東方異世界生活記 壱   作:ジシェ

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第三話

ここの頭領の評価は高い。

皆でかかっても倒せない相手でさえ、一人で片付ける。

妖混じりと呼ばれる特異な能力を持つものを、その上制御しきれず家族を傷付けたものでさえ受け入れる。

過去には仲間を殺し回った上司に向かって怒鳴ったこともあるらしい。

優しく、頭が良く、なによりも強い。

夜行の皆、この人を信じている。

だから私は、今が信じられなかった。

 

「初めまして。俺がここの頭領、墨村正守。皆から少しは聞いてるかな?」

「初め……まして…私は魂魄妖夢です。…あの…」

「…鋭いね。」

「…?」

「この部屋に入ってから、おそらく何か感じとったんだろ?だから…そんなに恐怖した顔をしてる。」

「…何か…黒い…影が見えます。憎悪や恐怖…黒い感情が…気持ち悪い感覚が…」

「……ごめん。試させてもらったんだ。」

 

そう言った直後、彼からその感覚が消えた。

 

「この夜行には、様々な能力を使う者が集まる。君も何度も見ているだろ?ここに来たということは、君にも特異な力があると思った。」

「今の感覚に気付いたことで、何か分かったのですか?」

「感覚…五感とは違う第六感。それが鋭いものは気付くことが出来る場合がある。夜行でも、気付けるのは数人程度。」

「私の能力は剣を扱うだけです。特異な能力は…これといってありません。」

「そうか。だとすれば武術を会得した者の鋭い感覚を得ているわけだ。よく鍛練しているね。」

「…ありがとうございます。」

「……決まりだ。君の所属は、諜報班にする。」

「諜報…ですか?」

「君の感覚、それはかなり鋭い。おそらく人の気配を感じる能力なら、夜行所属の面子よりも鋭いだろう。箱田君がいないとき、死角の敵を見つけられるのは大きい。戦闘能力もあるなら、最悪捕らえられる心配もない。」

「確実ではないですよ?気配を殺して近づく敵もいるはずです。」

「そうだね。しかしある程度敵が見つかるなら、後は戦闘班の出番だ。問題ない。それにアトラから聞いた限り、環境の利用がとても上手いらしいね。」

「多少視覚を訓練しただけです。」

「多少でその判断が出来るなら十分だ。判断力もある。これほど向いてる人もいないだろう。」

「…分かりました。諜報班として以降仕事をこなします。」

「頼もしい仲間が増えるのは、夜行にとって喜ばしい。これからよろしく。」

「はい。よろしくお願いします。」

 

会話を終え、私は部屋を出た。

聞いていた印象は、あながち間違いないかもしれない。

あの人の表情は、優しげで穏やか。

話し方も祖父のような静かさだった。

言ってはなんだが少し老けてると思った程に。

だが、その目に笑みは見えない。

憎しみや怒りに捕らわれているかのような、暗い目をしていた。

 

「…あれが…頭領…」

 

何よりも、あの人は別格だった。

体に纏う死の匂い、数多く屠ってきた、戦人の空気。

だから私には、あの人はとても危うく見えた。

 

―――――

 

「妖夢ちゃん!どうだった?」

「諜報班になりました。改めてお願いします。」

「そか…なんだか分かってた。」

「?」

「私は貴方が来た時、初めて声をかけたんだよ?あまり長くはないけど、ここで一番話したのは私だから…」

「……そうですね。…ところで諜報って何をすればいいんですか?」

「指令が頭領から来るけど、今までの諜報班がしたことといえば…策敵に情報収集とかね。」

「…それだけですか?」

「まあそれだけでも大変だからね。多分貴方もそんな感じなことすると思うわよ。」

「そうですか…今日は少し皆さんの話しを聞いてみることにします。それだけとは思えないですし…」

「…疑ってる?」

「いいえ。」

「まあ…ならいいけど…まっ、とりあえず行ってきなさい。これが初仕事だよ。指令者は自分のね。」

「……はい!」

 

こうして私は、夜行諜報班所属となった。

 

 

 

 




例によって正守の口調がおかしい。アトラも。そのへん目を瞑って下さいお願いします。
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