「何なのよこれ……」
私は依然としてこの空間から脱出出来ないでいた。
後ろを見れば香林堂はなく、辺りを見ればネジやらボルトやらガラクタばかり。
悪趣味な紫のこどだ。
どうせこの剣を使えるまで出す気ないのだろう。
昔は出来るまで死ぬ気でやるような修行もしたものだ。
まあ適当なところで出るよう設定しているはず。
ならばこちらは剣に慣れよう。
倶利迦羅の力は絶大…こと悪魔を相手するなら敗北はない。
しかしその消耗もおそらく半端じゃない。
神を降ろしたとして、何秒保つだろうか。
大禍津日神のような以前に使うことの出来た神でさえ、今は降ろせない。
どころか普通の能力すら使えないのだ。
剣を使って精々十秒…降ろす神によっては最大一分と言ったところか。
少なくとも大禍津日神や天照大御神などの強力なものは十秒保たないだろう。
「たく…これ私じゃなかったら叫んでるわよ?」
(クソババアってね)
そんな愚痴を言っても解放されまい。
とにかく能力を強化するしかない。
降ろす霊力が足りない以上、手段は限られる。
霊力を増やす、効率化する、いっそ使わず休む手もある。
まあサボりなんてしたら一生出れなそうだけど。
回復なら瞑想でもすればものの数分。
しかし増やすのは時間的に無理があるし、効率化するにも精々使う神を片端から調べるしかない。
それでさえ時間がない。
任務中の私を何日も拘束しないだろうし、いて一日が最高。
出来ることは…それこそ体を鍛える程度か。
剣に適当な神を降ろして耐えるのを繰り返し、霊力回復ついでに逆立ちでもしよう。
そうとなればまずどれほどなら降ろせるのか試す。
「まずは…
甕速日神なら、日の神と分かりやすい。
剣身に炎が纏う程度だろう。
火を広げることも出来れば御の字。
それに最上位神の二つ下程度なら実験に丁度いい。
―――――
舐めていた。
いや予想外だった。
神の力は絶大…そう分かっていたはずなのだ。
辺り一面焼け野原になる程度は想定内だが、十秒もしない内に焦げ切った。
そしてこれは三十秒程保った。
三十秒以内なら敵なしだろう。
「まあその分疲労は半端ないけどねぇ…はぁ…」
何とか気合いで長々火を放ったが、耐えれなくなった瞬間倒れ込んだ。
今はうつ伏せで倒れている。
指一本動かない。
とてもじゃないが霊力回復中に修行は出来ない。
ついでにもう一つ気付いたことは、倶利迦羅には刀身がないこと。
降りた神がいなくなったら、空の鞘と柄だけ。
やはり鞘と柄が特別なようだ。
まあとりあえず…
「寝る…」
―――――
あれから使っては寝ることを繰り返し四十柱目…最高時間はおよそ一分。
同じ神を降ろすことも出来た以上、本人が来ているわけではない。
まあそこは神降ろしと同じく力を借りてるだけのようだ。
一応倒れるか倒れないかの瞬間は把握出来た。
戦闘続きでも最悪扱える程度に加減も出来る。
最も把握出来てよかったことは、切り替えが可能なこと。
霊力さえ保てば、何柱かを切り替えて使える。
一分程度なのはもどかしいが、一分以内なら誰よりも強くなれる。
「ここまで使えば十分ね……そろそろ出らんないのー?紫ー?いつまでここにいればいいのよー?」
大声で言ってもなにも返されない。
となると自力で出ろとでもいうつもりか。
そう思っていた時…
「どこだよここは…」
「…燐?」
「あ!?…霊夢?」
「何であんたここにいんのよ?」
「そっちこそ…つかここ処刑場じゃ…」
「…待て今何て?」
「処刑場…」
「あんのクソババアがー!」
ここが燐の処刑場なら、実質私も脱出不可能。
そもそも歪んだ空間からの脱出は自力じゃ出来なかった。
外から来た燐が出れなきゃ出る手段はない。
処刑場ということはここに永久に閉じ込めるということだろう。
「あーもー!やっと出れると思ったのに…!」
「俺だって…こんなとこで死ぬわけには…わけに…は…」
「あ?」
燐の言葉が詰まった。
憤りも、脱出の意思も、全てが別の感情で埋め尽くされる。
「死ぬ…べき…なのか…?」
「はぁ?」
「だって俺…皆が言う通り化け物で…」
「…はぁ…いい!?あんたが化け物かどうかなんて知ったこっちゃないわよ!でもね…あんたが諦めたら私まで出らんないでしょうが!」
「……だけど…」
『燐!』
うじうじしてる馬鹿に説教始めるところなのに…遠くから誰かが走ってくる。
「しえみ!?」
「あんたまで…うん?待てよ…」
しえみが私達みたいに閉じ込められたり処刑されるとは考え辛い。
となるとしえみは自力で入り込んだ?
扉か何かで区切りがあるなら、この内部から破壊はできるかもしれない。
出入口が壊れれば、強制的に空間から追い出される可能性も…
私の神降ろしでも足りなかったのなら、これは燐にしか出来ない。
火力ならこいつの方が上だ。
ならどうにかしてやる気を出させなければ…
「くるな!」
「!」
「何よ急に…」
「俺は…炎を操る自信がない。お前らを燃やし殺すかもしれない…雪男やシュラ、霊夢なら平気かもしれないけど…しえみは駄目だ。お前らを…傷付けたくないんだ…」
「……」
何があったかは知らないが、きっとまた暴走したのだろう。
好き勝手炎を使って、誰かを危険に晒したのだろう。
確かに候補生じゃ対処も出来ない。
燐の心配は、決して杞憂ではない。
「俺はこのまま…死んだ方がいいのかもしれない…」
だからこそ苦しみ、だからこそ自分を殺す。
誰かのために…今目の前にいる仲間のために、自分がこれ以上苦しまないために。
だから私は…
「無駄なこと考えんなこの馬鹿。」
燐の腹に蹴りを入れた。
長くなりそうで切っちゃった。唯我独尊傍若無人…金の亡者な博麗霊夢…イメージ的には。