白い魔法少女と黒い正義の味方   作:作者B

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VS槍兵

side-C

「さあ、残るカードはあと2枚。気合入れていくわよ」

 

深夜。私達はクラスカードの回収のため、穂群原学園に集まった。

 

「てゆうか、また学校なんだね」

『まあ、以前(キャスターとセイバー)の件がありますし、同時に出て来なかっただけよかったんじゃないですか?』

 

また?

 

「”また”ってどういうことよ」

『ああ、そういえばクロさんは知りませんでしたね。以前も学校で戦ったことがあったんですよ』

「相手はライダーだったんだけど、そういえば、美遊と初めて会ったのもそのときっだったよね」

「う、うん」

「へー、そうなんだ」

 

イリヤの話を聞いて少し気まずそうな顔をする美遊。何かあったのかしら?まあ、どうせ『カードは私が回収する』とか『貴女は手を出さないで』とか、ライバルキャラ御用達のセリフでも言ったんでしょうけど。

 

「ほらそこ。無駄話してないで始めるわよ」

「はーい」

「カードも残りが少なくなったせいで、鏡面世界の範囲も小さくなっているはず。十分に注意してくださいまし」

 

なるほど。私はともかく、飛行手段を持つイリヤと美遊は特に行動が制限されるってわけね。

 

「……時間ね。それじゃあ、イリヤ、美遊」

「「はい!」」

 

凛の指示で、イリヤ達はステッキの力を借り、鏡面世界へとジャンプした。

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

世界が反転する。

以前のアサシン戦のように、網目模様が覆う歪な空へと変わり、辺りの雰囲気も一変した。

しかし、前回と違ったのは、鏡面世界へとやってきた私たちの目の前に、敵が凛然たる様で立っていたことだった。

 

「敵ッ?!」

「まさか、向こうがわざわざ待ち構えているとは……随分と紳士な方ですこと!」

 

敵の姿を確認するや否や、全員が臨戦体制に入り、私も干将莫耶を投影する。

敵の全身は、青白く光るラインが入った黒いタイツで覆われ、右肩には髪の色と同じ青い毛の獣皮の外套を羽織り、目には黒いバイザーを付けていた。そして、その手には禍々しい気配を発する朱槍を携えていた。

 

「さしずめ、槍兵(Lancer)といったところね」

 

だとすると、距離を離しても一気に詰められる可能性があるわね。

そう思考していると、槍兵は不敵な笑みを浮かべ、その手に持つ槍を構えた。

 

「ッ?!皆、来るわよ!」

 

凛の言葉とほぼ同時に、槍兵はその切先をこちらに向けて突進してきた。

 

「ちっ!」

 

私は即座に前へ出て、両手の干将莫邪で敵の攻撃を止める。しかし、敵は臆することなく、半歩下がって自らの間合いを保ちつつ反撃をしてきた。

 

「ッ!速い!」

 

流石は最速のサーヴァントといったところか。こちらが攻撃に転じる暇を与えない、突き・払い・斬りの怒涛の連撃が繰り出される。距離を取ろうにも、相手が速力で上回っている時点で離脱するのは困難。攻撃を耐えるしかない。

 

「クロ!」

 

上方でイリヤが声を上げる。どうやら、イリヤと美遊は先ほどの接敵のときに空へと逃れたようだ。

私はイリヤの意図を理解すると、両手の剣で敵の槍を無理やり止め、そのまま強引に敵を押し出す。

 

「今よ!」

「美遊!」

「うん―――シュート!」

 

私に押し出されて硬直した瞬間を狙い、美遊の魔力弾が敵に向かって放たれた。これで敵に隙ができれば、私も距離を取ることができる。

 

『■■■』

 

しかし、槍兵は魔力弾に見向きもせず、しかし、まるで見えているかのように最小限の動きで躱すと、再び私に向かってきた。

 

「外した?!」

「そんな……美遊のタイミングは完璧だったはず」

 

凛とルヴィアの言うとおり、確かに美遊の放った魔力弾は正確だった。それを難なく躱したということは……

 

「それなら―――中くらいの散弾!」

 

1発で駄目なら、とイリヤは魔力を散弾に変え、敵に向けて放った。しかし―――

 

『■■■■■■!』

 

槍兵はまったく意に介すことなく、イリヤの放った散弾をすべて回避した。

 

「嘘ッ?!」

 

イリヤは声を上げて驚いた。無理もない。私だって、あの弾幕を黙視もせずに躱すなんて不可能だ。

イリヤが唖然としていると、槍兵は突然足を止めた。そして、イリヤの方を黙視するや否や、その常人離れした脚力を持ってして、イリヤのすぐ近くまで跳び上がった。

 

「―――え?」

 

まさか敵が空まで追いかけて来るとは思ってもいなかったのか、イリヤは放心状態に陥っている。

先の攻撃で散弾を警戒したのか標的をイリヤに移した槍兵は、手に持つ槍をイリヤに向かって振り下ろした。

 

『イリヤさん!』

「ッ?!」

 

ルビーの声で我に帰ったイリヤは、寸のところでステッキでガードする。しかし、敵の体重の掛かった一撃を受け止めることはできなかった。

 

「きゃッ!」

 

イリヤは地面に叩きつけられ、校庭に砂塵が舞い上がる。

 

「イリヤ?!」

「ッ……大丈夫。平気」

 

しかし、ルビーが物理保護に魔力をまわしたらしく、それほどダメージは負ってないみたい。

イリヤの無事を確認し、私は一先ず息をついた。

 

 

 

 

 

ゾクッ!

 

 

 

 

 

「!!」

 

そのとき、言い知れぬナニカが脳裏を(よぎ)った。

視線を上空に向ける。そこには、イリヤを地面に叩きつけて上空から自然落下している槍兵が、その朱槍を逆手に掴んで構えていた。

 

「―――ッ?!イリヤ!」

 

美遊もそれに気が付き、攻撃を止めるべく魔力の足場を蹴って槍兵へ駆け出す。でも……それじゃあ間に合わない!

私は、無意識の内に既に動き始めていた足を止めることなく、地面に伏しているイリヤの元へ向かった。

 

 

 

 

side-I

油断してた。まさか敵が、空を飛んでいる私に接近できるなんて思いもしていなかった。間一髪敵の攻撃は耐えられたけど、私は地面に落下してしまった。そして、今まさに敵の追撃を受けようとしている。

 

 

 

 

 

ゾクッ!

 

 

 

 

 

嫌な感覚が全身を支配する。あの攻撃を食らってはいけない、何故という疑問を無視して直観的に理解した。でも、地面に叩きつけられた直後のせいか、身体が鉛のように重い。もしこれが敵の戦略なのだとしたら、私はまんまと嵌ってしまったということになる。

 

「イリヤ!」

 

美遊の声が聞こえる。美遊は攻撃を止めるために敵に突っ込んでいる。けれど、敵はそれを意にも介さず、引き絞った弓のように上体をそらし、その手に持つ宝具の真名を解放するために口を開いた。

 

突き穿つ(ゲイ)―――』

 

敵の槍が朱い魔力を帯びて歪み始めた、その瞬間、飛び込むようにクロが私と敵の間に割り込む。

 

「ッ?!クロ!駄目!」

『―――死翔の槍(ボルク)

 

しかし、無情にも、敵が放った赤槍は私達を貫くべく、閃光のように一直線に飛来した。

 

I am the bone or my sword.(身体は剣で出来ている)

 

それを迎え撃つようにクロは右手を翳し、あの黒い騎士の戦いの時と同じ言霊を唱える。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」

 

赤い閃光がクロに届くその瞬間、クロの右手から7枚の巨大な花弁が展開される。

あの強力な騎士(セイバー)の攻撃でさえ軽々と防いだそれは、敵の槍を喰い止めた

 

―――かに見えた。

 

「―――っ!!」

 

敵の槍はその花弁を1枚、また1枚とたやすく破壊する。

 

「クロ!」

 

盾は花弁を散らしながらも槍の進撃を阻もうとしている、けれど、それで直も威力が衰えぬ槍はクロを今にも貫こうと火花を散らして突き進む。そして、とうとう最後の1枚に到達した、そのとき―――

 

「―――はぁぁぁッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱槍は弾かれ、私たちの前方に飛ばされた。クロはあの朱槍を防ぎきった。

―――クロの右腕を犠牲にして。

 

「はぁっ!」

『ッ?!』

 

槍を放って無防備になった敵は、美遊の攻撃によって為す術もなく弾き飛ばされた。

それと同時に、凛さんとルヴィアさんが私達の元に駆けつける。

 

「イリヤ!クロ!無事ッ?!」

「お二人共、大丈夫ですの?!」

 

二人の声を聴いたクロはその場に座り込む。痴き出していた右腕は朽ちた木のようにボロボロで、その表情は苦痛に歪められていた。

 

「ル、ルビー!クロに回復!回復を!」

「待って!敵はまだ倒してないわ。治療は私たちがやる」

 

私の言葉を止めた凛さんが、ルヴィアさんと一緒にクロの右腕の治療を始めた。

 

「イリヤ!クロエ!」

「美遊……」

 

美遊も心配そうな面持ちで空から降りてきた。

 

「これは酷い……一応、応急処置はするけど、右腕はしばらく使い物にならなそうね」

「そんな……」

 

凛さんの言葉を聞いて、私は思わず言葉が漏れた。

 

「いえ、むしろあの一撃を腕1本で防いだことを称賛すべきですわ」

「そうね。まさか、あんな宝具まで持ってくるなんて」

「どういうこと?」

 

二人が言っていることに疑問を挟む私。それを聞いて、凛さんとルヴィアさんは口を開いた。

 

「"ゲイ・ボルク"

 アイルランドに伝わるクランの猛犬『クー・フーリン』が持つとされる魔槍よ。伝承では、その槍で貫かれて死ななかった者は居ないと言われているわ」

「宝具の能力は、英雄の生前の逸話に基づいたものが与えられる。すなわち、あの敵がもつ槍の能力は『放たれれば必ず殺す』。まさに一撃必殺というわけですわ」

 

そんな危険な宝具だったなんて……

 

「でも、クロの腕の状態を見る限り、もう1度止めるのは無理ね」

「魔力弾も効かないようですし、何か方法を考える必要がありますわ」

 

そ、そうだ。唯一敵と渡り合えていたクロはもう戦えなさそうだし、私たちの攻撃は効かない。一体どうすれば……

 

「……方法が無いわけじゃない」

「クロ?!」

 

すると、今まで黙っていたクロが苦しそうに口を開いた。

 

「といっても、私はこんなだし。貴方達2人に頑張ってもらう必要があるけどね」

「私と、美遊?」

 

クロは頷くと、私達に作戦の内容を伝えた。

 

 

 

 

 




書いてから気がついた。
これ、学校じゃなくて教会でもよかったな。
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