白い魔法少女と黒い正義の味方   作:作者B

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今回は説明回です。


日常2

side-I

「37度6分。お二人とも風邪ですね」

 

測り終えた体温計を持ったセラは、同じベッドで横になっている私とクロにそう告げた。

 

「一応大事をとって、今日はお休み下さい。学校の方には、私から連絡しておきますので」

「……うん、わかった」

 

そういうと、セラは私の部屋を後にした。

熱といっても別に身体が怠いなんてことはなく、普段なら気にせず学校に行くところだけど、セラの申し出は渡りに船だった。だって―――

 

「……ねえ、クロ」

 

私は、向こうをむいてベッドで横になっているクロに話し掛ける。

 

「クロ、昨日のことなんだけ―――」

 

クロは人差し指を私の口にあて、私の言葉を遮った。

 

「今は寝てなさい、イリヤ。どうせ熱でボーっとした頭じゃ、なんにも分かんないわよ」

 

そこまで言うと、クロは眠りについた。

 

「クロ……」

 

私もそれ以上追求するのを止め、クロを見習ってベッドに横になった。

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

「うぅ~~~ッ!暇だぁ~~~ッ!」

 

時間は午後3時。お昼ご飯も食べ終えて再び横になったのはいいんだけど、このままじゃ退屈過ぎてどうにかなっちゃいそう!

 

「あれだよね。()の昆虫博士曰く『一分間さえ休む暇のないときほど幸せなことはない』って言うし、労働こそが人類の生きがいだよねぇ」

『なに社畜根性が染みついたサラリーマンみたいなこと言ってるんですか』

「……イリヤ、うるさい」

 

ルビーとクロが何か言ってるみたいだけど、そんなことよりも今この状況を何とかすべきだよ!うん!

 

『というより、イリヤさん。もう熱の方は大丈夫なんですか?』

「え?うん。熱は下がったみたい。それに、もともと風邪じゃないしね」

「まあ、私が魔力を根こそぎ持っていっちゃったのが原因だから」

 

魔力……。その言葉を聞いて、私は昨晩の出来事を思い出す。

 

「そういえばクロ。昨日のこと、ちゃんと聞かせてくれるんだよね?」

 

私は昨夜の出来事を問い詰めるべく、まだ横になっているクロに詰め寄る。

 

「あ~。昨日のって、あれのこと?そういえばそうだったわね」

 

そう言うとクロは、頭をポリポリと掻きながら気怠そうに起き上がった。

 

「でも、何回も説明するのも面倒だし……美遊も、あの娘もついでに呼ぶ?」

「美遊も?」

 

そういえば、確かにあの光景を一緒に見てたわけだし、それに、美遊なら私以上に何か気付いたことがあるかもしれない。

 

『そういうことなら、微力ながら私がお手伝いいたしましょう!ルビーちゃん、スライドエボリューション!』

 

ガシャコンッ!といかにもな音を立て、ルビーの頭からアンテナらしきものが現れた。

 

「へ、変形したぁ―?!」

『これぞカレイドステッキの誇る24の秘密機能(シークレットデバイス)の1つ『テレフォンモード』です』

 

な、なんて無駄に高性能なの……!?私がそんなことを思っていると、ルビーから”プルプルプル”と、よく聞きなれた電話の着信音がなり始めた。

 

『ハローハロー。私からサファイアちゃんへ、応答願います。私たちのコードは正しくつながっていますか。私の世界は正しく回転している模様。システムオールグリーン。コミュニケーションは不全───────』

 

……何か意味の分からないことを呟いてるけど、聞かなかったことにしよう。

 

≪―――どうしたの?姉さん≫

『あ、こんにちわ~サファイアちゃん。いえね、そちらの様子はどうかな~っと思いまして』

≪姉さんが突然意味不明な発言をした以外には、特に問題はありません≫

≪さ、サファイア?突然どうしたの?あと、さっきのポエムみたいなのは一体……≫

 

あ、美遊も驚いてる。

 

「ええっと、こんにちは美遊」

≪その声は……イリヤスフィール?≫

「う、うん。あ、そういえば、美遊は今学校に居るの?」

≪ううん。ルヴィアさんが、今日は念のため休みなさいって≫

「そうなんだ、私たちと一緒だね」

≪うん≫

「……」

≪……≫

「……」

≪……≫

 

は、話が続かない……

 

「あーもう!思春期のカップルかお前らはぁぁぁ!」

≪ひゃっ?!≫

「く、クロ?!どうしたの突然!」

 

私が美遊との会話に行き詰っていると、隣で聞いていたクロがいきなり騒ぎ出した。

 

『クロさんじゃありませんけど、確かにじれったいですね、お二人とも』

 

テレフォンモードになっていたルビーからも突っ込みが入った。

 

「そ、そんなこといわれても……」

『そんなに話しにくいなら、私にお任せください!ルビーちゃん、モードチェンジ!プロジェクターモード!』

 

すると、またガシャンという音と共に、今度はルビーの下の部分からプロジェクターらしきものが出てきた。

……もはや何でもありだね、このステッキ。

 

『これでサファイアちゃんの見ている映像を映すことができます。顔を見ながらなら、普段通りに話せるでしょう』

≪え?プロジェクター?な、何を……ちょ、ちょっと待っ―――≫

『いきますよ~―――それ!』

 

ルビーの合図と供に、部屋の壁に映像が映し出される。そこに映っていたのはメイド服の美遊……メイド服……?

 

「メイドぉぉぉ?!」

「あら、なかなか似合ってるじゃない」

≪いや、ちが、これは―――≫

『ほほう、なるほどなるほど。謙遜することありませんよ。結構なお手前ですし』

≪だから、これは―――≫

 

そのとき、筋肉ダルマを従えた私そっくりの白い小悪魔が『Youやっちゃいなよ!』とサムズアップした気がした。

 

「……美遊、今すぐ来て」

≪え?≫

「来て。私の家に」

≪い、いや、あの、それはちょっと―――≫

「文句を言わない!駆け足!」

≪は、はいぃぃぃ!≫

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

「すみませんでした!」

 

そして今、冷静になった私は、メイド姿で家にやってきな美優に向かって土下座していた。

 

「本当にごめんなさい!私の中のゴーストが囁いたせいで……」

「ほらそこ、言い訳しない」

「い、いえ、別に。そんなに気にしてないから」

 

クロに窘められながらも、美遊のお許しが出たので顔を上げる。

 

『そんなに恥ずかしがることはありませんよ、美遊様。それは立派な仕事着なのですから』

「仕事着?」

「う、うん。ルヴィアさんの家においてもらう代わりに、待女の仕事をしなさいって」

「そうなんだ……」

 

んん~、なんだかこれ以上は踏み入れない方がよさそう。

 

「そういえば、イリヤスフィールは私に何か用事があったの?なければ、少し聞きたいことがあるんだけど」

 

そういうと、美遊はクロのほうに視線を向ける.あ、そういえば!美遊のメイド姿を見てすっかり忘れてた。

 

「クロに昨日のことを聞こうと思ってたんだった。さあ、クロ。美遊も来たんだし、話してくれる?」

 

すると、まだベッドで横になっていたクロは、不敵な笑みを浮かべて起き上がった。

 

「ふ、ふふ、ふふふふふ。そんなに知りたいのかしら?それなら、教えてあげる」

 

クロはニタニタと不気味に笑いながら、おぼつかない足取りでベッドから出て立ち上がった。

 

「昨日の私の力。それは」

「そ、それは?」

「それは―――」

 

 

 

 

 

「分かんない」

 

 

 

 

 

…………は?

 

「え?いま、なんて?」

「いや、だから。私も知らないんだって。いやマジで」

 

ふ、ふ、ふ―――

 

「ふざけんなー!じゃあ何よ、今までの溜めは!全然いらなかったじゃない!」

「そんなこと言ったって、昨日の私を3行で表すなら

 

 イリヤ捜索中に謎の空間に迷い込む。

 イリヤ達のピンチの前に私覚醒。

 クロエちゃん大勝利!

 

 だもの。むしろ私の方が聞きたいぐらいよ」

「じゃあ、なんで今まで意味深な発言してたのよ!」

「そんなの、イリヤをからかうために決まってるじゃない」

「むきー!」

「い、イリヤスフィール、落ち着いて。クロエも煽らないで」

 

私の怒りが頂点に達して暴れていると、クロが私の方へと顔を近づけてきた。

 

「それじゃあ、私も話したんだし、イリヤの方も聞かせてもらおうかしら?どうして夜な夜な出歩いていたのかを、ね?」

「うぐっ!そ、それは……」

『それならば!ここはイリヤさんに代わってこのルビーちゃんが、ご説明いたしましょう!』

 

 

 

 

 

~教えて!カレイドルビーちゃん!~

 

「なんか始まった?!」

『さあ、始まりました!日曜午後の新発見、『教えて!カレイドルビーちゃん!』のコーナーです。ここからは説明パートになりますので、興味のない方は下の方へスクロールしてくださいね』

「スクロールってなに?!」

『それでは、クロさんの質問にどんどん答えて行きましょう!』

「はい、ルビー先生」

「先生?!」

『何でしょうか?クロ学級委員長』

「クロ、学級委員長なの?!」

「そもそも先生って何者なんですか?」

「そこから?!今まで、さも居て当然のような反応してたじゃない!」

「いや、突っ込んだら駄目なタイプのボケだったから……」

「突っ込んだら駄目って何?!」

『いい質問ですね。私とサファイアちゃんはカレイドステッキと呼ばれている最高位の魔術礼装で、とぉってもすごい魔法使いが作ったものなんですよ。えっへん!』

『主な機能として、Aランクの魔術障壁、物理保護、治療促進、身体能力強化など、使用者には様々な恩恵が与えられます』

『補足説明ありがとうございます、サファイアちゃん』

「へぇ~、よくわかんないけど、なんだかすごいなって思いました(小並感)」

「なに、その投げやりな感想……」

「それで、次は昨日川辺で()りあった騎士(セイバー)について聞きたいんだけど」

『ああ、あれですか。あれはいうなれば、英霊の現象ってやつですね。クラスカードと呼ばれるカードが魔力を吸い、現実と鏡写しの世界『鏡面界』に実体となって現れたのが昨晩の敵の正体です。

 ちなみに、私たちカレイドステッキはそのクラスカードを回収するために冬木にやってきたんですよ』

「まあ、本当は凛さんが任された仕事なんだけどね……」

「凛?」

『私たちを派遣した魔術組織『時計塔』からカード回収を任された、私たちの元マスターである魔術師ですよ』

『他にもルヴィア様が該当しますが、お二方とも素行に問題があり、早々に見限らせていただきました』

「一応、悪い人じゃ無いんだけど、お二人はいつも喧嘩ばかりしていて……」

「あー、美遊の言いたいことは何となくわかった。それで、その二人に代わってイリヤと美遊がカードを回収している、ってこと?」

Exactry!(その通りでございます)現在手元にあるのは、ライダー、キャスター、セイバーの3枚。それと―――』

「私の持っているカードってわけね」

『Yes!I am!』チッチッ

「その答え方は文法的に間違っているような……」

『それでは、今日はこの辺で失礼します!またいずれお会いしましょう!さよなら、さよなら、さよなら』

 

~完~

 

 

 

 

 

「なるほどね。よーくわかったわ。つまり、

 

 イリヤ、ヘンテコステッキと契約。

 アカイアクマに使いっぱしりにされる。

 変なカードの回収をするはめになった。

 

 ってことでいい?」

「すごく簡単にまとめられた……」

『まあ、あながち間違っていませんけどね』

 

せめてそこは否定してほしかった。いや、余計虚しくなるだけか……

 

「んっふっふ~。さぁて、このネタでどれくらいいじってあげようかしらね?イリヤおねえちゃん?」

「……なんだか、一番知られてはいけない人に知られてしまった気がする」

「お、落ち込まないで、イリヤスフィール。私も手伝うから。ルヴィアさんにお願いすれば、大抵のことはかなえてもらえるよ?」

「ありがとう、美遊。でも、その慰め方は少しずれてると思う」

「?」

 

美遊が天然発言をかましていると、クロが怪訝な表情をしてこちらを覗いていた。

 

「な、何?クロ」

「なんかさ~。イリヤと美遊って、親しい割に少し距離感があるわよね」

「距離?」

「そうそう。なんか他人行儀みたいな感じがするのよ」

 

他人行儀か。ああ、そういえば。

 

「美遊って私のことをイリヤスフィールって呼ぶけど、長くて呼び辛くない?」

「え?」

 

突然話を振られた美遊はあっけにとられているようだった。

 

「『イリヤ』って呼んでいいよ?友達は皆そう呼ぶし。クロだって呼んでるし」

「友達……」

 

美遊は”友達”という言葉を何回もかみしめた後、また私の方へ向いた。

 

「それなら、今度からそうさせてもらおうかな。よろしく、イリヤ」

「うん!それじゃあ、改めてよろしくね、美遊」

「……うん」

 

私の言葉に笑顔で答える美遊。なんだか、前よりも仲良くなれたような気がする。

 

「えー、イリヤばっかりずるーい。美遊、私もクロって呼んでいいわよ?」

「え?でも、3文字と2文字ってあまり変わらない気が……」

「がーん!拒否された!クロエ超ショック!」

 

……単に呼びやすさで選んだんじゃないよね?そうだよね?

 

「ふん!いいもんいいもん!こうなったら、早速イリヤにお願い(・・・)しちゃうもんね」

「わ、私関係ないでしょ!それに、クロの無理難題なんて聞く義理が―――」

「ふぅん。いいのかな?私が一言『イリヤが夜に家を抜け出してた』ってセラに言えば、どうなるかわかるわよね?」

「そ、それならクロだって昨日……」

「そうね。確かに私も一緒に怒られるわ。でも、今後は夜の監視の目が厳しくなって簡単に家を抜け出せなくなるわよ。それだとイリヤは困るんじゃない?」

 

ぐぬぬ。た、確かに……。

 

「まあ、そんなに難しいことじゃないわよ。イリヤでも即答できるレベルだし。だから……いいわよね?」

 

その時のクロの笑顔は、私が今まで見たこともない程の、満面の笑みでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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