がリュールゥから私に移ったことで今度は皆さんの視線が私に向く。
リュールゥの考えを確かめた以上、私の考えは完全に定まっていた。
「…レムノスへの進撃は急ぐ必要はありません。今は休息の時かと考えます。そしてここにいる皆さんは魔物が殲滅された可能性があるというガルムスの話を決してこの場の外で他言しないように」
「なぜです!?王女様!早く魔物の襲撃で夜も眠れぬ部下達に聞かせて安心させるべきではありませんか!?」
「ガイウス殿。それが皆々の気の緩みに繋がる…そう王女様はお考えなのだ。昨夜の劣勢が就寝直後と言う気の緩んだタイミングだったが故であることは、前線で指揮していたそなたが一番分かっていよう」
「…確かに…そうですが…」
私の今聞いた話を伏せるようにという指示にガイウスが反論するが、私の意図を察したマルスが早々に理由を説明して下さり、ガイウスの反論は封じられる。
その様子を見て、私は指示を再開する。
「異論はありませんね?ではこの砦の防備を一程度固めた後に久方ぶりの偵察部隊を出す必要が生じました。その任は…」
「私ガイウスにお任せください!昨夜の失態を挽回する機会を」
「…分かりました。ガイウスに騎兵を付けて偵察の任を任せます。そしてその偵察によって砦の外で魔物の襲撃があり得ないと分かり次第、この砦を放棄し皆でレムノスに向かいましょう。それまでは一息を吐き英気を養い、偵察の報告を受けた上で考えるとしましょう。何か皆さんご質問等は?…ないならば、軍議はこれまでとしましょう。皆さんどうぞゆっくりとお休みください」
私が一通り伝えるべきと考えたことを伝えきり、質問があるか尋ねる。それに皆が首を振ったのを確認した私は早々に軍議を切り上げて、皆さんに自身の天幕で休むよう促した。
それで各々私に一礼をすると、長い一日を終えた疲労からくる溜息などを交えつつ私の天幕を立ち去っていく。
それで皆さんが立ち去れば、私もようやく長い一日を終え休息できる…
と言いたいところだったが、私の立場と心に残り続ける疑問を抱いたままの心境ではそうはいかなかった。
私は目の前でただ一人不自然に座ったままの人物に声を掛けた。
「リュールゥ。あなたにはいくつか話があります。ここに残って頂けますか?」
☆
「はてさてアリア殿からお話とは如何なる内容でしょうか…ととぼけてもよいのですが、そのような茶番は必要ありますまい。アリア殿のご質問等なんなりとお答えいたしましょう」
皆さんが立ち去った天幕にいるのは上席に座る私とそのそばの席に座るリュールゥのみ。
どうやら私に呼び止められることを分かっていたらしいリュールゥは観念したかのような表情でそう告げる。
それで遠慮なくとばかりに私は一つ目の質問をぶつけた。
「ではお言葉に甘えて…まず先程レムノスへの入城を遅らせるべきと仰った真意を伺いたいです。あなたは私達の入城を歌にしたくなるような壮大な形で行うべきと仰りました。その構想…既にリュールゥの頭の中には描かれているのではないですか?」
「そちらから来ましたか。逆に尋ねさせて頂きましょう。なぜ遅らせなければならなかったか…それはただ単に先程私とアリア殿が述べたことだけではないことはお察しの様子。どうぞ私の構想をお見抜きください」
私はそう尋ねるもののリュールゥは逆質問で応じてくる。
…要はまた私はリュールゥに試されているのだ。
だが今度ばかりは私にはその『構想』がどのようなものか皆目見当がつかなかった。
「…分かりません。レムノスを魔物から奪還し、入城した…その事実だけでも十分に壮大な大業を為したことになると思います。どのような下準備が必要なのか私には分かりません」
そう正直に答えると、リュールゥは残念そうな表情を浮かべる。
「…そうですか…ならば致し方ありません。お話ししましょう。まず今アリア殿がお纏いになっている鎧をお渡しした時、人を統べる者には何が必要かをお話ししました。覚えておいでですかな?」
「力を示し、『形』を整えること…でした。この砦における戦いの数々で私達の力は示しました…つまり必要なのは『形』を整えることだと?」
「ええ。その通りです。そして今アリア殿が整えるべき『形』は二つあります」
「その二つの事とは?」
私の答えにリュールゥはニヤリと笑いつつ指で二を示し、その二つのことを語り始めた。
「まず一つはかつてのレムノス城主デキウス殿と共に入城し、その地位をお返しするという『形』。ただレムノスを奪還するだけでなくデキウス殿が城主に復帰されたとなれば、レムノスの周辺だけでなくラクリオス王国全土にその事実は知れ渡ることでしょう。この事実がアリア殿の力をどのように示すか、が肝要」
「…場合によっては同じように私達の力でデキウスのように故郷や領地を取り戻すこともあり得る…そう思わせられる、と?」
「その通りです。これによりさらにアリア殿をお慕いして集まってくる者は増えることでしょうなぁ。ただ…」
「デキウスは重傷の身…共に入城するような『形』は整え難い…と?」
「流石に担架で運びこんで入城では、デキウス殿もご不満を抱きそうですからなぁ。この『形』を重視なさるなら、お控えなさるべきかと」
リュールゥの述べた一つ目の事は最ものことであった。
デキウスには申し訳ないが、少しでも協力してくれる方が多い方がいい私達からすれば、皆を惹きつけられる魅力は多い方がいい。利用しない手はなかった。
仮に魔物から奪還して欲しい故郷や領地があると頼み込まれて、魔物からの居住域の奪還を目指す私達が断る理由もないのもある。
納得して頷いた私にリュールゥはもう一つの『形』を告げた。
「二つ目はアリア殿とナクソスのアリア殿をお支えした者達によってレムノスは奪還されたという『形』。今の現状ではそれは整いません」
「確かに…連日の激戦を戦い抜いた私達には休息が必要ですが…っ!?まさか…ガルムス達の存在に問題が…?」
私はリュールゥの述べた『形』から察してしまった。
今レムノスへ進撃し、入城する際に動かせる方々は犠牲が多く疲労が蓄積している私達ではなくドワーフの戦士の方々が中核となる。
それでは私達の奮戦ではなくドワーフの戦士の方々の協力がレムノス奪還に繋がった…そういう風の『形』になってしまう。そうリュールゥは指摘しようとしているのである。
しかし私はその考えには反対であった。
それは大事なのは『人類の力でレムノスを奪還し反撃を開始すること』であって、『私達の力でレムノスを奪還し反撃を開始すること』なのだから。
ドワーフの方々の協力を強調するか否かで価値が変わるようなものではないし、まず第一に援軍として来てくださったドワーフの方々に不遜だと思えたのだ。
「…それはおかしいです。リュールゥ。エルフであることを誇示したりせず、エルフと同じ差別思想を持たぬあなたがそのようなことを仰るのはあまりに妙。…何かあなたは仰っていないことがあるのではないですか?」
私は鋭くリュールゥに追及する。これまで話してきたリュールゥらしからぬ言葉に疑念を抱いたからである。
だがリュールゥは表情を変えることもなく淡々と応じた。
「私は特に隠し事などしておりません。そしてアリア殿の仰ることはもっともです。人類が皆協力せねばならぬ以上そんな『形』などどうでもいい。ですがアリア殿が今あなたの手腕を世界に示さなくてはなりません。アルゴノゥトの遺志を継ぎ、希望をもたらす者の手腕は数多の魔物を撃退し、種族を問わず統べることができるほどのものである、と。そのためには総指揮を為されたアリア殿の手腕は強調されようとも他の事実は強調されるべきではない。そう私は考えています」
「…つまり世界に伝えられるべきはドワーフの方々の協力でもこの砦で戦いぬいた皆さんの奮闘でもなく、私の手腕である…と?」
「人は結局簡単なことしか理解しようとしません。故に皆が立ち向かった、などという抽象的な物語よりも皆を団結に導きアリア殿の手によって反撃の狼煙を挙げられた…の方が具体性のある物語の方が望ましい。人は『英雄』を求める生き物でありますから」
リュールゥの言い分は分からなくもなかった。
アルゴノゥトの活躍は私達の反撃を促した。
私の言葉と決断は皆さんの反撃を実現させた。
結局私含めて人は『英雄』を求め、その活躍に縋っているのである。
今はアルゴノゥトはいない。
だから私に代わりになれ。リュールゥはそう言っているのであろう。
だから他の者の活躍によって私の存在が霞むことはあってはならない。
希望は私一人でいい。そうとでも言うのだろうか?
そう考えると、もう一つの私のリュールゥに尋ねるべきことも自ずと答えが出るのではないか?そうとまで思えてきた。
「…だからガルムス達を呼び寄せたのを私の密命ということにした…そういうことですか?リュールゥ。ガルムス達援軍を呼んだのはあなたでしょう?なぜ私達に伝えなかったのです?」
「…」
私の問いにリュールゥは即座に答えない。
それはきっと何も言わずに援軍を呼んでいた後ろめたさがあるだろう、と思った。
だがその援軍とリュールゥが伏せていたせいで西側の壁が突破され、砦が陥落の危機にまで陥ったのだ。
その責任を追及せぬままと言う訳にはいかない。
私はリュールゥの弁明を沈黙を通すことで待った。
そうしてしばらくしてリュールゥは頭を下げると、静かに語り始めた。
「…独断で行動したことお詫び申し上げます。そして先程はお取り繕い頂き、感謝します。…私が皆々様にお伝え出来なかったのは、来着のタイミングと誰が援軍に来るか私にも見当がつかなかったからでした」
「…お待ちを。リュールゥにも見当がつかなかった?タイミングはまだ分かるとして、誰が援軍に来るか分からなかったとは一体何の話です?ガルムスが来るのをリュールゥは知らなかったということですか?」
リュールゥの不可解な回答に思わず私は問い返す。
リュールゥが誰が来るか知らずして誰が知っているというのだろうか?
そもそもガルムスはリュールゥから援軍として来るように言われていたかのような口ぶりであったから尚更理解に苦しむ。
そんな私にリュールゥはその疑問に答えた
「それは今も各地に散り、世界に歌と希望を届けている『ウィーシェ』の同胞達に『魔物に侵された地レムノスで反撃の狼煙が挙がる。志を共にする者はレムノスへ集え』そういった趣旨の歌を広めるよう指示を出していたため。恐らくガルムス殿はその歌を知り、『ウィーシェ』と私の繋がりを既にご存知だったがために私の檄だと思ったのでしょう。ただの要は私もその檄に誰が応じ、いつ来着するか皆目見当がつかなかったのです」
「…なぜそのような曖昧な手を…リュールゥなら要請なり他に確実な手がおありだったのでは?」
「残念ながら吟遊詩人にはそのような力はありませんなぁ…吟遊詩人の役割は希望を届けること。希望となり、大業を実現するのは我々ではございません」
「…っ」
そう告げるリュールゥの表情には悔しさがにじみ出ていた。
私にとってのリュールゥは優れた知略の持ち主でその助言に交流している期間は短くとも厚い信頼を置いているつもりだ。
だが私はついリュールゥ達『ウィーシェ』が吟遊詩人だという事実を忘れてしまっている。
リュールゥの仰る通り吟遊詩人は希望を届ける役割は果たせても、希望となり大業を実現する役割は果たせない。
人類を魔物の侵略から救うという大義の下、私がリュールゥ達『ウィーシェ』の協力が不可欠であるようにリュールゥ達にとっても私の存在が不可欠なのだ。お互いに助け合わなければ、大業を実現することはできない。それを改めて思い知らされる。
その事実はリュールゥにとって口惜しいのは言うまでもないことなのである。
そしてその滲み出る悔しさはただそれだけの理由ではなかった。
「…何より…私達が歌を伝え希望を届けても最終的に動いたのはガルムス殿のみ…ガルムス殿の率いるドワーフの戦士の方々は屈強とは申せど、各氏族の生き残りの寄せ集めだそう…つまり組織や国として動いたものはないということ…只人もエルフも小人族も獣人も皆…残りは日和見でもしているのか勇気が足りぬのか…いやぁ…私の力が全く及ばぬだけ…そういうことですかなぁ…口惜しい限り…」
リュールゥはそう自嘲する。
その時ようやく理解する。
リュールゥの想像ではもっと多くの援軍が到来し、場合によってはもっと早く到来することまであったのだ。
だから失敗の危険性が高い反撃と言う選択肢を提案できたのだと気付かされる。
だが結果はそうはならなかった。
つまりリュールゥの憶測頼りの安易な判断が危うく私達全員に死をもたらすところであったということ。
その事実にいつも余裕綽々のリュールゥでさえ沈んだ様子を見せる。
今まで見たこともないリュールゥの弱音に驚きを隠せない私は言葉を失いかける。
だが今リュールゥを慰められるのは、私しかいない。
リュールゥの自嘲が考え違いであることを伝えられるのは、リュールゥから自信を与えられ、反撃の決断を下したこの私しかいない。
今こそその恩を返す時であった。
「何を仰っているのですか。リュールゥ。あなたの言葉によって勇気と自身を与えられたこの私を前にして仰ることですか?この程度の事で自信を無くすなど、リュールゥらしくないです」
「アリア…殿?」
「日和見している者達がいる?勇気が足りぬ者がいる?そんな者達を減らすために私達はレムノスを奪還しようと決断したのです。ならばレムノス奪還の暁には『ウィーシェ』にはその大業を世界に届け、日和見をする者達を減らし、皆に勇気と希望を与える大業が与えられることでしょう。これはあなた方吟遊詩人にしか果たせぬ大業。吟遊詩人は決して無力ではありません!」
リュールゥに恩を返すべく早口に慰める言葉を私はぶつけていく。
それをリュールゥは驚きでか目を丸くしながら聞く。
一通り語り終えた私が呼吸を整えているのも茫然としたまま過ごしたリュールゥ。
そのまま何も言わぬかと思いきや、リュールゥは頬を緩めたかと思うと、いつも通りの高笑いを始めた。
「はははははっ!いやぁ。申し訳ない。アリア殿。疲れでかついつい聞き苦しいことを話してしまいましたなぁ。失礼失礼」
先程までの暗い表情を吹き飛ばそうとするかのように高笑いするリュールゥに私も思わず笑みを浮かべて言う。
「お気になさらず。頼りないかもしれませんが、これからはどうぞ私にお話しください。あなたは色々と一人で抱え込む性向にあるかのように見えます。私を頼って頂ければ、幸いです」
「そのお言葉有難く受け取らせて頂きましょう。では早々にご相談させて頂きたいのですが、そろそろ私にも休息の時間を与えて頂けませんかな?少々疲れで心身ともに弱っているようで…」
「それは私も大して変わりません。ではこれくらいにしておいて、今後の事は次の軍議でお話ししましょう。お時間頂きありがとうございました。リュールゥ」
「こちらこそ。アリア殿。…あなた様のお心遣いに感謝を」
こうして私とリュールゥの対話は終わった。
結局リュールゥが独断で援軍を呼んでいたことへの追及は有耶無耶に終わってしまったような気もしたが、それ以上に収穫があったから気にすることはない。
リュールゥのことをより深く知り、ほんの少し距離を縮められたように思えたから。
これは今後リュールゥとの協力関係を続け、私達の大業を成す上で貴重な機会であったと信じる。