「鬼い様、わたくし松阪牛が食べたいですの」
平和じゃないのは無惨の財布だけだ!!
「お兄様、わたくし松阪牛が食べたいですの」
鬼の原点にして頂点たる鬼舞辻無惨はパシらされていた。
無惨は適当に幹部である上弦の鬼を呼ぶと、松阪牛を持ってくるように言った。
その上弦の鬼は、より格下の下限の鬼をパシらせた。
そして下級幹部である下限の鬼は、末端の鬼をパシらせた。
鬼の社会は上下社会なのである。
人間社会と変わらないのは、鬼も元は人間であるからであろう。
そしてそんな鬼社会の頂点にいるのは、鬼舞辻無惨────ではなく、その妹だった。
言葉遣いこそお淑やかであるが、1キログラムで一家の夕食が賄える額の肉程度では満足しない。
100グラムで一般的な一家の夕食が賄える程の額の肉でないと満足しないのだ。
人間の血肉では無くても、凄く高級な食材なら鬼にとっても普通に美味しい。
上弦の鬼である妓夫太郎とは、最近の無惨さいつも一緒に愚痴を言い合っている。
言い合うのは愚痴だけでは無い。
自慢に関してもお互いによく言い合っている。
妓夫太郎の妹には美貌の鬼である梅がいる。
彼の自慢の妹だ。
そして鬼舞辻無惨にも妹がいる。
鬼舞辻惨禍である。
親は何を思って兄妹にこの様な名前を付けたのかはわからない。
鬼の様な親だと思われる。
息子と娘が鬼になるのも宜なるかな。
惨禍は、平安時代の日本人とは思えない容姿をしている。
お目々はパッチリで青く澄んでいる。
まるで夜空に輝く星空の様な美しさだ。
流石に名家である無惨達の母親が、フランス人と結婚したとも思えない。
何せ平安時代だ。
というか兄である無惨もポップダンサーの様な垢抜けた容姿なのだ。
もしかしたら平安時代の一般的な人々の風貌は外国人めいていたのかも知れない。
近年では目が大きいのは遺伝系の病気が無い証拠であり、本能的に健康的だと好まれるとも言われている。
平安時代は目が細いのがモテたといのは、いつかまた目が細い人がモテる時代も来るという、目が細い人の希望であったが、それはもしかすると来ないのかも知れない。
それにしても、金髪碧眼でコーカソイド骨格な平安日本人とはこれ如何に。
…まあ、世の中には金髪の日本人も桜餅みたいな髪色の日本人もいるので、それくらいは誤差みたいなものかもしれない。
鬼舞辻無惨は鬼の頭領である。
株式会社『鬼』のやり手社長である。
罪も無い人を食う?
そんな事はしない。
どうして優れた貴族の生まれである鬼舞辻無惨が野生動物の様な狩猟生活をしなければならないのだ。
そんな浅ましい事をすれば、愛しい妹に「お兄様Loveよ」とか言ってもらえなくなる。
彼の妹は上流階級志向で、自ら野蛮な事をする者が嫌いなのだ。
最近外来語の習得が目覚ましい惨禍は、外来語をとても流暢に話す。
もはや日本人には外国人にしか見えないし、外国人から見てもフランス人にしか見えない。
フランスの王侯貴族に求婚された事もあるし、昔は黒船の通訳をした事もある。
何処かの平行世界では、人を殺して食うプレデターであった無惨であったが、この世界では資本主義の鬼である。
金で社会を支配して、金で血液を買う。
国家公認の存在で、国家非公認のライバル組織を次々と潰している。
実に面倒なタイプの鬼畜である。
金もあり、不老不死の手段も与えられる。
こうなれば国家中枢に食い込む事など何一つ難しくなかった。
しかも日本だけを相手にしている訳ではない。
日本人をイエローモンキーと嘲笑う列強の白人も、自分達に似た容姿の鬼舞辻兄妹相手には、対等に接してしまう。
人間は見た目が8割という言葉を証明していた。
後百年も立てば、肌の色や人種で差別なんて絶対にしませんなんて面でモノを語り始める様になる国家でも、この時代ではそんなものだ。
そんなこんなで各国の大統領や皇帝も鬼化している。
恐らく余程の事が無いと、体制崩壊は難しい。
皇帝一族がやたらと死ににくいせいで、革命が失敗したロシアなどがそれを示している。
それもあってロシアはかなりの親日国だ。
フランスも王族が鬼化したせいで、革命に失敗した。
下級貴族は日の光を一日中浴びたギロチンで首を斬られてそれなりに死んだが、上級貴族以上は割りかし無事であった。
そんなこんなで、鬼舞辻無惨は世界中の自由民主化を望むレジスタンスに、悪の元凶として恨まれている。
鬼舞辻無惨を殺す為に日本に戦争を仕掛けろという、民主国家もあるくらいだ。
民主国家が成立した国は、鬼化した王侯貴族を倒す為に多くの仲間を失ったから、その気持ちは当然だろう。
鬼舞辻無惨に逆らえない現状を良しとしない外国も、日本ごとの壊滅を目論んでいる。
世界中からアンチヘイトを集める事で、ある意味外患誘致をやっているが、現状それ以上の利益を生み出している上に、日本の最上層部も鬼化しているから安泰なのである。
取り敢えずここまでの約2000文字で伝えられる事の要点は、原作となる平行世界と違って鬼舞辻無惨は直接人殺しはあんまりしていないということだ。
妹に夜這いをかけようとした医者一人を殺しているが、千年以上経てば時効だからノーカン。
別に夜しか生きられないけど、どうせ昼寝すれば良いし長生き出来るから良いのは妹の談。
妹のおかげで喜びも絶望もない平穏な植物の様な生活を送ることを無惨は選んだ。
尚、思いっきり贅沢はしているし、恨まれてもいるし、立ちはだかる者は合法的に潰している。
彼の政敵が激しく主張する、鬼舞辻無惨唯一の非合法の犯罪は医者の男の殺害である。
件の医者は鬼舞辻惨禍のたわわな果実を鷲掴みしようとして、無惨のベアクローならぬオーガクローで頭を鷲掴みにされて潰れて死んだ。
平安時代にジェシカ・ラビットやハローナースみたいなボンキュッボンがいたら、ホイホイされてしまう医者の気持ちもわからなくはないが、未婚の貴族の娘の胸を鷲掴みするのは普通に死刑案件であった。
美少女に無体を働く男は死刑だ。
無惨はそう反論している。
当時の裁判官の様な立場の貴族も、それに賛同して解決した案件だった。
昔、異民族のまとめ役として大和朝廷転覆を狙った首謀者との罪もあるが、吉備津彦命も鬼の首魁の顔は確認しておらず、鬼舞辻無惨が犯人である証拠も無かった。
手足が斬られても再生して戦闘を続行した異民族という話も、あまりに古すぎて資料がなく、大正の時代に追及出来る罪では無い。
きっと、鬼舞辻無惨の本拠地が香川県や岡山県にあるというのも無関係のはずだ。
多分桃太郎と鬼が戦う場面で、端の方に妙に外国人めいた男がビビって桃太郎を見ている挿絵が古い絵巻にあるのも気のせいのはずだ。
遺伝病持ちであった故に、神主に騙されて代々婚姻を続けて乗っ取られてしまった名家産屋敷。
その産屋敷における残存する最高序列者であるはずの無惨は、幾度となく邪魔者として神主の一族の謀により抹殺されかけた。
無惨が産屋敷の財産を所望すれば、神主の家の取り分が減るからだ。
しかし、無惨も抹殺されるだけの事は色々してきた。
実際に医者一人を殺している。
無惨的に問題なのは、神主の一族が正義の為に無惨を抹殺しようとしているのではなく、無惨を抹殺する為に正義を持ち出している事だ。
無惨は善悪で言えば普通に悪なのだが、私利私欲により正義を利用する者には義憤を感じる程度には、正論で物事を考える。
まあ何というか、正義を目的とする者はヒーローだが、正義を手段として使う奴は自己肯定したいだけなのが鼻につくということなのだろう。
まあ、そんなことはともかく──────
「お兄様、ハリーアップでお願いします。
あっ、炭とお酒は二人が持って来るから大丈夫ですの」
無惨は重ねて催促された。
ぐうぐうお腹が空いた妹は、泣く子と地頭よりも強いのだ。
無惨はまたパシらされた。
事件とか病気とか色々あって鬼にした者の中に、竈門禰豆子と謝花梅がいる。
少々ブラコンでもある惨禍には、たまーに梅にイラッ☆とすることが無いわけでもないが、基本的には同じ妹属性なので仲が良い。
妹属性的には、自分が甘えられて尚かつ立ててもらえる環境にいる間は争いなど起きにくいのである。
禰豆子の方はブラコンなので特に問題は無い。
自分達の兄を奪い合う関係でも無いので、極めて平和である。
禰豆子はお家柄、かなり肉奉行なところがある。
曰く、炎を通せば悪いものは大抵抜けるんだとか。
肉の焼き加減には少々煩いが、焼き加減にケチを付けたり、下手に焼いたりしなければ、禰豆子の方から上手く焼けた肉を渡してくれるので、惨禍がホーム焼き肉パーティーをする時は、かなりの高確率で呼ぶ。
惨禍だけでは有機的な肉の焼き加減の概念がよくわからない。
因みに買い物は兄に丸投げするので、惨禍は肉の値段どころか金銭感覚自体が分かっていない。
禰豆子がお肉担当だとすれば、梅はお酒担当だ。
色々あって、お水のプロフェッショナルな彼女はお酒に詳しい。
そしてお酌が上手い。
これは惨禍としても呼ばない理由が無い。
時折日本人離れした容姿の惨禍の兄に色目を向けなければ、本当に呼ばない理由が無い。
今日は第100回妹同盟会という焼き肉パーティーだ。
第何度目かは数えてもいないので、途中から毎回第100回という名前になっている。
「お邪魔するわ」
「梅ちゃんハロー」
使用人に通されて梅がやって来た。
焼き肉をやると言うのに、随分と派手な着物を着ているが、これは無惨に会うためだろう。
「…ええと、無惨様は何処かしら」
「肉を探しにパシり中」
兄も兄で理不尽だが、妹も妹で理不尽だなと梅は思った。
梅としては、外国の王侯貴族を手玉に取る、外人受けする外人美女みたいな惨禍には、水商売のプロとしても敬意を払っている。
とはいえ、懸想している彼女の兄無惨をパシらせているのはどうかと思うのだ。
因みに悲しい事にに無惨的には特に梅はタイプではない。
妹属性は実妹で間に合っているというのが大きい。
妹の友達とか、如何にも美味しい関係なのだが、そんな伝手が無くても大企業の経営者はモテる。
暫くの間、梅が男に貢がれたお菓子を食べながら、妹によるトーク、略してイモートークを楽しんでいたが、また誰かがやって来た。
梅が期待したように無惨と言う訳では無かった。
「はろぉ、二人とも」
「ハロー、禰豆子」
惨禍の影響で発音の怪しい外国語の挨拶を覚えた禰豆子だった。
彼女の背中には炭、そして両手には何かが入っている。
「それ何?」
「イノシシ。あっ、おとうさんがその場で血抜きとかしてるから大丈夫だよ」
「禰豆子、アンタの父って病弱設定じゃなかった?」
本当に病弱なら、竈門家は子沢山にはなってない。
病弱設定はあくまで設定である。
「んー、最近惨禍ちゃんから栄養のあるものとか貰ってるし、逃げるイノシシに後ろから襲い掛かる位は出来る様になったよ。
それと今度また家族が増えるんだ。
弟かな妹かな」
梅は考えるのを止めた。
惨禍は最初から放棄していた。
二人の共通認識として、禰豆子も結婚したら子沢山になりそうだと思っている。
「取り敢えず、松阪牛が来るまではイノシシ焼きましょう」
「「賛成」」
禰豆子が火を起こして、その火が十分になってから肉を焼き始める。
そこには残り二人は手を出さない。
面倒な事だからだ。
肉を焼くのも、肉奉行に駄目出しをされるのも。
「どうぞ」
梅が二人にお酌をする。
禰豆子は未成年な気もするが、この時代は色々と緩いから大丈夫だ。
「うん、色から連想される印象に違わない、透明感のある清涼な味わい。
それでいてキレがあり食事を邪魔しない、雪の草原を思わせる出来だわ」
惨禍、時代が違えばソムリエールになっていたかも知れない女である。
そんな早過ぎた和製ソムリエールに、まーた始まったという梅と、肉を焼くのに真剣ではなっから聞いてない禰豆子。
彼女は焼きを入れる事に関しては、一家言ある女だ。
彼女達は、基本マイペースな連中であった。
「禰豆子、あなた焼き肉屋を始めたら?
天職よ」
「うん、それもアリかなって。
うちは炭と従業員には困らないし」
とてもシッカリした娘である。
親御さんの教育が良かったのだろう。
禰豆子の兄を、無惨が事業後継者として見所があるというだけはある。
「ならあとはお婿さんを探すだけね。
そうすれば従業員も更に増えるわ」
主に子宝的な意味で、とははしたないので口に出さない。
鬼舞辻惨禍はご令嬢である。
「主に子宝的な意味よね」
…でも梅は普通にそういう事を言う。
禰豆子は少し照れていた。
それでも肉を焼く手は止めない。
「だったらそろそろ兄離れしませんと」
惨禍は、鬼舞辻のライバル会社の支店を担当している、胡蝶家の末娘カナヲと仲の良い炭治郎の身を案じて告げた。
割と良識のある正論である。
「二人は、お兄ちゃん卒業出来る?」
「うん、それ無理☆」
「同じく」
精神的にも生活的にも経済的にも兄にベッタリな駄目妹代表である惨禍だけでなく、梅にも無理だった。
可能であったのならば、そもそも兄大好き同盟は組まれていない。
「アンタたち、浮いた話一つも無いの?」
「浮いた話に慣れ過ぎて、浮かせる事は出来ても浮く事が出来なくなってしまった梅相手に出来る話なんてとてもとても…」
惨禍の強烈なカウンターに、梅は折れるどころかはっちゃけた。
「でもそんなアタシでも、恋、見つけられそうなんだ。
大人っぽくて、でもわがままなところがある人なんだけど…」
うわー素敵とテンションも燃やす禰豆子とは裏腹に、視線の温度を零地点突破させる惨禍。
惨禍としても兄が鳴女という秘書と良い雰囲気なのは、自分にもダメージがあるから、流石に言わなかったが。
空気を読んだ梅は、話をそらした。
「えっと、雷急便の飛脚の…前立だったっけ。
それとはどうなの?」
「善逸さんです。
…溺れているのを助けてもらっただけで、それから、特に何もありません」
後半微妙に残念そうな禰豆子に、惨禍と梅は面白い玩具を見つけた様な顔になった。
「じいや!!」
「はい、ここに半天狗参上しました」
色々と問題を起こした結果、鬼となり鬼舞辻家に執事になった半天狗が仕えていた。
「雷急便の飛脚を呼び付けて」
「ははっ」
暫くすると、飛脚はやって来た。
「雷急便の獪岳だ」
「チェンジで」
惨禍は禰豆子の方を向くと首を横に振ったので、チェンジする事にした。
どうせチェンジ料金なんて鬼舞辻家からすれば大した事はない。
獪岳はチェンジの意味を聞いて、その意味を理解してたいそう腹を立てたが、半天狗により
善逸が来る前に肉が焼けたので、禰豆子に取り分けて貰い、惨禍の容姿に似合う
そして───
「「「かんぱーい」」」
女子会が本格的に始まった。
お酒に弱い禰豆子などは既に顔が赤くなっているが、それでも肉を焼く手には淀みが無い。
暑いと着崩し始めたが、焼き肉奉行をしていているので、熱いのは割と考えれば当たり前の事だった。
そんな時、再び客人がやって来た。
「雷急便の善逸でーーえっ、うおおお何、何なのこの美女空間。お肉もお酒もあるし酒池肉林ってそういう意味なの? ここ天国なの? 万世極楽教とか何とかの人が言ってた極楽浄土なの? 俺死んじゃったの? 爺ちゃん俺死んじゃってたよぉぉぉぉっっっっ!!??」
飛脚の中には疲れを飛ばす為に怪しいおクスリを使った者もいたという話も無くは無いのだが、果たしてこの少年もその類だろうかと惨禍は思ったし、梅は暫く焼き肉奉行を変わってあげようと思った。
たまーに見せる梅の割と素直な所は、お客さんにも好評である。
「ぜんいつしゃん、あまりキョロキョロしないでくだしゃい」
美少女三人に目移りしまくる善逸の裾を、禰豆子はギュッと握った。
普段と雰囲気が違って妙に色っぽい禰豆子に、善逸は頭の中で天秤がガンガン振れまくった。
妙に笑顔に迫力がある親友の竈門家長男と、自分の幸せだ。
均衡は一秒もかからず自分の幸せに傾いた。
「禰豆子ちゃん。俺は君だけを──────」
そこまで言って、彼女の両肩に手を置いた所で、後ろの襖が開いた。
「竈門です。普段お世話になっているので焼き肉に合うお野菜を持って──────ぜ・ん・い・つ?」
明るく朗らかな笑顔のままで、その笑顔に凄みが加わった。
彼の目の前には、はだけて露出した妹の両肩に、親友の手が乗ってある。
普通に見れば、お得意様宅の宴会中に、妹を脱がし始めたようにしか見えない。
長男的に完全にアウトな案件である。
「それではお邪魔しました」
「ああ、俺の天国が、俺の未来予想図第二版がぁ!?」
野菜を入れた籠を丁寧に置いた炭治郎は、頭にコブを作った善逸の襟首を引っ張って、礼儀正しく出ていった。
自分の兄に襟首を引っ張られて肌が見えそうで見えない善逸に、禰豆子は少しムラっとした。
竹の棒とか咥えて落ち着く必要がありそうだった。
それから更に暫くして──────
「惨禍、松阪牛かってきたぞ」
買ったのか、狩ったのかは知らないが、鬼舞辻無惨がやって来た。
松阪牛を持って。
そして、鳴女を隣に侍らせて。
お使いを頼むなら、最初から飛脚殺しのテレポーター鳴女に頼めば良かった。
というか、鳴女もそう言った。
「最初から私に頼んでくだされば。
私がいれば他に頼む必要はありません」
それは明らかな牽制球だった。
獪岳や善逸が走る時とかに出ている、雷のエフェクトとか目じゃない勢いでバチバチやっているが、渦中の無惨は気が付いても無かった。
「では、私達はこれで」
鳴女は余裕たっぷりをアピールしながら、無惨と共に去っていった。
(主に梅と)色々と面倒な事になりそうなので、惨禍を呼び留めて相席させる事なく見送った。
「あーもー悔しい悔しい悔しい悔しい悔しいぃぃ!!!!」
「まあまあ、落ち着いて」
惨禍は梅を宥めていた。
禰豆子は“悔”と“梅”って字が似てるなとか考えていた。
「だいたい惨禍は平気なの!?
惨禍だって兄離れしてないじゃない!!」
惨禍は唇に指を宛てて、小首を傾げながら答えた。
「ん〜、でもわたくしのブラコンは、恋愛的な意味ではありませんし。
普通、そうでしょう?」
経済的に依存して、衣食住を用意して貰って、家長として世話をしてもらうという意味では、ズブズブの兄依存だが、惨禍には恋愛的な意味は全く無い。
誰だってそうだろう。
普通ならそうだろう。
そう思っていたのだが──────
「「えっ!?」」
その声がした方に、惨禍は目を向けた。
その方向にはやっぱり親友達しかいなかった。
(拝啓お兄様、最近の日本は進み過ぎです)
無惨の妹は、先程までの会話を無かった事にして、松阪牛を食べる事に専念する事にした。
「松阪牛、美味しいですの」