双子姉妹と転移の魔法界   作:凪薊

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魔導具使い姉妹の物語、始まります。


prologue
ここではない、別世界のお話。


「それではこれで依頼は達成でよろしいでしょうか?」

シストレス王国の南西、樹海の麓の町レーナ。私、リナリア・フォンターナと妹のルナリアはギルドからの依頼で討伐任務に赴いていた。依頼内容はウルフと呼ばれる小型魔獣の一掃。何でも最近になって一気に数が増えて対処しきれなくなったらしい。

「助かったよ君たち。まさかあんなに魔獣が増えているとは思わなかった。普段なら町まで下りてくることはないんだが……」

「警戒は大事。魔獣除けの魔導具を町の周りと街道に設置したから多分もう付近に来ることはないはず」

私たちは依頼主であるローランドに依頼の報告していた。冒険者は依頼を請け負った場合、その依頼達成状況の如何を問わず依頼主に報告しなければならないという規則がある。成功した場合は討伐対象の規模や討伐の達成方法などを、失敗した場合は現在の状況等をだ。

 

私とルナリアは姉妹ではあるものの、得意不得意が綺麗に分かれていた。私は剣を用いた近接戦主体。もちろん、剣にエンチャントを行うことで属性付与を行うこともできる。対してルナリアは魔法や魔導具によるトラップといった遠距離攻撃や戦術が得意だった。そこで、ルナリアにウルフの数と位置を探査魔法であぶり出してもらい私が殲滅、そしてルナリアが魔獣除けの魔導具を設置していく手法をで依頼を遂行するすることにした。ルナリアの作る魔導具は効果と持続性が非常に高いものが多く、今回の魔導具も大気中のマナを吸収することで半永久的に効果を発揮するものだった。

 

「おぉ、嬢ちゃんの事はこっちでも聞いてるぞ。フォルトゥナの領主の娘にすげぇ技術を持った魔導具の作り手がいるってな。その作り手が作った魔導具なら安心だ。必要なら依頼料とは別に魔導具の費用もベットで払うがいくら必要だ?」

「いらない。このくらいの道具ならすぐに作れるし、材料も余ってたものを使ったから。代わりに今回のウルフの件で被害に遭った人にそのお金は使って欲しい」

実際の所、ルナリアの作る魔導具はシストレス王国でも重宝されるほどのものだった。今回の様に半永久的に作動する魔導具も無いわけではないが、作れる者は王国の魔導研究員の中でもさらに一握りという程だ。そんな作り手の作る魔導具は普通に買おうと思うとそれこそ金貨が必要になってくる物さえあるほどだった。

 

「何から何まですまねぇ。その言葉通り、保障に充てるとするよ。ところで本当に泊まっていかなくていいのか?」

「えぇ、大丈夫です。ルナが転移魔法使えますから」

「ん、平気」

「転移魔法が使える冒険者なんて珍しい。……と言いたいが、嬢ちゃんならできてもおかしくないな」

ローランドは笑いながらルナリアの肩をぽんぽんと叩いていた。

流石に数が多かったこともあって既に日は西に傾き東の空は夜の帳が下りつつあった。とはいえ、レーナから私たちの住む町フォルトゥナまでは歩けば1日、馬車を使っても半日以上の距離がある。その距離を暗闇の中進むのは魔導灯(魔力を通すと暫く光る魔導具)があるとはいえ、流石に遠慮願いたい。

 

しかし、転移魔法が使えるルナリアがいる為その問題はすぐに解決する。一度行ったことのある場所であれば任意で転移することが可能なこの魔法は冒険者をやっていく上でとても重宝する一方で習得難度の余りの高さとその特性から術者は決して多くはなかった。その特性とは、移動距離に応じて魔力の消費が桁違いに上がっていくこと。短距離の移動であれば然程影響はないものの、今回のように距離が離れると魔力の消費はとても多い。ただ、ルナリアに限ってはその点は問題なかった。彼女の持っている古代魔具(アーティファクト)の一つである『ルミナスリング』。これには着用者に絶大な魔力と、魔力消費低減効果及び発動スペルの増強効果があった。 ただでさえ、魔力の多い彼女がルミナスリングを着用する……結果、彼女の転移魔法は国家間移動すら苦も無くできる程であった。

 

「それじゃ、私たちはこれで失礼しますね。

「魔道具、何かおかしなことがあったら連絡して欲しい。……多分大丈夫だと思うけど」

「おう、ありがとうな。おかげで助かったぜ。そうだ、依頼料とは別にこれも持って行ってくれ。今回のウルフの素材なんだが、如何せんあまりにも数が多すぎてな。町のやつらに配っても余っちまうんだよ。捨てるのももったいないし持って行ってくれると助かるんだが……」

 

ローランドは町の広場に山積みになっているウルフを指さしながらそう言った。既にある程度は解体され、肉や皮は町の商店に牙や骨などは武具屋に卸されていたがそれでもまだかなりの量が残っていた。とはいえ、私達は解体が得意ではない。いつもであればアイテムボックスに入れ、解体の得意な知り合いに任せていた。

「そうですね……わかりました、お引き取りします。ですが、私たちは解体が得意ではないので一先ず丸々収納しておきますね」

私がローランドにそういうが早いか、ルナリアは早速アイテムボックスに収納を始めていた。

私たちの持つマジックボックスは一般的に普及しているようなポーチやリュックといった形を成してなかった。ルナリアの得意魔法の一つである空間魔法――その応用でこの時空間から切り離された空間に物品を収納していた。収納容量は未知数。ルナリアに聞いても「さぁ…?空間魔法の効果は術者の魔力量に影響するから私にも分からない」とのことだ。

「姉さま、終わった。……いくら時間が進まないといっても流石にこの量はあっても邪魔だから帰ってミレアに投げつけたい」

ミレアというのは、先ほど言っていた解体が得意な知り合いの事だ。幼い頃から解体作業を手伝っていた女の子で、大人顔負けの解体の作業速度を誇るフォルトゥナの解体屋の看板娘だ。

「へぇ、お前さんたちアイテムボックスも持ってるのか。なんにせよ助かった。流石に処理しきれなかったからな……」

数分後、すっかり綺麗になった広場を見ながらローランドは安堵した様子でそう言った。

……まぁ確かにあの量を広場に放っておけば、数日後には阿鼻叫喚な事になるのは火を見るよりも明らかですからね。

 

「では帰りましょうか。ローランドさんまた何かありましたらギルドまでよろしくお願いしますね。ルナー、いくよー」

「わかった。それじゃ」

私たちはローランドさんに挨拶を終えると岐路に着いた。

 

 

 

「にしても疲れたわねー。あー早く帰ってお風呂に入りたい……」

「同感。 姉さま、フォルトゥナにはいつまで滞在するの? 今回は顔見せの為に一時帰郷しただけだし」

「そうねー……とりあえず帰ってから考えましょうか……」

リナリアとルナリアは領主の娘ではあるが、当主を継ぐためには外の世界を知らないとだめというリナリアの信念のもと各地を旅していた。ルナリアはそんな姉について行った形となる。そんな中での一時帰郷、決して近い距離ではなかったが転移魔法がある以上関係はなかった。

 

「姉さま、ここまでくれば町の人を驚かせなくて済むと思う。転移魔法が使えるって知ってるのローランドだけだし」

「別に隠してるわけじゃないけどね。フォルトゥナの人は全員知ってるし」

「領主の娘だし。そりゃ知られててもおかしくない。早速だけど帰る?」

私は少しだけやり残したことがないか思案したが、何かあれば転移魔法で戻ってくればいいかと結論付けルナリアに転移魔法の使用を促した。

「わかった。それじゃ私につかまって。――転移(テレポート)!」

 

あぁ……次目を開けたら家の前か。と思いにふけってるとルナリアの慌てたような声が聞こえた。

「どうして!?座標が書き換え――だめ、間に合わ――」

「ルナ!?きゃああああ!!」

いつもとは違う感覚。まるで無理やり引っ張られるような圧力を感じながら私は意識を手放した。

 

 




ということで、原作の作成を碌にせず始まってしまいました姉妹たちの転移物語。
基本設定だけはできていたので、その設定をハリポタの世界に持っていったらなんかハチャメチャなことになるだろうなーでもそれもまたよし。って感じで進めていきます。
タグの原作改変が原作改変で済むのかは分からない。崩壊するかもしれない。
一応プロットも組みましたが、果たしてその通りに進むのか……それは作者にもわかりません。でもやりたいことがいくつかあるのでそれは絶対にします。

プロローグでは彼女たちの紹介&技能などの紹介編となります。本編開始はもう少し後。


姉妹たちの紹介+オリジナル要素紹介
【リナリア・フォンターナ】
原作主人公その1。フォンターナ家の長女である彼女は体を動かすことが好き当主についての勉学の傍ら領内を常にフィールドワークしています。
妹のルナリアを溺愛しているシスコン。妹の為なら何でもする。果たしてこの子は妹のストッパー成りえるのか……や、むしろ煽りそうですね。
武器は剣。魔力量が多くないためあまり魔法は使えないが、とある事情でその制限はないに等しい。風属性を足にまとわせ高速戦闘が得意。

本作の常識枠……に、なる予定。

【ルナリア・フォンターナ】
原作主人公その2。リナリアの妹。魔法技術に長けており、魔導具の作成、錬成術、錬金術、魔法……何でもござれの超優等生。ただし接近戦はからっきしダメ。歩いて移動することすら面倒くさいと思っている節があるため移動は常にふわふわと浮いて移動している。
超絶お姉ちゃん至上主義で姉に忠実。姉からの攻撃要請であれば例え味方であろうと攻撃します。姉を害なすものが居れば容赦なく攻撃します。容赦なくです。先生だろうが友達だろうが関係なくです。

多分作中でヴォル様よりも(ある意味)危険な存在。扱い間違ったら消し飛びます。文字通りです。

【ルミナスリング】
古代魔具(アーティファクト)の一つ。着用者に絶大な魔力と魔力消費低減効果及び発動スペルの増強効果を与えます。ぶっちゃけこれがなくてもルナリアは余裕で長距離転移できますが、貰い物なのでとりあえずつけてます。本人曰く「魔導炸薬にどんなに魔力込めても疲れないから楽」とのことです。
……爆発させたら大変なことになりそうですね、その炸薬。

【アイテムボックス】
ルナリアの空間魔法の応用による賜物。(ほぼ)容量無制限の大きさ問わず何でも入る収納空間。『検知不可能拡大呪文』と似たようなものなので説明不要ですね。(内部空間の時間が進まなかったりいろいろ違うけど)

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