東方異世界生活記 壱   作:ジシェ

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第二十話

「燐。あんた自分ばっか特別で危険だとか思ってないでしょうね?」

「…その通りじゃねぇか!サタンの息子は二人しかいない…雪男には炎はないんだ!」

「ったく…この際はっきり言うけどね…こちとら人外(あんたら)なんて見飽きてんのよ!あんたより危険なのも、逆に無害なのも、計れない奴だって知ってんのよ!今更消えない炎でビビるか!」

「だからって…お前だけだろ!?平気なのは…」

「なんでそいつらが平気だったか分からない!?」

 

私も含め、幻想郷で能力を暴走させた者はいない。

使うのが当たり前だからだ。

それを私利私欲に使う者は、全て私が倒してきた。

 

「あんたがどう暴走しようが、私が止めてやる!」

 

燐の胸ぐら掴んで怒号する。

 

「今あんたがやるのは自暴自棄になることじゃない!私としえみを…ここから連れ出すことよ!」

「…燐…」

「し、しえみ…く…来るな…!来ないでくれ…!」

「燐…大丈夫だよ…」

 

しえみは優しげな表情で燐を抱える。

炎を恐れず…そっと静かに。

 

「ば、ばか…!危ねーぞ!」

「大丈夫だよ。ほら…私火傷一つしてない。」

「おおおお前俺が怖くねぇのかよ!?」

「怖くないよ。」

「あんたよりよっぽど勇気あるわ。多分しえみだけじゃないわよ?あんたの周りは…皆特別よ。」

「…そーだな。」

 

燐は体から炎を噴き出す。

綺麗な青い炎は私達をも包み込み…この場全てを焼き尽くす。

目を開くと目の前には…候補生の面々が並んでいた。

そして炎に包まれた私としえみには…外傷は全くなかった。

 

―――――

 

「うわ奥村君!?」

「みんな…助けに来てくれたのか!?」

「ぼ、僕は奥村君に死んでもらっちゃ困るんや。危険がないって判ったら、仲直りするんやから…」

「子猫丸…!」

 

それぞれ思う所はあれど、燐を助けるために集まった。

 

「ほら…全員特別よ?」

「……ありがとな。」

 

素直に感謝する燐の横っ腹に、降魔剣の鞘が突き刺さる。

 

「ぎゃ!?」

「親父の件に関しては俺が冷静やなかった…お前の言う通りや。親父の件に関してはな!戦うんなら必要やろ!持ってけ!」

「お、俺こそすまん…」

 

何があったかは知らないが、これで和解は出来たようだ。

ここからの案内は坊…勝呂がやる。

とは言うものの私は今の状況を知らない。

それに関しては走りながら聞くとしよう。

 

―――――

 

「成る程ね…不浄王…あれが…」

 

ぼこぼこと膿のようなものが脈を打ち、胞子のようなものが飛び交う巨大な化け物。

不浄王と呼ばれる災厄だ。

聞けば直近の危険度は燐より上らしい。

 

「うっぎゃあぁあ!?なんやアレ!?」

 

虫嫌いな志摩にはさぞ辛かろう。

まあ私もあまり好きになれなそうだが。

あの巨体…周りの膿…正直倒すのは難しい。

燐の炎と私の力…合わせて足りるかどうか…

口々に文句はを言いながら走っていると、倒れた人影が見えた。

間違いなく…勝呂の父…勝呂達磨だった。

 

和尚(おとん)!」

 

こんなにも不浄王に近い所で喉から血を流して倒れている。

もう助からない。

そう思っていたが…どうやらまだのようだ。

 

「我は伽褸羅(カルラ)という名で明王陀羅尼(みょうおうだらに)の座主に仕えしし者。」

 

どうやら和尚の使い魔として契約しているらしい。

伽褸羅の別の名は不死鳥…妹紅と同じように甦る。

それは契約者にも使えるらしい。

しかし…

 

「……ここもヤバそうね…」

「え?」

 

膿やら肉片やらはここまで来てないが…胞子は依然散らばっている。

不浄王の胞子は毒と変わらない。

少しずつでも吸い続けるのは致命的だ。

 

「…私は先に行ってあの体削って来るわ。」

「な…!?ごほっげほ…!無茶…だ…!ふぅ…一人で挑める相手じゃない。」

「別に挑みゃしないわよ。でもね…こっちも考えがあるのよ。」

「…せめて私が劫波焔で…」

「死ぬでしょ?」

「!」

 

霊力も魔力も、元を正せば生命力。

今彼がやろうとしているのは、自分の命を焔に変え、不浄王の急所たる胞子嚢を封じ込めること。

不浄王の体は山の三割程、胞子嚢の大きさは、人の倍程だ。

それほどのものを封じ込めるのに、どれだけ力を使うことか…

まして死に体で発動出来る程簡単なはずがない。

劫波焔として貯め続けていた十五年分の焔は既に消費済みらしい。

彼は死んでもあいつを倒すつもりらしい。

…自分の子供の目の前で。

 

「子供の前で…強がって死のうとしないでよ…」

 

最強と名高い私の母は…妖怪に殺された。

しかし母は、死して尚…妖怪と人間の共存を成功させた。

そんな母を私は…憎んだ。

いいや違う…憎いと思えなかった。

自分は博麗の巫女だから…役目のために…自分を殺して、涙を抑え、悲しみを飲み込んだ。

でも成長して気付いた。

自分を残して、他人のために死んだ母が…私は憎かったのだ。

誰かのために立派に死ぬ…それは子供にとっては酷い裏切りだ。

それが私はよく分かる。

でも今は…私もきっと同じことをする。

 

「……」

(あの日の私と同じ思いを、勝呂にさせない…)

 

博麗の巫女は他者を守る。

だからこそ…

 

「必ず護る…だから…自分を諦めるな。」

「お、おい霊夢!」

 

命を使うなら…きっと今だ。

私は博麗霊夢…幻想郷最強の巫女だ。

 

「降ろしなさい…火之迦具土神(ほのかぐつちのかみ)!」

 

まだ強い炎を制御はしきれないだろうが、不浄王だけを燃やすことを決めるのは難しくない。

人は考えない。

ただひたすらに、不浄を燃やす。

全てじゃなくていい。

削るだけ削れ。

 

「燃え尽きろぉお!」

 

 




漢字難ぃ…あと和尚話長くて丸コピ認定怖いから分かり辛いけど大半カットした。詳しくは原作へ。

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