『―――――!』
…………コエガキコエル。
『■■の■■なんてものは、起きた出来事を効率よく片付けるだけの存在だ』
……声が聞こえる。
『所詮は偽物だ。そんな偽善では何も救えない。否、もとより、何を救うべきかも定まらない―――!』
……人の叫び声が、聞こえる。
『戦いには理由がいる、だがそれが理想であってはならない。理想の為に戦うのなら、救えるのは理想だけだ。』
これは……
『オレが望んだモノはそんな事ではなかった。オレはそんなモノの為に、■■■になどなったのではない……!!!』
記憶……?
―――ああ、オレは……英雄になどならなければ良かったんだ―――
ここで、
「身体の調子はどうだ?イリヤ」
「うん……いくらか落ち着いた」
私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは今、ベットの上で横になりながらお兄ちゃんの看病を受けています。
「しかし、イリヤが突然倒れたって聞いたときはどうなるかと思ったけど、大事にならなくてよかったよ」
そう。私は学校から帰る途中に、道端に落ちていた変なカードを拾った途端、その場に倒れてしまったのです。
「……ごめんね、お兄ちゃん。迷惑かけて」
「何言ってるんだ。俺はイリヤのことを迷惑だなんて、一度も思ったことはないぞ」
そういって私の頭をなでるお兄ちゃん。えへへ~、少し役得かも。
私がお兄ちゃんに甘えていたその時、ガチャンッ!と玄関が勢いよく開けられた音がした。
『ただいまー!イリヤー、お見舞いに来たわよー!』
「こ、この声は……!」
「ママ?」
海外に出張しているはずのママが突然帰ってきた。足音から察するにママは一人で帰ってきたらしく、どうやらパパは向こうに置いていかれたらしい。パパェ……
ていうか、そもそも私が体調を崩したってどうやって知ったんだろう。第一、私が倒れてから向こうを飛び出しても時間的に日本に居るのおかしいよね?私が倒れたの2,3時間くらい前だし……なんだか別の意味で頭が痛くなってきた。
とりあえず玄関に向かうべく、私は身体を起こす。
「ん?こらこらイリヤ。寝てないとダメだろ?」
「ううん、もう大丈夫。それに、ママの顔早く見たいし」
「……しょうがないな。少しだけだぞ」
そう言うと、お兄ちゃんは私の前に右手を差し出してくれた。私はその手を握ってベットの上から立ち上がり、お兄ちゃんに先導されながら1階の玄関へと向かう。
『―――すから、きちんと説明してください!』
『だから、今言ったじゃない』
『あのような話信じられません!小学生でも、もう少しましな嘘をつきます!』
『そ、それはちょっとひどくない?』
階段の上から玄関の様子をを覗いてみると、なにやらママを捲し立てているセラと、毛布で巻かれた大きいものを抱えながら困った顔をしているママの姿があった。
「あら?イリヤ、もう起きて大丈夫なの?」
私たちがやってくるのに気付いたママは、いつもの笑顔の中にやや心配そうな表情を浮かべながら、私に声を掛けた。
「イリヤさん?!ちゃんと寝てないとダメじゃないですか!」
そのママの反応で私たちに気付いたセラは、今度はお説教の標的をこちらに移してきた。
「だ、大丈夫だよ。もう普通に歩けるし」
「そんな言葉信用できません!第一、士郎!貴方がついていながら―――」
「わぁーッ!お、落ち着けって、セラ!」
セラの小言がお兄ちゃんに向かったところで、私は改めてママに、正確にはママが抱えているモノに視線を移す。
「マ、ママ。えっと……それ、なに?」
私はママが抱きかかえている、白い毛布にくるまれているナニカを指差した。
「ん?これはね―――」
ママは、まるでサプライズの仕掛け人がネタばらしを行うような不敵な笑みを浮かべながら、その毛布の上の部分を少しだけ広げ、中身を見せた。
「―――あなたの妹よ!」
そして、その毛布の中から出てきたのは、褐色の肌に純白の髪をした私そっくりの女の子だった。
「ええぇぇぇぇぇーーーーーーッ!!」
近所迷惑も考えずに大声で叫んだ私は、決して悪くない。
これは私が、マジカル(magical)でフィジカル(physical)でハートフル(hurt full)な事件に巻き込まれる、半年程前の出来事である。