――――今ではない遠い昔・・・・嘗て、大きな戦争があった。その世界に生きる全ての生物を巻き込む程の恐ろしい戦争が・・・。その戦争の影響で空は荒れ狂い、地は荒れ果て、海は全てを飲み込む暗黒の領域と化した。
その戦争が起きた切欠はたった二頭の龍が起こした力の競い合いが発端だった。だが、その競い合いは世界をも巻き込み、やがて他種族にまで戦火が及んだ。そうして気付けば、全世界が戦争をしていた。互いに憎しみ合い、同族を殺された恨みで戦火は拡大し、手の付けられない状態にまで陥った。
様々な他種族――(総じて、この時は大きな3つの派閥に分かれていた)天使、堕天使、そして悪魔は、疲弊しきった自分達の陣営を見て、漸く停戦にまで漕ぎ着けた。そうして今の平和が保たれている。
件の龍達は停戦前に連合した3つの勢力に封印され、その魂事、神器と化した。
―――昔の戦争の記録は大まかがこうなっている。だがしかし、同時に・・・記録にも残らず、必死に運命に抗い、戦い続けた一人の男が居た。
コレは、記録に残せなかった男の作戦行動と、停戦までの生き様を書き記した書物である。
「何処だ此処は・・・?俺は死んだ筈ではないのか?」
最後に自分が見た光景は、異次元空間に大規模封印術式を施す為に、魔力が足りずに肉体と魂とを引き換えに大規模封印術式で異次元空間を閉ざし、ボロカスになった自らの体が閉ざされ行く空間の中に放り込まれた事位だと、男は思案し、独り言を漏らしながら辺りを見回す。
辺りには何もなく、真っ白な空間が何処までも広がっているのを確認できるだけで、生命の息吹すら感じられぬ優しくもあり、冷たい印象を受ける白い空間に自分自身が佇んでいるだけ。
「此処が死後の世界だって言うなら、随分と殺風景だな・・・・」
男は気付いた時には、不思議な浮遊感に包まれていた自分自身の肉体を訝しげに眺めながら皮肉を吐き出し、腕組みをする。
「・・・クソッタレ。俺は今更生きようなどと思わんぞ・・・」
「そうは言うが・・・悲しいけどコレ、テンプレなのよね」
独り言で言ったはずの言葉に、男の後ろからか、何者かの返答が返って来た為、男は後ろをバッと振り返り、声の主を確認する。
―――そこには、男と似た様に腕組みをしながら、本人はニヒルに笑っているつもりだが、自分の顔立ちのせいでニッコリ笑いになっているスーツ姿の金髪の優男が立っていた。
その姿を確認して男は、迷わずにその優男に走り出し、流れる様な美しい動作で自然に――――
「ふんっ!!」
「があぁぁぁぁぁぁっ?!」
―――-相手の腕に自分の腕を絡ませ、相手の腕をへし折ってやるとばかりに全力で極めた。
「テメェ、テンプレッつったな?!つまりは俺を転生させる神とかそんなものだろ!テメェ!言え!」
「ちょっ・・!まっ・・・がぁぁぁぁぁっ!!!?」
「返事しなけりゃこのまま腕をへし折る!言わなくてもへし折る!」
ギリギリと嫌な音を立てて軋む相手の腕に心配の情も湧かない男は、嬉々として相手の腕にダメージを与えていく。その為、優男の腕は折れるまで後一歩と言う所まで来ている。
男にとって生とは今や糞程の価値もない。全てを失って、漸く下らない因縁に決着を付けてきたばかりなのだ。そんなものより、今は魂を洗浄してもらって、サッサと次の来世に行きたいのだ。前の人生で受けた心の傷を埋め、全てを忘れて今度こそ平穏に生きたい。ソレだけが、この男の唯一の望みだった。
「待てぇぇぇぇ!君は前の仲間や親しい人達に会いたくないのかあぁぁぁっ?!」
「会いたいに決まってんだろぉぉぉぉぉっ!!!!!」
「ぎゃああああぁぁぁぁっ!!!!!!?」
腕をへし折られそうになりながらも、懸命に男を説得しにかかった優男の言葉に反応し、気合の篭った返事を返しながら今度こそ、優男の腕の関節を逆方向に向けてゴキリと何かが砕けるような音を立てて、男は優男の腕を無慈悲にへし折った。
―――――胡桃が割れた様な音が辺りに響き渡ったその瞬間、真っ白な空間に、一人の神らしき人物の悲痛な叫び声が木霊した。
始めましての方は始めまして、紡ぐ者です。某サイトから移転しました。今回は完全新作ですので。言う事はソレぐらいですかね。
それではまた