夜行に来て三日、頭領なる人物に出会うことはなく、また私が何かしなきゃいけないこともなく、ただ鍛練の日々。
強いて言うなら家事類は行っていたが、他には特に何もしていない。
この三日暇を持て余していた私がしていたのは、鍛練以外に、ここの人を観察していた。
結論から言ってしまおう。
まともな人がいない。
と言っても日ごとに顔ぶれは代わり、おそらく全員は見ていないと思う。
遊びで木を根から抜いて振り回したり、常に紙袋を被っている人、子供の遊びでさえ能力が使われている。
「…私はまともなのかな…」
「まあ夜行メンバーからするとまともな方じゃない?」
「アトラさんいつの間に…そういえば頭領さん全く帰ってこないみたいですけど、私は何をすればいいですか?」
「家事とかしてくれてるじゃない。」
「いえ…皆さんがしているような仕事をしてみたいんです。」
「危険だし大変だよ?なんでわざわざ…戦闘狂?」
「違います…強くなりたいんです。私、まだまだ未熟ですから…実戦で鍛えて、一人前になりたいんです。」
「…お師匠さんのため?」
「…それもあります…でも一番は、守りたい方がいるからです。
「そっか…紫って人に連れられてここに来たんだっけ?」
「はい。」
「強くなるために旅にでも出たの?」
「似たようなもの…かもしれません。私は、紫様が私のために、ここに連れて来てくれたことを無駄にしたくありません。だから、幽々子様を守れるくらい、私は強くなりたい。」
「ふふ…守りたいって思うのは大事だよ。その想いは、ずっと大事にね。私も…ここにいる子達を守るために戦っているから。」
「…アトラさんがお姉さんのように見えて夢かと思いました…」
「怒るよ?」
―――――
「けっこうアトラさんと話してたな…頭領さんいつ帰るんだろう?」
「あ!新しく入った人だね!?」
「へ…?」
「そういえばすこし前に新人が来たって箱田君言ってたな。」
「えっと…あ、私魂魄妖夢です。」
「僕は秋津秀よろしくね!」
「影宮閃だ。」
「魂魄さんはどの班になったの?刀持ってるし戦闘?」
「頭領帰ってねぇだろ。」
「あ、そっか。」
「つか立ち話してる暇ねえだろ。」
「そうだった!ごめんね魂魄さん。ちょっと急いでるからもう行くね。」
「は、はぁ…」
嵐のような人だった。
というかなんだか霊夢と魔理沙に空気が似てる気がする。
「そういえば…幽々子様はどうしてるかな…」
あの二人から、霊夢達を思いだして、ふと幽々子様のことも頭を過った。
その場にいない主を想い、私は昔を思い出した。
従者なのに料理を最もしていた。
異変では主の望みを叶えることも出来ず。
…店の食料を全て平らげられることであった財政難。
「…私あんまり幽々子様との思い出ってない…?」
不安にかられる結論が出てしまった。
「……考えると私がいないと幽々子様不安…」
何故だかそんな風に空回りしてしまっている。
紫様(藍様)が幽々子様のお相手をしてくれるようだけど、一緒にいないと不安に感じてしまう。
そう考えると、私は根っからの従者なのだろう。
(それでも思い出とかないのは少し寂しいな…)
帰ったら何かして差し上げよう、そう私は心に決めた。
「……」
ここの人達は何も知らないはずの私を仲間に入れてくれた。
何も聞かず、ただ一人の人として見てくれた。
たった数日でも、私のために様々なことをしてくれた。
思えば最初にそうしていたのは誰だろう。
…決まってる。
「幽々子様が最初だった。」
お師匠様もそうだった。
だけど初めは幽々子様だった。
誰にでも残るような思い出はなくとも、私にとっては毎日が思い出だった。
「お礼の一つくらい、帰ったら言おう。」
その日私は、主への信頼を再確認した。
それが従者としてではなく、魂魄妖夢としての、西行寺幽々子という方への忠誠だった。
―――――
「…あ、妖夢ちゃん見つけた。」
「アトラさん?どうかしたんですか?」
「頭領が帰って来たのよ。それで呼びに来たの。」
「頭領さんが?」
「ええ。」
新しい不安は以外とすぐに起きるものだった。
アトラさん漢字出すの分けなきゃ出来なくて面倒だし、原作で片仮名か平仮名か忘れたけど漢字表記はされてなかったので、アトラさんは片仮名表記でお願いします。