side-C
道に迷ってから更に15分。実は私、いまだに道に迷ってたりしている。
「あぁもう!こんなことなら後なんかつけずに、直接問いただせばよかったー!」
イライラを抑えられなくなった私は大声を上げながら、それでも歩みを進める。もう、泣き言でも言わないとやってらんないわよ!
「うーん、私ってこんなに方向音痴だったかなぁ。なんだか情けなくなってきた―――って、ん?」
するといつの間にか、穂群原学園に行くときに通る橋の麓についていた。
「うわーこんなところまで来ちゃったんだ……まあでも、これでようやく家まで帰れるわ。あ゙ぁ~無駄につかれた」
ぐちぐち文句を言いながらも家に帰るべく歩き出そうとした。
その瞬間、―――橋■下の―――ベ,ンチ―――のあた■に強,烈―――な違■■を感,じ■―――
「ッ?!―――ッ―――!―――ッ」
―――
「―――n―――ぁにk―――ぉれ―――ッ!」
―――
「 」
「 」
「―――っはぁ、はぁ、はぁ……ッ!」
気がつくと、私は地面に座り込んでいた。突如として頭に響いていたノイズも消え、気分はともかく、身体の調子はむしろノイズが起こる前よりもよくなっているくらいだった。
「……な、何が、起こった、の?」
まだよく思考が纏まらないまま、辺りを見回す。すると、一帯はまるで何か巨大なものが叩き付けられたかのように、コンクリートは複雑にひび割れ、木はなぎ倒されていた。それは、以前テレビで見たSF映画で出てくるような、荒廃した街を彷彿とさせた。
「……ここ、どこ?わたし、いつの間に移動し―――」
私は思わず息をのんだ。何故なら目線を上げたその先には、先ほどまで自分がいたはずの、通学路として毎日使っている、あの大きな橋が見えたから。
―――否、見てしまったから。
「ここは……さっきまでいた場所……?」
言葉に出した、出してしまった。その瞬間、理屈も根拠もわからないまま、自分の目に映るものすべてが真実だと理解してしまった。
「ぁ……あぁ……」
解らない、寒い、怖い、痛い、悲しい、寂しい、苦しい
ありとあらゆる負の感情が頭の中で掻き混ぜられて放心状態になりながら、私は至る所が歪んでしまった橋を只々眺めていた―――
刹那
「ッ?!」
気配を感じた。圧倒的な死の気配を。ただそこに居るだけで、何百もの命が一瞬のうちに刈り取られていくような、そんな気配が。
『―――』
その気配はゆっくりと近づいてきていた。ゆっくりと、しかし着実に、ソレは
そこまで確認した私は、気がつくとその小さな人影に向かって走り出していた。
side-I
気を抜いていたのかもしれない。
圧倒的な物量で攻めてきた
油断していたのかもしれない。
2体目の敵が出てくるなんてこの場の誰もが想像すらしていなかったから。
慢心していたのかもしれない。
凄腕の魔術師である凛さん達にルビー達の力が合わさったその様は、英雄の一端である敵を圧倒したように見えたから。
でも実際は、そんなことはなくて。凛さん達は行方がわからない。生きているのかもわからない。そして敵は―――
『―――』
私と美遊のもとに歩みはじめた。
「イリヤスフィール!」
声も出ない。力も入らない。絶望しかない。
手元にはいつも喧しいルビーたちも居らず、今の私たちにできることは只々目の前の死を受け入れるだけだった。
「立って!イリヤスフィール!でないと敵が―――ッ!」
美遊が大きな声で何かを言っているけど、それが私の耳に届くことはなかった。それは、恐怖からではなかった。絶望からではなかった。ただ単に、私は目の前に起こった出来事を、頭で処理できずにいたからだ。なぜなら―――
「なん、で……?」
なぜならそこには、ここに居ないはずのクロが、私たちをかばうように両手を広げて立っていたから。
side-C
「クロッ!!」
後ろから、イリヤの悲鳴に近い叫び声が聞こえる。その声の真意は私だってわかる。死の気配が漂うソレとイリヤたちの間に、なんの力も持たない私が割って入ったのだから。
―――■■ウ―――
なんでイリヤが転校生の美遊と一緒にいたのか知らない。けど私には、たとえどんな状況でも、身内であるイリヤと同級生の美遊を見捨てるという選択肢は無かった。そんなことをすれば、きっと後悔する。
―――■ガウ―――
ソレは私が立ちふさがったのを一瞥してもなお、その歩みを止めることはない。むしろ、障害となった私を排除する気だ。
―――チガウ―――
違う?何が違うというの。私は何を間違えている?
―――違う―――
違う。そう、私は偽りに塗り固められている。今の私は
―――お前が助けるのは、肉親や知り合いという理由からではない―――
そうだ。私は人影がイリヤと確認するよりも早く走り出していた。
―――お前は奴を倒す術を持っている―――
そうだ。私はそこに至る過程を私は知らない。でも結果を、力を使える。私は
―――お前は他人のためならば、自分の命さえ顧みない―――
そうだ。事実、私は目前に迫るソレを前にして、無防備に腕を左右に広げている。
―――そうだ。それでいい。それでこそお前は―――
そして、ソレは右手に持つ黒い剣を振り上げ
―――
その時私の中で、カチッと、歯車の噛み合う音が聞こえた。
盛大に何も始まってませんね。すいません。
長くなってしまったので、バトルパートは次回になります。